腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~

薄味メロン

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27 レベル1について

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 2体のホムンクルスを強くして、全員の小太刀を強化していく。

 すべてを終えたフェドナルンドが、軽く頭を下げた。

「それでは、休憩してきます」

「うん、行っておいで。ミルトレイナも疲れているだろうから、一緒にいて、長めに休ませてあげてくれるかい?」

「わかりました」

 幼い2人が手をつなぎ、荷台の中央に移動して腰を下ろす。

 強くなったホムンクルスが四方に立ち、小太刀を持ちながら周囲の警戒をしていた。

「……本当に、頼もしい義弟くんだ。末恐ろしいよ」

 クスリと肩を揺らしながら男爵家の次男ルンドレスは、荷台から離れるように馬を走らせる。

 森の様子や兵たちの動きを見ながら、見通しの良い木に馬を繋いだ。

 岩に腰かけながら、遠くを眺める。

 12体のゴブリンと乱戦を繰り広げた影響で、体はぐったりと疲れていた。

「怪我人が出なかったのは奇跡。……いや、助けがなければ、死人もありえたな」

 乱戦中に背後から狙われれば、誰かが致命傷を受けていただろう。

 疲れに身を任せて目を閉じるが、義弟の事ばかりが頭をよぎる。

「ミルトレイナとの仲は良好で、父や使用人たちとの関係も悪くない」

 師からの評価も高く、ミスは聞いたことがない。

 そしてなにより、前回のポーションに加えて、今回も多くの兵がその活躍を見ている。

「兵からの評価は、最高峰だな」

 唯一、次期男爵である兄との面識は薄いが、言ってしまえばそれだけだ。

 婿に来て1ヶ月。

 12歳の少年が、男爵家の中心になりつつある。

「乗っ取りを心配する者は居そうだが、気にするだけ無駄だと言えば済む……」

 自虐にもならないレベルで、領地のすべてが疲弊している。

 兄も頑張ってはいるが、いずれは伯爵家に押しつぶされるだろう。

 そんな場所に、搦め手を使う意味はない。

「やっぱり義弟くんには、表舞台に立ってもらうしかないか」

 その年齢ゆえに、保護したくなる父や師の考えは理解できる。

 だが、貧乏な男爵家がどう動いたところで、遅かれ早かれだ。

「隠れる気のない猛獣を隠し通せる道理はない、か……」

 クツクツと肩を揺らして、朗らかな日差しを見上げる。

 武器を持ったまま、仮眠を取る者。

 交代の時間を心待ちにしながら、見張る者。

「どうした? 見回りか?」

「きゅあ!!」

「そうか、お疲れさま」

 疲れを知らない小さな黒い兵は、元気に動き回っている。

 そのすべてが起きていて、全員が警戒を続けていた。

「体力、サイズ、色。すべてが優秀だな」

 草むらで屈むだけで、見つけるのは困難。

 相手が人間なら、夜を待つだけでいい。

 暗闇の中は、彼らの場所だ。

「諜報員として、何人か入ってくれないかな」

 情報の伝達は困難だが、会話は出来る。

 試しに頼んでみるか?

 そう思いながら、ルンドレスは義弟に目を向けた。

「む~……??」

 見えたのは、喜んでいる義弟と、何かに悩む妹。

 ぐったりと疲れた顔をする指揮官の姿。

「なーにか、あったのかなー??」

 十中八九、楽しいことだ。
 
 そう思いながら3人の様子をうかがう。

 荷台から離れるのを待って、ルンドレスは指揮官を呼び寄せた。

「疲れてるのに悪いね。好きなところに座って。兜も脱いでいいからさ」

「承知しました」

 心底疲れたとばかりに、指揮官が地面に腰をおろす。

 体力ではなく、精神的に疲れていそうな顔と声。

 その姿を見て、ワクワクとした物がこみ上げた。

「なにか、フェドナルンドくんから聞いた?」

「……はい。重要な軍事秘密を惜しげもなくお聞かせくださいました」

「うんうん、だよね! それを僕にも聞かせてよ! キミの意見と見解も交えて!!」

 義弟のことで頭を悩ませる父上と同じような顔をした指揮官が、言葉に詰まる。

 それを見て確信した。

 絶対に聞き出す必要のあるやつだ!

「僕は蛇のようにしつこいからね? 言ってくれないと、本気で拗ねるよ?」

 父上からは、もう少し大人になれと言われているけど知らない。

 これは、諜報員を使うレベルで知りたい!

「フェドナルンド様に直接お聞きになってはいかがですか? 惜しげもなくーー」

「ダメだよ。僕は、指揮官であるキミの見解を聞く必要がある」

 実益半分、趣味半分。

 男爵家の次男として、指揮官が見た景色も聞くべき状況にある。

 そんな思いが通じたのか、指揮官が小さなため息を漏らした。

「わかりました。お話しいたします」

「やった! ありがとね!!」

 そんな指揮官曰く、休憩をかねて、2人の様子を見に行ったらしい。

 すると、魔石を持った義弟が、強化したホムンクルスの耐久テストをしていたそうだ。

「自分たちでは力不足だと。それで、私が手合わせをすることになりまして……」

「ほお?」

 うわ、ずるい! 僕がしたかった!!

 というか、そんなことになってたなら、呼んでよ!!!!

 考え事をしていて出遅れた!!!!!!!!

 そんな思いを心の奥に押し込めて、指揮官に先を促す。

「して、結果は?」

「軽い斬りを4つ逸らされ、胴への一撃を体で受け止められました」

 ん??

「……受け止めた? 消えなかったと言うことか?」

「はい。当てるだけの軽いものでしたが、キズ一つ付けられませんでした」

 予想外の答えに、荷台を流し見る。

 強化された4体のホムンクルスが、変わらぬ様子で義弟と妹を守るように立っていた。
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