名もなき民の戦国時代

のらしろ

文字の大きさ
33 / 319
第一章 転移、そして自立

第三十二話 我ら三蔵の衆

しおりを挟む


 今後の展開の見通しなどを上人様たちと話していたが、それも終わったので、俺は近くで掃除をしていた子供たちに、寺にいるみんなを本堂に集めてもらった。

「お~い、掃除の途中で悪いが、一旦掃除をやめて、寺にいるみんなを本堂に呼んできてくれ。
 お前らも、それが終わったら本堂で待っていてくれ」

「「「はい、わかりました」」」 と言って、みんな講堂から駆け出していった。

「では、上人様、本堂で結婚の式をやってもらえますか」

「判った、それにしても、めでたいことよな。
 ワシの見立ては間違ってはおらなんだな」

「上人様、それを言うなら、私が保護を始めたのが今につながっております。
 空を始め張さんや珊さんは私が保護をしました」

「玄奘も良う言いよるわ。
 そうだな、全てがめぐり合わせということだな。
 空よ、今後も期待しておるぞ。
 では、玄奘よ、ワシらも本堂に移動するとしよう。
 空、案内を頼む」

「「はい」」 と言って、俺は上人様と玄奘様を連れて隣の本堂に移動した。

 そこにはここで休んでもらっていた3家族の他に寺にいた村のみんなが集まっていた。
 すでに70人近くになっていた。
 これらみんなが村の衆となる。

 人数的にはちょっとした村の人数をそろそろ越える頃だろう。
 他から来ている3家族は集まってきた村人の数の多さに驚いている様子だった。
 俺は、オドオドしているそれら家族に対して、本堂の右端に集め、村の衆をご本尊に正対するように座らせた。
 その上で、今日結婚する善吉、幸代と与作、お菊のふた組を前に座らせた。
 正面に上人様を呼んで、俺は集まったみんなにゆっくりと大きな声で話し始めた。

「仕事中に集めて申し訳ない。
 だが、今から我々にとって忘れられないような行事を始める。
 既に皆も知っているように、前に座っているふた組みの男女の結婚式を上人様に執り行って頂く。
 我々が戦乱などから逃げ惑いここに集ってから、今日まで、生き残ることだけでいっぱいだった。
 だが、それもみんなの協力で、やっと一息を入れることができるようになってきた。
 これからは、我が村のますますの発展を目指して、村に集う者たちが、人として幸せを掴み取るためにこの者達の結婚を私は認めた。
 ここに来て下さった上人様と玄奘様もふた組の結婚を祝福して下さるので、村を挙げてみんなで祝おうと思う。
 では、上人様、よろしくお願いします」 と言って、上人様が簡単なお経を上げた後、ふた組の夫婦にありがたい説法をして下さり結婚式は終了した。

「空よ、結婚式は終わったぞ。
 後は、空の番じゃ。
 皆に説明でもせんか」

「はい、では」 と言って、再度俺は皆の方に向き直り、今後のこと等について説明を始めた。

「皆の衆、もう少し俺の話を聞いて下さい。
 今日の結婚式は、我が村でも家族が持てるような力を得てきた事の表れです。
 ここに集まった人数だけでもちょっとした村などを超えた数の人が生活をしています。
 しかし、我々は更なる力を求めています。
 なぜならば、今まで我々は、戦乱から逃げ惑い、お武家様の理不尽な乱暴を恐れていたが、我々がより力をつけることで、それらを跳ね返せるようになりたい。
 そのためにも、これからは、当分この寺と、林の部落、浜の部落の三ヶ所で、更に戦乱で逃げ惑う者たちの救いの場所として、多くの者をここに受け入れていきます。
 なので、これからは更にここに集う人数も増えていくことになります。
 それで、これから村のあり方を変えます。
 林の部落の頭を与作さんに、浜の部落の頭を善吉さんにお願いをします。
 なので、与作さん夫婦には林の家を与えそこに住んで貰い、善吉さんには浜の家を与えます。
 また、本日から加わる三組の家族はそれぞれの家族ごとに林と浜の部落に分かれて暮らしてもらいます。
 これからは、この寺と林の部落、浜の部落の3箇所を拠点に活動をしていくことにします。
 それで、今後の村の大事に関しては、今名前を挙げた善吉さん与作さんにそれぞれを補佐して頂く奥さんの幸代さんお菊さん、それに茂助さんを加えて、俺と張さん、珊さんの8人で話し合って決めていく。
 今上げた者たちを村方(むらかた)と称し、今後はその村方を中心に上人様や玄奘様に相談をしながら村の運営を進めていくことになります。
 また、そろそろ我々の生活の拠点である村の名称が無いことで、色々と面倒になってきています。
 上人様の勧めもあり、この村に名前を付けることにした。
 『三蔵村』とする。
 この寺と林の部落、それに浜の部落を合わせて三蔵村と称します。
 また、ここの寺の名前も今までわからなかったので、名前が判明するまで、この三蔵を使い『三蔵寺』とすることにしました。
 なので、我々は今後『三蔵の衆』と号することになります。
 明日からの仕事については今の組み合わせと変わりませんが、今日新たに3組の家族が加わりましたので、彼らが参加します。
 彼らは後ほど案内しますが、彼らにも林の部落と浜の部落に家を与え家族で住んでもらうし、我々の仕事にも協力してもらうことになります。
 すみませんが、ここに来てくれますか」 と言って、端で集まって座っていた家族を中央に呼んだ。

 その上で、上人様から彼らについて紹介してもらった。
 全員に顔を見せた後に集まりを一旦解散させた。

「これで、結婚の式は終わりです。
 ここで一旦解散します。
 かねてから準備をしていた宴を準備が出来次第、ここ本堂前でみんなで祝いましょう。
 なので、みんなして手分けをして準備を始めて下さい」

 みんなが俺の宣言で一斉に動き出そうとしていた。
 しかし、本堂の中ではふた組の新婚夫婦が、まだイチャイチャしていたので、俺は彼らを呼んで大事な仕事をお願いした。

「与作さん、善吉さん、奥さんと乳繰り合うのは夜まで我慢して下さい。
 それよりもお仕事をお願いしたいのですが」 と声をかけたら4人とも顔を真っ赤にして、こっちにやってきた。

「村長、で、仕事とはなんだ」 と、恥ずかしさをごまかすようにいつもより声を低くして与作さんが聞いてきた。

「ここにいるご家族をそれぞれの部落の家に案内をして、家を与えて落ち着かせてください。
 家は、既に建ててあるものから好きなのを選んでもらって構いません。
 どうせ同じものですから。
 で、落ち着いたら、また、ここにみんなで戻ってきて下さい。
 宴をここで始めますからね」

「判った村長。
 では、我々に付いてきて下さい。
 持ち物は面倒でも持ってきてください。
 みんなの家に案内するから」 と言って、ふた組の夫婦はそれぞれ担当の家族を連れて部落に戻っていった。

 上人様と玄奘様には寺で休んで頂き、俺は張さんと珊さん、それにいつも付いてくる葵と幸を連れて近くの漁師村に酒の肴を探しに行った。
 できれば鯛と伊勢海老は買いたいのだがあるといいな。

 結論から言うと欲しかった魚は全て入手ができた。
 今日が梅雨の中休みで晴れており、どの家の漁師も漁に出ていたので、魚が豊富に水揚げされていた。
 鯛も伊勢海老も少々値が張ったが、ある程度の数を仕入れ寺に戻った。

 夕方にはすっかり宴の準備も出来上がり、蔵から買い置いていた酒を出して大人に振舞った。
 当然今日仲間入りした3家族の親たち大人にも分け隔てなく振る舞いその夜は村みんなで楽しめた。
 上人様も玄奘様もその日はお泊まりになり、明朝になって願証寺に戻って行かれた。

 流石に宴の片付けは夜にはできずに今日は朝から全員で片付けを行った。
 片付けを終えた後、みんなに集まって貰い、仕事の割り振りを確認し、新たなご家族も仕事に加わってもらった。
 当面は、晴れた日には仕事を行い、雨の日には勉強会を開くという事に成る。
 どうせ、梅雨が明けるまでたいしたことはできないのだから俺は割り切っていた。

 夕方からまた雲行きが怪しくなってきていたので明日は朝から雨が降りそうだ。
 新たな仲間が慣れるまでは俺も勉強会に付き合うことにした。
 徐々にではあるが村が形になってきているのを俺は肌で実感していたのだった。

  

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

処理中です...