恋愛小説に踊らされている婚約者様へ。悪役令嬢になりますので早めの婚約破棄を所望します

ゆずこしょう

文字の大きさ
13 / 24
音楽コンクール

練習は前途多難です。

しおりを挟む
音楽コンクールに出ることになって1週間…。


貰った楽譜を持ってアンネマリーと一緒に音楽室を目指していた。


音楽コンクールに出るのはクラス3名ずつ。1学年、2から3クラスずつあるので、25名くらいの人が選抜させられることになっている。


そのため音楽室を使えるのも時間制だ。大体が家で練習をして、週に一回音楽室で先生に見てもらうようになる。


私の場合、音楽の先生とアンネマリーが見てくれる事になっている。

私たちが音楽室の前に行くと中から先生の声が聞こえてきた。



「エミーリエ様…1週間何をされてきたのですか?全く曲になっていないのですが…?」



「えぇぇ…そうですかぁぁ?ちゃんとぉ音出てるじゃないですかぁ…。」


そう言ってピアノの鍵盤をポロンポロンと叩く音が聞こえる。


「それは鍵盤を押しただけです。ピアノなんですから鍵盤を押せば音は出るんですよ。私は曲になっていないですと言っているんですが、ご理解いただけましたか?」


その後もポロンポロンと曲になっていない音だけがつづく。どうやら、先生の言った話すら理解出来ていないようだ。このままでは埒が明かないと感じた私は教室の扉をガラガラガラと勢いよく開けて中に入った。


「ちょっと、時間なんですから早く出てくださらないかしら。邪魔ですわ!!それに、1週間経ってまだ、それしか出来ないなんて先が思いやられますわね。まずは音楽とは何か勉強してから出直していらっしゃい。」


椅子から立ち上げて、廊下へと連れて行くと扉を閉めた。



廊下からは「またヴェロニカちゃんに虐められたぁー。ひどぉーい。エミーリエも頑張ってるのにぃぃ…」なんて声が聞こえてきたがあえて聞こえない振りをする。


きっとアドルフが迎えに来るだろうから放って置いていいだろう。


先生も1時間の間に全ての力を使い果たしたのか、ゲッソリとしていた…。


「先生…大丈夫ですか?」


「えぇ。取り乱してしまい申し訳ございません。まさか、あれだけ伝えても分からない方は初めてでして…人に教えるというのは難しいですね…。」


きっとエミーリエだから伝わらないだけです。他の方であればあの状態で音楽コンクールに出ようと思わないはず…。



「そんな事ないですわ。いつも分かりやすく教えてくださる先生には感謝しております。あの子が少し特殊なだけです。さぁ、練習しましょう。」


アンネマリーも同じことを思っていたようで、先生に本当の気持ちを伝えていた。



そして早速、課題曲を弾き始めようと鍵盤にそっと手を置くと…


扉が勢いよく開いた。



「おい!ヴェロニカ!お前またエミーリエを虐めたそうじゃないか!!!いい加減にしないか。そんなに僕の愛が自分に向いていないのが嫌なのか!!」


まさかのアドルフの登場と何を言っているのか分からない言葉を聞いて、鍵盤に置いていた手に力が入ってしまった私は、勢いよく音をガーンと鳴らしてしまった。



「お前ピアノも弾けないのか!僕の婚約者でありながらそんな事も出来ないなんてな。エミーリエの方がよっぽど上手いぞ。」


えっと、私まだ曲を弾き始めてもいないんですが…

と、言うよりもエミーリエのピアノは曲にすらなっていなかったんですけど!?


「えっと…」


「ふん。何も言い返せないらしいな。ヴェロニカ、お前が頑張ったところで僕の愛が君に向くことは無いからな。」


何も言い返せないも何も、言い返せる隙さえなくずっと話していたのはアドルフだろうに…
エミーリエと関わり始めてからだろうか、少しアドルフの態度が粗雑になったような気がする。


「はぁ…」


「まぁ、精々頑張るといい。誰とお前こことなんか見ていないと思うがな!ハハハ。」


言っていることがよっぽど私よりも悪役っぽい…。


「ありがとうございます。それでは練習いたしますので、アドルフ様は出て行ってくださいませ。」

椅子から立ち上がりアドルフの背中を押してそのまま扉の外に出すと私は勢いよく扉を閉めた。



「さて、外の2人は放っておいて始めましょうか。」

ピアノの前に再度座ると楽譜を見ながら課題曲を弾きだした。



⟡.·*.··············································⟡.·*.

レオナルド視点。


「ピアノの曲が変わったな。弾いている人が変わったのか…。」


ジーグと共に図書室で調べ物をしていると、音楽室の方からピアノの音が聞こえてくる。先程までは辿々しい所ではない程のレベルだったが…


「さっきまでのは聞けたものじゃなかったしな…音楽コンクールまでは毎日こんな感じだろうな…」

音楽コンクールか…たしか今回はルイの婚約者も出ると聞いている。相当な腕前だと言っていたはずだ。

それにしても、今弾いている子はかなり上手なんじゃないだろうか。


「今弾いている子はかなり上手いな。曲はなんだか切ないが…。」


「そう言えば、ヴェロニカ嬢も出ることになったらしいぞ。もしかしたらこの曲を弾いてるのはヴェロニカ嬢かもしれないな。」


もし、この曲を弾いているのがヴェロニカ嬢だったとすると、見た目とのギャップに驚いてしまいそうだが…ただきっとこれだけの曲を弾けるのだ。心が綺麗なものだと言うことだけは何となくわかる…そんな気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

婚約破棄されました(効率の悪い労働でした) ― 働いてない? 舞踏会は、充分重労働ですわ! ―

ふわふわ
恋愛
「働いていない?――いいえ、舞踏会も社交も重労働ですわ!」 前世で“働きすぎて壊れた”記憶を持ったまま、 異世界の公爵令嬢ルナ・ルクスとして転生したヒロイン。 生まれながらにして働く必要のない身分。 理想のスローライフが始まる――はずだった。 しかし現実は、 舞踏会、社交、芸術鑑賞、気配り、微笑み、評価、期待。 貴族社会は、想像以上の超・ブラック企業だった。 「ノブレス・オブリージュ?  それ、長時間無償労働の言い換えですわよね?」 働かないために、あえて“何もしない”を選ぶルナ。 倹約を拒み、金を回し、 孤児院さえも「未来への投資」と割り切って運営する。 やがて王都は混乱し、 なぜか彼女の領地だけが安定していく――。 称賛され、基準にされ、 善意を押し付けられ、 正義を振りかざされ、 人格まで語られる。 それでもルナは、動かない。 「期待されなくなった瞬間が、いちばん自由ですわ」 誰とも戦わず、誰も論破せず、 ただ“巻き込まれない”ことを貫いた先に待つのは、 何も起きない、静かで満たされた日常。 これは―― 世界を救わない。 誰かに尽くさない。 それでも確かに幸せな、 働かない公爵令嬢の勝利の物語。 「何も起きない毎日こそ、私が選び取った結末ですわ」

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...