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Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜
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しおりを挟む崇陽さんの寝顔を見ていたが、上げていた腕が辛い上に喉の乾きを覚えた…
そろそろ行動を起こそうとして頬に触れていた手を微かに動かすと案の定、崇陽さんの目が開いた。その目は先程よりもしっかりしている気がする。
遠慮がちに手を引こうとしたら案外あっさりと離してくれた。僕がまごまごしている内に崇陽さんは下着を身に着け簡易的に身なりを整えると、寝室に備え付けられている冷蔵庫の中から飲料水を持ってきてくれた。
僕から何かを言う前に気づくのは凄いと思う。しかしというか、やっぱりというか…脱力した腕ではペットボトルを満足に持つ事もできない。それ以前に寝ている状態から身を起こせない。
どうする事もできずに『うーうー』唸っていると安心感のある腕が僕の身体に回り、抱き起こしてくれた。
そのまま身体を預けていると口元に蓋の開いたペットボトルを近づけてきたので、されるがままにそのペットボトルへ口を付けた。
その後も剥かれたリンゴではなく軽食と呼ばれる物を食べさせてもらったり、トイレへ連れて行ってもらったりといろいろとした。
言う前に全てをしてくれる。心でも読めるんじゃないの?と疑ってしまったのは仕方ないと思う。
☆
そして、今現在…お風呂である。僕は崇陽さんを背もたれにして足の間に座り浸かっている状態だ…
ーこれだけでも恥ずかしいのに、正面からなんて絶対にムリ!…
だが、困った事に崇陽さんは愛撫と言っても過言ではないくらいに項へのキスが凄い。キスが止んだと思ったら項へ鼻を近づけてきて匂いをスンスン嗅ぐのだ…変な気持ちになってくるから止めてほしい…
耐えきれず身動ぐとグイッと抱き寄せられさらに密着して恥ずかしい思いをするので諦めて耐えている。
この恥ずかしい状況をひたすら耐えていると、崇陽さんは僕の身体を抱き上げて湯槽から出た。
そして、先ず僕の身体を丁寧に拭いて先程とは違うシャツを着せられた。この服も大きい上に崇陽さんのフェロモンと同じ匂いがするから、崇陽さんの物だという事が分かる。
相変わらず僕は彼シャツ状態ではあるものの崇陽さん自身も服を着て幾分か目に優しくなった。
ホッとしたのもつかの間、今度は崇陽さんの仕事部屋のような場所に連れてこられた。
崇陽さんは僕を左腿の上に座らせて、左腕は僕の背中を支えつつも身体が離れすぎないように巻き付いている状態だった。
少し顔を上げるとすぐ横に崇陽さんの横顔がある。体格差があるので、片腕だけでも十分なほどすっぽりと余裕で抱えられている…
そして、膝上の僕にタブレット端末を渡すと本人はパソコンへと向かい作業をし始めた。
どうして良いのか分からずタブレット端末と崇陽さんの顔を交互に見てしまった。
ー仕事をするなら邪魔になるんじゃ…
という思いから怖いけれど、声をかけた。出した声は思っていた以上に頼りなく情けない声だった…いや、だって雰囲気が特に怖い…
呼びかけれた事を褒めてほしい…
「た、崇陽さん?」
「何だ?」
呼びかけに答えた言葉は短く目はパソコンへ向けたままだった。なんとなく寂しい気持ちを覚えつつ言葉を続けた。
「僕、降ります」
ー言えた!よくやった僕!やればできる!…
と思ったのも一瞬で、パソコンへ向けていた目をこちらに向けて「は?何で?」と低い声で言われた瞬間に心が折れた。
ーだって、怖い…
*
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