悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる

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4えっ?今夜は無理です

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 結婚した時はライオスと共に夫婦の寝室を使うとばかり思っていた。でも違った。

 夫婦の寝室はライオスとヴィオラがずっと使っている。

 ミモザは2階の北側の日の当たらない小部屋を使うように言われた。

 馬車でキャメリオット公爵家に送り届けられて護衛騎士に抱かれて自分の部屋に入った。

 最初護衛騎士は驚いていたが今では顔色一つ崩す事もない。

 がらんとした小部屋には必要最低限の家具しかない。

 豪奢なドレスは夜会に一度出た時に来たものだけ、後は一応王宮に出入りしているのできちんとした仕事用もドレスは買うことを許されているが普段着のような服はほとんど持っていない。

 簡素な締め付けのないワンピースは結婚前に持っていたもので、屋敷に戻るとそれを着まわしている。

 もちろんお客様が見えるときは仕事用のきちんとしたドレスで迎える。


 侍女のラウラに着替えを手伝ってらうとベッドに横になった。

 今日は脚が痛いので手伝ってもらったがいつもは自分の事はたいてい自分でする。

 まだ気分はすぐれないままだ。

 眼鏡を忘れたが予備があるので心配はない。それにもう誰も入ってこないのならかける必要もない。

 ミモザは決して目など悪くない。

 眼鏡はいわゆる伊達眼鏡で学院に通っている頃からつけている。

 こうしておけばみんなが、勉強ばかりしている面白みのない女みたいな勘違いをしてくれるので気に入っていた。

 だから就職いてからもずっと眼鏡は必需品だった。

 結婚式の時でさえ眼鏡は外さなかった。

 今ではミモザに取ったら眼鏡は戦闘服みたいなものだったのに、夫であるライオスに真顔を見られたのはいやな気分だった。

 まあ、そんなことどうでもいい。

 今はセルカークの事や前世の記憶の事で頭は混乱している。


 ミモザは目を閉じると思い出したくもないシルヴィだったころの記憶がまた蘇った。

 シルヴィだったころの家はペルヘルム子爵家と言う小さな領地だった。

 父も母も温厚で優しい人だった。兄がいてシルヴィは学院にも通わせてもらった。

 そこで運命の人に出会ったと思った。それがセルカークだった。

 彼は同じ学年の中でも群を抜いて整った顔立ちで侯爵家の息子と言うこともあって女生徒の人気の的だった。

 シルヴィもセルカークに憧れいつも遠くから見ていた。

 そんな彼と言葉を交わしたのはノートを間違ったことがきっかけだった。

 セルカークとシルヴィはS・p同じイニシャルでセルカークがノートを間違ってしまったのだ。

 彼は女性には手慣れているらしくシルヴィはあっという間に毒牙にかかった。

 彼の言う事には逆らうことなく何でも言う事を聞いた。自分だけでなく他の女性とも付き合う彼に文句ひとつ言わなかった。

 そして学院を卒業して妊娠が発覚。彼の父親は責任を取らせると結婚した。

 何しろ彼の父はペルサキス侯爵で国防院の最高司令官だったからだ。

 セルカークは学院を卒業すると政務官の試験を受けたが落ちて仕方なく騎士団に入った。

 彼の上の兄はふたりとも優秀らしく一般の騎士になった彼は荒れた。

 家にはほとんど帰らず学院で一緒だった友人と遊び回った。女もより取り見取りで帰って来るといつも香水の匂いをぷんぷんさせていた。

 シルヴィが悪阻で苦しんでいても知らん顔で向けられる視線は威圧的で「お前が妊娠したせいで俺の人生は台無しだ!」などと怒鳴られた。

 シルヴィはひとりで大きくなって行くお腹に精神的にも体調面でもすっかり落ち込んで行った。

 両親を頼ればよかったがセルカークが自分の行いを知られるのを嫌がり頼るなときつく言われていた。

 そんな中で産気付いた。シルヴィは初めてのお産でパニックになり過呼吸を起こした。

 そしてそのまま息を引き取ったのだ。

 
 (思い出さなければよかった。こんな記憶…前世もすごく不幸せだったなんて…)

 ミモザは今のこの人生にもすっかり生気を失っていた。

 生きる気力すら湧かない。まるで生きている屍だ。

 (これで妊娠して子育てなどできるのだろうか?また生まれる前に死ぬかもしれない。

 もし生まれたとしても赤ん坊さえ義理母に取り上げられるかもしれない。

 きっと私は子を産む道具としか思われていないんだろう。

 そうに決まっている。だってそんなふうに扱われているのだから…

 何てこと‥前世では妊娠したことを疎まれて、今世では妊娠することを強要されている)


 そんな事を思っているとラウラの声がした。

 「若奥様夕食をお持ちしました」

 「ええ、もうそんな時間?」ミモザは相当長い時間考え込んでいたらしい。

 侍女のラウラは平民の出だがよく気の付くいい子で何かとミモザに親切だった。

 脚をくじいたミモザに夕食を運び、風呂は無理だろうと温かい湯と布を持って来てくれた。

 「ラウラありがとう。今夜はお風呂は無理ね。あなたのおかげですっきり出来そうだわ」

 ミモザはおかしなことを考えていたことを知られたくない気がして普段を装う。

 「いいえ、奥様痛みはどうですか?後で痛みと腫れにきく薬湯をお持ちします」

 「ええ、少し頭痛がするの。助かるわ」

 (長い時間嫌な事ばかり考えたせいね…いくら考えても仕方のない事なのに)

 ミモザはラウラに背中を拭いてもらうと寝巻に着替えてまたベッドに横になった。


 ラウラが出て行ってやっと一息ついた。

 なのにしばらくすると義理母のリリーが部屋に入って来た。

 「ミモザ。支度をしなさい」

 「あの…お義理母様、何の支度でしょうか?」

 「決まってるでしょ!月のものが終わって一週間です。今夜から子種を受けてくれなきゃだめでしょ!」

 キャンキャンわめいて義理母の目が吊り上がり声を荒げる。

 「でも…私怪我をして…」

 「あなたが動くわけでもないくせに…ただじっと寝てればいいだけでしょ?脚が痛ければ枕でもあてがうように言うわ。まあ、でも。そうね。風呂はまあ許してあげるわ。ラウラに身体を拭きに来させるから」


 ミモザは思った。

 ええ、ええ。確かに私の身体は子作りの道具でしょうけど。

 確かに子種を受ける壺くらいの。

 でも、今日くらいそっとしておいてもらえないんでしょうか?

 それは感情のない行為。ただ子種を注がれるだけの…私の膣の中に。

 ああ…みじめだ。ううん。感情なんか失くしてしまえばいい。

 こんな事狂ってるとしか思えない。

 息子の代わりに父親が子種を嫁に注ぐなんて…

 そんな行為があるなんて…ねぇ誰か信じれる?

 ミモザは大きく息を一つ吸い込んだ。

 リリーが部屋を出て行く。

 「そうだ。あなたここから歩いて下りるのは無理ね。あの人にここに来るように言っておく。今夜は私用があるから出掛けるけど、きっちりやることだけはやってね。あっ、それから子種が流れない用に栓をするのを忘れないで、じゃ!」

 リリーは機嫌よく出て行った。

 ミモザの気持ちは一気に地の底まで落ち込んだ。

 もう嫌だ。こんな地獄は…

 



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