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第二章 国取り?
第五十話 村の復興
しおりを挟むあれからひと月が経ち、浜はすっかり姿を変えていた。
以前数軒だった浜には同じ構造の家だが、今では20軒以上が整然と立ち並び、林の奥の泉から引いた水道橋の終点である場所には共同の給水場が整備された。
浜では、塩作りのための大掛かりな装置までできており、今まで以上の効率で塩を生産していった。
そう、浜はかつて見たこともないくらいに活況を呈していた。
そろそろ村全体で日常に戻さなければならないところまで来ていたが、まだ、村を挙げて浜の整備に全力を掛けて行っていたために、日々新たなものが浜に生まれていたのだった。
与作さん達林の部落の人たちも、女性たちは焼き物作りに戻り、ほぼ日常の生活を取り戻していたが、男たちはまだ、浜で船の製作の手伝いを行っていた。
具体的には、かつて用意していた木材を使って船造りのための板材や角材をせっせと作っていた。
ボートサイズではあるが浜の一号は2週間ばかり前に出来上がり、今では近海で漁に出ている。
そう、浜での漁業も大きく様変わりをしたのだった。
浜一号の船と、俺が以前実験船として作った竹製のヨットもどきを使って、今では地引網漁をしているのだ。
早朝に船を使って沖合に仕掛けた網を、昼前に村の全員で網を浜まで引いてくるという地引網漁だ。
これがことのほかうまくいったのだった。
今までの最盛期の3~5倍は常に捕れたのだから、浜のみんなが驚いていた。
捕れ高が大きいと、その後処理も大変だ。
浜の女衆総出で、捕れた魚を急ぎ捌き、腐らないうちに干物へと作っていく。
最初こそドタバタとしていたが、今のところ問題なく処理されていく。
かつての懸案だった干物の増産も、どうにか対応が取れた格好になった。
かつての3倍は市場に回しているので、今まで感じていた増産への圧力は弱まってきてはいるが、余裕ができるとうちも欲しいと八風峠の方でも要求が出てきた。
観音寺での知名度が上がるにつけ、徐々にではあるが、売り上げも向上してきており、直にいつぞや以上の増産要求が出てきそうだ。
追々とそれらのことも考えていかなければならないが、まずは村を日常生活に戻していくことを考えていく。
与作さん達には、木材の生産に本腰を入れて貰い、林の部落の特産品として、生産してもらう体制を作って貰う。
当面は自家消費となるが、九鬼様一行のための船の準備もしていく。
三蔵の衆も以前とは考えられないくらいに大きくなってきており、管理面でも大変だが、一番最初から村の連中に嫌われながらも進めていた勉強会の成果が出てきており、古参連中は、読み書きも難しい言い回しを除き問題ないレベルになってきた。
それに早くから仕事を明確に分けリーダーに任せていたのが功を奏し、今では生産や販売に関してはそれぞれのリーダーに任せきることができるまでになった。
なので、報告の類の処理は必要だが、俺がかかりきりになることが少なくなってきている。
復興に目途が立ったので、そろそろ村の生活も日常に戻す段階になり、俺は完全に今の商売からは手を放し任せることにした。
で、俺はと言うと、そろそろ次のステップに入る。
我々の安全のために、九鬼様に大名になってもらうための準備に入る。
そのために俺は、まだまだ浜に入りびたりの生活が続く。
当面の目標として、実験段階のヨットの実用化と、その船を使った運用試験、それに今後のために堺との航路の設定をする。
堺との海運は、途中に志摩の国があるために、そこを押さえないと商業ベースで使うにはあまりにリスキーだが、九鬼様が戦に臨む際に傭兵の確保のためにも早急に堺とのルートを確立したい。
急いては事を仕損じるの例えではないが、一歩づつ焦らずにやっていく。
何はともあれ、ヨットの技術の確立が急務だ。
帆の扱いの修練は実験船の竹船ヨットで漁も兼ねて行ってもらっているので、俺は、きちんと船としてを作っていくことになる。
船造りには慣れている九鬼様のところの若い衆も幾人かを借り受け、与作さんのところで生産している木材を使って船を作り始めた。
南蛮の船のようにキールのある船を作るのは九鬼様の所では全くの初挑戦で、慣れた和船とは構造が全く異なり、最初から悪戦苦闘の連続だ。
俺は完成形こそうろ覚えであるが知っているレベルで船の作り方など知る由もない。
そもそも和船すら作り方など知らないのだから、割と今の苦境も苦痛には感じていないが、九鬼様の所は違い、かなり苦しんでいた。
俺は、最初からうまくいくはずもないので、失敗は何度しても大丈夫だと、彼らにそれこそ何度でも言っている。
それでも、元来からのまじめな性格からか、失敗するたびに彼らは相当に凹んでいた。
そんなこんなの状態がすでにかれこれ2週間も続いている。
実際に彼らに南蛮の船をじっくり見せられれば良いのだけれど、見たこともない物を作り出す難しさをひしひしと感じていた。
彼らの気分転換も兼ねて、たまに実験船の竹船ヨットの修理などもしていた時に俺が一つの事に気が付いたのだ。
この船は、キールなどと言うような立派なものはないが、同じような造りで、船首から船尾にかけて中央に太目な竹を渡していたのだった。
俺が作るときに何となく覚えていた船の作りに似せて作ったのだから当たり前なのだが、これをみんなに見せながら俺が説明を始めたら、彼らも、なんとか朧気ではあるがイメージが持てたようだった。
もう一度、最初から作り始めたら、やっとどうにか形になるようになってきた。
この調子で、最初は帆のないボートを作ってみた。
さすがに船造りに長けた彼らだけはある。
イメージが持てたら、割と簡単に形だけはできてきた。
海に浮かべて試してみると、当然のように海水が船の中に入ってきた。
辛うじて浮かんでいる状態だ。
ま~、船造りで、水漏れの無い様に作るには技術が必要なのだが、我々にはある筈もなかった。
でも、俺は何とも思ってはいない。
水漏れするようならば、水漏れする部分をふさげばいいとばかりに船を回収して、ひっくり返し、乾かしていた。
「頭~、また失敗しましたね。
この構造だと、水漏れの防ぎようがありませんぜ。
どうしましょう。」 と、若い衆をまとめている一人が俺に言ってきた。
「なに、ここまでできれば御の字だ。
水漏れは大丈夫だと思う。
板と板の間を何かで塞げば良いだけだ。
膠(にかわ)を使ってどうにかしてみよう。」 と言って、俺は張さんに膠を大量に仕入れて貰った。
それを浜で煮詰めて、それに木材つくりで出る大量のオガクズを入れ、簡単なシール材を作った。
それを乾かした船のそこに塗手繰り、乾かしていった。
乾かした状態では船のそこは膠で作ったシール材が凸凹を作っていたので、手斧などを使って、きれいに均して、再度海に浮かべた。
今度はばっちり成功して、水漏れが無くなった。
耐久性で問題が出ると大変なので、とりあえず近海で漁に使ってもらい、実験を重ねた。
実験の結果が出るまで遊んでいるわけにはいかず、今度は帆を付けた船を作り始めた。
大きさは、先の船の1.5倍程度である。
いきなり大きなものを作るだけの技術の蓄積が無いので、徐々にではあるが技術の蓄積を兼ねて大きく作っていく。
今度は、水に強い漆うるしも使って、表面をより滑らかに作ることにした。
漆が表面を覆っていれば、水に抵抗が少なくなるばかりか、水の侵入も防げると考えたのだ。
もっとも、大きな力が加わるので、ひび割れなどで水は侵入してくるだろうが、実用レベルで使用に耐えれば良いだけだ。
なので、これから作る船がこの村で作るヨットの1番艦となる。
漆は林に自生しているので問題ないが膠は買う事に成る。
かなりの出費だが、幸い商いは順調でこれくらいは問題ないレベルだ。
それに、峠に作った部落に伊賀の方も多く移り住んできた。
彼らの中に山で猟に長けた人たちもいるそうなので、その内に膠の内製も頼もう。
すぐに大型のヨットを10隻以上作らなければならなくなるのだ。
まだまだ入用な物が沢山ある。
しかし、今は技術の確立が大事だ。
次の1番艦をきちんと作り上げていくのが俺の仕事だ。
俺は、九鬼様の所の若い衆と一緒に船造りに悪戦苦闘を続けた。
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