名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百七十七話 御前会議

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「良いところに気が付いたな。
 葵の言う通り、俺たちには絶対にその方が楽だし、何よりよく考えてある。
 今までの習慣での禄高は配下武将の地位も表しているからいきなり全部を銭には代えられないが、禄高をきちんと俺たちが決めておけば配下も他の武将たちに対しても何ら後ろめたい気持ちにもなるまい。
 すぐに始めてほしい。
 越前にも導入していきたいので、そのあたり越前を任せている藤林さんや孫一さんとも相談して今年から導入していこう」

「我らはいかがしますか」

 九鬼さんから質問が入る。
 伊勢の政はモダンな俺たち風で進めている部分もあるけど、古くからいる地頭も多数抱えているので、武将の俸禄は旧態依然だ。
 一応全員に領地を割り当てているので、急には代えられないだろうが、いずれはそろえていく必要があるだろう。

 そのあたりを気にして九鬼さんが聞いてきたのだろう。
 孫一さんをはじめ藤林さんも半兵衛さんも伊勢には自分の領地があるのだが、俺に毒されたのかどんどん考え方が合理的になっている。
 ひょっとして完全に俺の配下のつもりでいたりして。

 まあ、いいか。 
 それよりも伊勢についてはどうしよう。

「そうですね。
 伊勢についても考えていかないといけないでしょうが、とにかくまずは若狭と越前で試してみて、結果を見てから導入しましょう。
 できれば伊勢の武将たちから自分の領地を自分の判断で返還したのち銭払いを申し出てもらう方が理想です。
 なに大丈夫だと思いますよ。
 今以上商いが盛んになっていけば銭の価値も皆に知れ渡るでしょうから、自分たちから言ってきますよ」

「そうですか。
 できれば私だけでもと思っていましたが」

 いやいや、流石に大名が領地無は無いでしょう。

「九鬼さんは配下が全員変わってからですかね。 
 流石に大名が領地無しは無いでしょう」

「殿、空さんが政を率いるのです。
 この国が一つになればすぐにそうなりますよ」

 それを聞いたみんなは一様に納得したようであった。
 そりゃそうだ。
 確かの俺たちは皆一癖もある人たちばかりで、この時代の感覚で言えば変わり者たちばかりになるが、それでも葵の提案は非常識ともとれる内容だ。

 確かに扶持米制度もあるが、それをより合理的にまでしたような案になる。
 元々扶持米も知行をあたえるまで行かない下級武士にしか適用されていないとか聞いていたしな。
 知行にしても扶持米にしても結論から言うと、コメを誰が両替するかの違いにはなる。

 葵の言う銭払いは、その先が違う。
 俺たちの案は将来的には皆銭払いの契約にしていこうというものだ。
 ここに集まった全員がそれを理解しているから驚くと同時に理解を示してくれたのだ。

 いきなり人事制度の大幅な改革を進めようとしているのだから、細かな調整には時間がかかる。
 ここではとにかく葵と半兵衛さんに丸投げで、とにかく試すことで話し合いを終えた。

 最後に自分たちの人事制度について話したためにみんなの興味が全部持っていかれたような形にはなったが、数日後に主上への挨拶と称して集まってきた信長さんたちとの話し合いで、日本の政についての調整がもたれた。

 まだ御所の修繕は終わってはいないが、それでも主上の周りと、政をする部屋くらいまではきれいに修理が終わっている。
 もっと早くから修理をすればとっくに終わっているのにとも思わななくもないが、近衛たちが横領してくれたおかげで、あいつらを排除できたと思えば安いものでもある。

 主上のあいさつの後に武家の代表としての信長さんや松永さん、公家側から太閤殿下と山科卿、それに俺と五宮が集まってこれからの日本について話し合うが、本日は特別に東宮もこの席に参加していただいた。

 今後は主上や東宮を頂点として政をしていきたいと考えていただけに非常に助かる。
 俺が直接主上たちに持ち掛けた話ではないのだが、主上辺りには太閤殿下や山科卿辺りから話が入っているようで、俺の考えに主上も賛同していただけているようだ。

 基本はここでの話し合いでの政として、何があっても結果責任を主上や東宮まで上がらないような工夫は必要だ。
 その意味でも議長としての参加はありがたい。
 あくまで政庁のトップではなく会議体の進行役としての天皇家という位置づけだ。

 結果的には昭和の御前会議のような感じになってしまうが、受ける側が違うから昭和のような失敗にはならないだろう……と思う。

 東宮を招いて第一回目の話し合いは始まった。
 御前会議と俺がこぼしたのを山科卿が聞き逃さず、話し合いの名称が『御前会議』と決まってしまったのは愛嬌だ。

 で、話し合いのメンバーは当分このままとして、武家側からは九鬼家からも人を出し三人とし、公家も太閤殿下と山科卿、それに俺を含め三人で武家と公家が対等な関係で話し合うとして決まった。

 将来的には御前会議に出席できる人間の資格として官位を使うようにしていくと太閤殿下から提案があり、殿上人が参加できる大会議とこのメンバーでの御前会議の形式で落ち着いた。

 形だけは政を行う形はできた。
 基本は幕府を廃止して朝廷の復活になるが、朝廷の中身が変わる。
 各地にいる大名たちに対しては朝廷の権威を使い惣無事令を東宮発案で、綸旨では無く主上からの勅令で出してもらい、畿内から近い順番に違反者を朝敵として俺たちが討伐していくことになった。

 第一回の御前会議で京からすぐの播磨の国に対して惣無事令が出された。
 俺の知る惣無事令は秀吉が全国に対して出したものだが、流石に俺たちが全国に対して惣無事令を出しても九州や東北なんかに討伐軍を出すことができない。

 力ない朝廷と馬鹿にされるのが落ちだ。
 だから、俺たちがすぐにでも軍を出せる付近に対して戦の禁止を朝廷より勅命で出してもらった。

 この時代好き勝手に戦ばかりをしているように思われるが、確かにそういう部分もあるにはあるが、たとえ屁理屈と言えでも一応の開戦の正当性をうたうように大義が叫ばれる。
 大儀無き戦も数多く発生しているが、そういうものは周りから笑われる。
 甲斐の武田など大義など無く周りに戦ばかり吹っ掛けていたようだが、それでも領民を救うという大義が自国内にはあった。

 まあ、ほとんどの戦が同じようなもので、どこも貧しく飢えているから戦が無くならない。
 俺たちは、どうにか領内から飢えをなくすのに成功しているので、屁理屈のような大義はいらないし、領地を増やすだけの目的での戦などしたくもないが、この日の本をまとめる以上、全ての大名が朝廷に従ってもらうために力を示さなければならない。

 その手始めに、手ごろな小国だけの播磨がターゲットのなっただけだ。
 播磨なら俺と大和の弾正あたりから兵を出せるので、大兵力で一気に落とせるし、落とした後も弾正に任せてしまえるメリットもある。

 正直俺はこれ以上領地要らないし、面倒ごとはできる大名に。
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