腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~

薄味メロン

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44 緊急会議

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 試食会を無事に終え、自室で錬金術の特訓を続ける。

 窓からさす日差しが夕日に変わり、ホムンクルスがカーテンを閉めてくれた。

「そろそろ、夕飯か……。なにが出てくると思う?」

「きゅ? きゅあ!!」

 戯れに聞いた俺の問いに、ホムンクルスは小さな手を広げて、パタパタと振って見せた。

 普通に可愛いが、意味はわからない。

“ この肉は旨味が強く、溶けるように味わい! 創作意欲が湧いてきましたぞ!! ”

 今日の夕飯は、試食会に参加した料理長が、いつも以上に頑張ってくれるらしい。

 様々な部位の魔物肉を持って行ったから、なにが出てくるのか楽しみだ。

「昼に持って行ったから、煮込み系は時間がないよな」

 焼きは、俺たちが試食会でしているからやりにくい。

 あとは、蒸す、揚げる。

「さすがに、刺身ってことはないと思うけど……」

 どうなんだろ?

『魔法を使いました。病気の心配は不要です。安心してお召し上がりください』

 とか言って、ゴブリンの刺身、ゴブリンのユッケ、みたいなのが出てきたらどうするべきか。

 ……うん。

 普通に食べるな。

「もとがどうあれ、美味しくて安全なら、味見はする」

 腐った豆なっとう内蔵ホルモン、深海魚、イナゴの佃煮……。

 好き嫌いはあっても、美味しければ問題ない!

 まあ、さすがに生肉はないと思うけどな。衛生的に。

 菌だけを殺す魔法なんて、聞いたことないし。

 そう思っていると、コンコンコンとドアを叩く音がした。

「失礼します。レン伍長が面会を求めておられます」

「ん?」

 夕飯の連絡じゃなくて、レンくん?

 明確な決まりはないが、夕暮れ以降の訪問はマナー違反だ。

 なによりレンくんとは、試食会や、その後に行われた “ 男爵様の出陣式 ” で顔を合わせている。

 そんな中での、突然の訪問。

「急を要する話か?」

「レン伍長からはなにも。しかし、焦っておられる御様子でした」

「わかった。ミルトにも知らせてあるな?」

「はい。ミルトレイナ様にも、お伝えしている最中です」

 やはり、面倒な話らしい。

 最低限の身嗜みだけ整えて、レン伍長が待つ執務室に向かう。

 レン伍長は、下座にある席の横に立ったまま、深々と頭を下げた。

「突然の訪問にも関わらず、お会いいただきありがとうございます」

「いや、問題ないよ」

 額は汗ばんでいて、表情も優れない。

 明確な焦りを感じる。

 そんな中で、俺はレン伍長の横にいるホムンクルスに目を向けた。

「レン伍長は、文字を書けたかな?」

「はい。孤児院で習う初歩のものですが、一応は」

「了解。今後は、貸してるホムンクルスに手紙を渡すことを許可するよ。簡潔な報告だけでも、先に貰えると助かる」

 ホムンクルスであれば、俺の部屋まで真っ直ぐ来れる。

 門番→メイド→執事→責任者→メイド→俺

 そんな面倒な伝言ゲームを回避できる訳だ。

「伝達速度は重要だからね。違和感程度でも、どんどん報告して。間違っても問題なし」

「……よろしいのですか?」

「もちろん。君は新設部隊の3番手。俺との立場は、そんなに大きく違わないからね」

 俺の立場が貴族ゆえに、いろいろと面倒はあると思う。

 特に、男爵家の執事や重役たちは、いい顔はしないだろう。

 だが、報連相が遅れて大事になるよりいい。

「それにさ、俺達だけが持つ伝達方法だよ? 有効活用しないともったいないでしょ」

 ほかの誰にも出来ない方法で、前例もない。

 下手なことをしなげれば、周囲との軋轢になることもないだろう。

「手紙は出来るだけ簡潔に。虚偽や虚勢は排除。俺たちへの悪評であっても、ありのままを伝えること。いいね?」

「……承知しました」

 戸惑いながらも、レン伍長が受け入れてくれる。

 少しだけ遅れてきたミルトと共に席に座り、レン伍長の話を聞く。

「孤児院の子供たちが、“怪しい人間を見た” そう言っています」

 それも1人や2人ではないらしい。

 見たことのない男たちが、街の至る所にいるそうだ。

「特に証言が多かったのが、貧困地区です。少なくとも、この数日で30人程度の新入りがいたと聞いています」

 魔物の恐怖に怯え、領都まで逃げてきた流れ者。

 本人たちはそう言っているらしいが、どうにも怪しいそうだ。

「そういう者は、同郷の者で集まり、街に慣れるまでは細々暮らします」

 だが、その者たちは、頻繁に街を散策している。

 貧困地区では、有力者に酒を渡す場面も見られたそうだ。

「なにを調べているのかはわかりません。ですが」

「我が領地の情報収集に来たのは間違いない、か」

「はい。状況から考えて、伯爵領の者でしょう」

「そうだな」

 我が男爵家は、特産品のない赤字領地で、接しているのは伯爵領だけだ。

 伯爵領を抜ける危険を冒してまで、この地を探るメリットはない。

 間違いなく、伯爵領から送られた密偵だろう。

「だが、密偵にしては目立ちじゃないか?」

 男爵家のお膝元である領都で、子供たちに知られるレベルの聞き込み。

 どう考えても稚拙だ。

 そう思う中で、ミルトが俺の袖を引いた。
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