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第七章 公家の政
第二百八十話 まともな人材
しおりを挟む「帰順をお認めくださる……ありがとうございます。
また、さっそくうちの息子を召し抱えてくださるとは光栄の至り。
孝高、中将殿のところでしっかりと学ぶんだぞ」
「はい、父上」
そう一旦は自分の父親の方に返事をしてから俺の方にきちんと向き直り、頭を下げてきた。
「若輩でものを知らぬ田舎者ですがよろしくお引き回しください」
「若輩って、私よりも年上だろうに。
何よりうちは成り上がりの家だから、他からの圧が強くある。
とにかく何かあったら自分だけでどうにかせずに、周りに相談してほしい。
先にも言ったが、うちは成り上がりでどうしても軽くみられるが、それでも協力者には大御所たちも多い。
何より主上や東宮といったこの国の人なら絶対に逆らってはいけない人たちも私らに協力的だ。
他家とは大きく違うから戸惑うことも多いでしょうが、とにかく報連相を大切に」
「報連相??」
「報告、連絡、相談の略だ。
あ、それとうちは性別に差を設けていない。
君の上司に女性がつくこともある……というかうちでは絶対に逆らってはいけない人たちは全員が女性だ。
皆俺の妻だがな。
その妻たちはみな仕事を任せているから、戸惑うかもしれないがとにかく頑張ってくれ」
「奥方たちにも政に参加なさっているのですか」
「ああ、彼女たちがいなければ俺は生きてこれなかった。
当然、女性なので戦には出ていないが、政特に財政については誰にも負けていない。
うちは民の扱いには彼女たちが中心で政をしているから、そのつもりで」
俺が奥さんズについて説明すると、目の前の二人がいきなり頭を下げてきた。
これって、俺の言い分をそのまますべて受け入れるってことだよね。
さて、小寺か黒田かわからないが、どっちかにしてもらおうかな。
「して、今後だが、まずが家名についてだ。
先のあいさつでは小寺改めとか申しておったが、これからは黒田と申せばいいのか」
「はい、小寺家から離れたことで、小寺を名乗れません」
もともと黒田と称していたようなのだが、小寺の当主から名をいただいたようだ。
なので、その小寺家から離れたので、前の黒田を名乗るらしい。
俺の知る歴史でもそんなことを聞いたことがあった。
偉そうに歴史といったが、大河ドラマで知った程度の歴史なので、どこまで正確かは知らないし、何よりすでに大河ドラマで出るような歴史からは大きく外れている。
何せ今年がまだ永禄を名乗っているのだ。
元亀がどこかに行ってしまった。
一通りの説明を俺から終えて、黒田さんちの嫡男はすぐに若狭に向け出発させた。
葵のもとであの石高銭払い制を手伝わせるつもりだ。
今回俺たちがターゲットにしている播磨の地は天領扱いにするつもりなのだが、その管理は俺たちが受け持つことになるので、ここも先行して始めてしまおうと考えている。
本当は広く官僚や軍人を募集して、すべて銭雇にしておきたいが、この時代ではそんなことが許されない。
この時代でも傭兵や浪人ならばいざ知らず、地頭や武士といった人たちは地元民の目もあるしなかなか変革はできそうにない。
それでもしないと行き詰まるのは必至だ。
お隣の中国などは科挙なんかは割とこれに近いと思うんだが、まあ、あちらさんは公的な収入よりもはるかにでかい収入があるので、権限以外にあまり興味を持たないとか。
あまり知らない世界のことを考えていても仕方がないので、現実世界に戻すと、五宮が部屋に入ってきた。
「空さん。
新たな公家たちの選別が終わりました」
今五宮には播磨統治に向け公家たちを選別してもらっている。
すでに、文化財保護を名目に図書寮を配下においており、そこで手伝ってもらっている下級公家たちのうちで、柔軟性のある者たちを選別してもらっている。
それがひと段落したようで、俺に報告してきたのだ。
「それはちょうどよかった。
すぐにこの方たちを越前の張さんのもとに向かわせて。
俺から張さんには手紙を出しておくから」
「いきなり張様ですか。
あの~……大丈夫なんでしょうか……」
五宮はかなり歯切れが悪そうに聞いてくる。
「大丈夫だと……思うよ。
だって、すでに地元の地頭たちも使っているようだから。
多分、死にはしないよ。
張さん、優しいし」
「優しいのは空さんだけでは……」
最後には聞こえないくらいの小声でとんでもないことを言ってきた。
そんなはずないよ。
それに何より十分に教育されている公家ならば問題ない。
学の無い葵や幸も立派に育ったのだ。
張さんの薫陶をまともに受けられないような連中には今後の政は無理だと俺は思う。
まあ、報告のあった公家たちをここから船で安土まで向かわせて、安土からの定期船で北岸にある小さな港まで船で向かわせる。
琵琶湖の北岸からは峠越えはあるが、峠を越えればほとんど越前に入る。
3日もあれば張さんのもとに着くだろう。
彼らがついたら張さんのもとで修業中の連中のうち仮免くらいのものを借りて若狭に向かわせる。
正直人材が枯渇しており、そろそろ真剣に子供たちを使わざる得ないかも。
本当ならばここ京で余っている公家たちを使いたかったのだが、上位に行くほどまともな公家たちは少なくなるように思われる。
やれ本家は陰陽を占うのを生業としており、由緒正しき家なのだなどと宣い、何もしようとはしない。
それでいて、なんでもよこせとやたらと無心ばかりしてくるような連中だ。
陰陽についてはたとえで、財務もあれば式典、その他もろもろで、財務や法律などの家に試しに質問するとまともに答えが返ってきたためしがない。
『お問い合わせの件ですが、天平のころに何某があった』などと古くの言い伝えを返してくるのがやっとで、自分で考えようともしない。
平安中期のころからまともに政に取り込んでこなかった付けだとは思うが、あまりにひどかったので、今ではあてにしていない。
下級で日々の生活もかつかつの公家たちは食べるためには何でもするという姿勢を見せている連中もいるので、彼らに俺たちの手伝いをさせていると、結構真面目に取り組んでくれる人もいるので、今ではそういう公家たちを集めてできる限り各方面で使うようにしている。
まあ、こんな状態は何も公家に限らず、坊主はもちろんだが、実際に政をしてきた侍や地頭たちも俺から見たらあまり変わりがない。
はっきり言って使えない連中ばかりだ。
あと10年待てれば三蔵寺に預けている子供たちも数もそろうのだがって言っても、年々要求先も増え、育成する人とのギャップが年々ひどくなっているような。
それに何より責任ある立場には孤児なんかはいくら俺が無理やり抑えても難しい場面ばかりだし、ここは地道にとはいえ、公家の活用を増やしていくしかない。
何より、一部公家を活用した関係で、無能なものほど不満をためている。
そろそろ本当に抜本的な対策を考えないとまずい。
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