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第8話 落ち着いた夜
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賑やかな夜が終わって落ち着いた夜が訪れた。
球児は一足先にパーティー会場を離脱して自分の部屋に戻ってきていた。
桜はもう自分の家に帰ったのだろうか。静かになってしばらく経つからきっと帰ったんだと思う。
今になって頭を抱えてしまう。
「ああ、僕は何をやっているんだ。せっかく丸井さんが家に来ていたのに」
コミュ症の辛いところだ。賑やかな会場にいづらくて逃げるように自分の部屋に来てしまった。
「もっと話せただろうに。ああ、もう。勉強して忘れよう」
筆記用具を出して教科書を開いた時だった。部屋の扉が勢いよく開かれた。
茉莉かと思ったが、違っていた。そこにお風呂上がりのパジャマ姿で現れたのは桜だった。球児は驚いて立ち上がってしまった。
「丸井さん!? 何でここにいるの!?」
「おばさんが泊まっていっていいって言ってくださったの」
「それで君は泊まっていくんだ」
「そうよ。パジャマを貸してもらえたし、ここには不思議があるからね」
「目的はそっちか」
ちょっと落胆してしまうが、彼女が近づいてきてドキッとしてしまった。
目のやり場に困る。今の桜はお風呂上りのパジャマ姿なのだ。良い匂いもした。桜は少年の思いなど気にせずに訴えてきた。
「それより聞いてよ! 茉莉ちゃんがマルちゃんに触らせてくれないの! お兄ちゃんからガツンと言ってやって!」
「言ってやってと言われても」
球児はただ困るばかりだ。思えば彼女と会っている間ずっとこんなだった気がする。
本当になぜ彼女を好きになったのか。振り回されて困惑するばかりだったが、妹にマルちゃんを触らせるように言うだけなら度胸を出して言ってもいいかと思った。
その時だった。彼女に訴えに妹の部屋まで行く必要が無くなった。大きな足音を立てて茉莉本人がやってきた。なぜか鬼の形相をして。
「この泥棒猫! お兄ちゃんの部屋に勝手に入らないでよ!」
「残念でした! わたしはお兄ちゃんとはクラスメイトだから遊びに来ていい関係なのよ! あなただってクラスメイトの部屋に遊びに行ったことぐらいあるでしょう!」
「それはあるけど!」
自分は無いけど、とは言えそうにない空気だ。それより桜にお兄ちゃん呼びされてくすぐったい。
余韻を感じている間に二人は球児を挟んで喧嘩を初めてしまった。
「それとこれとは別よ! 妹の許可もなくお兄ちゃんに触らないで!」
「触るってこういうこと?」
桜がピタッとくっついてきた。はっきり言ってとても困る。感触と匂いがじゃなくて、妹が激怒しているから。
「こいつうっ!」
「球児君はわたしの味方なのよ!」
「名前呼び!?」
「だって、この家みんな勝田君じゃない!」
「お前ら……」
周囲を回りながら喧嘩するうるさい二人に球児がいい加減に切れかけた時だった。ひょっこりマルルンが顔を出してきた。
「人数が増えたし、4Pしよう」
「よし、決着はゲームで付けるよ! お兄ちゃんの見ている前でズタボロにしてやる!」
「望むところよ! 球児君はこいつがズルしないようにしっかり見張っててよ!」
「分かったよ」
好きな人に呼ばれているのになぜ自分はため息を吐いているのだろう。不思議な気分だった。
茉莉はまだ怒っている。
「お兄ちゃん! こんな奴にデレデレしないで!」
「いや、僕は別にデレデレなんてしてないぞ」
「ふふん、球児君は大人なのよ。妹ちゃんとは違ってね。教室でもいつも一人で落ち着いているんだから」
「いや、それは別に落ち着いているわけでは。桜、あんまりこいつを挑発しないでよ」
「お兄ちゃんはどっちの味方なの!?」
「どっちと言われても」
「大人の実力を見せてあげるわ」
「そんなに違わない!」
「ああ、もう、とにかくゲームだゲーム。ゲームしよう」
「4Pだー!」
そして、その夜はみんなで遅くまでゲームしたのだった。
球児は一足先にパーティー会場を離脱して自分の部屋に戻ってきていた。
桜はもう自分の家に帰ったのだろうか。静かになってしばらく経つからきっと帰ったんだと思う。
今になって頭を抱えてしまう。
「ああ、僕は何をやっているんだ。せっかく丸井さんが家に来ていたのに」
コミュ症の辛いところだ。賑やかな会場にいづらくて逃げるように自分の部屋に来てしまった。
「もっと話せただろうに。ああ、もう。勉強して忘れよう」
筆記用具を出して教科書を開いた時だった。部屋の扉が勢いよく開かれた。
茉莉かと思ったが、違っていた。そこにお風呂上がりのパジャマ姿で現れたのは桜だった。球児は驚いて立ち上がってしまった。
「丸井さん!? 何でここにいるの!?」
「おばさんが泊まっていっていいって言ってくださったの」
「それで君は泊まっていくんだ」
「そうよ。パジャマを貸してもらえたし、ここには不思議があるからね」
「目的はそっちか」
ちょっと落胆してしまうが、彼女が近づいてきてドキッとしてしまった。
目のやり場に困る。今の桜はお風呂上りのパジャマ姿なのだ。良い匂いもした。桜は少年の思いなど気にせずに訴えてきた。
「それより聞いてよ! 茉莉ちゃんがマルちゃんに触らせてくれないの! お兄ちゃんからガツンと言ってやって!」
「言ってやってと言われても」
球児はただ困るばかりだ。思えば彼女と会っている間ずっとこんなだった気がする。
本当になぜ彼女を好きになったのか。振り回されて困惑するばかりだったが、妹にマルちゃんを触らせるように言うだけなら度胸を出して言ってもいいかと思った。
その時だった。彼女に訴えに妹の部屋まで行く必要が無くなった。大きな足音を立てて茉莉本人がやってきた。なぜか鬼の形相をして。
「この泥棒猫! お兄ちゃんの部屋に勝手に入らないでよ!」
「残念でした! わたしはお兄ちゃんとはクラスメイトだから遊びに来ていい関係なのよ! あなただってクラスメイトの部屋に遊びに行ったことぐらいあるでしょう!」
「それはあるけど!」
自分は無いけど、とは言えそうにない空気だ。それより桜にお兄ちゃん呼びされてくすぐったい。
余韻を感じている間に二人は球児を挟んで喧嘩を初めてしまった。
「それとこれとは別よ! 妹の許可もなくお兄ちゃんに触らないで!」
「触るってこういうこと?」
桜がピタッとくっついてきた。はっきり言ってとても困る。感触と匂いがじゃなくて、妹が激怒しているから。
「こいつうっ!」
「球児君はわたしの味方なのよ!」
「名前呼び!?」
「だって、この家みんな勝田君じゃない!」
「お前ら……」
周囲を回りながら喧嘩するうるさい二人に球児がいい加減に切れかけた時だった。ひょっこりマルルンが顔を出してきた。
「人数が増えたし、4Pしよう」
「よし、決着はゲームで付けるよ! お兄ちゃんの見ている前でズタボロにしてやる!」
「望むところよ! 球児君はこいつがズルしないようにしっかり見張っててよ!」
「分かったよ」
好きな人に呼ばれているのになぜ自分はため息を吐いているのだろう。不思議な気分だった。
茉莉はまだ怒っている。
「お兄ちゃん! こんな奴にデレデレしないで!」
「いや、僕は別にデレデレなんてしてないぞ」
「ふふん、球児君は大人なのよ。妹ちゃんとは違ってね。教室でもいつも一人で落ち着いているんだから」
「いや、それは別に落ち着いているわけでは。桜、あんまりこいつを挑発しないでよ」
「お兄ちゃんはどっちの味方なの!?」
「どっちと言われても」
「大人の実力を見せてあげるわ」
「そんなに違わない!」
「ああ、もう、とにかくゲームだゲーム。ゲームしよう」
「4Pだー!」
そして、その夜はみんなで遅くまでゲームしたのだった。
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