追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

たまごころ

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第4話 第一村人ならぬ、第一美少女発見。瀕死の『姫騎士』を拾う。

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「あの、貴方は……?」

透き通るような銀髪の美少女は、不思議そうな顔で俺を見つめていた。
彼女が着ている鎧は見る影もなく砕け散り、その下の衣服もボロボロだ。白い肌が所々露出し、泥と煤で汚れているが、それでも彼女の持つ高貴なオーラは損なわれていない。
アメジストのような瞳。整った鼻筋。そして何より、凛とした意志の強さを感じさせる表情。
俺がこれまで見てきたどの貴族よりも、彼女は「本物」の気品を漂わせていた。

「俺はレント。しがない冒険者だよ」
「レント様……。私はシルヴィアと申します。……お恥ずかしいところをお見せしました」

シルヴィアと名乗った少女は、悔しそうに唇を噛み締めながら、何とか立ち上がろうとした。
だが、足元がふらつき、再び倒れそうになる。
俺はとっさに彼女の肩を抱いた。

「無理するな。傷は治したけど、体力と血液が足りてない。相当な期間、まともに食べてないんだろ?」
「……はい。この迷宮に入ってから三日、水一滴口にしておりません」
「三日も? よく生きてたな」

Sランク迷宮の最深部で、食料なしで三日生存。
それだけで彼女の実力が只者ではないことが分かる。
俺は【四次元収納】から、先ほどドラゴン討伐のドロップ品の中に混じっていた『世界樹の果実』を取り出した。
ひと口かじれば体力が全快し、満腹感も得られるという神話級のフルーツだ。

「これでも食ってろ」
「こ、これは……なんと芳醇な魔力……! よろしいのですか? これほど高価そうな物を」
「拾い物だから気にするな」
「かたじけない……!」

シルヴィアは果実を受け取ると、上品ながらも貪るように食べた。
その姿を見ながら、俺は尋ねる。

「で、お姫様みたいな格好のあんたが、なんでこんな地獄の底に一人でいたんだ?」
「……私は、ある王国から逃れてきたのです」

果実を食べ終え、少し顔色の良くなったシルヴィアが重い口を開いた。

「我が国は、隣国の帝国の侵略を受け、滅亡の危機に瀕しています。父である国王は病に倒れ、騎士団も壊滅状態……。私は、この状況を打開する力を求めて、伝説にある『竜の心臓』を手に入れるためにここへ来ました」
「竜の心臓?」
「はい。不老不死と万能の魔力を与えるという秘宝です。それがあれば、父の病を治し、帝国軍を追い払えるかもしれないと……」

なるほど。
典型的な「亡国の姫騎士」というやつか。
国を背負って単身でSランク迷宮に挑むとは、無謀だが、その覚悟は嫌いじゃない。
かつての俺も、自分の無能さを呪いながら、それでも必死にパーティに貢献しようとしていた。方向性は違うが、どこか親近感を覚える。

「でも、たどり着いた時にはもう限界でした。竜の部屋に入る前の番人……ゴーレムやキメラとの戦いで消耗しきって、竜の姿を見る前に力尽きてしまったのです」

シルヴィアは悔し涙を浮かべた。
彼女の視線が、奥の広大なドーム――ボス部屋の方へ向く。

「レント様、ここから先には『古の竜』がいるはずです。どうか、引き返してください。貴方がどれほどの使い手かは存じ上げませんが、あの竜は人間が勝てる相手ではありません」
「ああ、竜ならもういないぞ」
「え?」
「さっき俺が倒した」

俺は事もなげに言った。
シルヴィアがポカンと口を開ける。
可憐な顔が台無しになるくらいのマヌケ面だ。

「た、倒した? お一人で? あのエンシェントドラゴンを?」
「うん。なんかデコピン……じゃなかった、石を投げたら死んだ」
「い、石……?」
「素材は全部回収したから、ここにはもう何もないよ。あ、竜の心臓も持ってるけど、見るか?」

俺はポケットから、ドクンドクンと脈打つ真っ赤な結晶体を取り出した。
バスケットボール大の大きさがあるそれは、周囲の空間を歪めるほどの魔力を放っている。

「ひっ……!?」

シルヴィアが悲鳴を上げて後ずさった。
あまりの魔力濃度に、常人なら近づくだけで精神汚染を起こしかねない代物だ。

「こ、これが伝説の……! 本物……!」
「お前が欲しかったの、これだろ? まあ、国を救うのに必要ならやってもいいけど」
「そ、そのような! 国宝級どころか、世界そのもののバランスを変えるほどのアーティファクトです! 命を救われた上に、そのような高価な物を頂くわけにはいきません!」

真面目だな。
俺なら「ラッキー」と言って貰うところだが。
こういう実直なところも、彼女が「姫騎士」たる所以なのだろう。

「まあ、今はここを出るのが先決だ。話は地上に戻ってからにしよう」
「は、はい。ですが、帰りの道も危険です。魔物たちが……」
「大丈夫だ。俺について来れば、散歩みたいなもんだから」

俺はシルヴィアの手を取り、歩き出した。
彼女の手は震えていたが、俺が握ると少し安心したように力が抜けた。

二人で第百階層の階段を上る。
第九十九階層。
そこは、俺がゴーレムを沈めた場所だ。

「あっ……あれは!?」

シルヴィアが指差した先には、俺が置き去りにしていった(回収し忘れていた残骸の一部の)ゴーレムの腕が転がっていた。
かつては彼女を苦しめたであろう最強の番人のパーツが、まるで壊れた玩具のようにひしゃげている。

「アダマンタイトの腕が、飴細工のように……。レント様、これを貴方が?」
「まあな。ちょっと柔らかくしたんだ」
「柔らかく……? 物理法則を無視していますわ……」

彼女は戦慄の眼差しで俺の背中を見た。
尊敬と恐怖が入り混じったような目だ。
悪い気はしない。ずっと「役立たず」と言われ続けてきた俺にとって、誰かに認められる(というか畏怖される)のは新鮮な快感だった。

その時。
ズズズ……と地面が揺れた。

「グルアアアアッ!」

通路の奥から、無数の影が現れた。
『ブラッド・キメラ』の群れだ。
ライオンの頭、山羊の胴体、蛇の尾を持つ凶暴な合成獣。
その数、およそ五十体。
どうやら、ボスの死によってダンジョンの生態系が乱れ、魔物たちが暴走しているらしい。

「キメラの群れ! レント様、逃げましょう! この数は無理です!」

シルヴィアが俺の前に飛び出し、折れた剣を構えようとした。
騎士としての本能なのだろう。
自分が傷ついているのも忘れて、俺を守ろうとするその姿。
ああ、やっぱりこいつはいい奴だ。
俺を囮にして逃げたヴァルスたちとは大違いだ。

「下がってていいよ、シルヴィア」

俺は彼女の肩を軽く叩き、前に出た。

「でも、武器も持っていないのに!」
「武器? ああ、そういえば素手だったな」

俺は周囲を見渡した。
手頃な石ころもない。
あるのは、壁に生えている苔くらいか。
いや、武器なんて何でもいいんだった。

「じゃあ、これでいいか」

俺は『空気』を掴んだ。
比喩ではない。
空間そのものを掌の中に圧縮し、剣の形に固定する。

「【空間固定(スペース・ロック)】付与。【切断強化】付与。【範囲拡大】付与」

俺の手の中に、陽炎のように揺らぐ透明な剣が現れた。
空気の密度を極限まで高め、物理的な刃としたものだ。
重さはゼロだが、切れ味は空間ごと切り裂くレベル。

「キメラ風情が、俺の帰り道を塞ぐなよ」

俺は透明な剣を、無造作に横に薙いだ。

ヒュッ。

風を切る音さえしなかった。
ただ、視界の水平線が一度だけズレたような錯覚。

直後。

五十体のキメラの群れが、一斉に静止した。
そして次の瞬間、すべてのキメラの上半身と下半身が、まるで最初から別の物体であったかのように滑り落ちた。

ドサドサドサドサッ!!

大量の肉塊が地面に落ちる音だけが、洞窟内に響き渡る。
鮮血の噴水が上がり、通路が赤く染まった。
一振り。
たった一振りで、Sランク魔物の大群が全滅した。

「……え?」

シルヴィアの声が裏返っていた。
彼女は自分の目を疑うように、何度も瞬きをしている。

「魔法? いえ、剣技? 今、何をしたのですか? 何も見えませんでした……」
「空気を固めて切っただけだ。便利だろ? 刃こぼれしないし」
「空気を……固めて……?」

シルヴィアは理解が追いつかないようで、フラフラと目眩を起こしていた。
まあ、無理もない。
俺も昨日までの自分が見たら気絶している自信がある。

「さて、掃除も済んだし行こうか」
「……レント様」
「ん?」
「貴方は、神様なのですか?」

真剣な顔で聞かれた。

「いや、ただの付与術師だ」
「付与術師……? 私の知っている付与術師と、定義が根本的に異なります……」
「よく言われる(今日からだけど)」

俺たちは再び歩き出した。
シルヴィアは、俺の背中を見る目が完全に変わっていた。
最初は恩人を見る目だったのが、今は「崇拝」に近い色を帯びている。
彼女の頬が微かに赤いのは、興奮のせいか、それとも――。

そんなことを考えながら歩いていると、シルヴィアが悲しげに自分の手元を見ているのに気づいた。
彼女が握りしめているのは、柄だけになった剣だ。
刀身のほとんどが砕け散り、残っているのは根本の数センチのみ。

「……大切な剣だったのか?」
「はい。これは王家に伝わる聖剣『白銀の誓い』……のなれの果てです。父から託された国宝でしたが、私の未熟さゆえに、ゴーレムの装甲に弾かれて折れてしまいました」

彼女は今にも泣き出しそうな顔で、折れた剣を胸に抱いた。

「この剣がなければ、私は騎士として……それに、国を救う資格も……」
「貸してみな」
「え?」
「直せるかもしれない」
「直すと言っても、刀身が失われています。鍛冶師でも、これは……」
「鍛冶じゃ直せないなら、付与(エンチャント)で直せばいい」

俺は彼女の手から、折れた聖剣を受け取った。
確かに酷い状態だ。
魔力も枯渇し、ただの鉄屑になりかけている。
だが、微かに残る「核」の部分は死んでいない。

「再生、強化、そして進化」

俺の無限の魔力が、剣の柄へと注ぎ込まれる。
俺自身の肉体を書き換えた時と同じ要領だ。
失われた刀身を魔力で補い、さらに、元の素材であったミスリルを超える『オリハルコン』以上の強度と魔導伝導率を持つ物質へと変換する。

カッ!!

眩い光が俺の手元から溢れ出した。
洞窟全体が昼間のように照らされ、神聖な鐘の音がどこからともなく聞こえてくる。

「な、何が起きて……!?」

シルヴィアが腕で顔を覆う。
光が収まると、そこには――。

かつての姿とは似ても似つかない、しかし圧倒的に神々しい輝きを放つ剣があった。
刀身は透き通るようなクリスタル状に変化し、内部には七色の光が脈打っている。
柄の部分には、俺が付与した新しい概念『絶対切断』と『所有者守護』の紋様が刻まれていた。

「はい、お返し」
「こ、これは……?」
「ちょっとバージョンアップしておいた。『真・聖剣』ってところかな。これならドラゴンだろうが魔王だろうが、豆腐みたいに切れるはずだ」

俺は軽く言って、生まれ変わった剣を彼女に渡した。
シルヴィアは震える手でそれを受け取る。
瞬間、剣が喜びの声を上げるように共鳴(ハウリング)し、シルヴィアの全身を清らかな光が包み込んだ。

「あ……ああ……力が、溢れてくる……。剣が、私に語りかけてきます……」

彼女の瞳から、大粒の涙が溢れた。
それは悲しみの涙ではなく、感動と歓喜の涙だった。

「レント様……! 貴方は、私の命だけでなく、騎士としての誇りまで救ってくださいました……!」
「大げさだって。さ、行こうぜ。地上に出たら、美味しいもんでも食おう」

俺は照れ隠しに先を急いだ。
背後で、シルヴィアが剣を天に掲げ、何かを誓うように呟いたのが聞こえた。

「この命、そしてこの剣。すべて貴方様に捧げます――我が主(マスター)」

……ん?
今、主とか聞こえたような気がするが、空耳だろうか。
まあいい。
こうして俺は、最強の能力と、最初の仲間(兼、嫁候補?)を手に入れて、地上への帰路についたのだった。

だが俺はまだ知らない。
地上に戻った瞬間、俺を待ち受けている大騒動を。
そして、俺を捨てた元パーティ『栄光の剣』が、今まさに悲惨な状況に追い込まれつつあることを。

(続く)
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