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お可愛らしいことで
しおりを挟む木の木陰で騎士服を着た青年と漆黒の服を身に纏う男が抱き合いながら、貪るように唇を合わせている。
よく見れば男の片手は青年の服裾から中へと入り込み胸の辺りで不埒な動きをしている。
キュッと胸の飾りを摘まめば、ビクンと大きく身体を揺らし、青年の感度の高さを如実に男へと伝えていた。
男もそんな青年の初心な反応が面白くて堪らない様子だ。
「……んっ、……ふっ……ぁ」
今まで重なっていた唇が離れ、それを嫌がるように銀糸がお互いの間を橋渡す。
青年の首筋に男が顔を埋めるとチリリとしたわずかな痛みを残し、熱い吐息と共に離れていく。
青年に残るのは甘く痺れる首筋の痛みと熱く燻る腹のナカ。
男は表情を和らげて、青年の唇を悪戯に追いかけペロリとなぞった。
青年の身体が細かく震え、形容しがたい何かがぞろりと背中を駆け抜ける。
頬を染めながらも怯えた様子を見せる青年は、男から距離を取ろうとする。しかし、わずかに背を反らすことしか叶わない。
そして、青年に男は囁く。
「無様だな」
射抜くような鋭い瞳には、なんの感情も見えず、ただ漆黒の暗闇が広がっている。
支えられた身体は甘く痺れ、今だに力が入らず足は萎えたまま。青年は悔しげな視線を男に投げ、下唇を強く噛みしめる。
男の口の端が上がったのを捉えたのを最後に、男と同じ漆黒が目の前を塗りつぶした。
◇◇◇
青年の目が覚めると、眉を下げた可愛らしい少年と目があう。ふわふわとした茶色の髪と大きな瞳を持つ少年だ。
小さな少年の膝の上に青年の頭は乗せられている。毎回お馴染みの光景であることに青年はホッとした。
「お加減はいかがですか? 痛いところはありませんか?」
心配した様子の少年は甲斐甲斐しくも、青年の額に浮かんでいた汗を清潔な布で拭いながら声をかける。
しかし、青年が意識を失う前の出来事を思いだし、羞恥よりも腸が煮えかえるような怒りを地面に叩きつけた。
「あンのクソ野郎……っ!」
青年は悔しげに呻きながら、少年から離れ地に伏した。整えられた美しい爪の間に土くれが入るのも構わず、地を削り取りながら拳を握り再び大地を殴り付ける。
少年は、そんな青年を心配しつつも、困った表情を取り繕いながら青年の情欲が残る顔をそっと窺う。
内心では労る表情とは裏腹に、唇に残る先程までの感触を思い出しながら舌舐りし、ほくそ笑んだ。
お気づきにならぬとは本当に。
──お可愛らしいことで。
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