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第三章 伊勢の戦国大名
第八十三話 チート武将 二人目の竹中さん
しおりを挟む清須を出た俺らは、やはりというか見張りをつけられたようだ。
俺らの後についてくる人がいた。
時々人が変わるのでわかりにくいが、そこはそれ蛇の道はというやつだ。
しっかり一人前になった丹波少年がすぐに気がついた。
尤も見張りをつけられることが予測できたので俺でも注意すればわかったが、それでも普通はわからないレベルなので、プロの連中のようだ。
どこに属する忍びかまでは分からないが調査専門の忍びのようでとりあえず放っておいても害はなさそうなので、藪をつつくまでもなくそのままほっておくことにした。
清須の城下から稲葉山城の城下町までは30kmもないので普通に歩いても1日で着く。
俺らはロバに荷を持たせているので、順調に歩みを進めることができるので、6時間くらいで稲葉山の城下に着いた。
ここは斎藤道三が早くから楽市楽座の政策を進めておりかなり栄えているはずだったのだが、同じ楽市楽座の観音寺に比べるまでもなく、下手をすると願証寺の門前よりも寂しい感じだ。
城下の街道沿いにはかつての栄華の名残を示すかのように豪商店が立ち並んで入るのだが、どこも閑古鳥が鳴いており、本当に寂しい限りだ。
そうだ、ちょうど地方都市のシャッターストリートの夕方にその場に居たようなあの寂しさがあるのだ。
俺は近くの店に入り様子を伺った。
店では暇を持て余していた番頭さんらしき人に丁寧に対応してもらえた。
俺は、対応してくれた番頭さんにこの寂しさの理由を聞いてみた。
大きな声では言えないそうだが、ご城主が道三様に変わり義龍様までのころは良かったのだが、龍興様に変わる頃になると、ここ城下の政策も改められ楽市楽座は廃止され、以前のような座が支配する街に変わってしまった。
それと同時に街を仕切る座は龍興様の腰巾着である龍興様配下のお気に入りの連中にせっせと付け届けをするために理由をつけては金をせびりに来るので商売がやりにくいとこぼしていた。
それに信長との抗争の煽あおりで城からも税金を掛けられどこの店も苦しくなっており街全体の雰囲気が悪くなっているのだそうだ。
また、斎藤勢は忍びの侵入の恐れから町に入る人の制限までしており、とにかく人・物・金を動きにくくしていた。
そんなことをすれば素人でも分かることだが街全体が不景気になるのは自明の理だ。街が不景気になり座の収入が減ると更に街の商人に金をせびりに来るといったまさに負のスパイラルの見本をそのままやっていた。
本当に魅力のない街になっており、ここでの商いどころではない。
ここに滞在することもはばかられるので、俺らは斎藤勢に目をつけられる前に早々に稲葉山の城下を脱した。
稲葉山の城下にほんの一瞬寄っただけで、俺らはそのまま竹中半兵衛が治めている菩提山城に急いだ。
菩提山城下は当然小領主のご城下で稲葉山や清須のような賑わいのある街ではなくほんの少し大きめの村であった。
当然村には店を構えるような商人などいるわけもないので、店など一件もなかった。
でも、寺は大体どこの村にもあるので、宗派に関係もなく村にある寺に入り今晩の宿を借りることにした。
村にある寺は曹洞宗の寺だったのだが俺らの要請に快く応じてもらえ、軒を貸してもらった。
小さな村なのでいくつも寺などがない。お分かりかと思うが、ここの寺は竹中氏の菩提寺でもあるので、ご城主の竹中半兵衛とも入魂の間柄だ。
そこで、俺は、いつもの壺に入った塩をご住職に贈り、ご城主の竹中半兵衛への取次をお願いした。
本当にあっけないくらいに取次をしてもらえ、紹介者探しに苦労していたのがウソだったかのように簡単に竹中半兵衛に面会できることになった。
翌朝俺らはご住職に連れられて菩提山城に向かって山道を2kmばかり登っていった。
本当にどうにかならないのかこの時代の住宅事情は……殆どのお侍さんの家が小高い山の上にあるのだ。
途中の道は現代のようにいかない。
藪などには覆われていないが、道といっても舗装はされてなく石段でもあれば上等といったところを歩いて登るのだ。
確かに城からの見晴らしは良いだろうが訪ねる人のことも考えて欲しい。
大体この時代の城はお役所を兼ねているのだろう。
お役人が住民を無視してこんな不便なところにお役所を構えてもいいのか~~~なんて愚痴をこぼしてもしょうがないので、俺は黙ってご住職に着いていった。
城についたらすぐに竹中半兵衛に面会してもらえた。
流石に菩提寺のご住職と一緒に来ただけのことはある。
最も菩提山城が小さく、使用人も少ないし、そもそも肝心のご城主様は蟄居の身なので忙しくもなかったからなのだろうが、ほとんど待たされることなく面会することができた。
俺は早速、ここまで持ち込んできた干物などの手土産を渡して話に入った。
「わざわざこんな辺鄙なところまで商いに来るとは奇特な商人だな。
して、そちらの目的はなんじゃ。
唯の商いではなかろう。」
いきなり本題に入っていった。
もっとも俺は腹の探り合いが苦手なので非常にありがたい。
俺もすぐに本題に入っていった。
「はい、私どもは伊勢の出身で、お隣の観音寺城下で商いを営んでおります伊勢屋の者なのです。
手土産の物は皆伊勢屋にて商っております品々ばかりなのです。」
「して、その伊勢屋がワシになんのようがあると申すのか。」
「はい、本日は伊勢屋のご用というよりも、私どもがお世話になっております志摩の九鬼様からのご用でお伺いさせて頂きました。」
「志摩の九鬼様というと最近時々耳にするな。
お家騒動で流浪していたのが、非常に鮮やかなお手並みで志摩に復帰なされ、更にお家騒動の黒幕の北畠様との戦にも完勝されたという九鬼嘉隆様からのご用というのか。」
流石に情報の感度は北畠具教とは違い鋭い。
どうせ嘘は通じなさそうだし、力をお借りしたいので、俺は正直にこれまでの九鬼様とのかかわり合いを説明して力を借りたいとお願いを申し出た。
話しながら竹中半兵衛の為人を観察していった。
確かに癖のある御仁だが、全体的に静かな人といった印象がある。
静けさの中に非常に鋭いものを持っているといった感じだ。
藤林様や九鬼様からの協力を得られただけでも俺にとっては望外な幸運と言えるのだが、ここでこの竹中様の協力を得られればかなり今後の展開に希望が持てそうだという感想を持った。
なので、ここは真摯しんしに協力を得られるように俺の心配事などを余さず説明して、長島の一揆による被害をできるだけ小さくするために伊勢の攻略に力を貸して欲しいと包み隠さずさらけ出してお願いを申し出た。
当然いきなり訳のわからない商人にこんなことを言われれば素直に『分かりました』とはならないことは俺でも理解できる。
竹中様は落ち目で蟄居の身の自分では力にならないと辞退していたのだが、俺は竹中様ご自身のお知恵をお借りしたいので、領主としての力の大きさについてはなんにも期待していないと、ある意味かなり失礼なことまで言っていたのを後になって気づき、これについては本当に心から竹中様にお詫びしておいた。
ご住職は昼過ぎには山を降りて寺に戻っていったが、俺らはそのまま城に残り、俺らの持つ情報と竹中様のもつ情報の交換などを通して、意見を交わしていった。
後に竹中様は戦国でも一二を争うくらいの名軍師となるだけのことは有り、彼自身の持つ見識の高さと頭の良さはピカイチであった。
松永弾正様との対面で感じた緊張とは違った意味の緊張を強いられたが、決して不愉快な類のものではなかった
室町初期から伊勢の地で続く名家の北畠を滅ぼしていく我々の今までの計略にはかなり関心は示して頂いたのだが、そのまま仲間となって下さるところまではいかなかった。
2~3日かけて色々と話し合って、またお会いして下さるという言質を頂き、とりあえず一旦はここを去ることにした。
去り際俺は、次にお伺いさせてもらう時には正式に九鬼様からの御使者としてしかるべき人をお連れすることを伝え、菩提山城を出た。
帰りに、城下の寺に寄りお世話になったご住職にもまたお伺いする旨を伝え、今回の件でのお力添えについてのお礼を述べてから、観音寺に向けて出発した。
あの人たらしである秀吉ですら数ヶ月に渡り交渉の後に調略したのだから、それから比べると今回の感触はかなり良かったと思われる。
とにかく焦らずに通い、仲間に加えるべく頑張っていこう。
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