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2体のホムンクルスを強くして、全員の小太刀を強化していく。
すべてを終えたフェドナルンドが、軽く頭を下げた。
「それでは、休憩してきます」
「うん、行っておいで。ミルトレイナも疲れているだろうから、一緒にいて、長めに休ませてあげてくれるかい?」
「わかりました」
幼い2人が手をつなぎ、荷台の中央に移動して腰を下ろす。
強くなったホムンクルスが四方に立ち、小太刀を持ちながら周囲の警戒をしていた。
「……本当に、頼もしい義弟くんだ。末恐ろしいよ」
クスリと肩を揺らしながら男爵家の次男は、荷台から離れるように馬を走らせる。
森の様子や兵たちの動きを見ながら、見通しの良い木に馬を繋いだ。
岩に腰かけながら、遠くを眺める。
12体のゴブリンと乱戦を繰り広げた影響で、体はぐったりと疲れていた。
「怪我人が出なかったのは奇跡。……いや、助けがなければ、死人もありえたな」
乱戦中に背後から狙われれば、誰かが致命傷を受けていただろう。
疲れに身を任せて目を閉じるが、義弟の事ばかりが頭をよぎる。
「ミルトレイナとの仲は良好で、父や使用人たちとの関係も悪くない」
師からの評価も高く、ミスは聞いたことがない。
そしてなにより、前回のポーションに加えて、今回も多くの兵がその活躍を見ている。
「兵からの評価は、最高峰だな」
唯一、次期男爵である兄との面識は薄いが、言ってしまえばそれだけだ。
婿に来て1ヶ月。
12歳の少年が、男爵家の中心になりつつある。
「乗っ取りを心配する者は居そうだが、気にするだけ無駄だと言えば済む……」
自虐にもならないレベルで、領地のすべてが疲弊している。
兄も頑張ってはいるが、いずれは伯爵家に押しつぶされるだろう。
そんな場所に、搦め手を使う意味はない。
「やっぱり義弟くんには、表舞台に立ってもらうしかないか」
その年齢ゆえに、保護したくなる父や師の考えは理解できる。
だが、貧乏な男爵家がどう動いたところで、遅かれ早かれだ。
「隠れる気のない猛獣を隠し通せる道理はない、か……」
クツクツと肩を揺らして、朗らかな日差しを見上げる。
武器を持ったまま、仮眠を取る者。
交代の時間を心待ちにしながら、見張る者。
「どうした? 見回りか?」
「きゅあ!!」
「そうか、お疲れさま」
疲れを知らない小さな黒い兵は、元気に動き回っている。
そのすべてが起きていて、全員が警戒を続けていた。
「体力、サイズ、色。すべてが優秀だな」
草むらで屈むだけで、見つけるのは困難。
相手が人間なら、夜を待つだけでいい。
暗闇の中は、彼らの場所だ。
「諜報員として、何人か入ってくれないかな」
情報の伝達は困難だが、会話は出来る。
試しに頼んでみるか?
そう思いながら、ルンドレスは義弟に目を向けた。
「む~……??」
見えたのは、喜んでいる義弟と、何かに悩む妹。
ぐったりと疲れた顔をする指揮官の姿。
「なーにか、あったのかなー??」
十中八九、楽しいことだ。
そう思いながら3人の様子をうかがう。
荷台から離れるのを待って、ルンドレスは指揮官を呼び寄せた。
「疲れてるのに悪いね。好きなところに座って。兜も脱いでいいからさ」
「承知しました」
心底疲れたとばかりに、指揮官が地面に腰をおろす。
体力ではなく、精神的に疲れていそうな顔と声。
その姿を見て、ワクワクとした物がこみ上げた。
「なにか、フェドナルンドくんから聞いた?」
「……はい。重要な軍事秘密を惜しげもなくお聞かせくださいました」
「うんうん、だよね! それを僕にも聞かせてよ! キミの意見と見解も交えて!!」
義弟のことで頭を悩ませる父上と同じような顔をした指揮官が、言葉に詰まる。
それを見て確信した。
絶対に聞き出す必要のあるやつだ!
「僕は蛇のようにしつこいからね? 言ってくれないと、本気で拗ねるよ?」
父上からは、もう少し大人になれと言われているけど知らない。
これは、諜報員を使うレベルで知りたい!
「フェドナルンド様に直接お聞きになってはいかがですか? 惜しげもなくーー」
「ダメだよ。僕は、指揮官であるキミの見解を聞く必要がある」
実益半分、趣味半分。
男爵家の次男として、指揮官が見た景色も聞くべき状況にある。
そんな思いが通じたのか、指揮官が小さなため息を漏らした。
「わかりました。お話しいたします」
「やった! ありがとね!!」
そんな指揮官曰く、休憩をかねて、2人の様子を見に行ったらしい。
すると、魔石を持った義弟が、強化したホムンクルスの耐久テストをしていたそうだ。
「自分たちでは力不足だと。それで、私が手合わせをすることになりまして……」
「ほお?」
うわ、ずるい! 僕がしたかった!!
というか、そんなことになってたなら、呼んでよ!!!!
考え事をしていて出遅れた!!!!!!!!
そんな思いを心の奥に押し込めて、指揮官に先を促す。
「して、結果は?」
「軽い斬りを4つ逸らされ、胴への一撃を体で受け止められました」
ん??
「……受け止めた? 消えなかったと言うことか?」
「はい。当てるだけの軽いものでしたが、キズ一つ付けられませんでした」
予想外の答えに、荷台を流し見る。
強化された4体のホムンクルスが、変わらぬ様子で義弟と妹を守るように立っていた。
すべてを終えたフェドナルンドが、軽く頭を下げた。
「それでは、休憩してきます」
「うん、行っておいで。ミルトレイナも疲れているだろうから、一緒にいて、長めに休ませてあげてくれるかい?」
「わかりました」
幼い2人が手をつなぎ、荷台の中央に移動して腰を下ろす。
強くなったホムンクルスが四方に立ち、小太刀を持ちながら周囲の警戒をしていた。
「……本当に、頼もしい義弟くんだ。末恐ろしいよ」
クスリと肩を揺らしながら男爵家の次男は、荷台から離れるように馬を走らせる。
森の様子や兵たちの動きを見ながら、見通しの良い木に馬を繋いだ。
岩に腰かけながら、遠くを眺める。
12体のゴブリンと乱戦を繰り広げた影響で、体はぐったりと疲れていた。
「怪我人が出なかったのは奇跡。……いや、助けがなければ、死人もありえたな」
乱戦中に背後から狙われれば、誰かが致命傷を受けていただろう。
疲れに身を任せて目を閉じるが、義弟の事ばかりが頭をよぎる。
「ミルトレイナとの仲は良好で、父や使用人たちとの関係も悪くない」
師からの評価も高く、ミスは聞いたことがない。
そしてなにより、前回のポーションに加えて、今回も多くの兵がその活躍を見ている。
「兵からの評価は、最高峰だな」
唯一、次期男爵である兄との面識は薄いが、言ってしまえばそれだけだ。
婿に来て1ヶ月。
12歳の少年が、男爵家の中心になりつつある。
「乗っ取りを心配する者は居そうだが、気にするだけ無駄だと言えば済む……」
自虐にもならないレベルで、領地のすべてが疲弊している。
兄も頑張ってはいるが、いずれは伯爵家に押しつぶされるだろう。
そんな場所に、搦め手を使う意味はない。
「やっぱり義弟くんには、表舞台に立ってもらうしかないか」
その年齢ゆえに、保護したくなる父や師の考えは理解できる。
だが、貧乏な男爵家がどう動いたところで、遅かれ早かれだ。
「隠れる気のない猛獣を隠し通せる道理はない、か……」
クツクツと肩を揺らして、朗らかな日差しを見上げる。
武器を持ったまま、仮眠を取る者。
交代の時間を心待ちにしながら、見張る者。
「どうした? 見回りか?」
「きゅあ!!」
「そうか、お疲れさま」
疲れを知らない小さな黒い兵は、元気に動き回っている。
そのすべてが起きていて、全員が警戒を続けていた。
「体力、サイズ、色。すべてが優秀だな」
草むらで屈むだけで、見つけるのは困難。
相手が人間なら、夜を待つだけでいい。
暗闇の中は、彼らの場所だ。
「諜報員として、何人か入ってくれないかな」
情報の伝達は困難だが、会話は出来る。
試しに頼んでみるか?
そう思いながら、ルンドレスは義弟に目を向けた。
「む~……??」
見えたのは、喜んでいる義弟と、何かに悩む妹。
ぐったりと疲れた顔をする指揮官の姿。
「なーにか、あったのかなー??」
十中八九、楽しいことだ。
そう思いながら3人の様子をうかがう。
荷台から離れるのを待って、ルンドレスは指揮官を呼び寄せた。
「疲れてるのに悪いね。好きなところに座って。兜も脱いでいいからさ」
「承知しました」
心底疲れたとばかりに、指揮官が地面に腰をおろす。
体力ではなく、精神的に疲れていそうな顔と声。
その姿を見て、ワクワクとした物がこみ上げた。
「なにか、フェドナルンドくんから聞いた?」
「……はい。重要な軍事秘密を惜しげもなくお聞かせくださいました」
「うんうん、だよね! それを僕にも聞かせてよ! キミの意見と見解も交えて!!」
義弟のことで頭を悩ませる父上と同じような顔をした指揮官が、言葉に詰まる。
それを見て確信した。
絶対に聞き出す必要のあるやつだ!
「僕は蛇のようにしつこいからね? 言ってくれないと、本気で拗ねるよ?」
父上からは、もう少し大人になれと言われているけど知らない。
これは、諜報員を使うレベルで知りたい!
「フェドナルンド様に直接お聞きになってはいかがですか? 惜しげもなくーー」
「ダメだよ。僕は、指揮官であるキミの見解を聞く必要がある」
実益半分、趣味半分。
男爵家の次男として、指揮官が見た景色も聞くべき状況にある。
そんな思いが通じたのか、指揮官が小さなため息を漏らした。
「わかりました。お話しいたします」
「やった! ありがとね!!」
そんな指揮官曰く、休憩をかねて、2人の様子を見に行ったらしい。
すると、魔石を持った義弟が、強化したホムンクルスの耐久テストをしていたそうだ。
「自分たちでは力不足だと。それで、私が手合わせをすることになりまして……」
「ほお?」
うわ、ずるい! 僕がしたかった!!
というか、そんなことになってたなら、呼んでよ!!!!
考え事をしていて出遅れた!!!!!!!!
そんな思いを心の奥に押し込めて、指揮官に先を促す。
「して、結果は?」
「軽い斬りを4つ逸らされ、胴への一撃を体で受け止められました」
ん??
「……受け止めた? 消えなかったと言うことか?」
「はい。当てるだけの軽いものでしたが、キズ一つ付けられませんでした」
予想外の答えに、荷台を流し見る。
強化された4体のホムンクルスが、変わらぬ様子で義弟と妹を守るように立っていた。
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