侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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29話 牢屋のビクティム その2

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 あれから……あのパーティーでビクティム侯爵が捕まってから10日が経過していた。私は我が家を訪れてくれているフューリと二人きりで話をしていた。


「それで……ビクティム侯爵の様子はどうなの?」

「ああ、そのことなんだが……どうやら、地下牢の兵士と一悶着あったようでな。侯爵という地位を剥奪されると分かった瞬間、様子が変わったらしい……」

「様子が変わった……? それは、どういうことなの?」


 パーティー会場から出て行くビクティム侯爵は罪を受け入れたような……いいえ、何かを企んでいるようにさえ見える表情をしていたような。


「簡単な話さ、ビクティム・クラウスは侯爵の爵位を剥奪されるだろう事実を聞いておかしくなった……それだけだ」

「おかしくなった……」


 確かに、あのプライドの塊のようなビクティム侯爵ならあり得ると思う。自らが君臨し、あぐらをかいていた場所……その地位から引きずり降ろされ、今では地下牢に閉じ込められる始末なのだから。あれだけの失態と起こしてしまったビクティム侯爵には相応しい罰と言えるだろうか。少なくとも私は、同情する気にはなれなかった。

「今更、彼のことについて聞かされてもどうかとは思うが……今、ビクティム侯爵についてどう思っている?」

「オルカスト王国の伯爵令嬢、レオーネの立場からすれば……彼のことを悪く言うのは避けたいところね」

「なるほど……では、個人的には?」

「ざまあみろ、という言葉が適切かしら?」

「なるほど、これ以上ない程の褒め言葉と言えるだろうね」

「ありがとう、フューリ」


 私達はお互いに軽く笑い合った。

「それで……ビクティム侯爵の罰はどうなるの?」

「ああ、そのことなんだが……」


 私はフューリが少し、暗い顔になったのを見逃さなかった。何か、予想外のことが起きようとしているのかしら……?



------------------------------------------------------



「議会が攻めあぐねている……?」

「実はそうなんだ。ビクティム・クラウスを守る部隊が編制されたようでな……」

「ビクティム侯爵を守る部隊?」


 フューリから聞いた言葉ではあるけれど、冗談のような部隊にすら思えてしまった。しかし現状、そのビクティム・クラウスを守る部隊が、議会を脅かそうとしているのは事実だ。フューリがそんな冗談を言うわけがないし……。

「うむ、その部隊は……既に予想出来ているかもしれないが、クラウス家の親戚その他で構成されている。クラウス家が独立し、公国を作り出すという話……現実味を帯びて来たのかもしれないな」

「公国……」


 私は信じられない言葉を聞いているようだった。公国としての独立……そのようなことが現実に起きれば、どうなってしまうのか……。
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