侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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58話 VSエドモンド公爵 その1

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「おお! これはこれは、フューリ王太子殿下! いらしていたのですかっ!?」


 国民の視線が私達に集中したのを見計らったのか、エドモンド様はさらに過剰な演出を交えながら、拡声器で叫んでいた。エドモンド様とも何度か視線は合っていたので、彼が私達の存在に気付いていたことは間違いないはず。


「まったく……わざとらしい演技もここまで来ると立派だな。エドモンド・デューイは公爵を辞めて、サーカス団員になった方が成功するかもしれない」

「役者とか向いてそう……」

「そうだな、ははははははっ」


 国民からの視線が集まり、最初こそ戸惑ってしまったけれど、考えてみると焦る必要なんて全くなかった。だってこっちにはフューリが居るし、ダンテ兄さまも居る。そして何より……何も悪いことはしていないのだから。


「エドモンド……これがお前の計画なのか?」


 あれ? いつの間にか、フューリも拡声器を手に持っていた。さっき護衛の一人が何かを渡すしぐさをしていたけれど……まさか、拡声器だったなんて。おかげでフューリは大声を上げなくても、エドモンド様に言葉を伝えられていた。

「計画……? なんのことですかな? 私は事実を申し上げている次第でございます」

「事実だと……? 一体、どんな事実だと言うのだ?」

「フューリ……」

 フューリはわざとエドモンド様を煽っているように見えた。自らの考えている策略に嵌める為に……。こうして見ると、フューリも悪役に向いているのかな? 彼も役者の才能があるのかもしれないわね。

 エドモンド様はフューリの思惑通り、勝ち誇った表情になっていた。結構、不気味かもしれない。


「フューリ王太子殿下……そちらにいらっしゃる、レオーネ殿と貴族街の宿に泊まっていますな? 同じ部屋に泊まっているのは、確認が取れております」

「な、なんと……!」

「本当なんですか、王太子殿下!」


 詳細を知らない国民達はエドモンド様の言葉に、強く反応していた。うん、まあ……事実ではあるけれど……。決して間違ってはいないわね。

「そうだな……まあ、事実と言っておこうか」

「そ、それは……!」

「聞きましたかな、皆さん? フューリ王太子殿下とレオーネ伯爵令嬢は、婚約関係でもないのに同じ部屋に泊まっております……それから予想できる内容は、まあ、私から申し上げなくともお分かりでしょう」


 下衆の勘繰りというところね……エドモンド公爵は、とても不気味な笑みを浮かべていた。


 思わず目を背けてしまう……でも、彼はまだ分かっていない。ここからフューリによる華麗な大逆転劇が繰り広げられるということを。勝ち誇っているエドモンド様には考えも付かないことでしょうね……。

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