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第七章 公家の政
第二百五十話 姉川の合戦
しおりを挟む評定が始まり
半兵衛さんが丁寧に説明していく。
基本、姉川に持ち込んだ大砲で、大方の兵の気勢をそぐ。
それでも向かってくる兵たちに対して、柵などで守る陣から鉄砲や弓矢で攻撃していく。
これだけで敵は引くことになるはずだから、敵が引いたところを追撃に兵を使って、一挙に一乗谷まで落としていく。
浅井衆が籠るだろう小谷城については一考の余地はあるが、優先順位は低い。
小谷城は確かに邪魔ではあるが、それでも一乗谷までの進攻に関して直接的な脅威とはならない。
そのあたりについても半兵衛さんあたりが考えてくれるだろう。
一通り此度の戦について説明した後に弾正さんと信長さんに戦後についての相談もしていく。
何せ、一応俺たちは包囲されている格好だ。
いつのまにか知らないうちに出来上がった大包囲網とでも呼べばいいのか、囲まれていた。
その包囲をいつまでもさせておくわけにもいかない。
尤も、一乗谷を落とせばおのずと包囲は解けるだろうが、懸念は残ってしまう。
信長さんとしては武田との衝突は避けられないだろうが、とりあえず木曽方面について一度たたく必要があるし、同様に弾正さんについても少なくとも大和国内だけでも安定させないとまずい。
興福寺の僧兵の駆除だけは今回済ませておきたい。
そのあたりについても相談しておく。
結論から言うと、まず此度の姉川の戦において完勝してからになるが、一乗谷までの追撃には九鬼勢だけで行う。
その際に、大砲部隊を残すので、それの有効活用を考えることで意見の一致を見た。
そう、今回忙しい中でも大名本人たちが安土まで来たのは、信長包囲網ならぬ、京包囲網についても話し合うためだ。
京包囲網であって、決して俺の包囲網ではない。
非常に大切なことなので、二度いったが、それにしても主上のおわす京を敵勢力が包囲するなんて不敬以外にない行為だ。
朝廷の最高位にあった近衛がいるにもかかわらず、何をしているんだと俺は言いたい。
いや、今度の包囲網は近衛自身が作ったといってもいいかもしれない。
なにせ一向宗が重要な役割をしている。
その一向宗を動かしたのは近衛以外にない。
今度の戦で、その包囲網を一挙に破壊するために戦後に協調して一挙に各個撃破するための打ち合わせでもあった。
俺たちがこの戦に持ち込んだ大砲は前に帳さんがあのカピタンから船と一緒に買った10門と俺たちが賢島で作った小ぶりな大砲まで含めて、この場に置いていくことになっている。
とにかくこの時代はどこも道が悪いところに、大砲は俺たちが作った小ぶりな物までもがとにかく重い。
ナポレオン時代のナポレオンが率いた砲兵隊が使う大砲よりも軽い筈なのだが、それでも移動には不向きだ。
まあ、絵などで見るあの大砲についている大きな車輪が無いばかりでなく、道も未舗装なのがいけない。
それに何より小さなものまで含めると、どこを歩いてもすぐに峠になってしまう日本の地形が大砲の移動を困難にしている。
今更愚痴を言ってもらちも無いので、話を進めるが、そういう理由で、追撃戦では大砲を持っていかずにこの地に残る信長さんに預けることになった。
指揮は丹羽さんがとることになるだろうが、小谷城攻略で使ってくれてもいいし、苦労を覚悟で東美濃迄持って行ってもいいとしているので、信長さんのことだから有効に活用はしてくれるだろう。
安土城の話し合いで大きなヨーロッパ製大砲10門だけは弾正さんの所で使うことになった。
移動に苦労するので、より軽い方だけを信長さんが使いたかったという理由があるらしい。
弾正さんの方は、大和の木津川口までは船で運べるようになっているので、大きくても問題は無いらしい。
木津川口まで船で運べれば、あとは人力でも興福寺傍まで問題ないそうだ。
以前にも寺院攻略で大砲を使っているから、弾正さんも興福寺の攻略をすでに大砲までも取り込んで考えているようだった。
安土城での評定では此度の姉川の合戦についてはほとんど問題なく最初に確認程度話されただけで、その後について時間を割いた。
時間を割いたといっても、こちらも置いて行く大砲の分配だけの話し合いがほとんどで、それも揉めることなく済んだので、大砲隊を任せる指揮官の指名について少し時間を割いたくらいか。
弾正さんの方には豊田さんが自分の部下だけを連れて向かうことになり、信長さんの方には大砲の部隊だけ残して、指揮は丹羽さんがとることになるらしい。
誰もが暇人では無く、話し合いを終えたらすぐにそれぞれの場所に戻っていった。
俺も、丹羽様と一緒に姉川にある陣まで戻り、今度は合戦のための布陣について、徳川さんを交えて簡単に話し合った。
俺は令和時代にまで伝わる史実に近い配置で、西側に徳川さんが陣取り、俺たちは東側から主に浅井衆を相手にする。
中央付近、俺のすぐそばに大砲部隊を配置して、半兵衛さんが直接指揮を執ることを確認した。
鉄砲隊は孫一さんが指揮を執り、より川に近い場所で待機だ。
すべての配置は済んだ。
朝倉側も陣を敷いたようで、その配置からすると俺たちが相手をしないといけないのが浅井衆になった。
これまた、史実通りに近い配置になったが、あいにく相手が俺、検非違使の中将で、史実の信長さんではない。
だからという訳ではないが、史実通りの辛勝ではないように、十分に気を付けよう。
半兵衛さんがぬかるはずもないだろうし、半兵衛さんだけでなく孫一さんまでもが、この配置で負ける要素が見当たらないとまで太鼓判を押してくれた。
日が昇り、いよいよ合戦だ。
戦口上でも述べたかったのか、朝倉衆の陣から一人の武士が近くまで来たが、あれって必要なのか。
「これはずいぶんと、古風と言いますか」
俺の横で半兵衛さんが珍しそうに見ていた。
鎌倉の世でもあるまし、戦口上など無くなって久しいとか。
まだたまに攻城戦などで攻め手側が城内に向け降伏を促す意味でやることはあるようなのだが、野戦では無くなって久しいそうだ。
そういえば俺は今までしたこともなければ見たこともなかった。
さすがに朝倉の兵士は川の手前で止まりぐちゃぐちゃと何か言い始めた。
めんどくさそうに孫一さんが俺の方を見る。
『面倒だが、こっちも何か言うか?』って感じのようだ。
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