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第二章 国取り?
第五十八話 造船の技術
しおりを挟む村には先に2番艦が帰ってきており、我々は1日遅れて村に帰ってきた。
2番艦に乗り込んでいたポルトガル人は2番艦の性能には満足していたようだが、居住空間があまりに貧弱で、これでは遠洋の航海には耐えられないと乗り込んだポルトガル人全員が言ってきた。
そこで、我々が浜に入港するや早々に2番艦の再艤装の必要性を訴えてきた。
俺はすぐにでも許可を出そうとしたが、そこに張さんの待ったが掛かった。
誰が再艤装するのかと言う事と、そのための費用はどこが出すのかが決まっていないとの事だった。
すぐに張さんはポルトガル人船長を捕まえて協議に入った。
結論から言うと、部材と人手は村が全面協力をし、必要な木材等も村から出すが、その対価として船長から金貨で20枚を受け取ることで話は付いた。
すでに再艤装のために2番艦は浜に上げられており、近くに材木などの部材も用意されていた。
3番艦の製作に掛かっていた連中も一旦手を止めてポルトガル人の船大工の指示に従って工事に掛かった。
残りの手隙の連中も総出て乗ってきたキャラベルも浜に上げて中の荷物を全部浜に出していった。
浜に作ったクレーンを使っても大砲の搬出には苦労した。
とにかく重いのだ。
これには参った。
半分も船の外に出さないうちにクレーンは壊れたのだ。
強度を上げて作り直してから、積み出しに掛かったのだが、結局全部降ろせたのは1週間も後の事で、その頃にはとっくにポルトガル人は此処から出ていなかった。
船長用のキャビンの奥にまだ真新しいマスケット銃が10丁も出てきたのだが、これは積み荷なのか備品なのかそれとも船長の個人的な持ち物なのかが分からない。
でも、既にポルトガル人がこの場にいないので備品として扱い、ありがたく頂戴した。
使い方などはいずれ雑賀党の人にでも聞けばよいので、村の財産としていずれ伊賀衆にでも預けよう。
話を戻すが、とにかく村に着いてからポルトガル人が出航するまでの2日間は忙しかった。
2番艦の後部にもう一段高くした後部甲板を作り、その下に船長用のキャビンを作っていった。
また、奥部甲板上にはあのカリブの海賊などでお馴染みの舵輪を取り付け、船の舵そのものを取り換えた。
また、舵輪の周りには、遠洋航海に必要な海図台や羅針盤などを取り付け、カンテラなども周りに配置していった。
だんだん俺のよく知るカリブの海賊に近づいて行った。
子供のころによく連れて行ってもらったネズミの帝国の海の国にある船で遊んだ記憶がよみがえり、何だか嬉しくなったのを覚えている。
俺も、再艤装には付き合って手伝っていたので、最終日には船大工とかなり親しくなっていた。
もっとも張さんの通訳付きだが……
で、その船大工がこぼしていたのだが、船板が一枚なのが気に入らないとのことだった。
このサイズならばあちら(ヨーロッパ)でもなくはないのだが、これ以上の大きさの艦になると間違いなく舟板1枚はあり得ないとのことだった。
通常の遠洋航海に出る船は2重構造になっており、間にたまったビルジを定期的にくみ出すそうなのだ。
それがこの船には無いので、かなり心配なのだが、この船は新造船でもあり、また、彼ら(ポルトガル人)の知らないような加工がされていて、信じられないくらい浸水が無いのが救いだとか言っていた。
今作っている3番艦はそのまま作り続けるが、それ以降に作る4番艦以降については手に入れたキャラベルの構造も勉強して国際標準にも耐え得る船を作っていこうと思った。
船大工が言うにはこの2番艦の船足の速さが素晴らしく、彼らが知っているどの船よりも高速だとか言っており、ルソン(今のフィリピンのマニラ辺り)までは1週間も掛からずに着きそうだと言っていた。
短い時間だったが色々と教えて貰い、俺らにとってはかなり為になった今回の出来事だが、ポルトガル人もほぼ只ただで新造船が入手できたので、かなり喜んでいた。
もっとも最後まで船長は張さんを見ると怯えていたのだが、あんなにきれいな人を見て怯えるなんて失礼な人だ。
何だか彼らはまたここに来そうな雰囲気を出しながら去っていった。
今回の出来事で、俺らは、懸案事項の武器の調達がこれ以上にないくらいにうまくいった。
既にヨーロッパでは旧式になってはいるが、いまだに現役の大砲が20門と弾薬100発以上、それに新型と思しき未使用のマスケット銃10丁、それ以外に船齢が50年を超えているとはいえ現役のキャラベル型の船が一艘を手に入れた。
もっとも、このキャラベルは解体されるだろうが、我々にはヨーロッパの造船の技術を学べるのが大きい。
将来的には造船業だけでもやっていけそうだ。
一時中断していた3番艦の製作を再開させ、俺は、九鬼様と一緒にキャラベル船の構造の研究に入った。
浜は日ごとに寒くはなっているが、この辺りは真冬でも作業はできるので、暫くは造船に力を入れていく。
それに、ばらばらに逃げて各地に散らばっていた九鬼様の配下の人たちも日を追うごとに浜に集結していって、志摩の奪取の機運は日増しに高まっていった。
12月も半ばに差し掛かろうとするころには製作中の3番艦の進水も迎え、今は艤装に入っていった。
船首と船尾に手に入れた大砲を据えられるように艤装をしている。
3番艦は2番艦同様に船尾に船尾甲板も作り一応遠洋航海に耐え得るような造りにしてある。
当然、船尾甲板の下に船長室も作ってはあるが、今の俺らにはちょっと贅沢で使えそうにない。
今後は堺への商いに何度も航海をしている1番艦に代わりこの3番艦が堺への航海をしながら操船や艤装の確認をしていくことになる。
浜では4番艦の製造に掛かっていた。
さんざん悩んでは見たが、4番艦も今までと同様の作りで作ることにした。
来年の春はすぐそこにまで迫ってきているので、冒険はふさわしくないとの判断によるものだ。
その代わりに1番艦の再艤装や、新造艦の製作などは俺が、今まで一緒に手伝ってくれている子供たちを使って、大勢に影響の出ない範囲でと言うか俺の遊びで作ることにした。
まず簡単にできる事からと言うことで1番艦も再艤装して、船首と船尾に甲板を作りその下に倉庫とキャビンを作った。
この時に、素材の研究も兼ねて甲板部分は薄板の合板を使ってみた。
木材加工で色々と余った端材を薄板状にしてとにかくたくさん作り、膠を接着剤代わりに使い、薄板を張り合わせて合板を作っていった。
強度確保のために甲板下部には梁として竹を用いたが、目論見通りかなりの軽量化に成功をした。
また、ビルジ(船倉にたまる水)ポンプを作ってみた。
これはアルキメデスポンプをそのまま使い、動力として風力発電に使われることの多い縦型の風車を使って半ば自動化のポンプを作り設置した。
もともと1番艦も水漏れは殆ど無く、船倉にたまる水と言えば高波を受けての海水の甲板からの侵入位なのだが、これも嵐には船を出さなかったので、ほとんど溜まってはいない。
これでは実験にもならないので、柄杓で海水を掬い、船の中に入れていった。
その上で、船を走らせ、自動のビルジポンプが正常に作動するかを確かめた。
実験は大成功で、これは実用化ができるので、ポルトガル人に売りつけることもできそうだ。
将来的には俺らは造船だけでも食べていけそうだが、まずは安全な生活圏の確保だ。
これだけは忘れてはいない。
来年の春から始まる国取りは取り返しもつかない事にもなりかねない。
ま~、そうなれば船で琉球でも台湾にでも逃げればいいか。
そう考えれば少しは落ち着いてきた。
でも、やるからには失敗はしないつもりでやるぞ。
幸い藤林様も戻ってこられたようなので、九鬼様も呼んで戦協議に入ろう。
春はすぐそこだ。
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