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50 お祭りをはじめましょう 2
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(次期伯爵さま????)
(伯爵家が攻め滅ぼしに来たのか!? いや、でも、フェドナルンド様が招待したって……)
(おい、何がどうなってる?)
観客たちが互いに顔を見合わせ、会場全体に動揺が広がっていく。
店主や客、手伝いの子供たち、護衛と兄。
自然と兄の周囲から人が離れ、会場に丸い穴が出来ていた。
「……おい、ゴミ。俺様を招待したとは、どういうつもりだ?」
『んーっと? 兄さんは、可愛い弟の門出を祝いに来てくれたんだよね?』
少年らしい笑みを浮かべながら、腐った兄を見返す。
兄の立場なら、相当に煽っているように見えるだろう。
『僕と一緒に魔物のお肉食べたかったんでしょ? 本当においしいんだよ??』
「……」
兄は、抜身の剣を俺に向けたまま、周囲に目を向ける。
そのまま鼻を鳴らして、俺の方に向き直った。
「次期伯爵である俺様が、ゴミであるお前を祝いに来た? 本当にそうみえんのか??」
『んー。見えないかな。……あんたは、そんなマトモな人間じゃないからね』
声にドスを利かせて、ニヤリと笑い返す。
伯爵家でメイドをいじめていた時のような、昔の俺の顔。
兄にとっては、見慣れた笑みだ。
『残念だけど、あんたが腐った性格なのは良く知ってる。それに、時間切れだよ』
「あん? ゴミが何を――」
腐った兄が苛立たし気に俺を睨み、護衛が緊張感を高める。
そうした中で、ミルトが、ぎゅっと分厚い本を握りしめた。
「全員! 侵入者から離れて!!」
普段とかけ離れた、大きな叫び声。
姫様……??
そんな呟きと共に、広間が静まり返った。
「この5人以外は招待客ではありません! 力ある領民は、侵入者を包囲しなさい!!」
一瞬にして、会場にいた領民たちが大きく動く。
遠くにいた人間を指さす者。
飛び退くように、慌てて距離を取る者。
隠し持っていた小太刀を握り、切っ先を侵入者に向ける者。
「追加の武器は屋台にあります! 下手に刺激せず、包囲してください!!」
いつの間にか、各屋台のテーブルには
多くの武器が並び、店主が配り始めていた。
1人また1人と領民が武器を握り、各地の円が厚みを増していく。
会場全体では20個近い円があって、円の中心にされた者が困惑の表情を浮かべていた。
「領民に問います! 全員、見覚えのないよそ者ですね!?」
(おう!)
(怪しいと思ってたんだ!!)
(さすがは姫様だぜ!!)
各地でヤジが飛び、武器を持つ者がさらに増える。
そんな人々を横目に、俺は兄へと問いかけた。
「ここは私の嫁の実家ですよ? 護衛にしては多すぎませんか??」
「……ゴミの分際で、なにを――」
「領民に武器を配って、不審者を捉えてもらった。それだけです」
腐った兄が姿を見せて注意を集め、忍ばせた兵が領民を捕虜にする。
そんな構図に見えた兄たちの動きを、こちらが利用させて貰った。
「男爵領は横の繋がりが強いんですよ。人がたくさん居る場所であっても、容易には隠れられない」
人目があればあるほど、不審者が浮き上がる。そんな場所だ。
俺たちはただ、各店舗の子供たちに武器を搬入して貰っただけ。
「不審者1に対して、こちらは10人。多いところは、それ以上いますね」
一般人の寄せ集めだが、容易に突破は出来ない。
仮に逃げられたとしても、愚弟に策を見破られ逃げたと言う汚名が残る。
証言者は、周囲にいる者すべてだ。
プライドの高い兄にとって、それはなににも代え難い屈辱だろう。
だから、
「やはり貴様はゴミだな」
「……どういう意味ですか?」
「平民に包囲されるような者が、俺様の護衛だと? そんなわけがないだろ」
部下を切り捨てて、無かったことにする。
少なくとも、周囲にはそう見せる。
そのうえで、
「これは次期伯爵である俺様に対する暴言だ。すなわち、伯爵家に対する宣戦布告だな」
伯爵家の権威を持ち出して、相手を脅す。
怯んだ相手に無理難題をふっかけて、すべてを破壊する。
腐った兄らしい動きだ。
「ちっぽけな男爵家が、伯爵家と戦争したら、どうなるだろうな」
武器を持つ領民たちの手がゆるみ、兄が勝ち誇った笑みを浮かべる。
そのまま周囲を見渡して、兄はニヤリと笑いながら剣を納めた。
「だが、次期伯爵である俺様は寛大だ。もし、戦争を避けたいのであればーー」
「あなたを殺すしかないですね」
「……なんだと?」
兄が、ぼんやりとした目で俺を見上げる。
俺はニヤリと笑いながら、同じ言葉を繰り返した。
「あなたを殺すしかない。そう言ったのが聞こえませんでしたか?」
「ーーなにをバカな!!」
「バカはあなたですよ」
大袈裟に手を広げ、祭り会場である広間を見渡す。
武器を持った領民が大量にいて、兄の部下は少数。
この場には、戦争の当事者しかいない。
「あなたたち、いや、次期伯爵であるあなたが死ねば、敵対の事実を知るものは居なくなる」
兄を護れずに帰ってきたとなれば、彼らは処刑される。
伯爵家はそんな家だ。
だから彼らは、兄が死んだ時点で帰る場所がなくなる。
「あなたを殺して、敵対の事実をもみ消す。理解できますか?」
「……」
兄自身が、よく使っていた手だ。
戦争にしたくない領民たちは、喜んで隠蔽してくれる。
「この数を相手に、兄さんは生き残れますか??」
まともな護衛は四人で、周囲は大量の敵に囲まれている。
権力の傘を振りかざす事だけ続けていた兄にとっては、未曽有の事態だろう。
「……」
伯爵家の強い護衛とは言え、兄にとっては脅しや使い捨ての道具。
数という分かりやすい劣勢の中で、自分の命を預けれる訳がない。
「……けっとう、しか、ないのかな?」
ぽつりと聞こえた、誰かの小さな声。
ハッと顔を上げた兄が、俺の顔を見つめる。
「フェドナルド! おまえに決闘を申し込む!!」
「伯爵家の者らしく、1対1で、正々堂々、勝敗を決めるぞ!!」
ニヤリと笑った兄が、邪悪に満ちた声で笑って見せた。
(伯爵家が攻め滅ぼしに来たのか!? いや、でも、フェドナルンド様が招待したって……)
(おい、何がどうなってる?)
観客たちが互いに顔を見合わせ、会場全体に動揺が広がっていく。
店主や客、手伝いの子供たち、護衛と兄。
自然と兄の周囲から人が離れ、会場に丸い穴が出来ていた。
「……おい、ゴミ。俺様を招待したとは、どういうつもりだ?」
『んーっと? 兄さんは、可愛い弟の門出を祝いに来てくれたんだよね?』
少年らしい笑みを浮かべながら、腐った兄を見返す。
兄の立場なら、相当に煽っているように見えるだろう。
『僕と一緒に魔物のお肉食べたかったんでしょ? 本当においしいんだよ??』
「……」
兄は、抜身の剣を俺に向けたまま、周囲に目を向ける。
そのまま鼻を鳴らして、俺の方に向き直った。
「次期伯爵である俺様が、ゴミであるお前を祝いに来た? 本当にそうみえんのか??」
『んー。見えないかな。……あんたは、そんなマトモな人間じゃないからね』
声にドスを利かせて、ニヤリと笑い返す。
伯爵家でメイドをいじめていた時のような、昔の俺の顔。
兄にとっては、見慣れた笑みだ。
『残念だけど、あんたが腐った性格なのは良く知ってる。それに、時間切れだよ』
「あん? ゴミが何を――」
腐った兄が苛立たし気に俺を睨み、護衛が緊張感を高める。
そうした中で、ミルトが、ぎゅっと分厚い本を握りしめた。
「全員! 侵入者から離れて!!」
普段とかけ離れた、大きな叫び声。
姫様……??
そんな呟きと共に、広間が静まり返った。
「この5人以外は招待客ではありません! 力ある領民は、侵入者を包囲しなさい!!」
一瞬にして、会場にいた領民たちが大きく動く。
遠くにいた人間を指さす者。
飛び退くように、慌てて距離を取る者。
隠し持っていた小太刀を握り、切っ先を侵入者に向ける者。
「追加の武器は屋台にあります! 下手に刺激せず、包囲してください!!」
いつの間にか、各屋台のテーブルには
多くの武器が並び、店主が配り始めていた。
1人また1人と領民が武器を握り、各地の円が厚みを増していく。
会場全体では20個近い円があって、円の中心にされた者が困惑の表情を浮かべていた。
「領民に問います! 全員、見覚えのないよそ者ですね!?」
(おう!)
(怪しいと思ってたんだ!!)
(さすがは姫様だぜ!!)
各地でヤジが飛び、武器を持つ者がさらに増える。
そんな人々を横目に、俺は兄へと問いかけた。
「ここは私の嫁の実家ですよ? 護衛にしては多すぎませんか??」
「……ゴミの分際で、なにを――」
「領民に武器を配って、不審者を捉えてもらった。それだけです」
腐った兄が姿を見せて注意を集め、忍ばせた兵が領民を捕虜にする。
そんな構図に見えた兄たちの動きを、こちらが利用させて貰った。
「男爵領は横の繋がりが強いんですよ。人がたくさん居る場所であっても、容易には隠れられない」
人目があればあるほど、不審者が浮き上がる。そんな場所だ。
俺たちはただ、各店舗の子供たちに武器を搬入して貰っただけ。
「不審者1に対して、こちらは10人。多いところは、それ以上いますね」
一般人の寄せ集めだが、容易に突破は出来ない。
仮に逃げられたとしても、愚弟に策を見破られ逃げたと言う汚名が残る。
証言者は、周囲にいる者すべてだ。
プライドの高い兄にとって、それはなににも代え難い屈辱だろう。
だから、
「やはり貴様はゴミだな」
「……どういう意味ですか?」
「平民に包囲されるような者が、俺様の護衛だと? そんなわけがないだろ」
部下を切り捨てて、無かったことにする。
少なくとも、周囲にはそう見せる。
そのうえで、
「これは次期伯爵である俺様に対する暴言だ。すなわち、伯爵家に対する宣戦布告だな」
伯爵家の権威を持ち出して、相手を脅す。
怯んだ相手に無理難題をふっかけて、すべてを破壊する。
腐った兄らしい動きだ。
「ちっぽけな男爵家が、伯爵家と戦争したら、どうなるだろうな」
武器を持つ領民たちの手がゆるみ、兄が勝ち誇った笑みを浮かべる。
そのまま周囲を見渡して、兄はニヤリと笑いながら剣を納めた。
「だが、次期伯爵である俺様は寛大だ。もし、戦争を避けたいのであればーー」
「あなたを殺すしかないですね」
「……なんだと?」
兄が、ぼんやりとした目で俺を見上げる。
俺はニヤリと笑いながら、同じ言葉を繰り返した。
「あなたを殺すしかない。そう言ったのが聞こえませんでしたか?」
「ーーなにをバカな!!」
「バカはあなたですよ」
大袈裟に手を広げ、祭り会場である広間を見渡す。
武器を持った領民が大量にいて、兄の部下は少数。
この場には、戦争の当事者しかいない。
「あなたたち、いや、次期伯爵であるあなたが死ねば、敵対の事実を知るものは居なくなる」
兄を護れずに帰ってきたとなれば、彼らは処刑される。
伯爵家はそんな家だ。
だから彼らは、兄が死んだ時点で帰る場所がなくなる。
「あなたを殺して、敵対の事実をもみ消す。理解できますか?」
「……」
兄自身が、よく使っていた手だ。
戦争にしたくない領民たちは、喜んで隠蔽してくれる。
「この数を相手に、兄さんは生き残れますか??」
まともな護衛は四人で、周囲は大量の敵に囲まれている。
権力の傘を振りかざす事だけ続けていた兄にとっては、未曽有の事態だろう。
「……」
伯爵家の強い護衛とは言え、兄にとっては脅しや使い捨ての道具。
数という分かりやすい劣勢の中で、自分の命を預けれる訳がない。
「……けっとう、しか、ないのかな?」
ぽつりと聞こえた、誰かの小さな声。
ハッと顔を上げた兄が、俺の顔を見つめる。
「フェドナルド! おまえに決闘を申し込む!!」
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