4 / 8
第4話 桜と出会う朝
しおりを挟む
次の日の朝、学校に行く時間がやってきた。両親はすでに仕事に出かけ、妹も今日は朝練で早く出た。
球児は家族で最後に家を出る。ただ一人の居候を残して。
「じゃあ、行ってくるけどきちんと留守番してるんだぞ」
「おいっさー」
元気に答えるマルルン。家族は犬でも留守番ぐらいは出来ると言っていたが、この妖精はどこまで信頼できる留守番なのだろうか。
球児はかなり心配だったが、家族が誰も心配していないのに自分だけが心配に悩むなんて馬鹿らしかった。
もう気にしないことにして笑顔で微笑む少女に見送られて学校に向かう事にした。
いつもの同じ道を歩いていると今日は珍しい人を目撃した。
あの同じ学校の制服を着た見目麗しい少女は丸井桜だ。
昨日マルルンを見つけた現場で彼女は虫眼鏡を片手に何かを探しているようだった。
ここでUターンして別の道に行くのも面倒だし、他に人もいないので、球児は気恥ずかしい思いを隠して平然とした大人の顔を意識して道を歩く振りをしながら思い切って話しかけることにした。
「ま、丸井さん!? こんなところで何をしているのを?」
声が上ずったー。だから人と話すのは嫌なんだ。誰かセーブとロードを現実にも実装して欲しい。
球児は失敗に後悔するが、幸いにも桜は何も気にせず、朝から可愛い顔を見せてくれた。
「あ、勝田君。この辺りから何か匂う気がするのよね」
「匂うって何が?」
「探偵としての勘が告げるのかな。何か違う気を感じるのよ」
「今度は気と来ましたか」
「勝田君の親は警察官なんでしょ? 何か気が付くこととかない?」
「僕には特に何も感じないかな」
「そう」
「…………」
気の利いた受け答えが出来ない自分がもどかしい。だけど話せないんだから仕方ないじゃないか。
桜はそれっきり興味を無くしたような顔をしてしまった。球児は選択肢をミスったと感じたが、特にフォローする言葉が見つからなかった。
何かあったら教えてねと送られて、球児は学校へと一人で向かう事になった。
こんな時、リア充なら何か気の利いた話をして一緒に楽しく登校できるんだろうなと思うと、ただもどかしさと悔しさしかなかった。
キーンコーンカーンコーン!
学校にいつもの平凡なチャイムが鳴る。朝から彼女に出会えた幸せと失敗した後悔で沈みそうになってしまうが、これから学校だ。
いつもの平常心で臨もうと球児は姿勢を正す事にする。桜の席は空席だ。まだ調べ物をしているのだろうか。
もうすぐ予鈴が終わって本鈴が鳴ってしまうのだが……と思っている間にも再びのチャイムが鳴って先生が来た。みんな着席する。
教壇に立った先生が出欠を取る。それはいつもの光景だったが……
「丸井ー、丸井桜はいないのかー」
彼女がまだ来ていなかった。今朝の桜は制服を着ていたので学校には来るはずだったのだが、何かあったのだろうか。
球児が心配している間にも先生は落ち着いた動作でペンを走らせようとする。
「丸井桜は欠席と」
「ちょっと待ってーーー!」
先生が出席簿に印を付けようとした瞬間だった。勢いよく扉を開けて彼女が来た。
「いますー! わたしはここにいますー!」
そんな慌てた彼女を見るのは初めてで球児は驚いてしまう。教室がざわめいた。
みんなの注目を集めて恥ずかしそうに顔を赤らめながら、桜は小走りで席に着いた。そして、先生に言われた。
「丸井桜は遅刻っと」
「ふえええ! それはご勘弁をーーー!」
慌てて立ち上がる彼女に教室が笑いに包まれて、先生も笑った。
「今回だけだからな。次からはもっと早く来るんだぞ」
「はいいー」
桜は肩を小さくして席についた。球児は真面目な彼女でも失敗するんだなと思って見ていたが、いきなり振り向いて睨まれた。
「ぎろっ」
その目はなぜ事情を説明してくれなかったとか時間を稼いでおいてよとか語っているような気がしたが、コミュ症の自分に何を望むと言うのだろうか。
別に自分は桜と親しい友達ではないし、今回の不思議の事情が無ければ話をする機会も無かっただろう。
ただ遠くで見ていた存在。自分で思ってて悲しくなるが、それだけの関係だった。
はずなのだが……今日の授業が終わって放課後、帰宅部の自分は荷物をまとめて早く帰りましょうと鞄に荷物をまとめて立ち上がろうとしていると、なぜか桜が席の前までやってきて話しかけてきた。
「ねえ、勝田君。これから付き合ってくれない?」
「え!? 何で俺!?」
美少女で友達の多い桜なら他にいくらでも付き合う人がいるだろうに。驚愕と不思議に思って見ていると桜は不満そうに唇を尖らせて言った。
「みんな部活に行くからって断るのよ。勝田君は暇でしょ。いつもすぐに帰ってるんだし」
「うん、確かに暇だけど」
何か棘の刺さる物言いにムッとしてしまうが、桜を相手に怒ってもしょうがない。それに事実なんだし、自分が悪いのだ。
桜はただ春の陽気のように微笑んだ。
「なら、決定。今度こそ不思議を見つけるよ」
「うん、まだあれを探すんだ」
「誰よりも早く見つけなきゃね」
今更だけど強引な誘いに何でこの人を好きになったんだろうと球児は思ってしまうが。
美少女に笑顔を向けられるのはやっぱり嬉しい物なので、男としては尻尾を振って言う事を聞いてしまうのだった。
球児は家族で最後に家を出る。ただ一人の居候を残して。
「じゃあ、行ってくるけどきちんと留守番してるんだぞ」
「おいっさー」
元気に答えるマルルン。家族は犬でも留守番ぐらいは出来ると言っていたが、この妖精はどこまで信頼できる留守番なのだろうか。
球児はかなり心配だったが、家族が誰も心配していないのに自分だけが心配に悩むなんて馬鹿らしかった。
もう気にしないことにして笑顔で微笑む少女に見送られて学校に向かう事にした。
いつもの同じ道を歩いていると今日は珍しい人を目撃した。
あの同じ学校の制服を着た見目麗しい少女は丸井桜だ。
昨日マルルンを見つけた現場で彼女は虫眼鏡を片手に何かを探しているようだった。
ここでUターンして別の道に行くのも面倒だし、他に人もいないので、球児は気恥ずかしい思いを隠して平然とした大人の顔を意識して道を歩く振りをしながら思い切って話しかけることにした。
「ま、丸井さん!? こんなところで何をしているのを?」
声が上ずったー。だから人と話すのは嫌なんだ。誰かセーブとロードを現実にも実装して欲しい。
球児は失敗に後悔するが、幸いにも桜は何も気にせず、朝から可愛い顔を見せてくれた。
「あ、勝田君。この辺りから何か匂う気がするのよね」
「匂うって何が?」
「探偵としての勘が告げるのかな。何か違う気を感じるのよ」
「今度は気と来ましたか」
「勝田君の親は警察官なんでしょ? 何か気が付くこととかない?」
「僕には特に何も感じないかな」
「そう」
「…………」
気の利いた受け答えが出来ない自分がもどかしい。だけど話せないんだから仕方ないじゃないか。
桜はそれっきり興味を無くしたような顔をしてしまった。球児は選択肢をミスったと感じたが、特にフォローする言葉が見つからなかった。
何かあったら教えてねと送られて、球児は学校へと一人で向かう事になった。
こんな時、リア充なら何か気の利いた話をして一緒に楽しく登校できるんだろうなと思うと、ただもどかしさと悔しさしかなかった。
キーンコーンカーンコーン!
学校にいつもの平凡なチャイムが鳴る。朝から彼女に出会えた幸せと失敗した後悔で沈みそうになってしまうが、これから学校だ。
いつもの平常心で臨もうと球児は姿勢を正す事にする。桜の席は空席だ。まだ調べ物をしているのだろうか。
もうすぐ予鈴が終わって本鈴が鳴ってしまうのだが……と思っている間にも再びのチャイムが鳴って先生が来た。みんな着席する。
教壇に立った先生が出欠を取る。それはいつもの光景だったが……
「丸井ー、丸井桜はいないのかー」
彼女がまだ来ていなかった。今朝の桜は制服を着ていたので学校には来るはずだったのだが、何かあったのだろうか。
球児が心配している間にも先生は落ち着いた動作でペンを走らせようとする。
「丸井桜は欠席と」
「ちょっと待ってーーー!」
先生が出席簿に印を付けようとした瞬間だった。勢いよく扉を開けて彼女が来た。
「いますー! わたしはここにいますー!」
そんな慌てた彼女を見るのは初めてで球児は驚いてしまう。教室がざわめいた。
みんなの注目を集めて恥ずかしそうに顔を赤らめながら、桜は小走りで席に着いた。そして、先生に言われた。
「丸井桜は遅刻っと」
「ふえええ! それはご勘弁をーーー!」
慌てて立ち上がる彼女に教室が笑いに包まれて、先生も笑った。
「今回だけだからな。次からはもっと早く来るんだぞ」
「はいいー」
桜は肩を小さくして席についた。球児は真面目な彼女でも失敗するんだなと思って見ていたが、いきなり振り向いて睨まれた。
「ぎろっ」
その目はなぜ事情を説明してくれなかったとか時間を稼いでおいてよとか語っているような気がしたが、コミュ症の自分に何を望むと言うのだろうか。
別に自分は桜と親しい友達ではないし、今回の不思議の事情が無ければ話をする機会も無かっただろう。
ただ遠くで見ていた存在。自分で思ってて悲しくなるが、それだけの関係だった。
はずなのだが……今日の授業が終わって放課後、帰宅部の自分は荷物をまとめて早く帰りましょうと鞄に荷物をまとめて立ち上がろうとしていると、なぜか桜が席の前までやってきて話しかけてきた。
「ねえ、勝田君。これから付き合ってくれない?」
「え!? 何で俺!?」
美少女で友達の多い桜なら他にいくらでも付き合う人がいるだろうに。驚愕と不思議に思って見ていると桜は不満そうに唇を尖らせて言った。
「みんな部活に行くからって断るのよ。勝田君は暇でしょ。いつもすぐに帰ってるんだし」
「うん、確かに暇だけど」
何か棘の刺さる物言いにムッとしてしまうが、桜を相手に怒ってもしょうがない。それに事実なんだし、自分が悪いのだ。
桜はただ春の陽気のように微笑んだ。
「なら、決定。今度こそ不思議を見つけるよ」
「うん、まだあれを探すんだ」
「誰よりも早く見つけなきゃね」
今更だけど強引な誘いに何でこの人を好きになったんだろうと球児は思ってしまうが。
美少女に笑顔を向けられるのはやっぱり嬉しい物なので、男としては尻尾を振って言う事を聞いてしまうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる