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第一章 転移、そして自立
第九話 俺ってやっぱり廃墟好き
しおりを挟む幸が見つけた多分廃墟だと思われるものだが、蔦やらなんやらの植物で全体が覆われていてその全容がよくわからない。
長い年月で付近の植物が生い茂り、敷地内への人の出入りを拒んでいるようだった。
「これはちょっと中には入れないな」
「私、中に入れるところを探してきます」 と言って、幸は元気にその植物で覆われた廃墟の周りに沿って探し始めた。
しばらくして戻ってきた幸は、「入口のようなものを見つけたのですが戸が閉まっていて、その周りがここと同じような草で覆われていました。
空さんの言うとおり、中へは入れそうにありません」
「一旦出直そう。
ここはじっくり調べてみたいし、今夜にでもみんなに相談して、全員でもう一度ここに来よう」
「分かりました。でも、この後どうします」
「今まで集めた木を持って、窯まで戻るだけさ。
今の仕事は炭を作ることだからな」
俺は幸を連れ、川原の炭焼き釜まで戻ってきた。
釜の前で火の番をしていた葵が、
「幸、遅かった割にはあまり木を持っていないわね」 と、俺らが持っていた木を見て言ってきた。
幸がすかさず言い訳を始めたが、訳がわからなくなってきており、葵にはさっぱり伝わらなかった。
俺が廃墟のことをかいつまんで葵に説明し、初めて葵が納得していた。
それを見ていた幸が頬を膨らませて悔しがっていた。
「だから私が説明した通りじゃないの。
なんで葵ちゃん、わかってくれなかったの。
私は空さんと同じこと言っていたのに……」 と、やや拗ね気味であったが、割とこんなことは良くあるのか、葵はさらっと流していた。
「同じじゃなかったわよ。
幸の説明じゃ誰もわからないわよ」
「葵ちゃんの意地悪~」 とても微笑ましかった。
今日の炭焼きも、もうじきに終わりそうだ。
釜から立ち登る煙の色も変わり、もう火を止める頃合になってきていた。
俺は窯の火を止め、そのままひと晩かけて冷やすだけなので、葵と幸を連れて小屋まで戻った。
既に小屋では張さんが食事の用意を始めていたので、葵が張さんの手伝いに走っていった。
遅れて「私も手伝う~」と、幸も葵のあとに続いた。
本当に仲の良い二人だ。
みんなが集まる食事の時に、今日の出来事について説明を始めた。
そして、明日の予定を変更してもらうよう、みんなに頼んだ。
俺たち3人は問題はなかったが、張さんや珊さんは独自で活動をしていたので、その予定変更をお願いした形だ。
二人共快く応じてくれ、明朝その廃墟?を調べることとした。
翌朝、みんなを連れて廃墟?に行った。
「やっぱりこれは、寺院かなにかの廃墟だよな」
多分、寺院の跡と思われる。
ここから見える屋根のような物の上に見えるのは、寺院の塔の上にあるのと同じに見える。
昨日幸が見つけてくれた扉の前まで来ていた。
扉の前にも草がしっかり覆われており戸を開けることができないことを幸が昨日教えてくれたので、手持ちの大工道具をすべて持ってきていた。
もっとも、俺に力がなかったので、運んでくれたのは珊さんだ。
珊さん、俺がヘタレでごめんなさい。
「これは、すごいわね。
この草をどうにかしないと、中には入れないわ」
「お、お嬢、お、俺、大丈夫、やる、俺やる」 と珊さんが張さんに言っていた。
「張さん、そうですね。
まず、全員で、この草をどうにかしましょう。
俺と珊さんが工具を使って蔦などをどかしますから、どかした草をどこか端にでも寄せて置いてくれますか」
「わかったわ。
全員で協力してやれば、割とすぐにでも片付くかも知れないわね」
すぐに全員で作業にかかった。
俺は、昨日から使っているのこぎりで蔦を片っ端から切っていった。
珊さんははじめノミなどを使っていたが、もどかしかったのか直ぐに直接手で力任せに蔦などを引きちぎっていた。
本当に珊さんは力持ちだ。
頼りになる兄貴って感じで心強い。
小一時間みんなで作業をしていたら、どうにか扉が全容を表してきた。
かなり立派な扉だった。
扉を開けようとしても、なかなか開かない。
どうも中から閂かんぬきがかかっているようだった。
城攻めじゃないが、ここは扉を壊すことにした。
大工道具には大槌も入っている。
それを珊さんが扉の付け根あたりに打ち込み、扉を壊した。
長い年月が経っていたようで、扉もかなり傷んでいたためにさほど苦労もせずに扉を壊せた。
もっとも、珊さんの力がすごかったのもある。
開けた扉から、珊さんを先頭にして周りに気を配りながらゆっくり入っていった。
中に入ると、草に覆われてはいたが皆背の低い草ばかりで、直ぐに全容が分かった。
「ここ、寺だったんだわ。
俺たちが見つけていたのは、やっぱり塔だったんだ」
そこはかなり立派な寺だったと思われる廃墟だった。
俺はワクワクしてきた。
そう、俺が求めていた廃墟だった。
長い年月で朽ちていった建物を俺は廃墟と思っているので、今住んでいる小屋は廃墟でなくボロいだけだ。
廃墟はこうじゃないとね~~。
どうでもよかった。
周りを見渡して感じたが、すごく違和感があった。
この寺の跡だが、かなり立派なものだった。
七堂伽藍までとはいかなかったが、本堂だけじゃなく宿坊と思われる建家もあり、塔もあった。
もっとも京都などにある五重塔じゃなく、二重だがかなり立派なものだ。
草などが生い茂り、蔦なども木のように太くなっている。
建物も放置されて、10年や20年といったレベルじゃなさそうだった。
「こりゃ、応仁の乱あたりから放置されていたのかな。
100年くらいは無人だったみたいだな」
「でも不思議ね。
荒れてはいるけれど、荒らされてはいないみたいね」
「??、どういうことですか。張さん。」
おれは、張さんが言った言葉の意味が理解できなかった。
張さんがゆっくり答えてくれた。
「私の国では割とあるのよね。
野盗や外敵が襲ってきて、略奪の限りをすることが。
そんな時にまっさきに襲われるのが金のある大店か、宝を多く持つ寺院などなんだけれど、襲われたあとはほとんど例外なく火をつけられるか、好き勝手に壊されるかなんだけれど、ここは違うわ。
人が、忽然こつぜんといなくなった後、時間が唯過ぎたような感じかしら」
そうだ。俺の感じた違和感の正体がこれか。
俺の居た時代には、バブル後遺症でほとんど完成間近で開発が止まりそのまま廃墟となったものや、倒産後引き取り手のなくなった建物などがこれに近いが、この時代にはありえないことだ。
ただでさえ物のないこの時代だ。
こんな贅沢が許されるわけがない。
何らかの事情でここを去らなければならなかったが、ここに戻ってくるつもりだったのじゃないかな。
これも理由は分からないが、戻れなくてそのまま忘れ去られたんじゃないかとしか思われないような感じだった。
「あの、多分宿坊だと思いますが、あそこはきちんと片付けると使えそうですね」
「そうよね、ここ、きちんと片付けるとかなり快適に住めそうよね」
「ここを片付けて住みましょう」
「いいのかしら、勝手に寺を占拠して、大丈夫?」
俺は、今考えている。
一つは異常なまでの幸運に。まるで作者の能力不足から来るご都合主義的な展開についてと……、これは考えてはダメなやつでした。
野盗の類に見つかった場合や、土地の権力者に見つかった場合につけられる因縁の類には、我々だけじゃ対処できない。
俺らだけじゃ対処できない……
じゃ~、俺ら以外にお出まし願おう。
そうだ、玄奘さんや上人様に相談しよう。
いっそのこと、玄奘さんにここの住職に名前だけでもなってもらい、一向宗に保護してもらおうか。
でも、一向宗のほかの知らない嫌な連中が来ると、ここを追い出されそうだしな。
どちらにしても、まず整備してから引っ越そう。
今のところじゃ、狭くて住めないし。
「とりあえず難しいことは考えないで、ここを綺麗にして引っ越しませんか。
難しいことは玄奘様や上人様に相談してから考えましょう」
「そうよね、でも、ここきれいにするだけでもかなりの時間がかかりそうだよ」
「当分は手分けをしてここの掃除に今の小屋から通い、綺麗になったら引っ越すのはどうでしょうか」
「空さんがそれでいいなら、私は反対しないわ」
「俺、大丈夫、お嬢と一緒」
「私たちは、空さんの決定に従います」
「当分は食料の確保等に時間が取れなくなりそうなので、出来た炭を持って門前に売りに行きましょう。
帰りに米か麦、もしくはほかの雑穀など食料を買い込んで、ここの整備を最優先で取り掛かりましょう。」
「わかったわ。
じゃ~、明日願証寺に行くことでいいのね」
「はい。全員で向かいます」
その後、全員で小屋まで戻った。
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