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第七章 公家の政
第二百五十三話 一乗谷へ
しおりを挟む孫一さんから伝令が来て、この後どうするか聞いてきた。
どうしよう。
このまま攻め込んでもいいけど、城の門はあれ一つのはずは無く、まだいくつも城門を超えないといけないから、俺は躊躇していた。
「とりあえず某それがしは大手門の確認に行ってきます」
半兵衛さんが俺にそういうと、俺もにわかに興味が出てきた。
本当に木をくりぬいただけの大砲が使えるのか、その成果が気になった。
「あ。ちょっと待って。
俺も行こう」
俺は数人の護衛を伴い、今壊したと報告のあった大手門が見える位置まで来ている。
「確かに、壊れたね。
あの距離で使えるのなら、あれでも十分に使えるかな」
「ええ、今まで考えられないくらいに有用です。
城攻めで、門を壊すのにどれほどの犠牲を伴うか。
それをあれがわずかな犠牲だけで簡単に壊すなんて」
今俺の横にいる大砲製造の責任者が得意げに俺に解説してくれる。
しかし、彼の云う犠牲って、責任者が耐久性などの情報を正確に知らなかったために自爆したんだよね。
大手門攻撃による犠牲と言えるか微妙だと思うんだけど、彼は気にしていない。
そこは気にしようよ。
完全に労災事故だよ。
現場責任者と大砲製造者の責任だけで、城攻めの指揮を執る人には責任は無いよね。
まあ、いいか。
「この後どうしようかね」
「大手門攻略が犠牲もほとんどなく済みましたので、一挙に攻略しましょう」
半兵衛さんが、俺に提案してきた。
俺としては初めての城攻めなので、城攻めの要領がつかみきれいていないけど、それでも前から聞いている説明ではとにかく城攻めでは、城に入るまでが勝負だとか。
門を攻めるときに一番の犠牲が出るもので、今回はそれがないだけにすぐにでも攻略ができそうだといっている。
従来の城攻めでは、門が攻め落とされたのならば間髪入れずに多くの武将たちが城の中に攻め込んでいくものだそうだが、そこは今俺が止めている。
とにかく犠牲は少ないほどいいのだ。
もともとここは力攻めの予定にはなかった場所だ。
「わかった。
ここは、囲うだけでも一乗谷が落ちれば簡単に降伏するから良いとは思ったのだけど、大手門が壊れた以上、攻めない手は無いね。
ならば、大手門から攻め込んでください」
「わかりました」
「城兵はどうしますか」
「城兵の扱いってどうなっていますか」
「決めておりません。
中将殿が降伏をお認めになるかどうかだけです」
「わかりました、降伏するのならば認めます。
あ、それに女子供には一切の暴力は禁止します。
刃向かってこちらに攻撃をしてくるのならば反撃は認めますけど、できる限り最小限でお願いします。
無傷で捉えられれるのが理想ですが、そこは現場の判断に任せます」
「それならば、大手門の反対側にある搦手門の囲みを少し減らしましょう」
城兵の皆殺しや捕虜とするつもりがないのならば、いっそのこと逃げられるようにしたらというのだ。
古来より『窮鼠猫を噛む』の喩たとえがある通り、逃げ場がないと人は必死になるから被害が大きくなる傾向にあるとか。
ならば逃げられる環境を整えて、反撃する意思を削いでしまえば簡単に攻略が成るとう。
俺としても捕虜など面倒でしかないので、その策を執ることにした。
あとは現場というか、半兵衛さんたちに丸投げだ。
それから、それほど待たずに金ケ崎城の天守辺りから雄叫びが、もとい、勝鬨が聞こえてきた。
城を落としたらしい。
俺としたら、ここで足止めは正直ありがたくない。
あと処置に時間を取られたくなかったので、金ケ崎城について藤林さんに兵をつけ全部丸投げして、軍を先に進めた。
朝倉兵が姉川から組織立って引き上げているのではなかったので、脱走する兵など多数出ていると聞く。
なので、少しばかり時間がかかっても朝倉からの反撃は無いとは思うのだが、それでも籠城などの準備が整うと、攻めるのが厄介になる。
金ケ崎の処理のために兵を残したので、こちらの兵数は一万を切って八千ほどまで減っているが、問題は無いだろう。
何せ、まだこちらの攻撃の主体に孫一さんが率いる精鋭の鉄砲兵が千以上いる。
俺たちはどんどん北國街道を北上していった。
敦賀の金ケ崎を抜けると、越前の鯖江までは山道の連続だ。
正直行軍にはきついが、逆に言うと鯖江までは俺たちを遮るような砦や城などはほとんど存在しないので、俺たちは進むだけだ。
鯖江まで来ると平地が広がり、もし朝倉の反撃があるのならばこの辺りであっても不思議ではない。
俺はもともとが小心者なので、びくびくしながら半兵衛さんにそのあたりを聞いてみた。
「中将殿。
中将殿が言われる通り、反撃するだけの余力があるのならばこの辺りで一戦もあるでしょうが、まずもって、それは無いでしょう。
朝倉に余力があるとは思えません」
「ならば、安心して先に進みましょうか」
さすがに朝倉に俺たちを退けるだけの余力があるとは思えないが、それでも先に斥候は出してある。
その斥候の一人が戻ってきて、半兵衛さんに報告している。
「中将殿、福井辺りまではまとまった兵はいないそうです。
隠れるにしてもこの辺りは平野も広がり隠れようにありませんから、奇襲もまずないと判断します」
「なら、急ぎ先に進みましょう。
ちょっと嫌な予感もしますので」
とりあえず斥候だけは急ぎ一乗谷に向かわせた。
その後、一乗谷に向かわせた斥候から人の醜さというか、なんというか、とにかく嫌な報告を聞かなくてはならなくなった。
一乗谷はまさに地獄だったようだと云う。
長く栄華を誇った一乗谷は今まさに乱取りの被害にあっているとか。
さすがに大店には護衛の者がいるので、その護衛とどこから湧いたか知らない兵士との間で戦いまであるという。
一乗谷を直接目にした斥候の話では、乱捕りをしているのは姉川から逃げてきた朝倉の兵だという。
流石に一緒に逃げている朝倉の当主もいるはずだからあり得ないと俺は反論してみたが、どうも、当主だけでなく有力武将までもが、今、一乗谷には居ないようだと云う。
居城で殺されたのか、はたまた逃げて他に行っているのか知らないが、一乗谷に残された庶民はまさに地獄のありさまだとか。
今まで栄華を誇っていただけに、悲惨さが際立っているらしい。
敵が勝手に滅ぶのは、それこそ敵さんの勝手だとは思うが、そのままにしておく訳にもいかず、俺は急ぎ兵を一乗谷に向かわせ、俺も本多さんに守られながら急ぎ一乗谷を目指した。
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