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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』
第161話 ファイント、襲撃する
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赤坂帆波との打ち合わせを終えた、雪ん子とファイントの2人。
彼女達は場所を移動していた。
速足で、逃げていた。
「アハハッ! 逃げろ、逃げろ、逃げ惑え!!
後輩ちゃんとしましては、その逃げ惑う姿を見るだけで、ワックワクが止まりませんわ!」
襲撃、である。
ダンジョンの外、しかも街中で堂々と襲い掛かって来たのだ。
雪ん子とファイントの2人を襲ったのは、正月のファイント。
和服を着た獣耳少女----正月のファイントこと、ハジメは猛牛の形をした雪雲に乗って、巨大な鋼鉄製鯨軍団と共に2人を襲ってきたのである。
「《ぴぴぃ?! いきなり襲い掛かって来たぴ?!》」
「……失念してたよ、あの、確かハジメちゃんは別世界の私って事を」
そう、千山鯉と正月のファイントの2人は、世界改変の際に生み出されたもう1つの可能性。
雪ん子とファイントを選ばなかった世界からの者。
その性質は雪ん子とファイントの2人に酷似している。
2人とも、女の子型の召喚獣である事。
黄金召喚で呼び出したのが、どちらともファイントである事。
2人とも、黒いマントを羽織っているということは、悪属性に覚醒しているという事。
他にもスキルなどで、2人と似ているスキルも持っていると考えるべきだろう。
----だから、考えておくべきだったのだ。
正月のファイント、ハジメもまた、ファイントと同じように最初からスキル【独断専行】を持っているという事を。
ダンジョンの魔力の影響を受けず、ダンジョンの外でもスキルを使えるという、あの便利スキルを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(----まぁ、私でも同じように攻めて来るかな?)」
でも、ここまで大規模に襲い掛かってくることは、ファイントも想定外だった。
「いっけぇ! スキル【ホエール超電磁砲】!!」
猛牛の形をした雪雲の上からハジメが指示を出すと、鋼鉄の鯨軍団の口がパカッと開く。
口の中から現れたのは、2本の鋼鉄のレール。
鋼鉄レールはビリビリと電気を蓄えており、その鋼鉄レールの間から電流の塊----レールガンが放たれてきていた。
「《ぴぴっ?! 撃ってきたぴぴっ?!》」
「あぁ、もう! 鯨が、なんで超電磁砲を撃ってくるのよぉ!」
超電磁砲の砲撃。
2人は避けながら、雪ん子は剣を構えていた。
「《【超すっごい剣撃】!》」
雪ん子が【オーバーロード】の力を使い、鋼鉄製の鯨に向かって巨大な斬撃を放つ。
空間を掻っ切り、地面から上へと放ったはずの斬撃は、鋼鉄製鯨の上からギロチンのように降り注ぎ、硬い首を切断していた。
ゆっくりと、鯨の頭が落ちてくる中、雪ん子は違和感を覚えていた。
「《ぴぴっ?》」
思ったよりも衝撃が弱い。
雪ん子は、日野シティーミティーとの戦闘の際に、【オーバーロード】の力がどれくらいのモノかを把握していた。
そして今、一撃で、鋼鉄製の鯨全てを真っ二つに切断するほどの斬撃を放った、つもりだった。
それなのに落とせたのはたった1体、しかも首1つを切断する程度に留まっている。
ご主人様、冴島渉が居ないから?
いや、そんな上昇のありなしで片付けられるほどの差ではない。
その時になって、雪ん子の頭に思い浮かんできたのは、赤坂帆波が言った、意味深な一言。
『あの四大力、確かにめちゃくちゃ強力だけど、めちゃくちゃ癖があるから、一度練習しといた方が良いよ。あれ、使い方を間違うと、四大力の中で、"最弱"の四大力だから』
最弱とまでは思わないが、確かに癖がある。
これは一度、本当に練習しておかなくてはならない、と感じていた。
なにせ、あの千山鯉をぶちのめしたい時に、この程度の力では鬱憤が晴らせないから。
自分の地位を勝手に奪い、ご主人様の撫で撫でを受け、まるで自分こそが主の最愛であるという態度で接し、ご主人様の絆を無理やり奪った----あのムカつく、ムカつく、ムカつく相手を。
傷つけ、斬り落とし、殴り殺し、凍死させ、焼死させ----何度も、何重にも、幾重にも、殺したいのである。
思いつく限りでも、100回以上はあの千山鯉を殺したいのに、ここまで弱体化した力では、計画が狂ってしまう。
「《今のうちにしれて、良かったっぴ……》」
雪ん子はニヤリと、不敵な笑みを浮かべる。
まずはここから脱出し、すぐさま【オーバーロード】の力を使いこなす訓練を始めよう、と。
そうやって雪ん子が不敵な笑みを浮かべて、これからの計画を立てている中。
ファイントは、ハジメを見て、「面白くないなぁ」と呟いていた。
ファイントにとって、重要なのは自由である事。
どこまでも広がり、どこまでも好き勝手に、どこまでも派手に出来る事。
そんな彼女でも、自由に出来ないことがある。
それをしてしまうと、ファイントの自我が、1つの思考に固定されてしまうから。
だから、自分と同じ存在であるハジメもまた、同じであると思っていた。
自分と同じく、そうであると思っていた。
「あいつ、私と違って真名を解放してる……?」
だから、自分が出来ない真名を解放しているハジメを、憎らしい目で見つめていた。
(※)真名解放
ファイントなど、真の名前を隠している者がその名を自ら告げる事で発動する常時スキル。自らに課した封印や制限を解除する行為
各種ステータスの向上、固有スキルなどの複数のスキル獲得、レベルの上昇など、多くの上昇効果が発動する。と同時に、真名によってはスキル1つ1つにかかる必要魔力量が増えたり、大幅なる弱点補正が付くため、一概にも真名を解放すべきとも言えない
例)ランサーの召喚獣の1体、【弁慶】の真名を解放すると、レベルがⅥまで上昇し、体力1になろうとも倒れる事無く壁となる固有スキル【立ち往生】を獲得。しかし、弁慶の弱点である"向う脛"に当たった場合、特攻スキルを当てられた場合と同等以上のダメージを受けてしまう
彼女達は場所を移動していた。
速足で、逃げていた。
「アハハッ! 逃げろ、逃げろ、逃げ惑え!!
後輩ちゃんとしましては、その逃げ惑う姿を見るだけで、ワックワクが止まりませんわ!」
襲撃、である。
ダンジョンの外、しかも街中で堂々と襲い掛かって来たのだ。
雪ん子とファイントの2人を襲ったのは、正月のファイント。
和服を着た獣耳少女----正月のファイントこと、ハジメは猛牛の形をした雪雲に乗って、巨大な鋼鉄製鯨軍団と共に2人を襲ってきたのである。
「《ぴぴぃ?! いきなり襲い掛かって来たぴ?!》」
「……失念してたよ、あの、確かハジメちゃんは別世界の私って事を」
そう、千山鯉と正月のファイントの2人は、世界改変の際に生み出されたもう1つの可能性。
雪ん子とファイントを選ばなかった世界からの者。
その性質は雪ん子とファイントの2人に酷似している。
2人とも、女の子型の召喚獣である事。
黄金召喚で呼び出したのが、どちらともファイントである事。
2人とも、黒いマントを羽織っているということは、悪属性に覚醒しているという事。
他にもスキルなどで、2人と似ているスキルも持っていると考えるべきだろう。
----だから、考えておくべきだったのだ。
正月のファイント、ハジメもまた、ファイントと同じように最初からスキル【独断専行】を持っているという事を。
ダンジョンの魔力の影響を受けず、ダンジョンの外でもスキルを使えるという、あの便利スキルを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(----まぁ、私でも同じように攻めて来るかな?)」
でも、ここまで大規模に襲い掛かってくることは、ファイントも想定外だった。
「いっけぇ! スキル【ホエール超電磁砲】!!」
猛牛の形をした雪雲の上からハジメが指示を出すと、鋼鉄の鯨軍団の口がパカッと開く。
口の中から現れたのは、2本の鋼鉄のレール。
鋼鉄レールはビリビリと電気を蓄えており、その鋼鉄レールの間から電流の塊----レールガンが放たれてきていた。
「《ぴぴっ?! 撃ってきたぴぴっ?!》」
「あぁ、もう! 鯨が、なんで超電磁砲を撃ってくるのよぉ!」
超電磁砲の砲撃。
2人は避けながら、雪ん子は剣を構えていた。
「《【超すっごい剣撃】!》」
雪ん子が【オーバーロード】の力を使い、鋼鉄製の鯨に向かって巨大な斬撃を放つ。
空間を掻っ切り、地面から上へと放ったはずの斬撃は、鋼鉄製鯨の上からギロチンのように降り注ぎ、硬い首を切断していた。
ゆっくりと、鯨の頭が落ちてくる中、雪ん子は違和感を覚えていた。
「《ぴぴっ?》」
思ったよりも衝撃が弱い。
雪ん子は、日野シティーミティーとの戦闘の際に、【オーバーロード】の力がどれくらいのモノかを把握していた。
そして今、一撃で、鋼鉄製の鯨全てを真っ二つに切断するほどの斬撃を放った、つもりだった。
それなのに落とせたのはたった1体、しかも首1つを切断する程度に留まっている。
ご主人様、冴島渉が居ないから?
いや、そんな上昇のありなしで片付けられるほどの差ではない。
その時になって、雪ん子の頭に思い浮かんできたのは、赤坂帆波が言った、意味深な一言。
『あの四大力、確かにめちゃくちゃ強力だけど、めちゃくちゃ癖があるから、一度練習しといた方が良いよ。あれ、使い方を間違うと、四大力の中で、"最弱"の四大力だから』
最弱とまでは思わないが、確かに癖がある。
これは一度、本当に練習しておかなくてはならない、と感じていた。
なにせ、あの千山鯉をぶちのめしたい時に、この程度の力では鬱憤が晴らせないから。
自分の地位を勝手に奪い、ご主人様の撫で撫でを受け、まるで自分こそが主の最愛であるという態度で接し、ご主人様の絆を無理やり奪った----あのムカつく、ムカつく、ムカつく相手を。
傷つけ、斬り落とし、殴り殺し、凍死させ、焼死させ----何度も、何重にも、幾重にも、殺したいのである。
思いつく限りでも、100回以上はあの千山鯉を殺したいのに、ここまで弱体化した力では、計画が狂ってしまう。
「《今のうちにしれて、良かったっぴ……》」
雪ん子はニヤリと、不敵な笑みを浮かべる。
まずはここから脱出し、すぐさま【オーバーロード】の力を使いこなす訓練を始めよう、と。
そうやって雪ん子が不敵な笑みを浮かべて、これからの計画を立てている中。
ファイントは、ハジメを見て、「面白くないなぁ」と呟いていた。
ファイントにとって、重要なのは自由である事。
どこまでも広がり、どこまでも好き勝手に、どこまでも派手に出来る事。
そんな彼女でも、自由に出来ないことがある。
それをしてしまうと、ファイントの自我が、1つの思考に固定されてしまうから。
だから、自分と同じ存在であるハジメもまた、同じであると思っていた。
自分と同じく、そうであると思っていた。
「あいつ、私と違って真名を解放してる……?」
だから、自分が出来ない真名を解放しているハジメを、憎らしい目で見つめていた。
(※)真名解放
ファイントなど、真の名前を隠している者がその名を自ら告げる事で発動する常時スキル。自らに課した封印や制限を解除する行為
各種ステータスの向上、固有スキルなどの複数のスキル獲得、レベルの上昇など、多くの上昇効果が発動する。と同時に、真名によってはスキル1つ1つにかかる必要魔力量が増えたり、大幅なる弱点補正が付くため、一概にも真名を解放すべきとも言えない
例)ランサーの召喚獣の1体、【弁慶】の真名を解放すると、レベルがⅥまで上昇し、体力1になろうとも倒れる事無く壁となる固有スキル【立ち往生】を獲得。しかし、弁慶の弱点である"向う脛"に当たった場合、特攻スキルを当てられた場合と同等以上のダメージを受けてしまう
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