俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第4章『ダンジョンの試練、最強の黒鬼と雪ん子に師匠?!/雪ん子(オーバーロード)の章』

第149話 出でよ、私達の"マスター"

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 ダンジョン《三日月の塔》の隠し通路の奥。
 超強力な《消しゴム付き鉛筆》黒鬼に守らせていた奥に、ダブルエムと日野シティーミティーの2人は居た。

 そこは、本来ならば隠しボスの間である。
 しかし、その隠しボスは2人の前に顔を出さない。

 圧倒的すぎる日野シティーミティーによって、何度も何度も殺されたことで、隠しボスの本能に危険人物として認識されたために、彼女がいる間は隠しボスは一切出てこないのだ。
 それだけの、単純な話である。

「----では、ダブルエム。"例の物"を」
「ほい来た、どうぞ」

 そう言って、ダブルエムが取り出したのは、"青白い魂"。
 ヒビだらけの、今にも崩れそうなボロボロの魂を、ダブルエムは慎重に取り出した。

「苦労しましたよ、#修復 には。その甲斐あってか、見かけ以上には頑丈な物になっておりますので、多少は揺らしたりしても壊れないかと」
「しませんよ、そんな事。なにせ、これは"マスター"の魂なのですから」


 ===== ===== =====
 【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】……次元の割れ目に巻き込まれた赤坂帆波の魂。修復されたことにより、彼女の魂として使用可能となった
 効果;使用すると、赤坂帆波(幻影)を召喚する。効果時間は1回につき30秒
 ===== ===== =====


 それは、元勇者である空海大地がこの世界へと帰ったために死んだ、赤坂帆波の魂であった。
 生じた次元の割れ目に入り込んで、散り散りになったそれらを、日野シティーミティーが根気よく集め、それを丁寧な処理でダブルエムが復元したものであった。
 
 アイテムとして復元されたそれは、使えば30秒の間に限り、赤坂帆波を幻影として呼び出せる。

 その事実に2人は喜んで早速使用したが、当てが外れた。
 なにせ、ただ単に赤坂帆波の"能力"だけをコピーした幻影が戦ってくれるだけだったからである。
 2人が会いたいのは、赤坂帆波その人であり、能力だけのただの幻影なんかに用がないからだ。

「それと、これもですかね」

 と、ダブルエムが2つ目として取り出したのは、液体が入った瓶。
 瓶の模様として、1対のからすが描かれている、特別な瓶である。


 ===== ===== =====
 【フギンとムニンの液体瓶(ダブルエム特別仕様)】……フギンとムニンという、北欧神話に登場するオーディン神に仕える一対のワタリガラスをモチーフに生み出された特殊液体の入った瓶。ダブルエムによって、特殊加工が施されている
 フギンとは「思考」、ムニンとは「記憶」を司る鴉であり、これを使用するとその者の持つ思考力と記憶力が回復する。記憶喪失や自信喪失などに効果がある。ダブルエムの特殊加工によって、世界中に散らばるその者に関する記憶を収集し、伝える効果が加えられた
 ===== ===== =====


 その液体の瓶は、元々、記憶喪失や自信喪失などに効果があるとされて、最近だと認知症の特効薬として重宝されている【フギンとムニンの液体瓶】であった。
 ダブルエムはこれに特殊な加工を施すことによって、使えば使用者が持っていない記憶すらも集められるようにしたのだ。

 端的に言えば、この液体をかけさえすれば、ただの幻影として呼び出された赤坂帆波に、記憶を与える事が出来る。
 最も、そもそも幻影の出現時間が30秒ぽっちだから、あまり意味はないのだが。

「で、ニチアサちゃん? 一応、言われた物は持ってきたつもりだけど、これからどうするつもり?」

 ダブルエムに問われ、日野シティーミティー……ニチアサちゃんは、【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】をゆっくりと持ちながら、こう答える。


「今からこの【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】を用いて、【黄金召喚】を行う。
 それによって、召喚獣として、赤坂帆波をこの世界に呼び出すのです」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 【黄金召喚】----それはアイテムを用いて、そのアイテムと最も縁深い存在を召喚するというスキルだ。

 スキルを用いて召喚すれば、そのスキルの来歴に近しい者を。
 アイテムを用いて召喚すれば、アイテムの効果に相応しい者を。

 当然ながら、【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】を用いて【黄金召喚】を行えば、このアイテムと最も縁深い者として、赤坂帆波が召喚されるのは当然の事だろう。

「しかしながら、ニチアサちゃん? 例え、それで召喚できたとしても、"マスター"は召喚できたとしても、"マスター"にはなりませんよ?
 それで召喚できるのは、身体を持つだけの"マスター"の幻影にすぎませんよ? 『召喚獣は経験できず、成長しない』のですから」

 日野シティーミティーにこの【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】の修復を頼まれた時点で、【黄金召喚】を用いるという方法は頭の中にあった。
 しかし、それで召喚できるのは、赤坂帆波の姿を模しただけの召喚獣。
 経験する事も出来ず、成長することないため、特殊加工を施した【フギンとムニンの液体瓶】で"マスター"の記憶を継承することもない。

 ただ、"マスター"の姿形を模しただけの召喚獣が出来上がるだけなのだ。

「ニチアサちゃん、あなたはそれで満足なんですか? ただの"マスター"の名と姿を模しただけのお相手がお望みなんですか?」
「ふふふっ! 確かに普通なら、そうでしょうね! 普通なら!」

 やけに自信たっぷりのニチアサちゃんは、ゆっくりと【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】を手にする。

「たった1人だけ、見つけ出したのです。ダンジョン化したこの世界で記憶して経験することが出来るというレアスキルを入手した【召喚士】が。
 その少年の名は、冴島渉。召喚獣に【記憶】と【経験】という概念を与える特殊スキル持ちです」

 すーっと、【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】を持つニチアサちゃんの手が、銀色に光り輝く。
 それは彼女の持つスキルの1つ、【貪欲なる右腕ムナガラー】というスキルが発動したことを意味していた。

 【貪欲なる右腕】は、他人のスキルを自分で使うスキルだ。
 発動条件は、自身で使う相手に触れなければならないというものだが、それさえ守れば相手とどれだけ距離が離れようとも、その相手のスキルを使うことが出来るというスキルだ。
 
 条件は既に、満たしている。
 第1回戦で負けた彼に、【執念蛇イグ】でお仕置きした際に、こっそりと【貪欲なる右腕】が発動できるようにしていたのである。

「私はダンジョンを人為的に作り出しました。世界各国に伝わる、特異な力を持つアイテムが登場する物語のダンジョンを。そして待ちわびていたのですよ、そんなダンジョンをクリアして、神から特異なスキルを手に入れる事となる者の存在を」
「そして、見事にお眼鏡にかかったのが、あの時に見せてくれた3名の冒険者であり。今からそのうちの1人のスキルを、無断で使って、【記憶】し、【経験】することが出来るようになる召喚獣として、"マスター"を呼び出すと」

 そうだとでも言わんばかりに、日野シティーミティーはスキルを発動する。
 冴島渉が持つ、【召喚 レベルアップ可能】を。
 愛しの"マスター"が【記憶】を継承できるようになる、召喚獣となるために。


「発動、【強欲なる右腕】! 【黄金召喚】と共に、"マスター"をこの世界へと呼び出すのですよ!!」


 ===== ===== =====
 【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】を使って 【黄金召喚】を 行います
 また 【強欲なる右腕】のスキルにて 【召喚士】冴島渉 所有のスキルを 強制発動

 召喚獣 【赤坂帆波】を レベルアップ可能状態で 召喚します

 また【フギンとムニンの液体瓶(ダブルエム特別仕様)】の 効果により "赤坂帆波"の記憶を 継承します
 ===== ===== =====


 そうして、【赤坂帆波の魂(亀裂あり)】は消えていき、代わりに1人の少女が召喚される。


 ===== ===== =====
 【赤坂帆波あかさかほなみ】 レベル;Ⅰ+1
 個体レベル;01
 装備職業;勇者/奴隷商人/召喚士
 攻撃力;(SS)B+1
 属性攻撃力;S+1
 防御力;SS+1
 素早さ;(SS)D+1
 賢さ;S+1
 >>攻撃力がSSを越えたため、特殊スキル【怪力】を取得しました
 >>素早さがSSを越えたため、特殊スキル【韋駄天】を取得しました

 固有スキル;【世界救済の勇者】;世界を救済した勇者のみが用いれる称号のようなスキル。全ての敵に対して、特攻スキルを得る
      ;【効率主義・神】;効率を重視する彼女の生き方が形となったスキル。戦闘以外で体力を消費しなくなる
      ;【三大堕落の主】;過去の絆が形となったスキル。【三大堕落】の関係者に対して命令を与える事が出来る

 後天スキル;【勇者スキル一式】;職業【勇者】の持つスキルをすべて手に入れて合わせたスキル。【勇者】の職業で出来る事は何でもできる
      ;【奴隷商人スキル一式】;職業【奴隷商人】の持つスキルをすべて手に入れて合わせたスキル。【奴隷商人】の職業で出来る事は何でもできる
      ;【召喚士スキル一式・零】;職号【召喚士】の持つスキル全てに、【召喚術・零】を合わせたスキル。【召喚士】の職業で出来る事、および【召喚術・零】を使用することができる
      ;【調教の掟】;魔物や奴隷などを使役する際、スキル習得率などを上げるスキル
      ;【怪力】;身体能力が格段に上がるスキル。攻撃力と素早さに上昇補正が入ります
      ;【韋駄天】;速力に優れた戦いの神を模したスキル。光速の速さを手にし、全ての武器に高い適性を与える
 ===== ===== =====


 赤い長髪に、藍色の瞳。
 女子高生らしい均一の取れた身体つきに、佐鳥愛理が入れた【稲妻模様】の刺青が刻み込まれていた。
 そして彼女は、いつものように、2人にこう話しかけた。
 
「やぁ、2人とも。久しぶり」


 そうして、【三大堕落】の主である赤坂帆波は、再びこの地に降り立ったのであった。
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