名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第一章 転移、そして自立

第三十七話 忍者のお仲間

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 三蔵寺に戻ってきた俺らは、村人全員を集め今回から協力して頂いた伊賀村の方たちを紹介した。
 今回の観音寺での商いの大成功の要因として彼らの活躍があったことを説明して、今後もしばらくは観音寺での商いに協力してもらうことを村人たちに理解してもらった。

 伊賀の3家族と藤林様に百地丹波少年をとりあえず寺の宿坊に案内して旅の疲れを癒して貰った。
 で、俺らは、以前寺の前に門前町を作ろうと林を開いてあった場所に例の三和土もどきを使った簡易ハウスを珊さん達に5軒ほど作って貰った。

 家の準備ができるまでは、観音寺での商いには行けないので、忍者の方に織田信長の動静を簡単に探ってもらった。
 こういった情報の収集はお手の物の様で、観音寺でも驚くほど素早くそれも詳細に正確な情報を探ってもらって大変に助かったのだが、信長の動静については一週間もかからずに調べ上げて貰えた。
 ちょうど彼らのために用意している門前の家も準備ができたので、彼らを家まで案内して、そこで、藤林様と今後について調べてもらった信長の情報を前に相談を始めた。

「藤林様。
 ここに家を5軒ほど用意しました。
 いらして頂けたご家族にそれぞれ1軒づつ入って貰って下さい」

「こんな立派な家を用意していただけるのか。
 助かる。
 しばらくの居候の身で贅沢なことだ。
 空殿、前に命を助けて頂いたのに、また厄介になる。
 ありがとう」

「いえ、こちらこそ、色々と調べてもらっておりますので、気にしないでください。
 それに、私は、皆さんを居候だとは思ってはおりません。
 こちらからお願いをしてご協力願っている訳ですから、これも報酬の一部だとお考え下さい」

 で、俺は、以前に藤林様一行を助けたときには話していなかった事まで、きちんと話し、今後についての相談を始めた。

「この寺は、今まで廃寺でしたが、我々が整備しなおしてここを拠点に暮らしております。
 前の名前はまだ分かってはおりませんが、名前が無いと色々と不便ですから、今は我々ではここを『三蔵寺』と称しており、我々自身も『三蔵の衆』と称しております」

「『三蔵の衆』ですか。
 では、この寺にはご住職はおられないと」

「はい、まだご住職は決まったとは聞いておりませんが、我々が長島の願証寺の上人様に大変お世話になっており、この寺は、外向けには願証寺の末寺として見せております。
 なので、予定ですが、その上人様がここのご住職も兼ねて貰える事に成っております」

「すると、この寺は一向宗の寺ですかな」

「藤林様は、一向宗に何か含む所がおありですかな」

「いや、別に含むところなんぞある訳は無いのだが、唯聞いてみただけだ」

 忍者の棟梁が簡単にその内を見せる訳はないことなど判り切っているので、正直藤林様がどうお考えか分からないが、俺は正直にここのあり方を説明した。

「外に対して、見かけ上は一向宗の末寺の一つですが、我々全員は一向宗徒ではありません。
 我々が行き倒れそうになった時に上人様のお弟子さんで玄奘様という方に助けて貰ってから、願証寺の上人様とご縁ができました。
 しかし、我々は、その一向宗とは少し距離を置いております」

「その理由を聞かせてもらえるのかな」

「そのつもりで話しております。
 その、今の一向宗は色々とキナ臭く、何年か前にも三河で一揆を起こしております。
 長島でも、時節柄危なそうな連中が集まってきており、いつ一揆がおきても不思議のない状態だそうです。
 私も何度も上人様のところにお邪魔した際に感じておりますし、我々の仲間がそれこそ毎日のように願証寺の門前で商いをしておりますから、寺の雰囲気は手に取るように解ります。
 すぐには一揆を起こさないようですし、お世話になっております上人様が必至で一揆を食い止めようと頑張ってもおられます。
 でも、いざ一揆が起こると願証寺に連なる勢力で、中心から離れた者は順に武家勢力に潰されていきます。
 こことて例外ではなく、それこそ織田勢の伊勢侵攻を理由に潰されてしまいます。
 そのため一向宗から本質の部分で離れております。
 このことは先の上人様と玄奘様はご存知です。
 知っており、それでも我々に色々と便宜を図ってもらっております。
 上人様のお考えは誰一人として無駄死にをさせたくないそうです。
 そのための避難所としての機能をここに求めておられます」

「それで、織田信長の動静を調べていたのだな。
 いずれ織田に着くつもりで、準備でもしていたのか」

「いえ、織田に味方するつもりはありません。
 しかし、敵対するつもりもないのです。
 いずれ世の中が落ち着いた折には時の権力者に降るつもりですが、今はどことも関わり合いになりたくは無いのです。
 ここにいる村人は戦の犠牲になって親類縁者、両親や妹や弟なども死んでおります。
 武家の戦に関わって死にたくは無いのです。
 なので、我々は力を欲しております。
 銭の力を持って武家勢力に対抗していきたいのです。
 理想は堺ですが、そこまでいかなくとも地元武家勢力から無理難題を避けられるだけの力が欲しいのです。
 そのために商いを必死でしております」

「ではなぜ、織田の動静を探っているのだ。
 商いの元にでもするのか」

「いえ、違います。
 近い将来、織田勢はここ伊勢に侵攻してきます。
 既に織田信長様のご家臣である滝川様が調略にあたっているそうです。
 いざ侵攻が始まったら、ここなどどうなるかわかりません。
 逃げるにせよ、織田勢に降るにせよ情報が無いとどうすることもできずに蹂躙されます。
 そうならないために情報が欲しいのです。
 頼んでいたのはそのためです」

「空殿の言われていることは理解した。
 で、今後も我々には情報を集めて貰いたいというのだな」

「はい、藤林様には織田に限らず、色々と情報の収集を手伝ってほしいのです。
 今後もお願いできますか」

「堺を目指すとな、大きく出たものだな。
 でも、空殿が言うことを聞いていると戯れには思えない。
 ……
 相分かった。
 ワシの全力で空殿に協力を致そう。
 …
 でも、今の勢力ではちと心細いな。
 空殿。
 もう少しワシの仲間をここに呼び寄せても良いかの」

「そうしていただけるのならば大歓迎です」

「空殿は、ワシを全く警戒しておらんが大丈夫か。
 大勢を呼び寄せここを乗っ取ることもできるのだぞ」

「その時はその時です。
 もしそうなれば逃げ出せば良いだけですから。
 でも、そうは成りません」

「なぜ、そう言い切れる」

「私が藤林様を信頼しているからです。
 以前に上人様からも同じようなことを言われましたが。私の信条ですと答えておきました。
 それは、誠意には誠意で応えるという至って当たり前の事なのですが、先の商いからの藤林様の誠意に私の全幅の信頼を持って応える誠意でお応えしました」

「……
 これは、ワシの完敗だな。
 本当に空殿は10歳か。
 見た目はそのままだが、とてもそうとは思えない。
 ……
 村長、この藤林、全力で長の野望にお応えしよう。
 すぐには無理だが、近いうちに仲間も呼ぶとしよう」

「ありがとうございます。 
 是非によろしくお願いします。
 ……
 で、今後の生活の件ですが、今までは此処では全員が寺に集まって生活をしていたので、食事も寺で一緒に頂いておりました。
 しかし、ここも大きくなってきており、数家族ではありますが独立した家族が生まれておりますので、今後については、孤児についてはそのままですが、ご家族については扶持を村から出す格好でお願いします。
 額については金銭と食べ物を合わせたものを考えております。 
 将来的には、銭で全てを賄えるようにしていきますので、暫くはご容赦願います」

 その後、藤林様には残り2か所の部落を案内して、今の村の実態を説明していった。
 当然、新たに仲間に成ったので大人には評判の悪い勉強会にも参加して貰った。

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