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第七章 公家の政
第二百八十二話 今度は石山本願寺
しおりを挟むそういえば今は落ち着いてはいるが叡山の方もいずれは決着をつけないとまずいな。
は~~、また宗教戦争か。
長島だけ解決すればいいかと思ったのだが、どうもそうはいかないようだ。
俺がこの世界に転移してきたのは宗教に道筋を付けさせるためなのかと思いたくもなる。
俺の知る本来の歴史だと、そういうのは信長さんがしてくれていたのだがって、これって今から信長さんに丸投げってできないものかな……できるようには全く思えない。
あの破天荒な信長さんだって、この時代の大名だ。
俺なんかがかなうはずもない。
その証拠にいいようにやられて越前を押し付けられたしな。
どうも信長さんって天下を取りたかったのではなくて、天下を取らないと世の中が落ち着かないのでやむを得ずって感じだったのではと今では思うことがある。
俺の知る歴史上での話はどうも印象操作をされたようだ。
お市さんから聞く話でも、どうもこの時代感覚では優しすぎる面が多々あるようだ。
俺の知る歴史上での信長さんの役割を俺がさせられているような感覚だが、今の立場では俺がするしかない。
とにかくまずは石山の本願寺だ。
叡山とも決着を詰めないといけないが、まずは本願寺だ。
あそことの因縁は長島より続くし、日ごろからお世話になっている本多さんちの正信さんとこちらも絶対に頭の上がらない玄奘様のことを考えると三河の本證寺から続いていると言えるくらい不俱戴天の仇といえる存在の親玉だ。
でも、あそこをつつくと毛利あたりがうるさそうだし、そういえば東の三傑はどうなったのかな。
今まであまり気にはしてこなかったのだが、越後には謙信がいるし、信長さんとそろそろ領地を接することになるだろう武田信玄もおとなしくしているとは思えない。
その武田さんと本願寺は縁戚関係にあるとかないとか。
やっぱり面倒以外にない存在だ。
そういう意味では関東の北条さんとはぶつかる前に話を通せばどうにかなりそうなのだが、そろそろ北条さんあたりとも話を付けるか。
色々と考えてしまったが、まずは目の前の越前と、摂津の本願寺だ。
本願寺を抑えてから摂津も朝廷に召し上げる。
そうなると三好もうるさくしてくるだろうが、三好については……うん、糞親父松永久秀にでも任せればいいだろう。
自分のところのご本家筋だ。
朝廷に逆らわなければ何もしないでも良さそうなのだが……おとなしくしてはくれないだろうな。
そのあたりについても、また集まって相談しないとまずそうだ。
本格的に本願寺とぶつかる前にでも調整しよう。
結局、越前には一月ばかりいて、完全に越前一国を手中に治めることはできたが、完全に落ち着かせたかというとそうもいかない。
これからは内政にもっと力を注がなくてはまずい。
それに、越前と領を接する加賀の状態も相変わらず良くはなっていない。
徐々にではあるが、加賀の一向宗にも三蔵寺派の寺も増えてきてはいるが、どうも加賀には石山派とは別に加賀派と呼んでも良いくらいに好き勝手している集団もありそうだ。
一応は石山本願寺派にはなるのだろうが、俺たちが石山本願寺との経路を抑えていることもあり、本願寺のことを快く思っていない集団もあるのだろう。
それも一枚岩位にまとまっていてくれればいいのだが、結構バラバラな様子で、かえって状況を混乱させている。
越前から能登にかけてはもう少し時間をかけるしかない。
どこまで越後の謙信さんがおとなしくしてくれるか不明だ。
まあ、近衛とのクーデターの折にはこちらの思いを最低限は聞いてはくれたのだ。
今更朝敵として俺たちの前に立ちはだかることは無いと思いたいが、まずは情報の収集だ。
これは藤林さんに頼まないとまずいのだが……俺から頼んだらそろそろ切れそうだな。
うん、一度京に戻り望月さんあたりとも相談しておこう。
一月ばかり京を留守にしていたが、やっと自分の屋敷に戻るとお市さんが信長さんからのお手紙をもって相談しに来た。
なんでも、木曾あたりがキナ臭くなっているとかで、協力を求めてきている。
俺らから兵を出せと言っているのではなく、砲兵部隊を貸してくれという話だ。
それも、木砲兵を名指ししてきている。
そりゃそうだ。
今度は木曽路だ。
あの峠ばかりのところに大砲は向かない。
移動に難儀するからだ。
移動中に襲われれば簡単に崩される。
第二次大戦中の戦車でもあれば別だが、ナポレオン時代の大砲ではヨーロッパでは使えてもここ日本では、それも山岳地の木曽では無理だ。
だが、木砲に欠点が無いとは言わない。
とにかく、砲身に気を使わないとまずい。
頑丈そうな木を選んで作ってはあるが、それでも砲身が木だ。
耐久的に問題しかない。
戦でつかっても数発撃てれば御の字といった感じか。
使いどころが難しい。
そのあたりどこまで信長さんが理解しているか不明なので、運用まで含め俺たちが請け負わないとまずい。
そのあたりをお市さんに説明して返信してもらっている。
ひとまず俺は賢島に向かい、木砲の使い手からなる部隊を編成した。
木砲は材料が木でできているだけあって作るのにはそれほど手間はかからない。
しかし、肝心の木の方に問題がある。
もともとから火薬の爆発を利用するだけあって金属に匹敵する強度が必要だ。
木の補強として金属で作った輪をいくつか使うが、それでも木自体に強度がいる。
そう、使う材質に神経を使うのだ。
樫あたりを使っているが乾燥まできちんとした樫の木というとそう簡単には入手はできないので、今まで作ってある砲をすべて使うことにした。
倉庫の隅々まで探させてどうにか百はそろえたが、まあ、実際に運用できるとなると予備も考えて4~50くらいだろう。
城門破壊だけならばそれこそ20もあればどうにかなるので、砲兵40人をそろえて、木砲百を持たせ、安土に向かわせた。
俺は一度京屋敷に戻り、本格的に石山本願寺対策に入る。
まずは門跡にあたる顕如は九条家や三条家とのつながりが強い。
義父である太閤の伝手を使い寺の明け渡しの交渉を始めるが、これはたぶん無理だ。
代わりの寺を元本願寺のあった山科に俺が作ってやってもいいのだが、焼き討ちされた歴史があるだけに受け入れないだろう。
こちらからいくら安全を保障してもだ。
次に主上より綸旨をもらい、それを使う。
さすがに綸旨を使ったら話し合いには応じてくれたが、それでも背後に毛利や近衛が控えているだけあって、おいそれとは俺たちの言い分を聞こうとはしてくれない。
いよいよ戦を覚悟しないとまずいかな。
本願寺の強みは強力な絆でつながっている各地の信者だ。
しかし、三河では前の暴走で完全に本願寺の勢力はない。
正確に言うと政に歯向かうだけの気合の入った勢力は駆逐されている。
同様に伊勢の長島も、長島に限らず伊勢国内では三蔵寺派に本願寺派がとってかわられて、石山本願寺の指示で一揆など起こりそうにない。
俺たちの勢力下では越前に不安は残るが、それでも徐々にではあるが石山本願寺派は減少している。
ここで一揆など扇動しようものならば三河、伊勢に続き完全に越前から追い出されることは必至だ。
俺たちにも痛みは当然発生するが、それ以上に本願寺側の方が分の悪い状況まで持ってきている。
これは俺がこの世界に移ってきてから何かと世話になっている上人様のおかげだ。
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