天才魔導士様はまだ恋を知らない~私を恋の実験台にしないで下さい!

志熊みゅう

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 魔塔の中は、目新しいものでいっぱいだ。中庭で研究員が新しい術式の検証している。何の魔法だろう?またどこかの部屋で実験に失敗したのか、焦げ臭いにおいが廊下まで漂っていた。

「こちらだ。」

 アレハンドロ一級魔導士に促されて、ホコリ臭い個室に入る。色々な魔道具が置いてあった。その中で彼は箱型の魔道具を手に取り、もう片方の手で、人の頭くらいの大きさがある水晶玉を指差した。

「セレナ・イグナシオ嬢、手をこちらに。」

 言われるがままに、水晶玉に手をかざすと、途端にまばゆい白い光があふれ出した。

「魔力量12,000。すごい……、すごいぞ!君。クリスタルクリアだ。」

 魔力量はイグナシオ家でも計ったことがある。実家にある水晶玉では、10,000超えの魔力は測定できなくて、測定不能になったっけ。ちなみに魔導士として仕事をしている他の兄弟たちは魔力量3,000から5,000くらい。両親は女である私の魔力量の高さをことあるごとに嘆いていた。それにしても『クリスタルクリア』というのは何だろう?

「――クリスタルクリアって何ですか?」

「魔力というのは普通なにがしかの濁りがあるものなんだ。ほら、私の場合は……。」

 アレハンドロ一級魔導士が水晶玉に触れると、先程の何倍もの光があふれ出す。思わず目を閉じた。

「ま、まぶしい!」

「まあ、私の魔力量は60,000以上あるからな。それで、色は見えたか?」

「はい。薄紫色でした。」

「ああ、その通り。」

 60,000!?この人は、私の五倍以上の魔力量があるのか。王弟のアレハンドロ公爵が匙を投げ、魔塔に預けたのも納得だ。

「それで、クリスタルクリアというのは?」

「魔力の純度が極めて高く、全く濁りがないということだ。簡単に言うと、人より少ない魔力で精度の高い魔法を操ることができる。」

「珍しいものなんですか?」

「いや珍しいなんてものじゃない!ここまで純度の高い魔力は初めて見た。症例報告ものだ。」

 症例報告!?思ったより大ごとだ。

「あと魔力がある者は国へ報告義務があるが、君の記録は魔力保持者名簿になかった。今日の結果を登録しておくが、いいか?」

「はい、もちろんです。」

 イグナシオ家は魔導士の名家。他の兄弟は全員ちゃんと登録しているはずだ。両親は私に良家に嫁ぎ、妻として母として家に尽くすことを望んでいる。私の登録が漏れたのは、高すぎる魔力は魔導士の家以外では敬遠され、縁談の邪魔になると思ったからだろう。
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