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第七章 公家の政
第二百五十二話 追撃戦
しおりを挟む「ここでの戦はほぼ終わりが見えました。
丹羽様には三河勢とともに小谷城までの追撃を頼みます。
浅井の籠る小谷城を頼めますか」
「は、任せてください」
「打ち合わせの通り、大砲は置いておきます。小谷で使うのも良し、遠巻きに小谷城を囲うのも良し、そのあたりは任せます。
伊勢守は私と一緒に一乗谷まで攻め込みます」
何故か、それもいつ昇進したのか俺は知らないけど、いつの間にか九鬼さんは伊勢介から伊勢守に昇進?していた。
一応こういう場面ではきちんと役職で呼ぶのが習わしだと聞いたので、今回格好をつけてそう呼んでみた。
そういえば丹羽さんは、役職なかったっけかな。
惟任は明智さんだったっけか。
丹羽さんは惟住の姓を賜ったとか。
でも、これって信長さんがもう少し偉くなってからの話だからまだ違うよね。
丹羽さんから文句が出ていないからとりあえずこのままで通す。
どっちにしても、これからは丹羽さんとは別々になるわけだし、まあいいか。
それでここでの打ち合わせはほとんど確認程度で終わり、次の追撃戦に移っていった。
陣の片づけを任せて、俺は九鬼さんを伴い、本多さんと一緒に前線まで向かうと、そこにはまだ孫一さんが一生懸命に指揮を執っていた。
「あれ、先に追撃に出たのでは」
俺が後ろから孫一さんに声を掛けたら、孫一さんは振り返りながら開口一番に俺にクレームを言ってきた。
「なんだよこの柵は。
頑丈なのはいいけど、邪魔で出られやしない。
片づけていたら出る時期を失ったので、部下に追撃を任せて本隊が出られるようにあたりを片している。
まったく、柵を作るのに時間をかけたが、まさか追撃に邪魔になるまでとは思わなんだ」
孫一さんは俺に、戦よりも柵から出る方のが時間がかかるとまで文句を言い始めた。
確かに孫一さんの言い分もよくわかる。
戦そのものは、本陣そばからの大砲数発で、大方決着させてしまったようなものだ。
だからこちらが止めるのも間に合わずに徳川さんが飛び出していったのだが、徳川さんと反対の東に陣取った丹羽さんは作った柵を大回りして追撃に出ているのがこちらから見ることができたが、中央のここでは柵を大回りするにしても時間がかかるので、孫一さんは柵の一部片づけを始めたのだ。
徳川さんの後詰めの弾正さんの部隊も徳川さんに続いて出て行っているが一部残り、周りの片づけもしている。
もうここでの戦は完全に終わったようだ。
それがわかるだけに孫一さんも慌てて出ていくことをせずに、次の戦場に向け準備を始めているようだった。
丹羽さんからの伝令が徳川さんに向かったようで、丹羽勢は徳川勢と一緒にそのまま小谷城の包囲を始めた。
叡山から僧兵の一部が俺たちに向け横槍を向けてきたが、さすが僧兵との戦いに慣れている弾正さんの兵たちだ。
自分たちは積極的に追撃に加わることなく後ろからやってきた僧兵をいとも簡単にいなしている。
とりあえず、僧兵、いや、叡山がこの戦に必要以上に混ざらなくて良かった。
尤も、叡山に籠るとか、叡山も一緒に俺たちに対して攻撃でもしてこようともそれなりのことは考えていた。
射程距離の長い大砲を使って坂本や叡山に向け、弾のある限り打ち込んでしまおうと俺は考えていたが、今の様子を見る限りそこまでする必要はないか。
一連の戦処理が終わったら、朝廷を使って叡山に圧力をかけよう。
ほとんど被害は出なかったが、俺たちを攻撃してきた事実は消すことはできない。
俺たちは、俺の知る史実とは違い、朝廷の軍なのだ。
朝廷軍に向け攻撃をした段階で、たとえ叡山といえども朝敵になるだけの十分な理由となろう。
俺は九鬼さんの率いる伊勢の兵を伴って、小谷城の横を抜け、北上を続けた。
途中小さな砦は力業で押し通し、攻略に少し時間のかかりそうな山城や進路から外れている砦などは無視して、一路日本海側にある要衝の金ケ崎城を目指した。
別にここも無理して落とす必要性は感じていなかったが、簡単にどうにかなるようならばどうにかしたい城でもある。
九鬼さんの兵は今でもというかほとんど減ってはいないためまだ1万以上残っており、ここも小谷城と同様に一軍をつけて、包囲するだけでも良かったが、今回新兵器を賢島から渡されている。
このまま一乗谷まで行くとなると、正直あまり使い道が思いつかなかったというのもある。
その新兵器というのが、木砲と呼ばれているものだ。
そう、あの有名な国営放送で放映していた忍者漫画によく出ていたやつだ。
木で作った大砲とでも呼べばいいのか。
大砲の原理を説明していくうちに、耐久性に問題はあるのだろうが軽くて便利とでもいったのか、賢島にいるわれらの技術集団が自家製の大砲を作る前に実験のために作ったものだ。
使えるかどうかを戦で試したいらしく、今回急遽数をそろえて大砲と一緒に送ってきた。
ついでに大砲製造の責任者までも一緒についてきた。
なんでも青銅製の大砲はすでに実践での使用を見ているので、今度は木砲の使用が見たいとか。
そんなこともあり、とりあえず半兵衛さんに頼んで、一度全軍で金ケ崎城を囲んでもらい、大手門攻めを担う部隊に木砲を扱う部隊をつけた。
「中将殿。
準備が整ったとの報告がありました」
「あれ、彼は……」
伝令の報告を聞いた俺は先ほどまで俺の横にいた製造責任者を探して意見を聞こうかと思ったのだが、見当たらない。
「奴は木砲と一緒に前線まで向かっております」
「あっそ。
こっちは彼の希望を聞いただけだから、彼がいいのなら始めてください。
あ、もう一度言うけど、今回は木砲を実戦で使うのが目的だから、兵士を使った力攻めはしないでね」
「わかっております。
大手門には孫一を充てておりますから、そのあたりの塩梅は問題ないでしょう」
俺の指示が出たのを確認したのか伝令が大手門の前にいる部隊まで飛んでいく。
しばらくして、大きな音が聞こえてきた。
前に賢島で実験したので、音は聞いたことがあるけど、音だけ聞くと大砲とそう変わらないくらいに大きな音がする。
大砲が金属でないから、少し籠ったように聞こえるのは気のせいだろうか。
しかし、ここでも派手に砲弾をぶっ放しているけど、今回は木砲だけに耐久性に問題が出ないか心配だ。
尤も、木砲は大砲と大きさも違い重さも軽く、そのおかげで量を持ってこれたので、木砲一つ当たりの砲撃の回数は先の戦で使った大砲ほどでなないだろう。
しばらくすると、大きな音とともに木砲の攻撃が終わった。
あとで聞いた話なのだが、あの時に聞いた音は木砲のうちの一つが壊れた時の音だったようだ。
その木砲を扱っていいた兵士が数名けがをしたようだが、幸いなことに命には別条がなかった。
打ち出す砲弾に制限を設けないと使えないな。
しかし、その木砲の攻撃で、金ケ崎城の大手門は完全に壊れたそうだ。
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