いきなり騎士隊長の前にアナザーダイブなんて…これって病んでるの?もしかして運命とか言わないですよね?

はなまる

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 瑠衣は少しは薬草や解毒の知識もあった。辺りを見回す。こんな洞窟の中では薬草もないわ。あっ!焚火使った薪が炭になっているのを見つけた。

 ”もしかしたら解毒できるかも知れない。”

 「レオナルドちょっと待ってて」


 瑠衣は急いで焚火の中から炭になった木切れを薪で取り出す。その炭に水を汲んできて冷やす。そして平たい石の上で炭を細かく砕く。石で炭を細かく細かくしていく。


 それを置いてあったコップに入れると鍋にあった湯を入れる。炭は活性炭素になって体の中で毒を吸着してくれると本で読んだことがあった。でもこれが彼の毒に効くかはわからないが、やってみるしかない。

 「レオナルドこれを飲んで、炭は解毒作用があるの」

 レオナルドは驚いた顔をしたがそれでもその炭水を飲んだ。


 「いいわレオナルド。それともう一つやってみたいことがあるの。わたしおまじない知ってるから、もし良かったらおまじないしてもいい?」

 「おまじないか。そうか瑠衣がしてくれるのか?」

 レオナルドは嬉しそうにほほ笑んだ。なぜか彼女がすることは何でも受け入れたい気分だった。

 「ええ、どこか教えて」

 「胸からお腹にかけてだ」

 「この辺り?」

 レオナルドは照れ臭いのか顔を背けてうなずく。

 よく見ると傷口が化膿してひどく腫れて熱を持っている。こんなにひどい傷…かわいそうに…


 瑠衣は目を閉じて唇を真一文字に引き結んだ。両手を広げてその辺りにパワーを送ってみる。心を込めて傷が治るように気を送り込む。

 「ヒィールウーンドウォート…ヒィールウーンドウォート…ヒィールウーンドウォート…」何度もそう言いながら両手に力を込める。


 レオナルドはそんな瑠衣を薄目を開けてみていた。

 だが、次第に傷のあたりが熱くなっていき痛みが和らいでいく。そして瑠衣がまじないを唱え終わると驚くほど傷の痛みが治まっていた。

 レオナルドは立ちあがって体を動かしてみる。胸の痛みもなくなり息も苦しくない。それに体がいつものように軽くなった。

 彼は驚いた。

 「瑠衣すごい。傷が治った。それに痛みもなくなった。それに息もすごく楽になった。すごいよ瑠衣。ありがとう、一体どうやったんだ?」


 「おまじないは家にあった古い本を読んでいたから…でもおばあちゃんはこんなものを見ちゃだめだって燃やしてしまったけど、このおまじないは覚えていたから…」

 「いや、驚いた。すごいよ瑠衣。今度傷を負った騎士たちにも君を合わせたいけど、どうかな?」

 「よくわからないわ。あなたの事全部知ってるわけじゃないし…考えとく」

 「ああ、そうだな。いきなり悪かった。夜も遅いし送って行こう」

 「ええ、でもわたし…」

 レオナルドはなぜかこのまま瑠衣と別れたくはなかった。そんなことを思った事もないのに、そんな自分に驚いた。


 瑠衣は困った。ここがどこかもわからないし。どうやって帰ればいいかも…ううん、これはきっと夢よ。こんな事現実にあるはずがないわ。狼がしゃべるなんて事…

 瑠衣は後ずさった。

 「お願いだ瑠衣。お前の居場所を教えてくれないか。お前のその力を使って痛みに苦しんでいる騎士を助けられるかもしれないだろう?」

 「ううん、こんなのきっとまぐれよ。きっとただの偶然で…そんなこと出来るはずないから……」

 突然、瑠衣の体が透き通っていく。

 「瑠衣、待ってくれ…せめてどこから来たか教えて欲しい。きっと会いに行くから…瑠衣頼む…」

 レオナルドは慌てた。どうなってるんだ。現れた時もいきなりだが、今度は体が消えていくなんて…


 「わたし…どうしようわたし…どうなってるの?……わたし……」

 瑠衣は自分の体が消えていくのを見て怯えて泣き始めた。

 レオナルドはとっさに瑠衣の足をつかんだ。

 だが彼女の体をつかむことは出来なかった。瑠衣の体は空気のようにつかみどころがなく、ますます透明になっていく。

 「瑠衣?待ってくれ…頼む…瑠衣!」

 レオナルドの呼びかけももう聞こえてはいなかった。

 彼女は泣きながら跡形もなく宙に消えてしまった。

 「瑠衣。どこだ?隠れててないで出てきてくれ…瑠衣…」

 レオナルドは辺りを探し回った。だがどんなに呼んでも二度と瑠衣は現れなかった。



 そしてその後具合の悪かった吐き気も収まった。レオナルドはすっかり元の元気な体に戻っていた。不思議なことがあるもんだ。これは夢じゃない。絶対に現実に起こったことだ。

 レオナルドはその時彼女を探そうと決めた。



 レオナルドは3か月前の瑠衣とのことを思い出していた。彼女の事ならどんな細かいところもすべて覚えていた。

 あの長いまつ毛に縁どられた美しく宝石のように輝く瞳も、可愛い指先も、その柔らかで耳の奥に響く声もどんなに恋しかったか、思い出すだけで息も出来なくなるほど胸が苦しくなった。どんなに君を求めていたか……瑠衣。

 なのにまた君は消えてしまった。狼だったという言葉は瑠衣に届いたのだろうか?あの時の事を瑠衣も覚えているのだろうか?

 レオナルドは自分でも驚くほど心をかき乱された。


 何より瑠衣にまた会えたことがうれしかったのに、そう言えば俺はあの時のお礼も言えないうちにまた彼女は消えてしまった。

 レオナルドは胸の奥がえぐられたように痛んだ。

 何としても瑠衣を見つけようとレオナルドは心に固く誓った。



 瑠衣は至福の時を過ごしていたと思ったら、レオナルドにおかしな話を聞かされて、何が何だか分からなくなっていたはずだったが…

 いきなり我に返った時、瑠衣がいたのは自宅のアパートを出た通りの角を曲がるところだった。

 思えば確か…角を曲がって車のライトが反射して眩しくてあっと思った瞬間だった。

 「レオナルド?どこに行ったの?うん?ここはどこ?」

 さっきの事は何だったのか。白昼夢…

 たくましい筋肉男子の胸の中でうっとりしていたところだけを思い出そうとした。夢なのに訳の分からない話まで思い出す必要はないから!

 でもこんな夢を見るなんて自分が完全に病んでいるのではと恐くなった。

 まったく修仁にまた怒られる。急いでビール買って帰らなきゃ…

 どうして自分がここにいるのかを思い出してぞっとする。



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