悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる

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7もう、義理母の言いなりになりたくない

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 ミモザは沈んでいく気持ちをどうすることも出来なかった。

 ベッドに横になると自然と枕が濡れた。

 脚の痛みもひどくなった。

 (どうして私がこんな目に合わなきゃいけないの?義理父には犯され、夫は他の女に夢中で妻の私には目もくれない。

 子供を産むためだけにこんなことをされていくら公爵家の跡取りが必要だからって…こんなの地獄よ)

 ぐっと噛みしめた唇から血の味が喉の奥に流れ込む。

 前世を思い出したせいで今の現状が余計にみじめだった。

 受け入れられない苦しみのままミモザは夜を明かした。



 「ミモザ?起きてるの」

 翌朝、そう声をかけるといきなり部屋に入って来たのは義理母のリリーだった。

 ぶしつけにもほどがあるがミモザを気遣うような義理母ではない。

 ミモザは急いで起き上がる。

 「昨晩はあの人ちゃんと義務を果たしたの?さあ、いいから見せなさい」

 いつもの義務を果たした後の確認だ。

 「あっ……」

 ミモザはそんな事もすっかり忘れていた。

 いつもは事が終わるとミモザがきちんと栓をして子種を流さないようにしているかを確かめるのだ。

 昨晩は出掛けていたためそれが出来なかったらしい。

 リリーはいきなり布団をめくるとミモザの寝間着をめくった。

 下履きの隙間から手を差し込んで中を探る。

 「あら?ないじゃない?いったいどういう事?」

 ミモザは恨めしそうな顔でもしていたらしい。

 「ちょっと答えなさい」

 「…はぃ」

 消え入りそうな声で声を出す。

 「あの人が忘れたの?」

 ミモザはとっさに嘘をつく。

 「はい、旦那様がいいとおしゃって」

 「まったく、私がいないと…もういいわ。今夜は私が最後まで見届けますから」

 義理母は怒って部屋から出て行った。


 (はっ?やめてよ。もういやだ。何とかしてここから逃げ出したい。でも、どうやって?)  

 一体どういう神経で言えるのかとさえ思うがそんな事さえどうでもいい。

 今はこれからの事を考えなければ…


 しばらくすると扉がノックされた。

 「若奥様、お食事をお持ちしました」

 ラウラの声にほっとする。

 「ええ、ありがとう」

 「脚は痛みますか?」

 「少しね」

 「起き上がれそうですか?お食事はベッドでなさった方がよろしいですね」

 ラウラはベッドの後ろにクッションを差し入れ座れるようにしてくれた。


 ミモザは体を起こして座る。

 「あっ!」

 「申し訳ありません。脚が痛みますよね」

 慌ててラウラがけがをした方の脚を見た。

 「ああ…腫れてますね。先に手当てをしましょうか?」

 ラウラが気の毒そうにそう言った。

 包帯で巻かれた足首は少し腫れているように見えた。痛みは昨晩の事でひどくなっているかもしれない。

 (でも、無理してでも何とか歩かなきゃ…)

 「大丈夫。座ってるんだもの。気にしないでラウラ」

 (ひどく痛むとでも言ったらライオスの機嫌を悪くさせたしまうかもしれない)

 そうすると義理母の機嫌もまた悪くなるのはわかっている事だ。何しろライオスには蕩けるような菓子以上に甘い。

 「いいんですか?でもお食事が冷めますし…」

 「いいの。食事の支度をして」

 「はい」


 ベッドの上に簡易式の食台がおかれ朝食が並ぶ。

 食事はいつもきちんとしたものだった。

 焼きたてのパン。オムレツやチーズ。野菜のサラダにフルーツなど栄養豊かなメニューだ。

 これも子を孕むために必要だからだ。

 人から見れば公爵家に大切にされている嫁に見えるかもしれない。

 ミモザは滑稽だと笑みが零れた。

 (逆らってどうなるの?離婚したいって言えば、はいそうですかって義理母や実家の父が言うとでも?それに夫であるライオスも。まさか。やっぱり逃げるしかない。でも、どこに?)


 「少しでもお召し上がりください」

 食欲などないが仕方なくフォークを手に取りサラダに手を付ける。

 ミモザはそれを見てお茶をカップに注ぐ。

 朝のお茶は薬草茶と決まっている。子が出来やすいようにとわざわざ義理母が取り寄せたものだ。

 聞いたら笑う。お茶の名前は<コウノトリの奇跡>中身は単なるルイボスティーやタンポポの茶葉らしいけど…

 「すみません。食欲ありませんよね。奥様がキッチンに来られてきちんと食べるところを見届けるようにと…」

 ラウラが申し訳なさそうに言う。

 そうなのだ。義理母は食事の事までいちいち口を出す。

 何もかも自分の思い通りにならないと気が済まない性格なのだ。


 「いいのよ。あなたのせいじゃないもの。それに食べなきゃ元気になれないし、そうなったらここにずっといなきゃならないもの。そうね。しっかり食べて早く怪我を治して仕事に…」

 そこまで言って言葉に詰まった。

 そうだった。職場でもあいつ(義理父)に迫られたんだった。

 ああ…もう八方ふさがりじゃない。


 「カチャカチャ」オムレツを散々フォークでつついてしまう。

 気づくとオムレツはぐちゃぐちゃになっていてそのオムレツを無理やり口に押し込んでやっと朝食を食べ終える。

 そしてコウノトリのお茶を飲んでやっと食事から解放された。

 「若奥様、冷やした方がいいですね。湿布をお持ちします」

 「ええ、ありがとうラウラ」

 こんな事していられない。とにかく何とかしなきゃ!



 
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