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30告白
しおりを挟むしばらくして面会室に現れたのはセルカークだった。
彼はものすごく元気そうでにっこり笑ってこちらを見た。
途端にミモザは腹が立った。
「もう、先生。どれだけ心配したかわかってるんですか?」
「すまん。もう大丈夫だ」
「だって…先生帰ってこないし、私、きっと先生が困ったことになってると思って、取りあえず先日のけしの花を買った事を話そうと…ひどいじゃないですか。どれだけ私が…」
ミモザは鼻を思いっきり啜った。だってそうしないと喉の奥がつーんとして鼻の奥がじんじんしてそのうち涙が出て来そうだったから。
「すまん。すまん。ミモザさん心配するなと言っておいただろう?」
セルカークは走り寄って来てミモザを抱きしめた。
一瞬の事でミモザの脳内は動揺しまくる。
(もう、早く言って下さいよ。それにいきなりこんなの…もうどうすれば…)
取りあえずセルカークの胸の中にうずまり思いっきり息を吸い込んだ。
なんだ?このいい香りは…高級石鹸のようなかぐわしい匂いが鼻腔をくすぐる。
ミモザはセルカークの胸にぐっと手の平をつくと腕を伸ばす。彼を見上げて恨めしそうな瞳で見上げた。
「先生、お風呂入ったんですか?」
「ああ、兄さんの執務室にはシャワーがあって…えっ?どうした?」
「私なんて心配で心配でそれどころじゃなかったのに!それで容疑は完全に晴れたんですよね?」
信じられないって顔でセルカークを睨んでやる。
「ああ…容疑はすぐに晴れた。押収されたものの中に明らかにうちの診療所で取り扱っていない袋に入った違法薬物が入っていたからすぐに出所が分かったんだ」
「ええ、聞きました。やっぱり先日の物捕りが置いて帰ったんですかね?」
「ああ、きっとそうだと思う。他に思い当たることもなかった。でも、その袋はキャメリオット商会のマークが入っていたんだ」
「ぐっ。またキャメリオット家の仕業らしいですね。まったく私、どれだけ恨まれてるんでしょうか」
「そうじゃないとは思う。実は兄から聞いたが以前からキャメリオット商会には違法薬物の疑いがあってずっと捜査をしているらしいんだ」
「うそ!そんな事信じれません。私今までそんな事に気づきませんでしたけど」
「そりゃそうだろう。ミモザさんも危なかった。離縁していなかったら今頃餌食になってたかも知れないぞ」
「それって…やだ」
ミモザはもしかして義理父はそのような薬を使っていたかもしれないと思うと恐怖でゾクッと震えがした。そして今度はそれを自分に使われていたかもしれないのだ。
「ほんとにあの時先生に出会っていなかったら…」
「いや、実はそのことなんだが…いや、その…言いにくいんだが…自分の気持ちに気づいたというか…あの…いつどうなるかわからないなと思ったら…」
セルカークはいきなり照れて耳まで赤くしている。
「なんですか?中年がそんな赤い顔をするなんて気持ち悪いですよ」
「なっ、でも、こういうことは慣れていなくて…すまん。ミモザさん。………お、俺と付き合ってくれないか…ミモザさんの事がどうも…その‥す、好きになったみたいで…あの、ね、寝ても覚めても君の顔がちらついて、いや、おかしいんだ。これはもうこ、恋煩いって言うか、どんな医者でも薬でも治らないって言う…あのや、病らしくて…」
セルカークは思いっきり噛みながら告白する。
「もう、先生。こんな所でですか?どうするんです。私、どうすればいいんです?こんなのずるいですよ。私だって先生の事好きですよ。でも、許せない所もあって…ああ、もう、私たら何言ってるんだか…ああ、もう、どうすればいいんです。困りますわたし…」
ミモザはシルヴィの時の記憶が蘇って許せない気持ちとミモザになって知ったセルカークへの恋慕との板挟みで、部屋から出てまたしても走り去った。
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