名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第二章 国取り?

第四十九話 新たな仲間

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 怪我の功名と言えば言えなくもないが、先の嵐の被害において、隣部落が我々三蔵の衆と合・流・してくれる事に成った。
 これにより、予てからの問題である干物の増産における目途がつく。
 隣部落の合流で漁業に強化のための方策がとれる。
 将来的には、海運にも進出していける希望も出てきた。

 そればかりでは無く、最も大きな変化として、今まで隣部落に鳴りを潜めていた九鬼様の一党が今後は我々と行動を共にしていくことになった。
 これは、我々三蔵の衆が唯の商人から、大きく変わることのきっかけとなる。
 既に九鬼様とは話がついているが、遅くとも来年の春までに九鬼様には志摩国を領してもらう。
 我々三蔵の衆が今から全力で九鬼様をサポートして準備を始める。

 そのためにも、まずは被害の出た村の復旧を始めなくてはならない、が、その前に、この度我々に合流してくれる隣部落について皆に説明をしなければならない。
 翌朝、皆々がそれぞれの被害の出たところに向かうところを呼び止め、本堂前に集まって貰った。

 隣の部落の方たちについては、既に龍造さんから三蔵の衆に吸・収・されることが説明されていたために本堂前に集まっていた。
 その顔には、我々に吸収されることへの後ろめたさからか諦めと、冬を無事に越せる事への安心とが入り混じったような雰囲気を浮かべていた。

 俺は、龍造さんと一緒に皆の前に立ち、説明を始めた。

「朝一番で出ばなをくじく形になり申し訳ない。
 皆に報告することができたので、まずは聞いてくれ。
 此度の嵐では我々に大きな被害が出た。
 特に浜は壊滅的と言っていいほどだ。
 同様に日頃から我々に良くしてくれる隣の部落にも大きな被害が出ていた。
 なれば、復旧は一緒にできないかと考え、ここにいる龍造さんにお願いを申し出た。
 龍造さんは、私の申し出を快く応じてくれた。
 そればかりではなく、なればこれからは一緒に我々を導いてくれると言うのだ。
 なので、これから復旧工事をする浜であるが、隣の部落の方と一緒に一から新たな村を作っていくことになる。
 若輩ばかりで経験の少ない我々にとって、人生経験の豊富な先輩方の多くいる隣の部落の方と一緒に新たな村を浜に作ることになった。
 そればかりか、新たに作る村の長も龍造さんが引き受けてくれる。
 また、三蔵の衆の村方にも成って下さる。
 まずは、ここで感謝しよう。
 我々の村は、他の集落とは色々と勝手が違うことも多く、みんなも最初は戸惑っただろう。
 今から我々に合流してくれる隣部落の方も同様だ。
 なので、復旧作業は我々が主体的に動くが、一緒に作業をしてくださるので、その時にでも、習慣の違いなどを説明してほしい」 と言って説明を始めていった。

 最初の諦めの漂う雰囲気が変わっていくのが分かった。
 中には驚きと涙を浮かべている人までいるくらいだ。
 そもそも、村人は三蔵の衆に吸収されることを聞いていたので、奴隷のように働かされることを覚悟していた人もいたそうだ。
 それが、人生の先輩として遇していこうというのだから驚くのも無理もない。
 そこで、改めて新たに加わる人たちに向かって俺は話をつづけた。

 「我々三蔵の衆が最近大きく力を付けているのには、理由があります。
 当然、皆のなじみのあることばかりをやっていてはここまでこれませんでした。
 我々は、他とは色々と違い戸惑いも出るでしょう。
 でも、そこはまず慣れてください。
 皆様にも変わっていただく事に成ります。
 でも、何か変だとか違うと感じたら遠慮なく申し出てください。 
 ここでの長はガキである私ですが、私がここまで皆を率いてこられたのも村方をはじめ多くの方の協力とご意見を頂いたからに他なりません。 
 無理強いはしませんが頑なに変化を拒んでもいてほしくはありません。
 みんなで新しい物を作り上げていきたいのです。
 是非ご協力をしてください」 と言って元隣部落の方たちに頭を下げた。

 龍造さんが慌てて俺を止めたので、直り、皆に作業を止めたことを詫びて復旧作業にあたらせた。
 当然新たに加わった人たちは龍造さんに連れられて、浜に出ていった。

 俺は、被害の出ていなかった家を境に、これよりも海側には家を作らせないように指示を出し、早速三和土を使った竹筋三和土鉄筋コンクリートの家の増産に掛からせた。
 龍造さんには材料となる貝殻を村人に集めて貰った。
 残りは竹林に入り竹の切り出しに掛かった。

 九鬼様たちは船乗りだけあって力があるので、林の邪魔な木を処理して貰っていた。
 この辺りに今ある数軒の家の他に20軒ばかりの家を建てなければならない。
 幸いに材料は浜で拾えばよく、俺は三和土を作るための竈を浜に作った。

 復旧は順調に進んだ。
 何より人手が今までとは段違いにあったのがその理由である。
 また、家造りも既に皆慣れてきており、作業にかかる時間もどんどん短縮されている。
 林の部落に被害が出てなく、見積もり通り翌日には作業を終えていたので、今では三蔵村全員で浜の復旧に当たっている。

 珊さんには、浜の村の飲み水対策として、泉からの水道橋を作って貰っている。
 今まで使っていた竹で出来た樋では、一挙に増えた人の需要に間に合いそうになく、それでなくとも先の嵐で完全に壊れており、一から作り直さなければならなかったので、ここは時間をかけて、しっかりした物を作ることにした。

 今では三蔵村万能の三和土を使ってU字溝のブロックを作り台座もブロックを積み上げ固めていった。
 まるでローマ遺跡のミニチュア版といった物ができていった。

 だいたい2週間で浜に立派な村が出来上がった。
 今ではこの村に住む者の全員が浜の家に住んでいる。
 次は生活の糧を得る算段をつけねば、と言っても、すでに決まっており、まずは漁業の再開だが、道具の類をすべてを失っていたので、俺は龍造さんに相談を始めた。

「龍造さん。
 漁の再開ですが、道具を揃えないといけませんが、お願いがあります。
 地引網での漁をしてみませんか」

「地引網?
 どういう漁かね」 と聞かれたので俺は簡単に説明をして、そのための道具の類は俺の方で揃えることで合意して貰えた。

 浜の男衆には与作さん達と一緒に海に出れるようにボートサイズの船を作って貰った。
 俺は、張さんと珊さんに地引網を作るための丈夫な紐?綱?を大量にそろえてもらうようにお願いをした。
 桑名だけじゃ揃えそうになく、津島か最悪観音寺まで出張ることになりそうだが、快く応じて貰った。

 で、俺はと言うと、早速新たな船の実験として、竹を束ねて竹船を作っている。
 13~14歳のまだ大人になり切れていない連中を集めて一緒に作っている。
 今回はヨットのような三角帆の実験も兼ねるので、船には転覆防止のアウトリガーも作っている。
 当然マストもブームも竹製である。

 帆については困りものではあるが、とりあえず実験と言うこともあって、青苧を観音寺で大量に仕入れ女衆の協力を仰ぎ重ねて丈夫な帆を作った。

 船は竹で作るので簡単に作れてしまい、横で浜の男衆が一生懸命に作っている船よりも早く完成を見た。

 素人の俺が実験するにはあまりに危険だというので、九鬼様に協力を仰ぎ、俺はこれもまた竹で救命胴衣を作り着込んで一緒に乗り込んだ。
 当然最初からうまくいくはずはなく、転覆防止用のアウトリガーが横風をはらんだ帆による力を受け止めきれずに簡単に折れ、船は横倒しになった。
 出航してすぐの事なので海はまだ足の立つくらいの深さだったこともあり簡単に船を回収できた。

 アウトリガーの強度問題と言う課題を貰い、その研究に時間を割いた。
 横風での強度問題だということで、船を海には出さず、浜に置いた状態で横風を受けて実験を繰り返した。
 ついでに、帆の扱いの習熟も兼ねてできたので、ある意味、最初の失敗は良かったのかもしれない。

 次に、満を持しての実験を行ったときには風をはらんで疾走する船は気持ちが良かった。
 向かい風も、今の日本の船では無理であったのが、そこはヨットの原理を生かした設計なので、風上も45度くらいまでは進める。

 既にこの船を使えば漁もできそうなので、地引網の完成を待って地引網漁を始めることにした。
 この船の操船は九鬼様の一党に任せ、帆の扱いの習熟に当たって貰った。
 近い将来の海戦に備え、風さえあれば潮の流れに関係なく操船できるのが強みになる。

 大型のヨットをきちんと木材を使って作る必要がある。
 小早船クラスのヨットを少なくとも10隻は用意したい。
 そのための実験を重ねていくことで、九鬼様も了解してくれた。

 何より、風に乗って疾走するこの実験船をたいそう気に入ったそうだ。
 俺は、当分は浜に入りびたりだな。
 塩の生産設備も作り直さなければならないし、干物も漁が再開したらすぐにでも始めなければならない。

 まだまだ前途多難でやることがいっぱいだ。

 
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