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第七章 公家の政
第二百六十一話 坂本
しおりを挟むそれに、この後についても、信長さんや糞親父にも相談がしにくい。
両者ともそれぞれに敵を抱えており、領地を長く離れる訳にもいかないのだ。
そういう意味でも、あの時の越前攻めは最後のチャンスだった。
それでも、しっかりと甲斐武田や一向宗に興福寺、それに三好の残党までもが動き出していたそうだ。
この時には、俺が彼らに貸しだした大砲部隊が大活躍をして事なきを得たと聞いているが、いつまで俺たちが有利に戦えるかわからない。
どうせ戦国チートの連中だ、そこまで考えなくとも大丈夫だろう。
やられたら次にはきちんと対策を練ってくる人たちなのだから。
それよりも俺が彼らに応援を頼んでばかりはいられない。
逆に俺の方から援軍を出さないといけなくなるかもしれない。
まあ、幸いなことに俺だけでなく信長さんにとっても伊勢には敵がいなくなっている。
現状ではせいぜい九鬼さんの持つ海軍衆が、瀬戸内や知多それに三河以東の海賊連中と小競り合いがあるというが、それとて九鬼さんたちが使っている帆船には全く歯が立たないそうだ。
海では当分は問題ない。
それに何より、九鬼さんたちには、ハード面だけでなくソフト面でも彼らを凌駕している。
九鬼さんが率いる海軍衆には、海図や羅針盤それに六分儀まであるのだ。
とにかく沖に逃げれば彼らはおってこられないが、俺たちは沖から彼らをいつでも襲えるのだ。
もう、これは彼らにとってチート以外にないだろう。
そのおかげもあるが、伊勢では内政に全力を挙げて取り組んでいるので、伊勢からは各地に応援をいつでも出せる余裕があるという。
まあ俺はその九鬼さんたちの好意に全面的に甘えているだけなのだが、九鬼さんたち伊勢衆がいなければとっくに俺は立ち行かなくなっているのも現状だ。
しかし、京周辺は難しい。
とにかく落ち着かない。
すべての元凶が叡山と本願寺にあるのだが、あいつらをとにかくどうにかしないと俺には休まる間もできそうにない。
「とにかく先に坂本を抑えますか」
「どうしますか。
いきなり攻め込みますか」
「いや、大義をきちんと明確にしてから攻め込みましょう。
そこで叡山がおとなしくなればいいのですが、それでも変わらなければ、叡山もいずれ攻めます。
いや、焼き落とします」
「殿も覚悟を決めましたか」
「ええ、特に叡山は頂けない。
あそこは、そもそも鎮護国家のために建立された寺なのに、国を滅ぼさんとしていること自体がおかしいでしょう。
自分たちで、自分たちの存在意義を否定していれば、俺たちがやらなくてもいずれ他の誰かに焼かれますよ。
どちらにしても坂本を抑えてからの結果次第ですがね」
「わかりました。
して、時期は」
「春には攻めたいので、準備だけでもしてください。
大義については、そう遠くない時期に叡山の方から作ってくれます。
我々はそれを待ってすぐに攻め込みます」
坂本の町は、先の大戦で俺が抑えていることになっているが、その多くを叡山関係者が抑えている。
今回の作戦はその関係者の一掃を図ることを目的に準備を進めることになる。
計画は既に俺の中でできている。
あとは叡山から強訴で神輿が街に降りてくるのを待つだけだ。
平安の時代から散々迷惑をこうむっているようだが、一向に対策が打てずに現在まで来ている。
当然叡山の方でも高をくくって、すぐに強訴に訴えているので、京の町では叡山のみこしは珍しくも無くなっている。
俺は、そこに目をつけているのだ。
正直楽しみでもある。
そもそも京の町を騒がせば、検非違使である俺の領分で処分できるし、そのつもりでもある。
俺が、考えていたよりも早くその機会は訪れた。
俺の予定では春先までに大義を設けて坂本に攻め込む予定だったのだが、春までもたなかった。
本当に叡山の連中はこらえ性がない。
最近の俺たちの様子が気に入らないのか、ついに強訴に出てきた。
俺たちというよりも俺は陛下により京の治安を守るよう命令されているのにもかかわらずにだ。
あいつらは、陛下の希望に真っ向からケンカを売ってきた。
陛下は少なくとも京の町だけでも平穏であれと俺に京周辺の治安維持を命じて来たのに、俺がやっとこさ治安をかろうじて回復させた矢先に、治安を乱すために要求とも言えないような要求を突き付けて強訴してきた。
なんだよあいつらは。
京から俺を追い出せと強訴してきたのだ。
とにかく俺は、法に則り一緒に出動して強訴してきた僧兵をその場で捕まえた。
かなり暴れられたが、そこは数がものをいう。
とにかく大勢で、鉄砲まで繰り出しての捕獲劇だった。
その後すぐに叡山から解放の命令が俺たちに来たけど、あいつら何を勘違いしているのかわからない。
そもそもあいつらにそんな権限などない。
確かに叡山のお偉いさんには陛下の親族がいるからとか言っているが、そもそも還俗でもすればまだわかるが僧籍に入ればこの世とは一切のかかわりが無くなるということになっているはず。
そのあたりをつつくとすぐに怒り出して出て行った。
町のど真ん中に強訴で使った神輿が置いてあり、これまた叡山側ではどかしてほしければこちらで抑えている僧兵を解放しろとうるさく言ってくるが、とっくに神輿は俺たちが片付けた。
そもそもなんだよ。
神輿って神様の乗り物だよな。
俺の記憶が正しければ、神様関連の物のはずなのに、なんで仏様に仕える僧兵が使うんだよ。
俺は、遺失物扱いで半年くらい預かってから処分すると京の町衆に布告を出したら、あいつら何を取り違えたのかそうとう慌てて総出で坂本の町で暴れ出した。
坂本の町を人質にして罪人の僧兵と神輿を取り戻そうとしているらしい。
「これで、坂本の町の掃除をする大義ができたわけだ」
「準備は滞りなく済んでおります」
「では、打ち合わせの通り、坂本からあいつらを一掃しましょう。
陣頭指揮は頼みます」
俺は孫一さんに頼んで、坂本に巣くう僧兵たちを一斉に検挙に出た。
俺は一応警察組織なので検挙を行う。
まあ、この時代ですから暴れたりすれば事故も起きますから死傷者が出るのは容認している。
現代社会では許されないだろうが、この時代ならしょうがないだろう。
検挙者全員が死んでも、それは事故だ。
孫一さんはいきなり鉄砲を撃ちながら坂本の町に入っていく。
暴れている僧兵たちに問答無用で、鉄砲を放つ。
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