侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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5話 メリア・デルトーイ その1

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「フューリ……ええと」

「ああ」

   私とフューリ王太子殿下の間には、なんとも言えない雰囲気が流れていた。

「昔はよく、こうして庭で遊んだっけ……」

「そうだったな、もう何年前になるのか。懐かしいな、本当に」

「ええ、本当に懐かしいわね」

   私はフューリ王太子殿下を連れて、屋敷の庭を歩いていた。アラベスクが先ほど提案してくれたことで、フューリ王太子殿下の従者からも許可は得ている。

   我が国の王太子殿下と、こうして歩けるなんて信じられないことだ。いくら貴族とは言っても簡単に出来ることではないし。

   私は緊張しながらも、昔のことを思い出し、フューリ王太子殿下と普通に話すように心掛けていた。そうしないとお互いに気を使ってしまうし、こうして並んで歩いていても楽しくないからね。

「フューリ、聞きたいことがあるんですが……じゃなくて、あるんだけど」

「ああ、どうしたんだ?  レオーネ」

   やはり、気を抜くと敬語に戻ってしまう。まだまだ、慣れるまでは時間がかかるんじゃないかしら。フューリ王太子殿下も笑ってくれているので、その辺りはゆっくりと解決していこうか。

「メリア・デルトーイ様のことなんだけれど……」

「隣国の王女だな。どうしたんだ」

「どういう方なのかな、と思って」

「気になるのか?」

「気になる……という程ではないけれど」

   ビクティム侯爵が選んだ相手……気にならないと言えば嘘になる。隣国のデルトーイ王国の王女ということは有名だけれど、交流の為のパーティー等ではお会いしたことはない。

   つまり、直接話したことはなかった。

「フューリはどういう方か知っているの?」

「一応はな。肩書き的には女王候補に挙げられる人物のようだが、デルトーイ王国の風習なのか、王位継承権はなくなっているようだ」

「だから他国の貴族との婚約話が進んでいたのかしら?」

「そうだろうな、どういう経緯でビクティム侯爵と知り合ったは不明だが……」

   その部分はフューリでも知らないのか。

「我が国で行われている、公式のパーティーに出席したという情報もない」

「そうなんだ」

「ああ」

   公式のパーティーに出席してないなら、ビクティム侯爵は何処で親しくなったのかしら?   メリア・デルトーイ王女……結構、謎の人物かもしれない。
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