いきなり騎士隊長の前にアナザーダイブなんて…これって病んでるの?もしかして運命とか言わないですよね?

はなまる

文字の大きさ
14 / 54

13

しおりを挟む


 瑠衣はレオナルドに抱きしめられている腕の中で、さっき起こったことをまた考えていた。

 それは瑠衣が手当てを受けてレオナルドの寝室に戻って来た後の事だった。

 瑠衣は意識がもうろうとする中、声が聞こえた気がして目を開けた。

 すると空中に神々しい光が見えた。そしてその光の中からヴィーナスのような女神が現れた。

 瑠衣は驚いて声も出ないままその美しい女神をじっと見つめていた。すると女神が話を始めた。


 「瑠衣、よくお聞きなさい。今から350年ほど前のセーラムにひとりの魔女がいました。彼女の名前はヤスミン。彼女はある男と知り合い恋に落ちます。だけど男は女癖が悪く仕事もしないようなとんでもない男でした。それでもヤスミンはじっと耐えていました。でも男に新しい女が出来捨てられそうになります。でも、ヤスミンは別れたくないと言って彼ともめました。すると男はヤスミンが魔女だと教会に密告したのです。あの頃魔女と疑われたらもうどうすることも出来ない世の中でした。結局ヤスミンは火あぶりにされて死んでしまったのです。でも彼女は本当は魔女でした。それを知るものはごくわずかで、その男も本当は知らなかったのですが、きっとそれが彼女の運命だったのでしょう。

 神はヤスミンを気の毒に思い、天国で神のそばに置きました。

 それから50年ほどたったころ、人間と獣人が争っている国の事を神はひどく嘆いていました。ヤスミンはわたしならきっと役に立てると自ら神の使いとして行くと名乗り出ました。ヤスミンは神の役に立ちたいと思ったのでしょう。神はヤスミンにすべてを託しました。

 それである時エレナ山の洞窟に女神が現れます。争いをやめさせるために神の使いを使わすと言ってヤスミンが現れるのです。ヤスミンはこの世界に新たに生まれ変わったのです。その時洞窟には、たまたま怪我の養生をしていた獣人アヒムがいました。アヒムはヤスミンに一目で恋に落ちます。そしてヤスミンの言うことを聞くようになり人間と話し合いをしようとしますが、アヒムは人間に殺されてしまいます。ヤスミンはひどく悲しみました。それでも何とか争いをやめさせるため人間のリーダーをアヒムの遺体のそばに呼び出し、その場で自ら命をひきかえにして争いをやめるように言うのです。アヒムは生きかえりヤスミンは天に召されました。

 そして二人はヤスミンの遺志を継いで争いをやめるよう互いの国の王に話をしてやっと争いは収まったのです」

 「それとわたしが何の関係があるんです?」

 瑠衣は神々しい女神の言うことがどんな意味を持つのか全く分からない。

 「あなたはそのヤスミンの魂を受け継いで生まれているのです。きっとヤスミンはあなたの運命を予知したのです。そんな時この世界がまた争いを始めようとしている事も知った彼女の魂は、あなたの力で争いが始まる前に何とか争いを収めて欲しいと思っているのかもしれません。いいえ、あなたならきっとできます。あなたにはヤスミンと同じ不思議な力があるのですから」

 「女神様。でもどうやって?わたしにそんな力はありません。それに…それにこの世界はわたしが作った夢の世界なんですよ?」

 また、また…そんな事を誰が信じるの?

 瑠衣は女神の言うことが信じられなかった。それより女神がいる事さえ信じられるはずがないじゃない。


 女神は微笑みながら言う。

 「夢の世界なんかではありませんよ。あなたはあちらの世界ではもう亡くなったんです。この世界は存在する別世界なんですよ」

 「うそ!そんなのうそです…わたしが死んだなんて…」

 確かに大けがをしたと思うけど。でもまさか死ぬなんて…そんなの…

 「仕方がありませんね。あなたがそうまで言うなら、これを御覧なさい!」

 女神がさっと手を振った。

 天井にぱっと映像が現れる。


 そこにはよく見知っている自分の部屋があった。わたしは床に倒れていて、修仁が無理やりわたしを後ろから犯そうとしている。そして何やら言っている。

 「瑠衣、俺と別れようなんて言うお前が悪いんだ。ほら、可愛がってやるから、腰を上げろよ。くっそ…俺が欲しいんだろう?入れてやったらすぐに嬉しがるくせに…なぁ。おい、何とか言えよ!クッソ!」彼はがつがついつものように腰を叩きつけていたが、急にその動きを止めた。気絶したわたしの頬を叩いて起こそうとしている。

 「おい!瑠衣起きろよ。そんな気絶したふりしても無駄だからな。俺は別れてなんかやらないから…まあ、カレンとちょっと仲良くしたのは俺の間違いだった。悪かったと思ってる。なぁ機嫌直せって、俺にはお前だけだから…よー!瑠衣?」

 修仁はそれどころではなくなって瑠衣を揺すってみる。瑠衣はピクリとも動かない。瑠衣の胸に耳を当ててみる。修仁の顔が真っ蒼になる。

 「瑠衣?おい、しっかりしろ…クッソ!」やっと瑠衣が死んでいると気づいた。

 「俺のせいじゃないからな…俺は知らないから…」

 修仁は腰を抜かしそうになりながら慌てて部屋を出て行った。

 そこにはもう息をしていないわたしが横たわっているだけだった。あまりにもかわいそうな姿であまりにもみじめな最期だった。



 瑠衣は泣いていた。こんなのひどすぎる。これがわたしの一生なの?これで終わり?そんなの…あんまりじゃない。

 「わかりましたか瑠衣?もうあの世界にあなたに帰るところはないのです。あなたはこの世界に生まれ変わったのです。もしこの世界も嫌というなら天国に行くしかありません」

 女神の言葉に意識を取り戻してはっとする。

 「でもわたしはずっとこの世界の事を夢で見ていたのよ。これが現実だなんて…」

 「いいえ、夢ではありません。これは現実ですよ。ヤスミンはあなたが自分と同じような運命をたどると知って、別の世界での生き方があることを知らせたかったのかもしれませんよ」

 「まさか…本当に?」

 女神は真面目な顔でうなずいた。

 「えっ?じゃあ、レオナルドがわたしを愛するようになるって本当なんですか?」

 何をおかしななことを言っているのかと思う。でもレオナルドは出会った時からわたしに優しかった。それは運命だったから…彼は一目で恋に落ちて私たちは愛し合うようになるって事?

 そんなばかな…

 確かにわたしはレオナルドのような人を求めているのかもしれないわ。でも自分があんなに素直になれたのは夢だと思っていたからで…瑠衣は真っ赤になった。

 もう…いやだ。

 と思ったのも束の間だった。

 「でも…わたしは最後に死ぬんですよね?」思わず声に出していた。

 そうだ。幸せは長続きしないのだった。

 「それはわかりません。神でさえ想像できないこともあるのです。あの時アヒムが恋に落ちることも、2人が愛し合うようになる事も、ヤスミンが命を絶つことも神が想像したことではありませんでした。すべて自分たちの意志で決めた事です」

 「じゃあ、ヤスミンはどうしてまた生まれ変わってこの世界に?」

 「あなたはヤスミンの生まれ変わりではありません。彼女の肉体が元に戻ることはありません。魂に残った強い思いがあなたに受け継がれたのです。だから前世と同じことを繰り返すと決まっているわけではありません。あなたにはあなたの人格があり、あなたのやり方があるのですよ。ただ、瑠衣あなたはヤスミンの想いを強く持って生まれたという事は確かでしょう。そしてあなたはもうこの世界にいるじゃないですか。どうするかはあなた次第です」

 「でも不思議な力なんて持っていません」

 「思い出しなさい。あなたが最初に来た時の事を、あなたはまじないで傷を治したはずです」

 「あっ!」瑠衣は叫んだ。

 「あなたは清く正しい人。自分を信じるのです瑠衣……未来はあなた次第ですよ…」

 その途端神々しい光がすぅっと消えてなくなり女神も消えていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

処理中です...