41 / 60
41話 ビクティム侯爵への罰
しおりを挟む
あの議会での発言から数日が経過した本日。私はフューリに会うために、彼の私室を訪れていた。彼は私をオルカスト王国の中心である宮殿に招待してくれ、私室へと招いてくれた。
「王太子殿下のお部屋……流石に緊張するわね」
「初めて来たわけでもないだろう? レオーネ」
「それはそうかもしれないけれど……」
いくら幼馴染とはいっても、フューリは次期国王になられる存在でもある。そんな彼の部屋に入るということは、一定の緊張感が生まれてしまうのだった。私のお付きとして、執事のアラベスクが同行してくれているけど、彼はフューリの部屋には入らずに外で待機している。
「フューリ、早速で悪いのだけれど、用件を聞かせてくれないかしら?」
「ああ、分かっているよ。議会から連絡が来てね……ビクティム・クラウスの罰が決定したようだ」
「ビクティム侯爵の……?」
「ああ」
あの審議から数日が経過しているので、審議結果が出たとしても不思議ではない。その通達が一早く、フューリの元に届いたということね。私ははやる気持ちを抑えられなかった。私が必死で話した事柄がどのように処理されたのか……非常に気になるところだった。
「それで、フューリ。ビクティム侯爵はどんな罰に処せられるのかしら?」
「ああ、そうだな。まずは侯爵としての爵位は封印されることになった」
「封印……?」
あまり聞かない言い回しだけれど、具体的にはどういう意味合いがあるのかしら? 私はフューリに聞いてみる。
「爵位の封印っていうのは、あまり聞かない罰だと思うのだけれど……」
「そうだろうな、我が王国の独自の罰だからな」
「そうなんだ」
「ああ……具体的には、ビクティム・クラウスは辺境地開拓に回されることになった。そちらで成果を示し、一定の期間を掛ければ元の爵位に戻れるというものだ」
「それって……」
通常の罪人の懲役刑と同じ? いえ、辺境開拓地での地位が問題となるわけだけど。
「その辺境地での、ビクティム侯爵の地位はどのくらいになるのかしら?」
「はっきりとしたことは言えないが、ビクティム・クラウスはその段階では一般人と変わらない地位に落ちている。辺境地開拓の一労働力としてカウントされるだろう」
労働力の1つとして数えられるだけ……これはビクティム侯爵にとっても、非常に不名誉な事態だと思う。罪に対する罰が重いのか軽いのかの判断は微妙だけれど、ビクティム侯爵には相当な屈辱が圧し掛かってくるだろうとは理解できた。
「エドモンド様の意見も考慮された、ということかしら?」
「それは分からないが、多少は憂慮されたの思う。本来ならば、永久的に爵位のはく奪でもおかしくはないのだから。それから考えると、かなり軽減された罰という見方もできるだろう」
確かに……あんな公共の場での失態と、父親であるアーロン様を殴り倒した事実があるのだから、オルカスト王家としてはビクティム侯爵の爵位を永久に取り上げたかったと思う。
でも、そこまで出来なかった……つまりそれは、エドモンド・デューイ公爵などの力が影響したということ。私は少しだけ寒気がしてしまっていた。
「さてと……湿っぽい話はこのくらいにしておこうか。どうかな、今から少しだけ出かけないか?」
「えっ、フューリと……?」
意外なフューリからの提案に私は驚く間もなかった。デートの誘い……そのように受け取れたから。
「王太子殿下のお部屋……流石に緊張するわね」
「初めて来たわけでもないだろう? レオーネ」
「それはそうかもしれないけれど……」
いくら幼馴染とはいっても、フューリは次期国王になられる存在でもある。そんな彼の部屋に入るということは、一定の緊張感が生まれてしまうのだった。私のお付きとして、執事のアラベスクが同行してくれているけど、彼はフューリの部屋には入らずに外で待機している。
「フューリ、早速で悪いのだけれど、用件を聞かせてくれないかしら?」
「ああ、分かっているよ。議会から連絡が来てね……ビクティム・クラウスの罰が決定したようだ」
「ビクティム侯爵の……?」
「ああ」
あの審議から数日が経過しているので、審議結果が出たとしても不思議ではない。その通達が一早く、フューリの元に届いたということね。私ははやる気持ちを抑えられなかった。私が必死で話した事柄がどのように処理されたのか……非常に気になるところだった。
「それで、フューリ。ビクティム侯爵はどんな罰に処せられるのかしら?」
「ああ、そうだな。まずは侯爵としての爵位は封印されることになった」
「封印……?」
あまり聞かない言い回しだけれど、具体的にはどういう意味合いがあるのかしら? 私はフューリに聞いてみる。
「爵位の封印っていうのは、あまり聞かない罰だと思うのだけれど……」
「そうだろうな、我が王国の独自の罰だからな」
「そうなんだ」
「ああ……具体的には、ビクティム・クラウスは辺境地開拓に回されることになった。そちらで成果を示し、一定の期間を掛ければ元の爵位に戻れるというものだ」
「それって……」
通常の罪人の懲役刑と同じ? いえ、辺境開拓地での地位が問題となるわけだけど。
「その辺境地での、ビクティム侯爵の地位はどのくらいになるのかしら?」
「はっきりとしたことは言えないが、ビクティム・クラウスはその段階では一般人と変わらない地位に落ちている。辺境地開拓の一労働力としてカウントされるだろう」
労働力の1つとして数えられるだけ……これはビクティム侯爵にとっても、非常に不名誉な事態だと思う。罪に対する罰が重いのか軽いのかの判断は微妙だけれど、ビクティム侯爵には相当な屈辱が圧し掛かってくるだろうとは理解できた。
「エドモンド様の意見も考慮された、ということかしら?」
「それは分からないが、多少は憂慮されたの思う。本来ならば、永久的に爵位のはく奪でもおかしくはないのだから。それから考えると、かなり軽減された罰という見方もできるだろう」
確かに……あんな公共の場での失態と、父親であるアーロン様を殴り倒した事実があるのだから、オルカスト王家としてはビクティム侯爵の爵位を永久に取り上げたかったと思う。
でも、そこまで出来なかった……つまりそれは、エドモンド・デューイ公爵などの力が影響したということ。私は少しだけ寒気がしてしまっていた。
「さてと……湿っぽい話はこのくらいにしておこうか。どうかな、今から少しだけ出かけないか?」
「えっ、フューリと……?」
意外なフューリからの提案に私は驚く間もなかった。デートの誘い……そのように受け取れたから。
34
あなたにおすすめの小説
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる