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第七章 公家の政
第二百八十三話 あっけない決着
しおりを挟む何せ長島の悲劇を防ぐために新たな派閥を上人様に作ってもらったのが、ここにきてまた効果を上げている。
何も知らない領民にしたら、同じ一向宗なので、一揆をやたらと扇動してくる寺と、日ごろから何かにつけて世話してくれる寺ならばどちらに着くかは一目瞭然だ。
領民からしたら誰も不幸にしかならない一揆などしたくはないのだ。
しかもその理由が自分たちに関係ないとあってはなおさらだ。
それでも俺たちが本願寺を攻めたら、あっちこっちで一揆を仕掛けてくるだろう。
俺は今領内の寺の勢力をまとめさている。
石山本願寺派閥の強い地域を優先して派兵したのちに本願寺を攻める算段をつけた。
いよいよ石山本願寺を囲うために出陣となる直前に主上から勅使が本願寺に入ると連絡を受けた。
主上も俺たちの戦いを避けたいというお気持ちの表れなのだろう。
今回の勅使について俺は知らされていない。
俺の他に太閤あたりがとも考えたのだが、それも違ったようで、純粋に主上のお気持ちから出た行為のようだ。
俺は勅使が動いている以上、勅使が京に帰るまでは何もできない。
それほど待たされることなく顕如は本願寺を破棄することに同意して勅使と一緒に京にやってきた。
今回、本願寺を破棄するにあたり彼ら側から出された条件はすごく穏当なものだった。
当然費用の掛かる話で、勅使が持ち帰った条件について俺は主上から呼び出された。
何せ朝廷はどうにか自活ができそうになったばかりの状態なので、持ち帰った条件を履行するだけの予算はさすがに出せない。
早い話がお金の無心だが、兵を損じることなく治められるとあっては一にも二にも俺はできることを全力で行うと主上に約束した。
本願寺から出された条件というのは、山科ではなく洛中に本山が欲しいとのことで、令和の世でいう東寺を作ることにした。
ここで家康に倣うわけではないが東寺と挟んで向かい側に西寺を作り三蔵寺派を置くことにした。
いやがらせではないが、許してほしい。
何せ、本願寺の出したもう一つの条件に身の安全の確保があった。
本願寺は前に焼きだされた経験から叡山を相当警戒している。
その叡山の攻撃から自分らを守ることを条件に入れてきたのだ。
これは俺にとっても悪い話ではない。
そもそも、気に食わないからってほかの宗派の寺を焼くってことを許せるはずがない。
東寺を守る意味でもより叡山に近い方に俺に関係の深い寺を用意する。
ここを襲えば、それこそ俺は大手を振って叡山をこの世から抹殺できる。
政に口を出す宗教勢力なんてそれこそ百害あって一利なしだ。
それに、本願寺が片付けば、今度は本格的に叡山との対応を始める。
主上からの命を受けた形をとり、西も東も同時に寺を作っていく。
でも、西寺があったのは本当に東寺の西だが、俺が作ろうとしている場所が東寺の東になるが、名前を変えないとまずいな。
東東寺とでも呼ばせようか。
まあ、名前は置いておいて、とにかく二つの寺を同時に作り始めた。
二つの寺の造営については上人様を京に呼んでお任せしてある。
もうかなりのお年なのにいい加減楽させてあげろやって声が聞こえてこなくもないが、申し訳ないがもうひと働きを頼んである。
とにかくこれで本願寺の件は解決したことにはなる。
がしかし、実際に本願寺が破棄されるのは東寺ができてからだ。
なので、本願寺については監視程度に兵を置く。
その間は播磨の攻略の他に摂津攻略も始める。
また、叡山についても何か考えないといけなくなった。
とにかく早く、畿内を完全に落ち着かせて、少なくとも惣無事令を全国に出せる状況だけは作っておきたい。
俺は、できるだけ早い段階で、関係者を集めた。
当然集まってもらうのは、朝廷側からは義父の太閤殿下と山科大納言、それにうちから俺になるか。
これだけ見ても俺以外では層々たるメンバーだとはいえるが、京に居を構える公家だけあって、数日あれば集めることくらいは容易だ。
さすがに主上となるといくら朝廷のトップとはいえ、理由なくご招待はできないし、朝廷内でも会議に呼ぶことも憚られる。
東宮にはお声はかける。
万に一つの可能性の話だが、東宮殿下の参加があれば、完璧だ。
可能性としては主上ほどではないが、まず無理だろう。
歴史の培った重みというのが俺たちの集まりにはないので、明らかにバランス的に釣り合っていない。
その辺の慣習も変えていくことも俺たちの目的にはあるのだが、それは追々考えていく。
問題なのは武家の方だ。
現状、俺たちの武力を持っているのは伊勢勢の他には信長さんと大和の弾正だ。
伊勢勢は俺が実質的に頭にされているから、呼ぶのに問題は無い。
問題になるのが残りのお二人だ。
信長さんも木曾対策でお忙しいさなかだし、弾正さんにおいても領内の宗教勢力対策で忙しくしている。
最近では興福寺の僧兵がまたぞろ騒ぎ出しているとか。
前に応援依頼をされた時に大砲で完膚なきまでたたいたはずだが、簡単には落ち着かないらしい。
とにかく面倒しかない。
そのお二人を今度は代理で済まされないように事前に調整する必要がある。
簡単にお二人のご予定を調べても半年近くは身動きが取れそうにない。
あまりここでぐずぐずしていようものならば山陽方面から毛利が出しゃばってきそうだ。
そうでなくとも最近、毛利は朝廷に働きかけを活発にしているとか、前に聞いたことがある。
俺たちが進める合議での政に、今の段階で毛利を入れるわけにはいかない。
毛利が何を目指しているのは全くつかめていないのに中に入れるとまずい。
まとまるものもまとまりが無くなる。
最終的には、各地の大大名も合議には参加させるが、当面は彼らには俺たちの計画を伏せておく。
そうでないと政の仕組みができてもいないうちから地位や実利を要求してくるのが見えている。
たださえ、現状貧しいこの国では、一部にそんな飴を出せるはずもない。
毛利はそんな大大名の一つで、俺たち貴族との合議には参加させる資格もないと俺は考えている。
当然そのあたりについても、そろそろ集める関係者に協議してもらう必要を感じてはいるが。
まずは播磨だ。
それと俺には若狭と越前の宿題も残っているが、若狭をできるだけ早い段階で治め、摂津も本願寺が立ち退くのと同時に一挙に朝廷の傘下に収める。
そのための軍事力を用意するための打ち合わせでもある。
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