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『鬼戯子』
其の四
しおりを挟む……鬼灯手鞠 カラコロ転ぶ
鬼寄せ神楽の 五墓日詣……
鬱蒼と覆いかぶさり、闇をつつむ森。
四里四方に広がる赤い忌地は、濃密な瘴気を烟らせて、一行の足取りを重くする。
不自然にゆがむ木々、風もないのにうごめく草棘、鵺の奇声が鳴り渡る。
不気味な唄声をたどり、深奥な禁忌の森をさまよい、徐々に核心へと近づく四人。
男二人は枯枝を手に、細心の注意を払って先行。
女二人は身を寄せ合って、不安そうに周囲をうかがう。
毒々しい瘴気は、吸いこむごとに悪心を覚える。
子供時代より、さらに鬼業が強まっているようだ。
彼らは、重く圧しかかる体調不良と悪寒を懸命にこらえ、ただひたすらに歩き続けた。
……とと様かか様 柘榴になぁれ
黄泉竈喰ひの 血神酒酔ひ……
「なにか妙だわ……なにかが、ちがう気がする」
不気味な唄声に誘われる四人の、息苦しい緊迫感を最初に打ち破ったのは、沙耶だった。
佳苗も、おずおずとうなずき、同意する。
「確かに、どこかちがう気がする。でも、なにかしら。歌詞が、まちがってるような……」
「まちがってるも、なにも、元々この唄は、阿弥陀信仰の、目出度い祝い唄だったものを、どこの誰だか知らないけど、鬼神を讃える禍唄へと、替えたものだろう?」と、女性たちを振り返り、眉をひそめる笙瑞。
これを手がかりに、紫瑛があることを思い出し、「啊っ!」と、膝を打った。
驚いて、いすくまる佳苗。沙耶が怒鳴った。
「な、なんなのよ! 吃驚するじゃない!」
「紫瑛君、なにか判ったのかい?」と、笙瑞。
「いや、そう重要なことじゃないかもしれねぇが、あの日……忌地へ向かう道すがら、皆でこの唄を合唱してったろ? 忌地の探検、肝試しってな具合にさ。なんてぇか、恐怖を味わうために! ところが、途中でいさかいが生じて……ほら、誰かがワザと歌詞をまちがえて唄ってるって! けど禁忌の禍唄だし、一人ずつ唄うのは、やっぱり怖かったから、うやむやになっちまって……違和感は、そこなんじゃないか?」
紫瑛の指摘で、沙耶と佳苗の遠い記憶も呼び覚まされた。
盂蘭盆迎え火の日、猛暑の昼下がり、忌地の探検に出かけた五人の子供たち。
――最初にいつもの駄菓子屋さんで、おやつを買ったんだ。子供好きで優しいおじいさんが、黄粉餅を一個ずつおまけしてくれたねぇ。手鞠でふざけあって、蝉をつかまえて、唄いながら田んぼの一本道をすすんだんだ。先頭は笙くん、二番目が玲ちゃん、三番目が苗ちゃん、四番目が沙耶ちゃん、しんがりが紫瑛くん。唄のことがきっかけで、ケンカをはじめたのは忌地ちかく。ちょうど、すれちがった飛脚のおにいさんに、そんなバチあたりなこと唄っちゃダメだって、怒られたっけねぇ――
「私、わざとまちがえてたの、玲ちゃんだって知ってたわ」と、佳苗がうつむき、云った。
「どこを、どうまちがえてたの?」と、笙瑞が聞き返す。
佳苗はひとしきり考えたが、項垂れた。
「判らない、思い出せないの」と、首を振る。
「俺さ、ずっと聞きたかったんだ……けど、皆、あの時は酷い衝撃で、口も利けない有様だったよな……だから、なんか訊ねるのもはばかられてさぁ。玲凛を殺した鬼の姿を……お前らは、見たワケだろ? 一体、ここで、なにが起き……」
しんがりを守る紫瑛が、恐る恐る三人に問いただした途端……笙瑞の歩が止まり、沙耶と佳苗はけたたましい悲鳴を上げた。驚き、前に飛び出した紫瑛。突如、開けた樹海の切れ間を、鬼灯夜の忌月が、さらに赤々と照らし出している。
一町強の、だだっ広い平坦地だ。
中央には、鬼業を吸い上げ、ゆがんだ古木の、孤影が伸びる。
紫瑛が三人の視線を追い、古木に目をこらすと、大きな洞の中で座禅を組む、修験者の姿が見えた。思わず、ハッと息を呑む紫瑛。
「あいつ……まだ、生きていたのか!」
「そうよ! あれが、鬼の正体よ!」
「私たちが見たのは、確かにあいつだわ!」
戦慄する三人の言葉に、紫瑛は瞠目した。
「奴が、〝鬼〟だって!? まさか!」
かなりの老年とおぼしき、髭面蓬髪の修験者は、確かに頭頂部から鋭い一角を突出させていた。しかし彼は〝鬼〟でなく、【巫丁族】の〝人間〟であることは、まちがいなかった。その上、鬼業を孕んだ古木の洞に半身を喰われ、身動きもできず、四人の声に反応して開いた瞳は、白く濁っていた。盲目の証である。
「貴様らぁ、誰の許しを得てここに入ったぁ!」
修験者が発した天地を揺るがす恫喝に、怖気づいた四人はまたしても逃げ出そうとした。
ところが……四方八方、地中から勢いよく噴出した木の根が、四人の逃げ道、退路をふさぎ、一瞬で封じこめてしまったのだ。
虎挟みの如く仕掛けられた、信じがたい罠にはまり、囚われた四人。
彼らの頭上で、キリキリと円錐形に結索された木の根は、こまかい触手で格子を編み上げ、堅牢な木蔦檻を完成させた。四人は成す術もなく、篭の中に幽閉され呆然自失。
硬直したまま、歯の根も合わぬほど震え、声も出せない有様。
耳障りな木の根の軋めきはやみ、四人は三間弱のせまい檻の中、ワナワナとへたりこんだ。さらに追い討ちをかけ、周回の森陰から続々と現れた人影が、木製檻を包囲した。
頭数は十六。片端者、前科者、浮浪者、お尋ね者に病人、果ては鬼憑き罪人まで……いずれも、忌地の中にしか生きられぬ、異形の怪士ぞろいだ。
どうやら一角の修験者が、ここの顔役らしい。
忌地の住人たちは、修験者に一礼して、木製檻に肉薄する。
銘々の手には、槍や山刀がにぎられていた。ここでは、四人の方が異端者だ。
「哈哈哈ァ! 脅かして悪かった喃! お前たちは、いつぞやの悪童どもであろう? 儂らのシマを血で穢しおった、許しがたい悪童どもじゃ! ゆえに今宵は、お前たちを断罪するため、忌地へ招集したと、こういうワケじゃ! ここは地獄の一丁目、いわば冥府の評定庭! 儂ら、鬼業者の怨嗟は執念深いぞ? 夜明けまでに真実を告白せねば、全員に不如帰門をくぐってもらう! 覚悟しろ!」
沙耶と佳苗は恐慌を来たし、号泣する。
紫瑛は恐怖を必死で抑え、女たちをかばおうとする。
笙瑞は憤慨して、修験者を面罵する。
「巫山戯るな! 貴様らが結託して、我々を騙したのだな!? 卑怯者め! 姑息な罠に嵌めておきながら、自分たちの罪を、我々になすりつけようとは……笑止千万! 誰が玲凛を殺した犯人か、知りたいのはこちらだ!」と、懐刀を抜き、木製檻のわずかな隙間から、修験者めがけ投げつける。それを、錫杖ではじいたのは、喝食装の美青年だった。
泣き顔を上げた沙耶は、男の顔に驚愕し、木蔦格子へ取りすがった。
「那咤さん! あんた、どうしてここに!?」
「云っただろ、沙耶。俺は忌地の住人なんだぜ。いくら、お前でも勝手は許さねぇよ!」
穢忌族の喝食行者は、鼻を鳴らして嘲笑う。
「下下六! 女をいじめるんじゃない! 儂は女子供に暴虐を働く奴が、無性に腹立たしくてならんのだ! どんな理由があるにせよ、非道をすると、もう怪我を看てやらんぞ!」
白髪老爺の登場に、今度は佳苗が驚く番だった。
それは、まがうかたなき《寂螺医師》の姿。
「寂螺先生! やはりあなたも、忌地のお仲間だったのですか! 何故、こんなことを!」
寂螺医師は微笑み、別の質問で返した。
「佳苗殿。ご気分は如何かな? 顔色が悪いようだが……なぁに、心配は要らぬ。儂らは、八年前に起きた事件の真相を探るため、あなたがたの協力を得ようとしただけだ。疑念が解け次第、すぐにも無事にお帰り頂こう。保証するぞ」
「お、おんつぁの、せ、先見は、た、た、確かだからな! は、犯人は、ま、まだ捕まってねぇ! お、俺たちにぬ、濡れ衣着せたま、まま、どっかでい、い、生きてるんだ!」
吃音の浮浪者が、斧を片手に興奮して叫ぶ。
「忌地にゃよゥ! 血の臭いで群れ集まる獣が、わんさといやがんだァ! あの日、俺たちァ見ただ! 赤いべべ着た娘っ子が、森の獣らに、喰い散らされるところを……殺ったなぁ、鬼じゃねぇのっす! 余所者の仕業だなァ!」
額に罪印を押された前科者が、干し肉を喰いかじっては、イラ立たしげに吐き捨てる。
「おんつぁは、夢触れ讖緯の占師だ! 医術の心得まで持ってる! 【巫丁族】の、えらい御坊さまだぞ!? 犯人どころか、〝鬼〟呼ばわりは、断じて許せねぇな!」
怒った半身小男が、棍棒で木造檻を叩く。
「クソッ! 勝手放題云いやがって! クズどもが、なめるなよ!」と、発奮した紫瑛が、棍棒をつかんで奪い取ろうとする。笙瑞も力を合わせ、半身小男には仲間が加勢して、格子越しの綱引き合戦が始まった。これを修験者が叱責する。
「双方、退がれ! 忌地にも厳然たる規則がある! それを乱す者には、誰であろうと一命をもって贖わせるゆえ、肝に銘じておけ!」
忌地住民たちは、『おんつぁ』と呼び慕う修験者の厳命に従い、木造檻から引き退がる。
檻の中の笙瑞、沙耶、佳苗、紫瑛は、修験者を睨み黙りこむ。だいぶ腹が据わってきた。
「実はここ数日、儂の夢枕に《玲凛》という名の娘が現れて喃。自分を殺し、大好きな母御を苦しめる〝鬼〟めを、退治して欲しいと頼むのじゃ。儂らとて、八年前の事件を忘れた時はない。なにせ儂らの大切なシマを、血で穢した挙句、濡れ衣を着せようとした輩じゃ。捨ておけん……そこで儂らは事件を再捜査し、真犯人を見つけ出そうと決めたのじゃ」
修験者の言葉に、皆がうなずいている。
「それにゃあ、まずは当事者から攻めるのが妥当だろ? で、あんたらを探し出し、近づいたってワケさ。こン中じゃあ、一番男前の俺が、遊郭から沙耶……お前を連れ出した」
「儂は、無実のお尋ね者でな。ここへ逃げこみ、おんつぁに救われた一人なのだよ。だから、医術の腕を利用して、佳苗殿。あなたを燕家から拉致したワケだ。宅守の《紺慈》に協力してもらってな、茶碗に毒を盛らせたのだ。だが、命に関わる劇毒ではないぞ。現に、あんたの容態はすぐ回復しただろう。逆に鬼亭主から受けた折檻の痛苦も、儂が調合した麻煎湯のお陰で、まったく感じぬはず。紺慈という青年は、あんたに惚れとるらしいぞ? あんたの苦境を見るに見かねて、儂の謀略に乗ってしまった。儂に騙されたと、今頃は臍を噛んで、悔し泣きしとるかもしれんな……気の毒に」
喝食に続き種明かしした寂螺医師は、いささか心が痛むらしく、ため息をもらした。
「それじゃあ……俺たちを脅した路傍の妖しい祈祷師も、てめぇらの仲間だったってぇワケか!? なんて汚ぇことしやがんだ! ド畜生どもがぁ!」
紫瑛の悪言に対し、住民たちは顔を見合わせ、修験者も不可解そうに眉をひそめている。
「儂も、そこが気がかりだったのじゃ。鵬家の紫瑛、宋家の笙瑞。お前たち二人を誘い出す手筈だった忘八は喃。急な腹痛で茂みに駆けこみ、お前たちを見失ってしまったそうじゃ。ところが、お前たちの場合、なんもせんのに忌地までやって来た……そうか! どうやら儂の他にも、大した心眼の持ち主が、いたらしいな。哈哈哈」
紫瑛と笙瑞は、修験者のセリフに唖然悄然。
あの獣臭い祈祷師は、一体、何者だったのか。
「ひとつ、お聞きしたいことがあります。あなたたちは私たちの誰かが犯人ではないかと疑って、ここへ呼び出したのでしょう? でも玲ちゃんの体は、首を切られて内臓を……」
云いながら佳苗は、こみ上げる吐き気に身をかがめた。
彼女を支え、先を続けたのは沙耶だ。
「私たち、まだ十歳だった。子供の目には、あんたが恐ろしい鬼に見えたのよ。それにあの時も怪しい術を使って、私たちを追いかけて来たじゃない……こんな風に捕まえようとして……だから必死で逃げたわ。途中で玲ちゃんが転んで、だけど怖くて私たち……玲ちゃん一人を置き去りにしてしまった。本当に、あんたたちが殺したんじゃないのなら、すべて判るように説明して頂戴! 那咤……いいえ、本名は《下下六》さんというのよね!」
怒気を孕んだ沙耶の瞳は、まっすぐ喝食に向けられていた。
彼は、肩をすくめて苦笑した。
「そう、怒るなよ。お前が望むなら、一生ここにいたっていいんだぜ、沙耶。但し、一人占めはできねぇ掟だ。俺は、ここにいる兄弟分にも、お前を回すけど……かまわねぇか?」
沙耶は背筋が凍る思いだった。百年の恋も冷める、とはまさにこういうことだろう。
今は喝食の美貌に、おぞましさ以外、感じられない。
「貴様ぁ! この、腐れ外道がぁ! はなから沙耶を、こんな汚ぇ連中と、輪姦す算段だったのかよぉ! 絶対に許せねぇぞ! ぶっ殺してやる! 早くここから出せぇぇえ!」
傷つき放心状態の沙耶に代わって、激昂したのは紫瑛だった。
恐怖もなにも忘れ、不気味な木造檻を揺すり、こじ開けようと荒れ狂う。
「やめんか! こやつの云うことなど、真に受けるな! 仲間内でも鼻つまみ者の下衆なのだよ。おんつぁが云ったはずだ。掃溜めにだって、厳然たる規則がある。女を嬲り者にしようなぞと考える大戯けは、下下六くらいだぞ!」
寂螺医師にいさめられ、紫瑛は唇を噛んだ。
はがれた爪先から血をにじませ、なおも喝食行者を睨みつけている。
沙耶は、そんな紫瑛の激情に驚き、目を丸くした。
紫瑛は、自分以上に傷ついているのだと悟り、泪をにじませる。
「紫瑛……あんた」
「紫瑛君、本当のことを告白したらどうだ? 昨日、酒場で教えてくれたじゃないか。親父さんに勘当された理由、沙耶ちゃんのためだったんだろ?」と、笙瑞がさりげなく促す。
「な、なんで!? お前にそんな話した覚えねぇ! 勘ちがいだ、笙瑞! 莫迦云うな!」
顔を紅潮させ、否定する紫瑛に、微笑む笙瑞。
「だったらこの場を借りて、僕が告白してしまおうか? どうせこいつら、僕たちを生かして帰すとも思えないからね……その前に、しっかり沙耶ちゃんと向き合うんだ、紫瑛!」
笙瑞の云うことは、尤もだった。この状態で、無事に帰れると思う方がまちがいなのだ。
笙瑞が佳苗を支えてやり、沙耶は紫瑛に向きなおった。
紫瑛は、熱い心情を彼女に語った。
「俺が今……こんな身形してんのは、親父の手文庫から金を盗んだせいなんだ。四年前のことだ。その金で、お前を請け出してやろうと、安易に考えたのが悪かったのさ。俺、ずっと好きだったから……お前のことが。だから、疎遠になってからも、お前の暮らし向きが気になって、何度も茂埋宿に、様子を見に往ってたんだ。そしたら、死んだ二親の借金のカタに、お前が遊郭へ売られたって知って、俺は親父に懇願した。その……将来を誓い合った娘の苦境を助けたいから、金を貸して欲しいって……嘘までついてな。だけど親父は、遊女なんかもってのほかだと、にべもなく突っぱねやがったんだ! 俺はまだガキだったし、働いて大金を稼ぎ出すまで、とても待てなかった。冷酷な親父にも、腹が立って、つい……魔が差しちまったのさ。結局は、すぐに見つかって……俺は無一文のまま、放り出されちまった。お前を救うどころか、てめぇの口を養うだけでも精一杯の有様だ。俺は、お前を助けてやれなかった自己嫌悪から、次第にひねくれて……哈哈哈! 大莫迦だろ? 今じゃあ、遊び人の破落戸風情に落魄れて、この体たらくさ!」
紫瑛は、ボロをまとい、打擲で腫れた、惨めな己の姿を恥じ入るようにうつむいた。
沙耶の瞳からは、ポロポロと泪がこぼれていた。
自分をこれほど、大切に想ってくれる人がすぐそばにいた。
沙耶は、紫瑛の胸にしがみついた。
「ヤレヤレ、愁嘆場はその辺にしてくれ」
「そうじゃ。まだ、決着はついておらんぞ」
「……」
寂螺医師、修験者、喝食行者に見据えられ、抱き合う二人はハタと現実に引き戻された。
「私たちに、これ以上どうしろというのです?」
佳苗の切実な問いかけに、修験者は答えた。
「玲凛の死因は、頭部に喰らった一撃じゃ。ここから然程、遠くない岩場で、儂らはそれを裏づける痕跡も見つけたのじゃ。ゆえにお前たちも疑った。殺意はなくとも子供同士の喧嘩の果てに、突き飛ばして死なせるくらいたやすいじゃろう。だが、お前たちはちがう」
そう云うなり、白濁した目を細め、ニヤリと嗤った修験者。
ギョロリと白目を回し、一瞬で朱色の眼球を露にする。
これを合図に、忌地住民たちは、すかさず木製檻から後退した。
突然、四人を幽閉していた木蔦格子の檻が、縛めを解き、バサリと八方へ倒壊したのだ。
奇々怪々な木の根は、朽ちて無数の木っ端に変じた。
またしても驚き強張る四人……しかし、逃げ出そうとする者は最早、誰もいなかった。
忌地住民たちも納得したのか、元来た通りに、森陰へと姿を消して往く。
残ったのは、動けない修験者と、喝食行者、寂螺医師、そして、古木のそばにうずくまる二十三、四の青年だけだった。
「ぼん、お前は奴らを、どう見るね?」
修験者は青年を《ぼん》と呼び、話しかけた。だが白痴青年は、小首をかしげ意味不明な単語をいくつかつぶやいては、無邪気に笑っている。
「その男は……誰なんだ?」
紫瑛の質問に、修験者が答えるより早く、白痴青年は『鬼灯手鞠』を唄い始めた。
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