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第七章 公家の政
第二百四話 戦後処理
しおりを挟む無事に六角や三雲の身柄を確保した俺らは、観音寺を囲んでいる信長さんや九鬼さんに伝言だけして、京に凱旋することになった。
「何も領主の居ない城を今更囲んでも意味無いだろう」
との弾正松永久秀さんのお言葉を頂いてのことだが、確かにそうだ。
それよりも罪人として捕まえた二人を京に連れて行き、凱旋する方が遥かに意味がある。
何よりも近衛関白の横槍がめんどくさい。
先に三雲と近衛関白とは堺の豪商を通じて繋がっていることが判明している。
この地でぐずぐずしていると、停戦の詔でも出されたらそれこそ取り返しのつかないことになる。
今は犯罪の取り締まりで来ているのだ。
ここで停戦の詔でも出されたら、せっかく捕獲した身柄を解放しなければならなくなる。
そうなるといつまでたっても南近江が落ち着かない。
ここはさっさと京に戻り、罪状を明らかにしてさっさと処罰するしか手が無いだろう。
今なら、まだ捕まえたことを堺でも察知していないだろうから、近衛関白も知らないはずだ。
京に着いたら、すぐに検非違使で詮議してさっさと五条河原にでも晒してしまえば事足りる。
幸いなことに六角義賢は官職をはく奪してあるから只の罪人として裁いても問題なかろう。
俺は弾正と一緒に京に凱旋して帰った。
京の屋敷に帰るとすぐに役所で、五宮を呼んで過去の判例を調べさせ判決を言い渡した。
三雲に至っては誰憚るはばかることなく斬首と決まり、弾正が俺の代わりに刑を執行してくれた。
問題なのは六角義賢だ。
彼の刑については世を乱した騒乱罪が適用できれば斬首で問題ないが、どうも近衛辺りが官職にあったものを斬首するのはと言いがかりを付けて来た。
流石に三雲を晒したので、近衛関白も自身が関係する六角がつかまったことを悟り急ぎ俺を牽制してきた。
五宮とも相談して、とりあえずどこぞの寺にでも預けて謹慎させるしかないという結論になったが、南近江を完全に支配下に置いていない現状においてさっさと刑を執行すると、南近江の支配権の正当性が怪しくなってくる。
城を囲んでいる信長さんからも城を落とすまでは六角 義賢を殺すのを待ってほしいとも連絡を受けている。
流石に城主が殺されれば城にこもる連中がどうなるか分からないというのだ。
諦めて城を明け渡してくれればいいが、自暴自棄になって頑強に抵抗しないともいえない。
そうなると要らない被害を受ける恐れもある。
現状では城主を捕まえて保護していることだけで、城にこもる連中の士気が下がるのでそうしている方が良いと、半兵衛さんも言っていた。
なので、現状検非違使内に作った牢に入れてある。
なにせ一般人の罪人なのだから。
ちなみに横槍を早速入れて来た近衛関白に対しては騒乱罪の恐れもあるので慎重に詮議しているとだけ説明して、以降一切の抗議を受け付けていない。
何か言ってきても、未だに朝廷からの予算が回ってきていないと全く違う件で逆に抗議している。
なにせこちらは朝廷の一組織だというのに、朝廷の最高責任者から一切の予算配分がなされていない。
これは明らかに最高責任者の責任を果たしていないといえることだ。
まあ、今の朝廷にはそんな金などないことは分かり切ったことなので、関白も相当頭に来ているだろうが、これを言われると黙るしかない。
俺らから『言うこと利かせたければ、そっちが先に責任を果たせ。銭寄こせ』と言っているようなものだから、関白としてもこっちには強く出れない。
しかも今回の発端が朝廷の収入になる朝貢品の略奪なのだから、もう普通なら助けようがない。
まあ、相手があの近衛なので、何してくるか分からないから油断はしないが、早く観音寺を落としてもらえばそれも全てが片付く。
そんな観音寺から報告に来ると前触れがあった。
丹羽さん辺りが来るのだろうかと思っていたが、俺の予測は大きく裏切られた。
何と信長さん本人が僅かばかりの兵を連れてやってきた。
「え?
何で信長さんが……」
「城を囲むだけなら誰でもできる。
それにうちはそう言うのが得意な連中もたくさんいるしな。
それよりも、今後についてすり合わせをしておきたい」
「すり合わせですか」
「ああ、五郎左丹羽長秀からもそうしてほしいと言われたしな。
あ、そうそうお前のところの竹中半兵衛さんからも同じようなことをうちの五郎左に言っていたそうだ。
だから連れて来た」
え?
何で信長さんが半兵衛さんと一緒にくるんだ。
まあ、いいか。
それなら弾正さんも交えて相談しておこう。
所で、弾正さんは今どこに……
俺は半兵衛さんを待って打ち合わせの準備をしていった。
出来れば一度で済ませたいので、弾正さんも呼んだら、なんとその弾正さんは太閤屋敷に居て、太閤殿下も連れて来た。
まあ、近衛関白の件もあるので、都合が良かったといえば良かったが、こんなんで良いのか。
太閤殿下を交えて大領の大名二人同席してのすり合わせが始まった。
とにかく大名や朝廷の最有力者がその場にいるので話が早くて助かった。
一月以内に観音寺城を落とせれば、計画通り南近江を信長さんに任せることで、朝廷からもお墨付きを出す運びになった。
そのお礼言上の時に信長さんが上洛するが、その時に俺の嫁お市の方も連れて来るそうだ。
太閤殿下の目の前で俺の嫁の輿入れが決まった。
前に殿下に筋は通すと言っていたが、目の前で決められれば筋を通すもないだろう。
なにせその太閤殿下もこの婚儀をえらく気に入っており、結婚式はまた盛大にしろとか何とか言ってくる。
「分かりました。
全て良いように取り計らいください」
「ああ、任せろ。
なら急ぎ戻り、サッサと城でも落とすかな」
「無理攻めなどして怪我人や死人が多く出るのもいやですから、うちから大砲を出しますよ。
半兵衛さんなら分かるとは思いますが、城まで届かなくても城門にでも当たれば士気の下がった城兵などはすぐに降参でもするでしょう」
「殿、それは良きお考えですね。
既に砲兵は峠に待機しておりますからすぐにでも城攻めに加われます」
「半兵衛さん。
悪いけど、その砲兵を任せます。
信長さんもそれでいいよね」
「おお、空のところの新兵器か。
話には聞いていたが、それは楽しみだな。
任すからやってみてくれ」
「大砲はそれほど万能兵器ではありませんよ。
何を期待しているか分かりませんが、とにかく鉄砲よりも大きな音が出ますから、それで驚いてくれればしめたものくらいに考えていてくださいね」
「ああ、分かっている。
要は工夫が大切だというのだろう。
工夫するにしても知らなければ始まらない。
今回はよく見させてもらうから大丈夫だ。
な~に、あんな城、俺のところの鉄砲だけでも簡単に落とせる自信があるから、それほど無理はしないぞ」
「たのみますよ。
私はこっちで輿入れの準備でもしておきますから」
そう、俺がここで派手に結婚式をすれば銭が動く。
公家も多く招くことになるので、公家にも結構喜ばれもするので、関白対策にもなっているのだ。
普通結婚式に呼ばれればお祝いなどの準備で呼ばれた方も大変になるが、これにはカラクリがある。
呼ぶ公家に対しては殿下を通してしっかり事前に銭や物を渡しておくことになっている。
前に結さんとの結婚式でも同じことをしたら呼ばれた公家たちからもたいそう喜ばれ、それにより太閤殿下の発言力も強まったとも聞いていたのだ。
それもあって太閤殿下は大名からの側室を受け入れるにあたって、張さんの時のような質素では困ると言い出してきたのだ。
本妻である結さんの時よりも派手になりそうだが、俺の地位も上がっているし、何より相手が大領を有する大名家の息女なればという理由もあるのだ。
本音は苦しい公家の台所を助けてほしいというのがあるが、こちらとしても義父を通して朝廷に対して発言力が強化できるのはメリットしかない。
なにせ今は特に近衛関白が何かと俺に対して邪魔をしてくるので、その牽制にもなる。
と言って、俺のやる事は結さんや張さんのご機嫌を取って、家庭内の不和の種を失くす努力くらいしか無い。
あとは周りが勝手に、しかも俺の許可など必要ともしないで進めてくれる。
本当にありがたい存在になったものだ。
この先どうなるのかちょっと心配だな。
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