名もなき民の戦国時代

のらしろ

文字の大きさ
60 / 319
第二章 国取り?

第五十九話 軍議

しおりを挟む



 三蔵寺の本堂には、忍者である藤林様が配下数人を連れて座っており、その対面には日焼けして筋肉を全身につけたこれぞ海の男と言える風貌の九鬼様が、これも海賊然とした配下を連れて座っていた。
 彼らの前には1枚の絵図面が広げられており、辺り一面にある種の緊張が漂っていた。
 その場には俺もいたのだが……

「あら、空さん。
 ここにご飯粒がついておりますわよ。」

「空さん、お茶をお持ちしました。」

「あ~、ずる~い。
 私がやるって言ったのに。」

「早い者勝ちだものね。」

 などと、先ほどまでのハードボイルド風の空気を一変させる会話が俺の周りで起きている。
 見事につい先ほどまで漂っていた緊張感は一発で霧散した。
 と言うのも、俺の周りには、美人の張さんや美少女の葵と幸がせっせと俺の世話を焼いていた。
 一言で例えるのならば、大画面で戦国物の大河ドラマを見ているリア充って感じかな。
 リア充もげろ……あ、これって俺の事か。

 現実に戻ろう。

「それで、だいたいどこまで掴めたの。」

 俺の問いに、九鬼様の配下がすぐに答えてくれた。

「どんなに多く見積もっても、500は越えることはありませんぜ。
 海上戦力としては、安宅が3も出れば上出来ってところかと思います。」

「兄が家督を継いだ時でも最大戦力が1000を超えることが無かったし、その半分は我々側で田城城に詰めていたのが400もいなかったので、そんなものかと思います。」

「その城が落とされたときに詰めていた連中の大半はその場で殺されたか、さもなければ我々のように散り散りに逃げ出したので、敵全体でも500がせいぜい、問題の田城城には付近から駆けつけても300いや250も入ればいいとこかと考えております。」

 すると、藤林様が補足してきた。

「配下が掴んだところ、250もいないそうだ。
 せいぜい200、攻め時の塩梅では150くらいかもしれないな。」

「へい、それも最大戦力って事で、そこから船を出しますと、城には100も残らないかと思います。」

「へ~、では、まず、海上での戦に勝利すればほぼ間違いなく城は取れそうだね。」

「敵が海上に出てくればの話ですが、どうなりますかね。」

「我々が威嚇すれば絶対に出てくる。
 出なければ、あいつらは終わりだ。
 付近の海を仕切れないとなれば誰も銭を払わない。
 出たくなくとも奴らは出てくるさ。」

「となると、敵の海上戦力の見積もりが重要になってくるけれど、どんな感じかな。」

「兄が家督を継いだ時の最大戦力が安宅で10もあればって感じで、関船が20、それ以外も含め全部で100がやっとってところだった。
 前の騒動では、船戦は無かったので、船はそのままあるのだろうけれど、動かす人が居ない。
 敵戦力が最大で500としてもその全てが城に詰めているわけじゃないので、250と考えても出せて安宅で3が良い処じゃないかな。」

「もう少し具体的にはどんな感じかな。」

「予想なので、どうなるか分からないが、安宅が3、関が5~10、小早で20って処も出せば城ががら空きになる。
 こちらの奴らに見せる戦力によるが、多分今の半分って処だと思う。」

「で、空さん。
 こっちはどこまで用意できるんだ。」

「船の事なら、この間、武器と交換で2番艦を出したから、今あるのは3番艦だけだ。
 今4番艦の造船に入っているが、当初の目標の10隻は難しい。
 確実の所、2番艦と同様の船が5隻って処だと思う。
 そのつもりで作戦を考えないと。
 あ、でも、雑賀党のみんなの協力も仰げるので、地上戦力は雑賀党の100それも全て鉄砲隊が加わるよ。
 それに、藤林様の所の伊賀衆も加わるし、この前手に入れた鉄砲10も持たせるので、火力はかなりあると思う。」

「うちから、50を出すので、九鬼さんの地上組とうちの50、それに雑賀の100が全戦力だ。
 城の見積もりが200ならばそのまま城攻めでもどうにかなるしな。
 硬い処の見積もりで150なれば、ほぼこっちが無傷でも落とせそうな贅沢な火力を用意できた。」

「なら、海戦を止めて、地上戦力だけで行くの?」

「それは、お勧めできない。
 これから海で生きていくには、海上で武威を示さなければ他から舐められる。
 海上で商いをするうえでも、絶対に海戦は避けられない。」

「「「う~~む」」」

「九鬼様、一つ聞いてもいいですか。」

「何なりとお聞きくだされ。」

「安宅舟は沈ませなくても城に逃げ帰らせれば、こっちの勝ちってことになりますか?」

「逃げるなんて、そんな恥知らずなと言いたいのですが、割とあるのですよ。
 当然、その場合には我々の勝ちとして他所の海賊勢力に喧伝しても大丈夫です。
 と言うより、喧伝して周りに武威を示さなければなりません。」

「となると、少数で大部隊を破ったことは十分な宣伝になるよね。」

「はい、それは付近の海賊衆から尊敬すら集めることになるかと。」

「なれば、一つ良い作戦が思いつきましたので聞いて頂けますか。」 と言って、俺はある作戦をみんなに話してみた。

 一言でいえばアウトレンジ作戦で別に目新しくもないのだが、これは、船に大砲を載せ、射程距離ぎりぎりから敵の安宅舟に向けて打ち払うだけだ。
 敵が砲弾の飛来に驚いて逃げればそれでよし、逃げずに向かってきたら、こっちは風上に距離を取りながら敵の攻撃を受けないようにして、それを繰り返す。
 時々、船に乗せた雑賀党の人に鉄砲で人を狙ってもらう。

 この場合には敵に近づかなければならないので、同時に大砲でも打ちながらってことになるとは思うけれど、流石にここまですれば、数発の大砲の弾は当たるだろうし、1発でも大砲の弾が当たればどんな船でも大破は免れないので、数回これを繰り返せば敵は逃げたりしないかなっという話だ。

 同時に城攻めを行い、陸上にも大砲を準備して、もし、安宅舟が射程に入ってくれば陸地からも打つのも面白いが、目的は敵の居城である田城城の砲弾での破壊だ。
 的が大きいので、こちらはほぼ確実に城には当てることはできそうだが、九鬼様ゆかり城の破壊なので、一応九鬼様の気持ちを聞いてみた。

「気持ち的に何もないとは申せませんが、戦になれば城が焼け落ちてもやむを得ないと考えております。
 空様のお好きなようにご采配下さい。」

 何だか素人の俺の意見がそのまま作戦の骨子となった。

 作戦が決まればあとは準備だけだ。
 浜の造船所にはそのまま船を増産してもらい、5隻は戦船を用意させる。
 3番艦から8番艦までの5隻には手に入れた大砲を2門ずつ搭載させ、5隻で計10門。
 残りの10門の運搬だが、これは今、浜に打ち上げられているキャラベルを簡単に修理して雑賀党の運搬にも使う予定だ。

 あのキャラベル船はと言うより、この時代のヨーロッパの帆船すべてがそうなのだが、マストをクレーン代わりに使えるのだ。
 前に浜に作ったクレーンでは強度が足りなく大砲を降ろすのに簡単に壊れたのだが、そもそも設計時点から荷物の搬入搬出にマストをクレーン代わりに使うことが考えられていたのだ。

 当然、その積み荷には搭載される大砲も考慮されている。
 なので、今回のような作戦時ではもってこいの船となる。
 最悪上陸時に座礁しても人的被害が出なければ構わないので、キャラベルでの移動は作戦決行時に海戦組から先行して夜間に移動することになる。
 なので、このキャラベルの修理も行うことになった。

 この冬の準備の間、雑賀埼の孫一氏とは頻繁に手紙でのやり取りを行い、堺への商いついでに何度も訪問して、協議も行っていた。
 報酬はかなりぎりぎりになってしまったが、堺での商いが順調であったので、借金せずにどうにか作戦決行までには用意できた。
 もっとも孫一氏にはかなり傭兵報酬を負けて貰ったのだ。

 できれば彼らとも仲良くやっていきたい、そういったこちらの気持ちが通じたのか、彼らも同様であるようだったのだ。
 夢は広がる、この紀伊半島に我々共同で一大勢力を作り出せればかなりの規模の戦国大名が攻めてきても跳ね返せそうだ。

 ま~、俺の中の夢の話だけれども、少なくとも志摩を皮切りに伊勢を取る。
 伊勢の北畠一族は古くからある有力大名の一つで攻め滅ぼせば幕府や公家から色々といちゃもんが入るだろうが、こっちの方は言い訳を準備している。

 九鬼様の仇討ちと言うことで、伊勢にいる北畠の一族を討ち取るのだ。
 逃げ出せば追うことはないが、まず男衆は討ち取るつもりだ。
 後で、いちゃもんがついたのならば九鬼一族の仇討ちだったと説明し、やりすぎたかもしれないならば、ごめんとでも言っておく予定だ。

 また、この地の支配に関しては民衆の保護を理由に一時的に九鬼様が担い、その後権力は絶対に返さない方針を持っている。
 なにせ戦国時代だし、どこも同じようなことをしているのでうちらも見習うことにした。
 大義名分は持っている。
 後は武力で制圧するだけだ。
 そのための第一歩の志摩の奪還だ。
 田城城の制圧を1日で片づける計画なので、志摩全体でも1週間で完了させる。

 で、全力を挙げて、志摩の国力を充実させ、遅くとも志摩奪還の翌年の永禄9年には伊勢を落とす。
 まだ、永禄9年では尾張の信長は美濃の攻略中で伊勢には出張れない。
 そこまでした後に地盤を固めて、長嶋の一向宗や尾張の織田に対抗する。
 信長と同盟を結んでもいいとも思っている。
 あくまでも目的は我々の考えに同調してくれる庶民の戦被害の防止なのだ。

 ま~先の話だ。
 今は志摩の奪還の準備に全力を入れていく。
 

 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

処理中です...