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第三章 伊勢の戦国大名
第八十七話 半兵衛さんとの打ち合わせ
しおりを挟む翌朝俺らは竹中半兵衛を連れて馬で菩提山城を出た。
まず俺らは一旦三蔵の衆の拠点でもある観音寺の伊勢屋に寄ることにした。
理由は、これから俺らの仲間になってもらえる竹中様に俺らのことを少しでも早く理解してもらうためにも俺らの戦力を包み隠さずに見せるためでもある。
一旦伊勢に入れば、なかなか観音寺までは来ることはできない。
なので、ついでもあるので寄ることにした。
また、俺らの拠点全てに情報収集を担当をしてもらっている藤林様の配下の忍が必ず詰めており、情報を全ての拠点で共有しているので、伊勢屋に入ればとりあえず今の俺らが置かれている状況が分かる。
ほんの数日とは言え、情勢が不安定な伊勢を離れているので、何が起こっても不思議がないので不安である。
その確認の意味もある。
菩提山から観音寺までは50km強もあり馬での移動でかろうじてその日のうちに着くことができた。
当然、我々は伊勢屋の用意した宿で一泊だ。
宿について落ち着くと直ぐに藤林様の所の者が俺らを訪ねてきた。
簡単に情報の交換が理由だが、もたらされた情報からは、これといって俺らを取り巻く情勢には変化はなかった。
どんなに急いでもここから藤林様のいる松ヶ島城までは2日はかかるが、途中に船を使うので風によってはそれ以上かかる。
伊勢に到着するには俺らが伊勢を離れてから1週間以上もかかる見込みだが、今の報告を聞いてひとまず安心ができた。
三蔵村には、ちょくちょく寄ることもあるので無理をして留まらずに、先を急ぎそのまま松ヶ島城に向かうつもりだ。
しかし、途中の八風峠には距離的にも通過するには無理があり、また、峠の茶屋が我々の情報収集の一大拠点でもあることから、そこでは一泊することになる。
竹中様にこれから戦略を考えてもらう意味でも、正確に我々の持つ拠点の重要性を理解してもらう必要があるので、ここでの一泊はとても重要な意味を持つ。
観音寺の伊勢屋から八風峠の茶屋までは毎日の定期ルートになっており、時間も読めるので、翌朝、俺らは定期便に同行して峠に向かった。
いつもどおり夕方には峠に到着して、茶屋奥にある俺ら専用の宿泊施設に入った。
ここでも直ぐに情報を携え、このあたりの長をしている忍の権蔵さんがやってきた。
ここは情報を集約してもらっていることもあり、賢島の最新の情報まで手に入る。
賢島の開発は順調とのことで、俺はすっかり賢島のことについて失念していたが、九鬼様はしっかり開発にも手を抜かずに頑張ってくれているようだった。
九鬼様自身は伊勢の動乱?の影響もあり賢島にはしばらく戻れていなかったので、賢島の様子がここで聞けたのにはかなり安心していたようだった。
そこで俺は九鬼様に 「松ヶ島城での打ち合わせのあと、一度賢島に戻りますか?」 と聞いてみた。
「そうですね、一度戻って兵力などを整備し直しておきたいですね。
それも伊勢の状況次第ですが」
「それもそうですね。
でも、少々の騒乱程度ならば雑賀党の方たちもいらっしゃるし、大丈夫かと思いますよ。
もどる方向で検討をしておきましょう」
俺らの会話を横で聞いていた竹中様はなんだか嬉しそうにしていたが、何も言わずに静かに聞いているだけだった。
ここで得た情報でも、これといって特筆されるものはなく俺らが伊勢を離れた時とあまり状況は変わってはいなかった。
でも、状況が変わらないからといってゆっくりできる訳もなく、俺らは最初からの予定通りに三蔵村は通過だけで村から待機してもらっていた船で松ヶ島城に向かった。
松ヶ島城には、ここを出てからほぼ1週間ぶりに帰ってこれた。
城に詰めていた藤林様は、我々の最短での帰還を喜んでくれた。
さっそく城の広間で我々の首脳が集まり今後についての打ち合わせを行った。
参加者は俺と張さん、珊さん、九鬼様と藤林様、それに雑賀党の孫一様と、我々の仲間になった竹中様の7名であった。
三蔵の衆の首脳陣としてはこれの他には玄奘様や上人様、それに村を任せている村長であるが、今回の打ち合わせには関係がない。
竹中様と残りの全員との顔合わせはそのうち行うとして、今は伊勢の攻略中なので、これで十分である。
打ち合わせは、藤林様から今までの経緯と現状の状況の説明がなされ、それについて各々の意見を頂いた。
正直、竹中様から出てくる意見に俺は恐れていた。
今まで我々は室町幕府に連なる武士階級の出身者がおらず、戦におけるしきたりなんかを無視してきた。
今までの戦は、ほとんど謀略に近いものであったことで室町以来の教養のある人から嫌悪されているのではないかとビクビクものだった。
しかし竹中様には俺らの今までの行為をかなり好意的に捉えてもらえ、伊勢の侵攻については称賛までしてもらえた。
歴史ある名家の領地を占領するには今の時代でもかなり難しく、抗争中の大名以外に、他の勢力からの横槍ももらいそうなので、なかなか侵攻まではいかなかったそうだ。
今回の我々は、建前が自身の領地の治安維持のための緊急回避処置であり、周辺にはこれでもかというくらいに手を打っていることを竹中様には盛んに褒めてもらえた。
そう言えば竹中様も稲葉山城乗っ取りも謀略であり、割とこういう慣習にはとらわれない人だったと俺は感心もしたし、安心した。
竹中半兵衛を交えての初めての打ち合わせで、我々が今まで行っている謀略を続けていくことで意見がまとまった。
我々の最大の欠点である人材の不足の件は、足軽関係についてはここ伊勢で農民が集い、まとめ役の武士階級の不足を竹中様が一手に引き受けてくれた。
自分の一族全員を引き込めばとりあえずはなんとかなりそうだというのだ。
なので、1000~2000の足軽の甲冑や槍などの武器についてを俺が担当することで話がついた。
全くの素人をいくら人数を集めても実際には使い物になりそうもないとの意見もあったが、今までの我々の戦い方は基本謀略でまともに戦うことをしていなかった。
今後もしばらくはこの戦略を踏襲することで、集めた足軽はいわゆるダミーとでも思ってもらおう。
つまり虚仮威(こけおどし)というか相手に見せることを目的として実際には戦わせないつもりだ。
ちょうど志摩を占領したあとの防衛戦をやった時みたいにゲリラで戦うことで決着を付けるので、九鬼様率いる兵士たちが何もしなかったように、ただいることだけを目的に準備だけはしておくことになった。
将来的には合戦での決着をつけなければならない場面も出てくるだろうが、今の伊勢の状況ではこのまま謀略だけでも占領はできそうだ。
今は将来に向けて戦力の増強に取り組むが、そう言った本来の武士階級が行うもろもろのことは、今後、竹中様が受け持ってくれるとのことだ。
ここまで我々の方針が固まればもう少し時間が取れそうなので、一旦九鬼様が賢島に戻ることになる。
ここまで付いて来てくれた竹中様についても一旦菩提山城に戻り一族を率いてくるとのことで、彼らの受け入れ先も賢島に用意させることになる。
これからの竹中半兵衛の身分は、志摩の大名九鬼嘉隆の家老の一人として藤林様と二人で領地経営をしていくことになった。
どうも俺の存在があるので我々の関係がややこしくなり、表向きの身分と我々仲間同士での役割の二つが存在していくことになっている。
今のところどこにも問題は出ていないのだが、この時代のチート武将たちにはこのようなごまかしは通用しない。
既にこのあたりのチート武将のひとりである松永弾正とは俺ら三蔵の衆との秘密同盟が結ばれている。
決して志摩の大名との同盟関係ではない。
今後予想される織田信長との関係でもごまかせないだろう。
既に信長配下の滝川一益には俺自身が目をつけられているし、俺らの関係も既にバレていると考えておいたほうが良さそうだ。
表向きの身分は幕府や朝廷くらいしか使わないかもしれないのだが、伊勢志摩くらいならばこのままでもどうにかまわせそうだ。
俺らが抑えている領民たちの安全が完全に確保されるようならば、俺も領民の一人としてこの難しいことにはかかわり合わなくとも良くならないかな~~。
政はこのまま九鬼様を大名として藤林様や竹中様に任せきるつもりだが、彼ら全員が何故だか俺のことを殿と呼び、何故だか実質のTOPを俺がしているのだ。
これって絶対におかしいだろう。
外見は10歳くらいのガキだぜ。
この可笑しさは伊勢の攻略が済み、長島の危険がさったら絶対に正そう。
俺はただの商人として生きていくぞ~~~~。
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