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第二章 国取り?
第五十七話 港の喧騒
しおりを挟む今、俺たちは2度目の堺を堪能していた(ただし彼女たちだけが)。
堺の町は物で溢れていた。
現代日本においては割と当たり前だった光景なのだが、この時代に来てからと言うもの町には物がない。
人もまばらで、ちょうど日本の限界集落のような光景をよく目にする。
何度も俺は、物のない時代で痛い目にあっていて、ようやくこれらの光景に慣れてきたのだが、ここ堺は違っていた。
周りには人人人だらけで、渋谷の喧騒を思い出すくらいだった。
109は無いけれども、それでも活気と物で溢れている。
俺らは、連れ立って物で溢れている堺の町をぶらぶらと買い物をしながら楽しんでいた(ただし彼女たちだけが……)。
「あら、何かしら?」 と急に張さんが足を止めて、船を止めている波止場の方を指さした。
ただでさえ人で溢れているこの町でも、更に多くの人が足を止めて集まっている。
時々怒鳴り声のような大きな声も聞こえてくるが、意味は全く分からない。
スペイン語のような感じのする言葉も聞こえてくる。
「何か揉めているようだな。
行ってみるか」 と言って俺らは波止場に近づいて行った。
人をかき分け問題の中心の方に近づくと、安宅舟の船頭や船大工と思われる人と、これも派手な格好をしている西洋人?の人とが完全に怒鳴りあっていた。
しかし、見ている限り言葉が通じていないようなのだ。
問題の西洋人が俺らの船を時折指さして何やら大声で訴えている。
俺は張さんの方を見ながら聞いてみた。
「あの外国の方の話している事が分かりますか」
すると張さんはにっこりしながら 「はい、だいたいですけれど分かります。
どうも私たちの船を買いたいようなのですよ。
どうしますか」
「この混乱の原因が我々なのならば、出ていかざるを得ないな」 といって、俺らはそのまま前に出ていき張さんに通訳を頼んだ。
「コンニチハ、カピテン(船長)さん。
ドウシマシタカ?」
「オ~、アナタハ私ノ話すコトガ理解デキルノデスネ。
助カリマシタ」
「デ、ドウシマシタカ?」
「セニョリータ(お嬢さん)、アノ船ノカピテン(船長)ヲ知ってイマスカ?
知ってイルノナラバ教えてホシイノデス」
「空さん、この方は私たちの船の船長を探しておられますがどうしますか」 と張さんがポルトガル人の船長の通訳をしてくれた。
その後、その船長と張さんの通訳を挿んで会話をすると、どうにも先の嵐で彼が乗ってきキャラベル型と言われる船がかなりの被害を受けており、そう簡単には治りそうにないとのことだ。
彼は、ここ極東とインドのゴアとの間の連絡を担っている郵便船の船長で、急ぎゴアまで戻らなければならないのだが、今の船では戻れそうにない。
修理しようにも修理出来そうな所が無く、困っていたところに我々が入港してきたのが見えたので、船長に交渉をしたいとのことだった。
我々の船のすぐそばに彼の乗ってきたキャラベル船が停泊していたが、『ぼろい』の一言で片付く状態だった。
あれをどう直せば治るのだというくらいの酷さだったのだ。
船長の話では船齢50年を超えているとのかなり年季の入った船だそうだ。
詳しく聞いてみたら
型式 キャラベル
製造 リスボン造船所
船齢 53年
全長 22m
船幅 6.2m
マスト 2本
船員 総員42名(現在 21名~21名は病死や嵐での被害により死亡扱い)
武装 カルバリン砲 20門
積み荷 郵便他
だいたいこんな感じだった。
聞いていてメモを取っていたら懐かしい大航海?時代を思い出すような内容の船だった。
船長は積み荷と自分たちを運んでほしそうなのだが、あまり持ち合わせがない。
ゴアに着いたら少しはどうにかできそうなのだが、確約はできないが、助けてほしいとのことだった。
話を聞いて俺はあることを閃いた。
船を武装毎交換できないかと言うことだ。
そうすれば、今の我々の懸案だった武装、それも西洋のカルバリン砲が20門手に入る。
おまけに船の構造も勉強ができるので、我々に合わせた大型の船を作れるようになるかもしれないのだ。
もっとも、このキャラベルはこの時代の基準でも中小型に類するものだが、それでも俺らにしたら十分に大きい。
そこで、張さんにお願いをして交渉をして貰った。
流石に大店の娘で、今まで我々の商いの親分をしていただけあって、かなりえぐい交渉をしているようだった。
見る見るうちに船長の勢いが無くなっていき、どうにか交渉が成立したようだったのだ。
妥結した内容としては、キャラベル船を我々の地元に運んでもらい、そこで交換する。
交換するのは、船に残った備品類も含める。
ただし、本来の目的である輸送品(郵便他)や船長個人の持ち物を除く。
海図やコンパス、六分儀など外洋操船に必要備品は船長の買取とし、金貨10枚で返却することとする。
積んである食料や水などは金貨~と言ってきたので、流石にこれはそのままお返しするということで俺は条件を下げた。
船長はそれだけでもかなり喜んで何度も俺に握手を求めてきた。
聞いていて俺でも引くくらいの内容で良く妥結したものだと思った。
大砲については堺から出たら試射を行いその上で支払い金額を決めるということで俺も承認した。
船齢もそうなのだが、搭載しているカルバリン砲も最新式は鋳鉄製の物だそうだが、これは30年も前に作られた青銅製の物だそうだ。
俺も確認させてもらったが、状態は良さそうなのでまともに撃てれば良しとした。
船長は急いでいるようなので、俺らは早速2艘連ねて堺を出た。
俺と九鬼様はキャラベル船に乗って、向こうの航海長や掌帆長、操舵士は俺らの船に乗り込んで、船の操船について調べていた。
キャラベル船はかなり被害が出ており酷い状態なのだが、流石に長く外洋に出ているためにキャビンはしっかり作られていた。
俺らは船長室に案内されていたが、外洋に出て、操船に余裕が出てくると甲板に出て操船の様子を確認していた。
途中で試射を行ったが、ものすごい音とともに俺としては申し分ないくらいの性能を持っていた。
これならば、音だけでも敵さんを圧倒できそうだ。
もっとも俺らがこの音に慣れなければならないのだが、弾と火薬は十分にあるが練習するとなると怪しくなる量だ。
火薬は鉄砲と同じようなので入手可能なのだが、砲弾となるとそうもいかず、これも要検討課題となる。
今後の運用については分からないのだが、志摩での戦は最長でも1週間で片づけないと外野からの騒音がうるさくなるので、手に入れた大砲は全て使うつもりだ。
俺らが乗っているキャラベル船も本来ならばかなりの快速船なのだが、船体も古くかつかなりの痛みにより、船足は遅く、すぐに置いていかれた。
場所は分かっているので、急がなくとも着けるのだが、途中で沈まないかだけが心配だった。
そのあたりは船長は大丈夫と太鼓判を押してくれたのだが、この船足の遅さが致命の様で、外洋航海では使えそうにないために、今回の商談に至ったわけだ。
でも、近海ならなまだ十分に使えるとも言ってくれた。
もっとも使うつもりなど無いのだが、本拠地傍の田城城周辺を抜ける時にだけ気を付けて夜になるのを待って通過した。
翌日俺らが本拠に着いた時には先着していた連中が内海で操船の練習をしていた。
俺らが到着するとすぐに積み荷の載せ替えをしながら、簡単にキャビンの製作も行った。
2日程ポルトガル人は滞在して、外洋に出ていった。
俺らは、順調に装備まで手に入れ、準備を着々と進めていった。
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