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7 それぞれの思い
錯綜
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コンコン
夜七時ちょうど、わたしの部屋をノックする音がした。如月が来たんだ、見なくても分かる。
「クラウさん、こんばんは」
「今日は二度目だね、如月」
ハイッと、わたしの手に昼間と同じコーヒーのカップが渡された。
「カフェラテだよ、今も甘い方が良いか分からないけれど」
そう言って、笑顔をわたしに向けてきた。やっぱり、如月はわたしのことを分かっている。ブラックコーヒーはカッコつけのため。本当は、ほのかに甘いカフェラテが一番好きなんだ。
少し中学時代の話を懐かしく楽しんだ。一通り話したタイミングで、如月が今日の本題について訊いてきた。
「クラウさんはどこであの呪いを知ったの?なんで、あんな大掛かりに呪いをやったの?」
ブレてないな。クラウさんのことが心配で……なんてことをこの場で言われたら、わたしはきっと如月への思いは冷めていっただろう。まあ、普通の女の子ならわたしの反応と真逆なんだろうけれど。あくまで、氷のように冷淡な如月だからこそわたしは好きなのだ。普通から外れたわたしの感覚に世界で唯一、シンクロしてくれる存在、それが如月。
「昼間話に出てきた教団跡地にあった教団の名前は、真呪教って言うの。わたしたちが知っている呪いを使って活動していたらしい。そして、そこの教祖の名前はラロ、結城ラロ、わたしのお祖父ちゃんなの。だから、わたしは小さいころからオカルトだとか死生観だとかの教育をラロお祖父ちゃんから受けてきたの。その中に、あの呪いの方法もあったんだ」
「そうだったんだ」
「あまり驚かないね」
「いや、あの教団跡地の話持ってきたのもクラウさんだったし、呪いの話出しても動揺しなかったから、何らかの形で関わっていたことは推測できたよ、さすがに、教祖の孫だとは想像もしなかったけれど」
そう言って微笑む如月を見ていると、改めてわたしの世界には彼だけいてくれればいいと思えてくる。如月がくれたカフェラテを口に含むと、柔らかく控えめな甘さが口の中いっぱいに広がる。
「わたしが五十人に呪いを掛けようとした理由はね、悪魔と契約したかったの」
「悪魔?」
如月の目の色が変わった。言わないほうが良かったかな。でも、もう今更だし仕方ない。
「そう悪魔。この呪いの起源は、合わせ鏡の中に住む悪魔なの。ところで、如月はどんな呪いの反動を受けたの」
「呪いの反動?ああ、長野君を呪った後に寝るたびに足の裏や手のひらからワイヤーを骨に沿って差し込まれたよ。思い出すのも嫌だよ」
うっ、それも嫌だな。想像するだけで痛い。
「いつ解放されたの?」
「あまりに呪いの反動がきつかったんで、反動をなくすために早く誰かに呪いをやらせようと思ったんだ。それで、インターネットでいかにもイジメられていて、復讐をしたそうなやつを探した。で、そいつに呪いをやらせて僕は反動から解放されたんだ。これもすごい偶然なんだけれど、クラウさんを今回呪いから解放させたのも同じ人、坂井君なんだ」
同じ人?
坂井?
よく分からないけれど、わたしと如月は同じ人を利用して呪いから解放されたということか。やっぱり運命的だな。
「すごい偶然だね。わたしは道路とか平らにするローラー車に体中潰されてたわ。三年間ずっとね。かなりキツかったよ。如月なら分かると思うけれど、呪いの反動がなくなったら最強だと思わない?それでわたし、悪魔に契約を持ちかけたの。毎年五十人呪い殺すから、反動をなしにしてくれって。そうなれば、真呪教の教祖もラロお祖父ちゃんから譲ってもらえるはずだったの」
「毎年五十人?」
「そう、毎年」
あれ、如月が眉間に皺を寄せている。さすがに非道すぎると思ったかな。
「そんなに少なくていいのか」
やっぱり如月だ。さすがわたしの運命の人。わたしと同じ感覚、感性を持っている。
「うん、わたしもそう思った。でも、ラロお祖父ちゃんも呪いの反動を受けないようになっているし、嘘ではないと思う。それで、五十人に呪い掛けて一度に済まそうと思ったら佳苗が思いもしない失敗をしたのよ。それで四十九人しか呪えなくて悪魔との契約が不履行になって、ローラー車に潰され続けたのよ」
そう、佳苗なんだよ。佳苗が余計なことをしなければ……
「彼女が何をしたの?」
「あっ、えっと」
言えない。恥ずかしすぎる。如月と付き合えるようにと佳苗が動いていたなんて恥ずかしい。運命の相手とか思っているけれど、わたしには如月に告白する勇気もない。それこそ、恋愛成就の呪いを教えてもらいたいくらいだ。
「まあ、友達のミスだから言いたくないだろうけれど、彼女が何らかのミスを冒したんだね。それでクラウさんが苦しむなんてもってのほかだね」
んっ、なんか嬉しいことを言われているような気がする。
ところで、と如月が話を切り替えた。
「僕は長野君に使ったのが初めてだったんだけれど、クラウさんはどうなの」
「わたしは真理が一番最初。如月と同じで屋上でご飯食べていた時だよ」
「そっか、僕ら同じ日の同じ場所で同じ呪いを初めてやったんだね。運命的だね」
そうよ。やっと、気づいてくれた。そうなの、わたしとあなたはきっと運命で結ばれているのよ。だから、お願い、わたしの気持ちに気がついて。
「それで、これからなんだけれど」
「これから?」
「だって、後一人呪い殺せばクラウさんには呪いの反動はこなくなるんでしょう。だから、早くもう一人呪おうよ」
「えっ」
「クラウさんに呪いの反動が来なくなったら、その真呪教を継ぐんでしょう。そうなったら、クラウさんの手伝いを僕に任せてもらえないかな」
告白、ではないけれど、如月と二人で真呪教の活動ができる。これこそ、願っていた形じゃない。
「でも、誰を呪おうかな」
「いるでしょ、五十人目にピッタリの人物が」
そう言った如月を見て、はっと気がついた。いた、この人以外いない。逆にこの人は、早いうちに呪っておいた方が良い。
「そっか、分かった。じゃあ、実行する日を決めないとね」
わたしと如月はお互いの顔を見て、笑いあった。
◆◇◆◇◆◇
「退院おめでとう」
「クラウさん、おめでとう」
「二人とも、ありがとう」
車椅子と松葉杖を併用すれば移動も問題ないレベルと判断され、わたしは一昨日退院できた。そして、今日、如月と佳苗の二人に退院祝いを開催してもらっているのだ。四人席にわたしの向かいに如月と佳苗が座ってる。
「ねえねえ、クラウと如月君は中学校の同級生だったんでしょ。仲良かったの?」
「まあ、同じオカルト研究会にいたくらいだから仲は良かったんじゃない、ねえ如月」
「そうだね。僕が学校休んだ時に、クラウさんがお見舞いに来てくれてこともあったよね」
「えっ、クラウ、如月君の家に行ったことあるの?一人で?」
探ってくるなぁ、佳苗。そんなに如月とわたしの関係が気になるのか。
「いや、あの時は真理と江藤も一緒だったよ」
「その真理って子が」
「そう、中学の時に死んじゃったわたしの親友」
わたしが呪い殺したんだけどね。如月の気持ちを聞いた今だったら、呪わなかったんだけど、ごめんね。
「真理はさぁ、如月のことが大好きだったんだよ」
「えっ」
如月、ビックリして声出てるじゃん。本気で気づいてなかったんだね。
「だから、如月を狙っている女性がいたら、真理の呪いが掛かるって有名だったんだ。もし、佳苗が如月に好意を持っていたら、もうすでに真理に呪われてるね」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
佳苗の顔色が少し青くなってる。そりゃそうだよね、佳苗は如月のことを意識してるんだもんね。真理の呪いなんてものはないけれど、真呪教の呪いは実在するのよ。
そして、今、佳苗への告知は完了。あとは発動を待つだけ。それまで、楽しくわたしの退院祝いをしましょ。佳苗が如月に好意を抱こうが抱くまいが、呪っていたけれどね。アンタが余計なことしたから、わたしは三年間もあの地獄を味わったんだよ。これで一番最初にやらなければいけなかった、裏切り者への復讐は果たせたかな。
「さあ、料理が来たよ。冷めない内に食べようよ」
そう言って、真っ赤なトマトソースのパスタを如月がみんなの皿に取り分け始めた。そうだよ、佳苗。最後かもしれないから、しっかりと味わってね。
◆◇◆◇◆◇
「もう、クラウったらあんな場所で真理さんの呪いなんて話、しなくてもいいのに」
退院祝いは、クラウの体力も考えて食事会のみでお開きになった。私はアパートに向けて一人で歩きながら、まだクラウにあのイベントの真実を聞いていないなと、思い返した。まあ、退院したからいつでも会えるし、いいんだけれど。でも、失敗したな。食事会だけだからって、何も夜勤の入りの日に決行しなくても良かったなぁ。最近は手のかかる患者さんがいないから、仮眠できそうなんで何とかなるか。
「じゃあ、私先に食事休憩取るね」
「はい、わかりました。今夜はみんなおとなしいので、ゆっくりしてきてください」
私は検査の準備をしながら答えると、今夜一緒に夜勤に入っている先輩看護師はナースステーションを出て休憩室に向かっていった。今日は少なくとも三十分は休憩できそうだな。先輩が出ていって、ナースステーションはガランとなり、めずらしく病棟中がシーンと静まりかえっている。
「何だろう。本当に今日は静かだなぁ」
さっきから手元はちゃんと動かしている。
「あれっ」
私、なんでストローなんか消毒してんだろう。私の目の前には、少し硬めのストローが十本くらい消毒されて並んでいた。昼間出かけたから、やっぱり疲れてるのかな、思わず苦笑してしまった。
「私、何してんだろう」
ストローを手にとって、マジマジと眺める。
「いつか、如月君と二人でプールサイドで真っ赤に熟した南国のフルーツの生ジュースを一緒に飲みたいなぁ」
そんな事を考えながら、ストローを左腕の静脈に刺した。
「えっ、なに」
痛みをあったが、それ以上に自分のした行動に戸惑った。なんで、ストローを静脈に突き刺したのか。刺されたストローからは、なぜか静脈血が吸い出されているが床に垂れることはなく、蒸発するように消えていく。
驚いている暇もなく、今度は左足首の静脈にストローを刺した。そこからもなぜか血液が吸い出されている。次いで右足首にも同じようにストローを突き刺した。三つのストローから血液が吸い出され続けている。ヤバい、このままじゃ失血死してしまう。ストローを抜かなきゃ、と頭は理解しているのに体が言うことをきかない。
確か、看護学校の授業で、体重五十キログラムの人で千二百CC出血すると命が危険になると習った気がする。私の体重だと千CCくらいになるかな。ならば、まだ時間はある。何かこの環境を変える方法があるはず。
どこが動かせる? 右手、ダメだ自由にならない。左手もダメ。両足ともに全く動かせない。体は椅子に縛り付けられているように動かない。首、動く。よし、首は動く。ナースステーションの時計を首を回して確認する。先輩が食事休憩に行ってから、約十分。後二十分耐えれば先輩が戻ってくる。そうすれば、助けてもらえる。
そもそも、この状況はやはり異常としか言いようがない。本当に真理さんの呪いなのかな。如月君を好きってだけで、呪われるんじゃたまったもんじゃないよ。真理さん、ごめんなさい、許して下さい。でも如月君はあきらめられない。ごめんなさい、ごめんなさい。あぁ、そうだ、如月君はもともとクラウが恋い焦がれていた相手だったな。ごめん、クラウ。私も如月君が好きなんだ。
あれ、クラウは中学の頃から如月君が好きで。同じ中学の真理さんも如月君が好きで、でも死んじゃって。で、クラウが呪いを使って、クラスメートがみんな死んだ。理由は聞いてないけれど、クラウが呪ったんだよね。もしかして真理さんもクラウが呪ったの?じゃあ、今のこの状況ってクラウが私を呪っているのかもしれない。真理さんの呪いじゃなくて、クラウの呪いなの?
「何としても生き残って、クラウに真実を確かめなきゃ」
時計を見ると、後十五分ほどで先輩が戻ってくる。それまで絶対に耐え抜いてやる、そう決意した瞬間だった。気がつけば、冷汗が出てきていることに気がつく。失血性のショック症状が出始めている。
「このままじゃ死んじゃう。やだ、死ぬのは嫌だよ」
そんな時、視界の中に見慣れないものを捉えた。
「なに……、あれ……」
空中に青白い赤ん坊が浮かんでいて、私に刺さっているストローを咥えている。その青白い赤ん坊は、空中に浮かびながら哺乳瓶でミルクを飲むように、ストローで私の血液を啜っているように見える。青白く透けたお腹のあたりに私の血液が赤黒く溜まっている。
「なに、気持ち悪い。なに、なんなの。いや、死にたくない」
完全に頭の中がパニックだ。すがるように時計に目を向けるが、すでに視界はボヤケ始めてきて呼吸も苦しくなってきていた。早く、先輩、早く戻ってきて。
「クラウ、ごめんなさい、ごめんなさい」
すでに声として発することは叶わず、開いた目から光が消えた後も青白い赤ん坊たちは、佳苗の血液を最後の一滴まで吸い出していた。
先輩看護師が戻ってきた時、左腕の静脈に刺したストローを口に咥え、口からは吸い出していたであろう血液を垂らしている佳苗の姿があった。
◆◇◆◇◆◇
その日の夜中……
「これで悪魔が出てくるはずよ」
合わせ鏡の間に蝋燭を立てて、隣にいる如月に説明をした。今日、佳苗に呪いの告知をしたから、今日中に呪いが発動しているはずだ。
「こんなに簡単に悪魔に会えるんだね」
「うん、わたしもラロお祖父ちゃんがやってるの見てそう思った」
「呪い自体も簡単な道具でできるしね」
「ホントだよね。百円ショップで全て揃っちゃうんだもの」
費用対効果の高い呪いだね、と笑い合っていると鏡から声が聞こえてきた。
「よう、久しぶりだな嬢ちゃん。こっちの世界では楽しめたかい」
相変わらず気持ち悪い顔でむかつく喋り方だわ。
「お陰様でね。一度はあんたも味わってみれば」
「生憎だが俺はドSでね。嬢ちゃんたちみたいな趣味はねぇんだよ」
「わたしだってドMじゃないわよ」
ちょっとコイツ、如月の前で何言ってくれてんのよ。変に思われたら最悪じゃない。ホント、コイツを一番呪ってやりたいわ。
「ところで、そっちの兄ちゃんは……」
なによ、急に黙っちゃって。如月のかっこよさに引いてんの。まあ、アンタのその醜い容姿と比べると月とスッポンね。
「初めまして、僕はクラウさんとお付き合いしているものです。一度、アナタとお話をしてみたかったんですよ」
「そうか、俺もお前に興味があるぜ」
ちょっと待って、今、如月はわたしとお付き合いしているって言ったよね。それって、わたしは如月の彼女ってこと?嬉しい、嬉しすぎる。
「で、嬢ちゃんの用事はなんだよ」
もうちょっと喜びに浸らせなさいよ。この馬鹿。
「前回、四十九人しか呪えなくて契約不履行になったから、今日一人呪い殺したよ。これで契約完了にならない?」
「おいおい、馬鹿言ってんじゃねえよ。もう期限はとっくに過ぎているだろうが」
やっぱりか。なら、
「もう一回、契約のチャンスをもらう亊はできる?」
「失敗の辛さを分かっているくせにまたやるのか。さすがにラロの孫だけあるな」
結局、今から受ける佳苗への呪いの反動をラロお祖父ちゃんに解放してもらって、落ち着いて作戦を練って再チャレンジをすることになった。今日はもう遅いので、明日、ラロお祖父ちゃんにお願いしよう。二日間の我慢だ。今度は絶対に失敗しない。そして、如月と二人で真呪教をやるんだ。
「ところで、兄ちゃん。ちょっと時間を欲しいんだが、いいか」
「僕もアナタと話してみたいので」
「嬢ちゃん、ちょっとだけ外してくれねぇか」
思わず如月を見ると、安心させるように頷いていた。後で話の内容を教えてね、と言って部屋を出た。
「さて、兄ちゃん。顔をよく見せてくれないか」
悪魔は鏡越しに如月の顔をマジマジと見ている。そして、なるほどと一人で納得していた。
「兄ちゃん、ラロにはもう会ったかい」
「いえ」
「そうか、その時が楽しみだぜ」
「僕もアナタに確認したいことがあるんですが」
「なんだ、名前は教えないぜ」
「アナタの名前に興味はありますが、今知りたいのは別のことです」
「何だよ、場合によっては教えてやるぜ」
「坂井麗士は、あなたとの契約を失敗しましたよね。それで、その前に契約不履行の罰を受けていたクラウさんが、呪いの反動と同様にところてん式に解放された。違いますか」
「否定はしねぇよ」
という事は、部屋数の問題でもあるのかもしれないな。
「それともう一つ、確認しておきたい事があるんですが」
そうして、如月は確認したい内容を悪魔に話し始めた。
◆◇◆◇◆◇
鏡の中の世界
あの兄ちゃんだったのか。
ラロと同じような魂してやがる。どっちも人間って器に収まらないくらい闇が漏れているぜ。この二人は天使か悪魔として生まれるはずが、何の間違いか人間に生まれちまったんだろうな。
この前の気持ち悪いバカも、まあまあだったんだがな。まあ、仕方ねぇか。
さて、二人が出会って何が始まるのか、その時が今から楽しみだぜ。
第7章 それぞれの思い
【了】
夜七時ちょうど、わたしの部屋をノックする音がした。如月が来たんだ、見なくても分かる。
「クラウさん、こんばんは」
「今日は二度目だね、如月」
ハイッと、わたしの手に昼間と同じコーヒーのカップが渡された。
「カフェラテだよ、今も甘い方が良いか分からないけれど」
そう言って、笑顔をわたしに向けてきた。やっぱり、如月はわたしのことを分かっている。ブラックコーヒーはカッコつけのため。本当は、ほのかに甘いカフェラテが一番好きなんだ。
少し中学時代の話を懐かしく楽しんだ。一通り話したタイミングで、如月が今日の本題について訊いてきた。
「クラウさんはどこであの呪いを知ったの?なんで、あんな大掛かりに呪いをやったの?」
ブレてないな。クラウさんのことが心配で……なんてことをこの場で言われたら、わたしはきっと如月への思いは冷めていっただろう。まあ、普通の女の子ならわたしの反応と真逆なんだろうけれど。あくまで、氷のように冷淡な如月だからこそわたしは好きなのだ。普通から外れたわたしの感覚に世界で唯一、シンクロしてくれる存在、それが如月。
「昼間話に出てきた教団跡地にあった教団の名前は、真呪教って言うの。わたしたちが知っている呪いを使って活動していたらしい。そして、そこの教祖の名前はラロ、結城ラロ、わたしのお祖父ちゃんなの。だから、わたしは小さいころからオカルトだとか死生観だとかの教育をラロお祖父ちゃんから受けてきたの。その中に、あの呪いの方法もあったんだ」
「そうだったんだ」
「あまり驚かないね」
「いや、あの教団跡地の話持ってきたのもクラウさんだったし、呪いの話出しても動揺しなかったから、何らかの形で関わっていたことは推測できたよ、さすがに、教祖の孫だとは想像もしなかったけれど」
そう言って微笑む如月を見ていると、改めてわたしの世界には彼だけいてくれればいいと思えてくる。如月がくれたカフェラテを口に含むと、柔らかく控えめな甘さが口の中いっぱいに広がる。
「わたしが五十人に呪いを掛けようとした理由はね、悪魔と契約したかったの」
「悪魔?」
如月の目の色が変わった。言わないほうが良かったかな。でも、もう今更だし仕方ない。
「そう悪魔。この呪いの起源は、合わせ鏡の中に住む悪魔なの。ところで、如月はどんな呪いの反動を受けたの」
「呪いの反動?ああ、長野君を呪った後に寝るたびに足の裏や手のひらからワイヤーを骨に沿って差し込まれたよ。思い出すのも嫌だよ」
うっ、それも嫌だな。想像するだけで痛い。
「いつ解放されたの?」
「あまりに呪いの反動がきつかったんで、反動をなくすために早く誰かに呪いをやらせようと思ったんだ。それで、インターネットでいかにもイジメられていて、復讐をしたそうなやつを探した。で、そいつに呪いをやらせて僕は反動から解放されたんだ。これもすごい偶然なんだけれど、クラウさんを今回呪いから解放させたのも同じ人、坂井君なんだ」
同じ人?
坂井?
よく分からないけれど、わたしと如月は同じ人を利用して呪いから解放されたということか。やっぱり運命的だな。
「すごい偶然だね。わたしは道路とか平らにするローラー車に体中潰されてたわ。三年間ずっとね。かなりキツかったよ。如月なら分かると思うけれど、呪いの反動がなくなったら最強だと思わない?それでわたし、悪魔に契約を持ちかけたの。毎年五十人呪い殺すから、反動をなしにしてくれって。そうなれば、真呪教の教祖もラロお祖父ちゃんから譲ってもらえるはずだったの」
「毎年五十人?」
「そう、毎年」
あれ、如月が眉間に皺を寄せている。さすがに非道すぎると思ったかな。
「そんなに少なくていいのか」
やっぱり如月だ。さすがわたしの運命の人。わたしと同じ感覚、感性を持っている。
「うん、わたしもそう思った。でも、ラロお祖父ちゃんも呪いの反動を受けないようになっているし、嘘ではないと思う。それで、五十人に呪い掛けて一度に済まそうと思ったら佳苗が思いもしない失敗をしたのよ。それで四十九人しか呪えなくて悪魔との契約が不履行になって、ローラー車に潰され続けたのよ」
そう、佳苗なんだよ。佳苗が余計なことをしなければ……
「彼女が何をしたの?」
「あっ、えっと」
言えない。恥ずかしすぎる。如月と付き合えるようにと佳苗が動いていたなんて恥ずかしい。運命の相手とか思っているけれど、わたしには如月に告白する勇気もない。それこそ、恋愛成就の呪いを教えてもらいたいくらいだ。
「まあ、友達のミスだから言いたくないだろうけれど、彼女が何らかのミスを冒したんだね。それでクラウさんが苦しむなんてもってのほかだね」
んっ、なんか嬉しいことを言われているような気がする。
ところで、と如月が話を切り替えた。
「僕は長野君に使ったのが初めてだったんだけれど、クラウさんはどうなの」
「わたしは真理が一番最初。如月と同じで屋上でご飯食べていた時だよ」
「そっか、僕ら同じ日の同じ場所で同じ呪いを初めてやったんだね。運命的だね」
そうよ。やっと、気づいてくれた。そうなの、わたしとあなたはきっと運命で結ばれているのよ。だから、お願い、わたしの気持ちに気がついて。
「それで、これからなんだけれど」
「これから?」
「だって、後一人呪い殺せばクラウさんには呪いの反動はこなくなるんでしょう。だから、早くもう一人呪おうよ」
「えっ」
「クラウさんに呪いの反動が来なくなったら、その真呪教を継ぐんでしょう。そうなったら、クラウさんの手伝いを僕に任せてもらえないかな」
告白、ではないけれど、如月と二人で真呪教の活動ができる。これこそ、願っていた形じゃない。
「でも、誰を呪おうかな」
「いるでしょ、五十人目にピッタリの人物が」
そう言った如月を見て、はっと気がついた。いた、この人以外いない。逆にこの人は、早いうちに呪っておいた方が良い。
「そっか、分かった。じゃあ、実行する日を決めないとね」
わたしと如月はお互いの顔を見て、笑いあった。
◆◇◆◇◆◇
「退院おめでとう」
「クラウさん、おめでとう」
「二人とも、ありがとう」
車椅子と松葉杖を併用すれば移動も問題ないレベルと判断され、わたしは一昨日退院できた。そして、今日、如月と佳苗の二人に退院祝いを開催してもらっているのだ。四人席にわたしの向かいに如月と佳苗が座ってる。
「ねえねえ、クラウと如月君は中学校の同級生だったんでしょ。仲良かったの?」
「まあ、同じオカルト研究会にいたくらいだから仲は良かったんじゃない、ねえ如月」
「そうだね。僕が学校休んだ時に、クラウさんがお見舞いに来てくれてこともあったよね」
「えっ、クラウ、如月君の家に行ったことあるの?一人で?」
探ってくるなぁ、佳苗。そんなに如月とわたしの関係が気になるのか。
「いや、あの時は真理と江藤も一緒だったよ」
「その真理って子が」
「そう、中学の時に死んじゃったわたしの親友」
わたしが呪い殺したんだけどね。如月の気持ちを聞いた今だったら、呪わなかったんだけど、ごめんね。
「真理はさぁ、如月のことが大好きだったんだよ」
「えっ」
如月、ビックリして声出てるじゃん。本気で気づいてなかったんだね。
「だから、如月を狙っている女性がいたら、真理の呪いが掛かるって有名だったんだ。もし、佳苗が如月に好意を持っていたら、もうすでに真理に呪われてるね」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
佳苗の顔色が少し青くなってる。そりゃそうだよね、佳苗は如月のことを意識してるんだもんね。真理の呪いなんてものはないけれど、真呪教の呪いは実在するのよ。
そして、今、佳苗への告知は完了。あとは発動を待つだけ。それまで、楽しくわたしの退院祝いをしましょ。佳苗が如月に好意を抱こうが抱くまいが、呪っていたけれどね。アンタが余計なことしたから、わたしは三年間もあの地獄を味わったんだよ。これで一番最初にやらなければいけなかった、裏切り者への復讐は果たせたかな。
「さあ、料理が来たよ。冷めない内に食べようよ」
そう言って、真っ赤なトマトソースのパスタを如月がみんなの皿に取り分け始めた。そうだよ、佳苗。最後かもしれないから、しっかりと味わってね。
◆◇◆◇◆◇
「もう、クラウったらあんな場所で真理さんの呪いなんて話、しなくてもいいのに」
退院祝いは、クラウの体力も考えて食事会のみでお開きになった。私はアパートに向けて一人で歩きながら、まだクラウにあのイベントの真実を聞いていないなと、思い返した。まあ、退院したからいつでも会えるし、いいんだけれど。でも、失敗したな。食事会だけだからって、何も夜勤の入りの日に決行しなくても良かったなぁ。最近は手のかかる患者さんがいないから、仮眠できそうなんで何とかなるか。
「じゃあ、私先に食事休憩取るね」
「はい、わかりました。今夜はみんなおとなしいので、ゆっくりしてきてください」
私は検査の準備をしながら答えると、今夜一緒に夜勤に入っている先輩看護師はナースステーションを出て休憩室に向かっていった。今日は少なくとも三十分は休憩できそうだな。先輩が出ていって、ナースステーションはガランとなり、めずらしく病棟中がシーンと静まりかえっている。
「何だろう。本当に今日は静かだなぁ」
さっきから手元はちゃんと動かしている。
「あれっ」
私、なんでストローなんか消毒してんだろう。私の目の前には、少し硬めのストローが十本くらい消毒されて並んでいた。昼間出かけたから、やっぱり疲れてるのかな、思わず苦笑してしまった。
「私、何してんだろう」
ストローを手にとって、マジマジと眺める。
「いつか、如月君と二人でプールサイドで真っ赤に熟した南国のフルーツの生ジュースを一緒に飲みたいなぁ」
そんな事を考えながら、ストローを左腕の静脈に刺した。
「えっ、なに」
痛みをあったが、それ以上に自分のした行動に戸惑った。なんで、ストローを静脈に突き刺したのか。刺されたストローからは、なぜか静脈血が吸い出されているが床に垂れることはなく、蒸発するように消えていく。
驚いている暇もなく、今度は左足首の静脈にストローを刺した。そこからもなぜか血液が吸い出されている。次いで右足首にも同じようにストローを突き刺した。三つのストローから血液が吸い出され続けている。ヤバい、このままじゃ失血死してしまう。ストローを抜かなきゃ、と頭は理解しているのに体が言うことをきかない。
確か、看護学校の授業で、体重五十キログラムの人で千二百CC出血すると命が危険になると習った気がする。私の体重だと千CCくらいになるかな。ならば、まだ時間はある。何かこの環境を変える方法があるはず。
どこが動かせる? 右手、ダメだ自由にならない。左手もダメ。両足ともに全く動かせない。体は椅子に縛り付けられているように動かない。首、動く。よし、首は動く。ナースステーションの時計を首を回して確認する。先輩が食事休憩に行ってから、約十分。後二十分耐えれば先輩が戻ってくる。そうすれば、助けてもらえる。
そもそも、この状況はやはり異常としか言いようがない。本当に真理さんの呪いなのかな。如月君を好きってだけで、呪われるんじゃたまったもんじゃないよ。真理さん、ごめんなさい、許して下さい。でも如月君はあきらめられない。ごめんなさい、ごめんなさい。あぁ、そうだ、如月君はもともとクラウが恋い焦がれていた相手だったな。ごめん、クラウ。私も如月君が好きなんだ。
あれ、クラウは中学の頃から如月君が好きで。同じ中学の真理さんも如月君が好きで、でも死んじゃって。で、クラウが呪いを使って、クラスメートがみんな死んだ。理由は聞いてないけれど、クラウが呪ったんだよね。もしかして真理さんもクラウが呪ったの?じゃあ、今のこの状況ってクラウが私を呪っているのかもしれない。真理さんの呪いじゃなくて、クラウの呪いなの?
「何としても生き残って、クラウに真実を確かめなきゃ」
時計を見ると、後十五分ほどで先輩が戻ってくる。それまで絶対に耐え抜いてやる、そう決意した瞬間だった。気がつけば、冷汗が出てきていることに気がつく。失血性のショック症状が出始めている。
「このままじゃ死んじゃう。やだ、死ぬのは嫌だよ」
そんな時、視界の中に見慣れないものを捉えた。
「なに……、あれ……」
空中に青白い赤ん坊が浮かんでいて、私に刺さっているストローを咥えている。その青白い赤ん坊は、空中に浮かびながら哺乳瓶でミルクを飲むように、ストローで私の血液を啜っているように見える。青白く透けたお腹のあたりに私の血液が赤黒く溜まっている。
「なに、気持ち悪い。なに、なんなの。いや、死にたくない」
完全に頭の中がパニックだ。すがるように時計に目を向けるが、すでに視界はボヤケ始めてきて呼吸も苦しくなってきていた。早く、先輩、早く戻ってきて。
「クラウ、ごめんなさい、ごめんなさい」
すでに声として発することは叶わず、開いた目から光が消えた後も青白い赤ん坊たちは、佳苗の血液を最後の一滴まで吸い出していた。
先輩看護師が戻ってきた時、左腕の静脈に刺したストローを口に咥え、口からは吸い出していたであろう血液を垂らしている佳苗の姿があった。
◆◇◆◇◆◇
その日の夜中……
「これで悪魔が出てくるはずよ」
合わせ鏡の間に蝋燭を立てて、隣にいる如月に説明をした。今日、佳苗に呪いの告知をしたから、今日中に呪いが発動しているはずだ。
「こんなに簡単に悪魔に会えるんだね」
「うん、わたしもラロお祖父ちゃんがやってるの見てそう思った」
「呪い自体も簡単な道具でできるしね」
「ホントだよね。百円ショップで全て揃っちゃうんだもの」
費用対効果の高い呪いだね、と笑い合っていると鏡から声が聞こえてきた。
「よう、久しぶりだな嬢ちゃん。こっちの世界では楽しめたかい」
相変わらず気持ち悪い顔でむかつく喋り方だわ。
「お陰様でね。一度はあんたも味わってみれば」
「生憎だが俺はドSでね。嬢ちゃんたちみたいな趣味はねぇんだよ」
「わたしだってドMじゃないわよ」
ちょっとコイツ、如月の前で何言ってくれてんのよ。変に思われたら最悪じゃない。ホント、コイツを一番呪ってやりたいわ。
「ところで、そっちの兄ちゃんは……」
なによ、急に黙っちゃって。如月のかっこよさに引いてんの。まあ、アンタのその醜い容姿と比べると月とスッポンね。
「初めまして、僕はクラウさんとお付き合いしているものです。一度、アナタとお話をしてみたかったんですよ」
「そうか、俺もお前に興味があるぜ」
ちょっと待って、今、如月はわたしとお付き合いしているって言ったよね。それって、わたしは如月の彼女ってこと?嬉しい、嬉しすぎる。
「で、嬢ちゃんの用事はなんだよ」
もうちょっと喜びに浸らせなさいよ。この馬鹿。
「前回、四十九人しか呪えなくて契約不履行になったから、今日一人呪い殺したよ。これで契約完了にならない?」
「おいおい、馬鹿言ってんじゃねえよ。もう期限はとっくに過ぎているだろうが」
やっぱりか。なら、
「もう一回、契約のチャンスをもらう亊はできる?」
「失敗の辛さを分かっているくせにまたやるのか。さすがにラロの孫だけあるな」
結局、今から受ける佳苗への呪いの反動をラロお祖父ちゃんに解放してもらって、落ち着いて作戦を練って再チャレンジをすることになった。今日はもう遅いので、明日、ラロお祖父ちゃんにお願いしよう。二日間の我慢だ。今度は絶対に失敗しない。そして、如月と二人で真呪教をやるんだ。
「ところで、兄ちゃん。ちょっと時間を欲しいんだが、いいか」
「僕もアナタと話してみたいので」
「嬢ちゃん、ちょっとだけ外してくれねぇか」
思わず如月を見ると、安心させるように頷いていた。後で話の内容を教えてね、と言って部屋を出た。
「さて、兄ちゃん。顔をよく見せてくれないか」
悪魔は鏡越しに如月の顔をマジマジと見ている。そして、なるほどと一人で納得していた。
「兄ちゃん、ラロにはもう会ったかい」
「いえ」
「そうか、その時が楽しみだぜ」
「僕もアナタに確認したいことがあるんですが」
「なんだ、名前は教えないぜ」
「アナタの名前に興味はありますが、今知りたいのは別のことです」
「何だよ、場合によっては教えてやるぜ」
「坂井麗士は、あなたとの契約を失敗しましたよね。それで、その前に契約不履行の罰を受けていたクラウさんが、呪いの反動と同様にところてん式に解放された。違いますか」
「否定はしねぇよ」
という事は、部屋数の問題でもあるのかもしれないな。
「それともう一つ、確認しておきたい事があるんですが」
そうして、如月は確認したい内容を悪魔に話し始めた。
◆◇◆◇◆◇
鏡の中の世界
あの兄ちゃんだったのか。
ラロと同じような魂してやがる。どっちも人間って器に収まらないくらい闇が漏れているぜ。この二人は天使か悪魔として生まれるはずが、何の間違いか人間に生まれちまったんだろうな。
この前の気持ち悪いバカも、まあまあだったんだがな。まあ、仕方ねぇか。
さて、二人が出会って何が始まるのか、その時が今から楽しみだぜ。
第7章 それぞれの思い
【了】
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