名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百八十八話 渡る戦国の世は面倒ばかりだ

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 播磨は俺の想定通りか、やや早いくらいで統治が進んでいるので問題ないが、摂津の豪族たちが問題だ。
 最大の勢力を誇った本願寺がいよいよ摂津を出ていくと聞いた彼らは相当慌てたようだ。
 気の早い馬鹿どもはまだ何も変わっていないのにも拘わらず本願寺に攻め込むものまで出る始末。

「豪族が本願寺に攻め込むのなら、こちらで処理をする」

 これは、本願寺との約定で俺たちには関係ないとばかりに無視はできない。
 本願寺との約束で、武力を持っての争いには俺たちが守ると言ってはある。
 だが、その約定は本願寺を明け渡した後に条約発効になると俺は考えているが、まあ、相手も相手なのでこちらからすぐに鎮圧の兵を出してそのまま攻め込んできた豪族を潰していく。

 本願寺の明け渡しをもって摂津の攻略を始める予定が馬鹿どものせいで予定が早まる。
 豪族討伐の方は、当然と言えば当然の話で、簡単に処理できた。
 ついでもあるので、討伐した豪族はそのままお取り潰しで俺たちが直接統治することにしているが……
 忙しいさなかに面倒ばかりだ。

 面倒でもどうにかこうにか時間を作り処理していると、更に他からの面倒ごとが……

「殿~、一大事でございます」

 そう駆け込んできたのは雑賀衆の一人だ。
 ものすごい勢いで駆け込んできた雑賀衆の一人は、とんでもないことを言ってきた。

「明石氏がこちらの条件を知った上で、こちらにと」

 かなり表現に気を使っているようだが、本願寺の一件でかなり危機感を抱いているようで、また、播磨の豪族たちもこちら側に着いた者たちの扱いがことのほかよさそうだということらしいが、全てを飲んで俺らに属すると言ってきたとのことだ。 
 どういう経緯があるのか知らないが、雑賀と明石とは繋がりがあったという。

 尤も瀬戸内を介しての商売上での話らしいが、そんなか細い伝手を使って摂津でそれなりの勢力を誇る明石が俺たちに降ると言ってきたのだ。
 明石氏は最近になって特に、本願寺に攻め込んだ豪族を潰した後辺りからかなり頻繁に俺に接触を試みていたという。

 俺は先に決めた通り、一切の面会はしてこなかったが、ついにしびれを切らしたのか、孫一さん経由ではないが、俺と付き合いの深い雑賀を通して軍門に降るという決断を伝えてきたという。

 条件は他と一切変わらずで、色を付けるとしたら俸禄の多寡と役職位だが、摂津で最初の大物だし、うちから事務方を出すことを条件に摂津国の治安を任せることで納得してもらい、晴れて明石氏は俺の軍門に下った。

 まあ、俺の軍門と言ってもどこかの大名に属するのとは違って、一応播磨と摂津は主上の支配とする形をとっているので、周りに対しても言い訳も容易いとか。
 そこからは、ドミノ倒しじゃないが、摂津国は播磨以上に速いペースで、攻略が進んでいる。

 少なくとも摂津のほとんどの豪族たちは俺たちに降るということらしいのだが、俺たちの方が追い付いていないので、現状受け入れ待ちの状態に近い。

 しかし、本願寺との件が片付いたら、一挙に摂津播磨両国が落ちたと言える状況だ。
 うれしい反面、2か国を領したことになる朝廷が、というよりも旧勢力ともいえる古い考えの貴族たちが、騒ぎ始めたのは気になる。

 お前ら何もしないでどういう了見だ、と俺は思うのだが、彼らからすれば古からの権利とばかりに騒ぎ出しているとか。
 そのあたりは山科卿が対応しているようだが、最悪国外にでもあいつら送るかとも考えなくもない。

 どちらにしても、先はまだ見えない。
 今更摂津に惣無事令を出すまでもないが、他の国への牽制にもなるらしく、此度出すことになり、それもまた俺を忙しくする原因ともなっている。

 今朝廷より惣無事令を出しているのは摂津が成れば二か国となる。
 和泉や河内などはもう弾正の領地になるし、任せても大丈夫だろう。
 摂津に惣無事令を出す段になり、いよいよ畿内の平定を宣言しようかという空気が朝廷だけでなく、いや、俺らの仲間内からも出てきている。

 俺としては畿内平定宣言などに興味は無いが、どうしても畿内の人には平和宣言の様に受け止められているようで、要は幕府が新たにできて平和になると言った感じで受け止められているとかで、俺にせっついてくる公家たちが最近特に鬱陶しい。

 一度、山科卿辺りに相談しても山科卿の方が俺に対して、『そろそろどうだ』なんて言ってくる始末だ。
 幕府なんか考えるだけで鳥肌が立つくらいおぞましいと思っている。

 鎌倉の世から今まで確かにこの国の政治を司ってきたようだが、あくまでそれは為政者に限り有効である話であって、力のない庶民にとって本当に良い政治だったのかと言うと甚だ疑問が残る。
 鎌倉や室町初期については良く知らないので、コメントすらしないが、少なくとも俺が京に入った時の幕府は反社の連中よりも始末が悪い。

 押し込み強盗が警察官をしているような状況なんか考えるだけで恐ろしい。
 そんな社会だ。
 中央がそんな状況だから地方に行けば行くほど好き勝手をする連中が沸いてくる。

 中には優れた地方領主もいただろうが、ほとんどの者が自分らの欲望に任せておよそ政と呼べないようなことをしている者だから、下に行けば行くほど酷くなる。
 俺は最下層に身を落としたようなものだったから、その時のみじめさは良く知っている。

 あの時は玄奘様や張さんたちのおかげで、そこまでひどくは扱われなかったのだが、それでも周りは酷いものだった。
 それもこれも幕府がまともに政治をすること無しに欲望のまま生きていたためだ。

 俺が京に来てそれがよく分かった。
 だからこそ幕府なんかの臨時役所や令外官を作らずに、律令を改定してもきちんと法の定める役所を作り政をしていきたい。

 そんなことを周りに話しても誰も理解してはくれないが、それでも少しづつだが話は進んでいる。
 これはひとえに主上の直轄領を用意しているからだろう。
 現金なものだ。
 しかし、俺らが用意している播磨摂津の二か国は朝廷領ではなく、主上の直轄領として合議にて政を行う役所が管轄するように動いている。

 しかし、幕府でなく、朝廷でない役所ってなんと呼べば良いのだろうか。
 俺は五宮に聞いてみたが、そんな役所はありえないの一言だった。
 東宮に参加してもらうことを考えているので、皇太子府、いや東宮府、それも違うか。

 それに何より直接東宮が政には参加しないのでそれもまずそうだ。
 結果責任が問われるような事態だけは避けないとまずい。

 となると、政を行う中央の役所って……まつりごと、政治、政の府か……面倒だな、いっそのことそのままでどうだろうが。

「五宮、ちょっといいか。
 そろそろ畿内だけでも政を行う役所を作ろうかと考えているのだが、古よりそんな役所ってあったのかな」

「それ、朝廷では」

「ああ、そうか、でも朝廷はまずい。
 今の朝廷はそのまま残すから……となると……政の府として適当な名前でも考えないとまずいか」

「そのまま、政の府でよろしいのでは」

「そうか、なら言葉を縮めて政府でどうだ」

「政府……ですか、文字にするとそのままですが、言葉の響きも良い感じですね。
 よろしいのではないでしょうか」

 そうだよな、いちいち考えることなく俺の元居た世界から持ってくればいいんだ。
 流石に京都府は無いが政府ならいいだろう。
 実際政府と言う名の役所は存在してなかったし、全く新しい役所だ。
 政府と言う名の役所……いや、それこそ政府を作り、政を始めていけるように準備を始める。

 元から構想だけはできており、有力者の合議により進めていくので、その有力者さえ集めれば問題は無い。
 公家からは俺も含め山科卿と後数人、武家からは畿内に領地を持つ有力者ってことで俺のところの九鬼さん、それに大和の弾正、それと畿内とは微妙な感じではあるが近江にも領地を持つ信長さんだ。

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