名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第一章 転移、そして自立

第二十六話 村の結婚事情

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 ごめんなさい、流石に昨日は使い物になりませんでしたので、今日は昨日の分も合わせて頑張らせてもらいます。
 一昨日おととい寺に帰ったのが日が沈んで少しばかりした時だった。

 既にみんなは食事を始めており、遅れて現れた俺の分をわざわざ張さんは用意してくれた。
 余計な仕事を作って申し訳ない。
 食事の後、俺は、とりあえず、いつもの張さん珊さんと本堂に集まり、清洲での見聞したことを報告しておいた。
 その後、今後について相談を始めた。

 早い話が、今まで、門前で行っている商いを張さんから、別の人に交代させたいのだ。
 張さんの話では、いつも一緒に門前まで行って商いをしてくれている幸代さんが良いとのことだった。
 幸代さんは、最初にここに来た三河の人たちの集まりの中で最年長の女性で、炭の商いではいつも張さんを助けて門前まで行っていた人だ。

 最近では、勉強会でも張さんの手伝いも進んでやってくれる女性で、既に平仮名は完全にマスターしており、アラビア数字も大丈夫とのことで、帳簿もつけられるところまで来ている。

 今我々は、門前での商いしか行っていないが、その商いの規模はさほど大きくはない。
 これから始めようとしている三角貿易のような商いの方が規模は大きくなる。
 後々これらも他の人たちに任せていきたいので、失敗を覚悟で思い切って門前での商いを彼女に任せてみようということになった。

 護衛については、最近は近江出身の男衆のひとりである善吉さんが、三河や近江といった出身に関係なく数人の男を率いて担当しており、なんでも、幸代さんとは最近かなり良い関係だとか。

 そこで、俺は思い切って、いま名前の上がった二人に夫婦になって貰えないかを提案してみた。
 張さんは、ここの頭である俺の判断次第だと言っていたので、三河衆の男で最年長の茂助さんと近江衆の頭を勤めていた与作さんを急遽ここに呼んで相談を始めた。

 二人共、この二人については、薄々気づいていたようで、俺に認めて貰えばすぐにでも結婚させたかったようで、大賛成だった。
 ここで、ついでにみんなに聞いてみた。

 「みんなはどうします?」

 今まで、集団を率いてくれてそんな余裕もなかっただろうけれど、ここに来て、だいぶ余裕ができたので、いっそのこと、大人の方には夫婦になって貰いたいと、俺の気持ちをぶつけてみた。

 張さんと珊さんは全くそんな気はなく、今のままでよいと言っていたが、与作さんと茂助さんは微妙な顔をしていた。
 詳しく聞いてみたら、夫婦にはなりたいが、今までそんなことも考えたこともなく、全く意識していないのでよくわからないとか。

 俺が勝手にペアリングをしてはどうかと言うと、それでも構わないとの返事。
 なんでも、この頃の結婚は誰かに決められ、そのまま結婚するのが一般的だったとか。
 村の多くには、その村の長老や名主、場合によっては、結婚する人の本家筋の勧めという命令に近い格好で結婚するのが一般的だったとか、恋愛結婚もなくはなかったが、むしろ恋愛の方が珍しいそうだ。

 元々狭い社会での結婚なので、仲の良い男女があれば目立つ、そんな様子を見知った村の大人などが結婚を進めることも多く、そんなに悪いことではないようだ。
 今回の場合の善吉と幸代さんの例は上記の例に当てはまるとか。 

 そこで、もう少しみんなと話し合い、門前の商いをこの二人に任せ、しばらく様子を見て、大丈夫のようならば、浜に作った家に二人を住まわせ夫婦にすることになった。
 追々、与作さんと茂助さんにも仕事を任せ、様子を見て結婚してもらう事を約束した。

 結婚の件はこれで一旦は結論が出たが、門前での炭の商いについては、商いの中心人物の住居がここから浜に移ることになるため、仕組みを変えて、浜に炭などの商材を集め、浜から門前に商いに行ってもらうようにしていくことにした。
 なので、浜にあるいくつかの家に、商いに向かう人間を集めるようにしていくことを確認した。

 住居は分かれるが、一日おきにやっている勉強会は引き続きこの寺で全員が集まって参加することにし、住居を分けることにした。
 また、浜の家作りが落ち着いたら、浜と同様に、以前に住んでいたあばら家の周辺にも家を作り、ここには木材と炭焼きのグループの人たちの住居としていくことにする。

 商材が増えていくと、これらどちらかを拠点にして作っていくことにするので、この寺には、幼い子供と俺ら、張さん珊さん、それに葵と幸くらいになりそうだ。
 早く、これらを軌道に乗せ、大人の人たち全員に家庭を持って貰うことを新たな目標とした。

 暫くは、浜と林の中の部落を発展させていくことになる。
 夏過ぎには、寺で作っている芋の収穫も期待できるので、今年は収穫量が足りないが、来年以降は食糧確保の強い味方になる。

 そうなると、またいつもの悩みが擡げてもたげてくる。
 人材の不足だ。
 この件については既に玄奘様は認識しており、上人様には相談済である。
 暫くはお二人にお任せするようにして、様子を見るしかないか。

 ここ拠点での懸案事項?の相談は済んだので、大和での商いについて相談を始めた。
 大和での商いは最低一回は、お城に塩と炭を収めることになる。

 その後は先方次第だ。
 しかし、観音寺城下は楽市楽座なのは確認済だ。
 こちらは商材さえあれば大商いも不可能ではない。
 できるだけ早い段階での商材の確保を急ぎたい。

 大和での商いが1回だけでなく定期的にできるようになれば、例の墨を使っての三角貿易も可能だ。
 帰りには食料や、近江の特産品【……ところで近江の特産品ってなんだ?……】を仕入れ、門前での商いにも使える。

 この時代に商社機能を持った集団にしていける。
 いわば堺の縮小版になることも可能だと俺は考えている。
 それに、観音寺城下は、俺の予想だけれど、若狭や播磨、それに京や堺といった所からもかなりの商品が入っているはずである。

 金額さえ合えばそれらの商品を買って転売も夢ではない。
 ん~~~~、そうなるとゲームでよくある情報のコマンドが欲しくなる。
 相場の情報の入手は絶対に必要だ。

 堺商人は独自ネットワークを持っており、それがあるから転売の商いも可能なのだろう。
 情報入手の仕組みをどうしても造る必要がある。

 今度は無理でも、一度伊賀に行って、例の御仁を尋ねてみるか。
 ダメならば甲賀も行って探してみてもいいか。
 最悪、本多様にも相談すれば、少なくとも伊賀や甲賀に伝でもあるだろう。
 使えるものはなんでも使うぞ。
 
 打ち合わせを終え、明日から大和に持っていく商品の準備に掛かる。
 塩はある程度の量が欲しいので、葵たちに頑張ってもらうとし、それだけでは商いとしては、商品が少ないので、今作っている炭を選別し、良いものを2俵くらいは用意しよう。
 俺は、明日から、すぐにできる炭の手配に入った。

 明朝、炭焼きの釜の前に行き、炭焼きを担当している人に趣旨を説明し、一番良い炭を2俵選別してもらうようにお願いをした。
 みんなは、炭焼きにはすっかり慣れていたので、新たに湧いた仕事でも快く応じてくれた。

 その後、浜まで行き、葵たちに塩の増産をお願いした。
 以前に作った海水の濃縮装置もフル稼働でお願いをし、俺は、また川原まで戻り、塩を入れる壺を素焼きでこさえていった。

 今から作るので、どうしても完成には時間がかかるが、1週間もあればできるかな。
 それくらい時間もあれば塩もかなりの量は作れる。

 既に、門前での商いから張さんは離れており、今は葵たちの塩作りに協力をしてもらっていた。
 珊さんには、引き続き、今度は林の中に家を作ってもらっていた。
 商材が準備出るまでの間は、その仕事の割り振りで進めた。
 
 1週間もの時間を貰い、十分な商材が確保できたので、本多様から貰った手紙を持って、今度は俺らだけで大和を目指した。
 護衛として、珊さんにも付いてきてもらい、彼と一緒に家を造っていた男衆も荷車を引いて貰った。
 当然のように葵と幸も今度は付いてきた。
 
 俺は、今度も商いのまとめ役として張さんにお願いをしているので、大和の様子や、観音寺城下の様子を歩きながら張さんに説明をしていった。

 以前、玄奘様に連れられたルートを通って、俺らは大和の本多様の所に向かった。
 そろそろ梅雨も近づいてきているので、天候だけが今の一番の心配事であった。

 


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