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第三章 真相
3. 占い
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「はあ~。」
二人が帰った後、もう何がどうなっているのか、分からなくなってため息をついた。ブランカも心配そうにこちらを見ている。
「なんか、急に気が重くなったわね。」
「――そういえば、フロレンシア様、占いって信じます?」
「祈祷師は信じないわよ。私あれは、もう懲り懲りなの。」
「あ、いえ。祈祷師ではないです。王都で有名な占い師の方。私も以前、占って頂いて、本当によく当たったんです。まあ眉唾ではありますが、フロレンシア様も一度見てもらえば、多少の気休めにはなるかと。」
「そんなに言うなら見てもらおうかしら、こちらのタウンハウスに呼べる?」
「はい!すぐに手配いたします。」
後日、真っ黒なマントに身を包んだ、物々しい雰囲気の老婆が屋敷に訪れた。見れば首にはたくさんの魔除けのアクセサリーを身に着けている。多分、その一部は魔石だ。
「今日、占って欲しいのはお嬢さんかい?」
「はい、フロレンシアと申します。」
「じゃあ、テーブルと椅子があるところに案内してくれ。」
「分かりましたわ。サンルームに茶菓子を用意しましたの。そちらでよろしいかしら。」
「もちろんじゃ、よろしく頼む。」
サンルームは、花々が咲き乱れ、気候も穏やかなこの時期は特に良い。椅子に腰を下ろすと、老婆は何やら怪しげな水晶玉をテーブルの上にのせた。
「では、早速占ってしんぜよう。お主は何が知りたいのじゃ。」
「色々あるのだけど、まずは私の結婚相手について。実はね、今も一人に求婚されているんだけど、私もう5回も婚約破棄になっているの。信じられないでしょ。」
老婆が、細い目を見開いた。そうだよね、人の悩みをたくさん聞いているはずの占い師さんでも聞いたことない話よね。
「5回とな。――こんなお美しいお嬢さんが。実に意外じゃ。では、見させていただく。」
そういうと、老婆が身につけた魔石と水晶玉が、ギラギラと輝き始めた。本当に未来が見えているのか、それとも魔石を使った、大掛かりな演出か。それでも、人気が出るのは頷けると思った。
「う、ううむ。これは……。」
「どうかしたの?」
「うぅぅぅ、これはすさまじい。」
「ええ、何が見えているらっしゃるの?」
光が水晶玉に吸い込まれていき、魔石ももとの状態に戻った。老婆が水晶玉に手を置き、そのまま何かを言いかけて、卒倒した。しばらくして目覚めたが、顔が土気色のままだ。水を渡して、何があったのか聞く。
「お主の背後に、おぞましき執念が見えた。」
「執念?悪霊じゃなくて?オルティス家に出入りしている、祈祷師のスレマに昔、言われたの。お前には悪霊がついているって。」
「スレマか。あの娘は、私の一番不出来の弟子じゃ。ろくな力もないのに、金稼ぎばっかりしおって。」
「へぇ。占い師さんと、師弟関係にあったのね。」
「あの娘は、はっきりと邪気の正体を区別できない。だから、生きた人間の執念を、悪霊などというのだ。」
「占い師さん、生きた人間って、いったい誰の執念ですの?」
「――おそらく、お主もよく知っておるもののはずじゃ。ワシとて、こんな根深い執念はみたことがない。真っ黒でその正体が判然としないほどじゃ。」
もしかしてと、思って聞いた。
「ねえ、それって今求婚されている人かしら、獣人の血が入っていて、私のことを"番"だっていうの。」
「獣人の番に対する、執念や独占欲は、並々ならぬと聞く。それならば、何も矛盾しない。」
老婆の言葉に悪寒がした。「そ、そう。」とだけ、返事した。老婆は渡された水を飲みほした。少し、回復したようだが、やっぱり顔に血の気がない。給金を渡して、家に帰した。
「――なんか、余計に気が重くなったわね。」
ブランカは少し、申し訳なさそうだ。
「すみません。少しでもフロレンシア様の気が楽になると思ったのですが。」
「いいのよ。あなたのその気持ちだけでうれしいわ。」
もし、祈祷師のスレマが、ロレンシオの執念のことを悪霊だと思っていたのなら――三回目の婚約破棄も、ロレンシオの仕業って話になる。耳裏の誓印に手を伸ばした。
――私。もう逃げられないの?
胸の奥に、冷たい刃がすっと差し込まれたようだった。
二人が帰った後、もう何がどうなっているのか、分からなくなってため息をついた。ブランカも心配そうにこちらを見ている。
「なんか、急に気が重くなったわね。」
「――そういえば、フロレンシア様、占いって信じます?」
「祈祷師は信じないわよ。私あれは、もう懲り懲りなの。」
「あ、いえ。祈祷師ではないです。王都で有名な占い師の方。私も以前、占って頂いて、本当によく当たったんです。まあ眉唾ではありますが、フロレンシア様も一度見てもらえば、多少の気休めにはなるかと。」
「そんなに言うなら見てもらおうかしら、こちらのタウンハウスに呼べる?」
「はい!すぐに手配いたします。」
後日、真っ黒なマントに身を包んだ、物々しい雰囲気の老婆が屋敷に訪れた。見れば首にはたくさんの魔除けのアクセサリーを身に着けている。多分、その一部は魔石だ。
「今日、占って欲しいのはお嬢さんかい?」
「はい、フロレンシアと申します。」
「じゃあ、テーブルと椅子があるところに案内してくれ。」
「分かりましたわ。サンルームに茶菓子を用意しましたの。そちらでよろしいかしら。」
「もちろんじゃ、よろしく頼む。」
サンルームは、花々が咲き乱れ、気候も穏やかなこの時期は特に良い。椅子に腰を下ろすと、老婆は何やら怪しげな水晶玉をテーブルの上にのせた。
「では、早速占ってしんぜよう。お主は何が知りたいのじゃ。」
「色々あるのだけど、まずは私の結婚相手について。実はね、今も一人に求婚されているんだけど、私もう5回も婚約破棄になっているの。信じられないでしょ。」
老婆が、細い目を見開いた。そうだよね、人の悩みをたくさん聞いているはずの占い師さんでも聞いたことない話よね。
「5回とな。――こんなお美しいお嬢さんが。実に意外じゃ。では、見させていただく。」
そういうと、老婆が身につけた魔石と水晶玉が、ギラギラと輝き始めた。本当に未来が見えているのか、それとも魔石を使った、大掛かりな演出か。それでも、人気が出るのは頷けると思った。
「う、ううむ。これは……。」
「どうかしたの?」
「うぅぅぅ、これはすさまじい。」
「ええ、何が見えているらっしゃるの?」
光が水晶玉に吸い込まれていき、魔石ももとの状態に戻った。老婆が水晶玉に手を置き、そのまま何かを言いかけて、卒倒した。しばらくして目覚めたが、顔が土気色のままだ。水を渡して、何があったのか聞く。
「お主の背後に、おぞましき執念が見えた。」
「執念?悪霊じゃなくて?オルティス家に出入りしている、祈祷師のスレマに昔、言われたの。お前には悪霊がついているって。」
「スレマか。あの娘は、私の一番不出来の弟子じゃ。ろくな力もないのに、金稼ぎばっかりしおって。」
「へぇ。占い師さんと、師弟関係にあったのね。」
「あの娘は、はっきりと邪気の正体を区別できない。だから、生きた人間の執念を、悪霊などというのだ。」
「占い師さん、生きた人間って、いったい誰の執念ですの?」
「――おそらく、お主もよく知っておるもののはずじゃ。ワシとて、こんな根深い執念はみたことがない。真っ黒でその正体が判然としないほどじゃ。」
もしかしてと、思って聞いた。
「ねえ、それって今求婚されている人かしら、獣人の血が入っていて、私のことを"番"だっていうの。」
「獣人の番に対する、執念や独占欲は、並々ならぬと聞く。それならば、何も矛盾しない。」
老婆の言葉に悪寒がした。「そ、そう。」とだけ、返事した。老婆は渡された水を飲みほした。少し、回復したようだが、やっぱり顔に血の気がない。給金を渡して、家に帰した。
「――なんか、余計に気が重くなったわね。」
ブランカは少し、申し訳なさそうだ。
「すみません。少しでもフロレンシア様の気が楽になると思ったのですが。」
「いいのよ。あなたのその気持ちだけでうれしいわ。」
もし、祈祷師のスレマが、ロレンシオの執念のことを悪霊だと思っていたのなら――三回目の婚約破棄も、ロレンシオの仕業って話になる。耳裏の誓印に手を伸ばした。
――私。もう逃げられないの?
胸の奥に、冷たい刃がすっと差し込まれたようだった。
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