俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
170 / 354
第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第161話 ファイント、襲撃する

しおりを挟む
 赤坂帆波との打ち合わせを終えた、雪ん子とファイントの2人。
 彼女達は場所を移動していた。
 速足で、逃げていた。

「アハハッ! 逃げろ、逃げろ、逃げ惑え!!
 後輩ちゃんとしましては、その逃げ惑う姿を見るだけで、ワックワクが止まりませんわ!」

 襲撃、である。
 ダンジョンの外、しかも街中で堂々と襲い掛かって来たのだ。

 雪ん子とファイントの2人を襲ったのは、正月のファイント。
 和服を着た獣耳少女----正月のファイントこと、ハジメは猛牛の形をした雪雲に乗って、巨大な鋼鉄製鯨軍団と共に2人を襲ってきたのである。

「《ぴぴぃ?! いきなり襲い掛かって来たぴ?!》」
「……失念してたよ、あの、確かハジメちゃんは別世界の私って事を」

 そう、千山鯉と正月のファイントの2人は、世界改変の際に生み出されたもう1つの可能性。
 雪ん子とファイントを選ばなかった世界からの者。
 その性質は雪ん子とファイントの2人に酷似している。

 2人とも、女の子型の召喚獣である事。
 黄金召喚で呼び出したのが、どちらともファイントである事。
 2人とも、黒いマントを羽織っているということは、悪属性に覚醒しているという事。

 他にもスキルなどで、2人と似ているスキルも持っていると考えるべきだろう。


 ----だから、考えておくべきだったのだ。


 正月のファイント、ハジメもまた、ファイントと同じように最初からスキル【独断専行】を持っているという事を。
 ダンジョンの魔力の影響を受けず、ダンジョンの外でもスキルを使えるという、あの便利スキルを。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「(----まぁ、私でも同じように攻めて来るかな?)」

 でも、ここまで大規模に襲い掛かってくることは、ファイントも想定外だった。

「いっけぇ! スキル【ホエール超電磁砲レールガン】!!」

 猛牛の形をした雪雲の上からハジメが指示を出すと、鋼鉄の鯨軍団の口がパカッと開く。
 口の中から現れたのは、2本の鋼鉄のレール。
 鋼鉄レールはビリビリと電気を蓄えており、その鋼鉄レールの間から電流の塊----レールガンが放たれてきていた。

「《ぴぴっ?! 撃ってきたぴぴっ?!》」
「あぁ、もう! 鯨が、なんで超電磁砲レールガンを撃ってくるのよぉ!」

 超電磁砲の砲撃。
 2人は避けながら、雪ん子は剣を構えていた。

「《【超すっごい剣撃】!》」

 雪ん子が【オーバーロード】の力を使い、鋼鉄製の鯨に向かって巨大な斬撃を放つ。
 空間を掻っ切り、地面から上へと放ったはずの斬撃は、鋼鉄製鯨の上からギロチンのように降り注ぎ、硬い首を切断していた。

 ゆっくりと、鯨の頭が落ちてくる中、雪ん子は違和感を覚えていた。

「《ぴぴっ?》」


 思ったよりも・・・・・・衝撃が・・・弱い・・


 雪ん子は、日野シティーミティーとの戦闘の際に、【オーバーロード】の力がどれくらいのモノかを把握していた。
 そして今、一撃で、鋼鉄製の鯨全てを真っ二つに切断するほどの斬撃を放った、つもりだった・・・・・・
 それなのに落とせたのはたった1体、しかも首1つを切断する程度に留まっている。

 ご主人様、冴島渉が居ないから?
 いや、そんな上昇バフのありなしで片付けられるほどの差ではない。

 その時になって、雪ん子の頭に思い浮かんできたのは、赤坂帆波が言った、意味深な一言。

『あの四大力、確かにめちゃくちゃ強力だけど、めちゃくちゃ癖があるから、一度練習しといた方が良いよ。あれ、使い方を間違うと、四大力の中で、"最弱・・"の四大力だから』

 最弱とまでは思わないが、確かに癖がある。
 これは一度、本当に練習しておかなくてはならない、と感じていた。

 なにせ、あの千山鯉をぶちのめしたい時に、この程度の力では鬱憤うっぷんが晴らせないから。
 自分の地位を勝手に奪い、ご主人様の撫で撫でを受け、まるで自分こそが主の最愛であるという態度で接し、ご主人様の絆を無理やり奪った----あのムカつく、ムカつく、ムカつく相手を。

 傷つけ、斬り落とし、殴り殺し、凍死させ、焼死させ----何度も、何重にも、幾重にも、殺したいのである。
 思いつく限りでも、100回以上はあの千山鯉を殺したいのに、ここまで弱体化した力では、計画が狂ってしまう。

「《今のうちにしれて、良かったっぴ……》」

 雪ん子はニヤリと、不敵な笑みを浮かべる。
 まずはここから脱出し、すぐさま【オーバーロード】の力を使いこなす訓練を始めよう、と。


 そうやって雪ん子が不敵な笑みを浮かべて、これからの計画を立てている中。
 ファイントは、ハジメを見て、「面白くないなぁ」と呟いていた。

 ファイントにとって、重要なのは自由である事。
 どこまでも広がり、どこまでも好き勝手に、どこまでも派手に出来る事。

 そんな彼女でも、自由に出来ないことがある。
 それをしてしまうと、ファイントの自我が、1つの思考に固定ふじゆうにされてしまうから。

 だから、自分と同じ存在であるハジメもまた、同じであると思っていた。
 自分と同じく、そうであると思っていた。


「あいつ、私と違って真名を解放してる……?」


 だから、自分が出来ない真名を解放しているハジメを、憎らしい目で見つめていた。



(※)真名解放
 ファイントなど、真の名前を隠している者がその名を自ら告げる事で発動する常時スキル。自らに課した封印や制限を解除する行為
 各種ステータスの向上、固有スキルなどの複数のスキル獲得、レベルの上昇など、多くの上昇効果が発動する。と同時に、真名によってはスキル1つ1つにかかる必要魔力量が増えたり、大幅なる弱点補正が付くため、一概にも真名を解放すべきとも言えない

例)ランサーの召喚獣の1体、【弁慶】の真名を解放すると、レベルがⅥまで上昇し、体力1になろうとも倒れる事無く壁となる固有スキル【立ち往生】を獲得。しかし、弁慶の弱点である"向う脛"に当たった場合、特攻スキルを当てられた場合と同等以上のダメージを受けてしまう
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...