生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば

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第77話 再会

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「ソフィアさん! ソフィアさんいますか!?」

 2階のギルドへ駆け降りると、辺りを見回しソフィアを探す。
 ギルドには数人の冒険者と職員。その件幕に驚嘆した皆の視線が俺に集中し、その声に気付いたソフィアがせわしなく駆けて来る。

「はいはい、いますいます。……なんでしょうか?」

「従魔登録について聞きたいんですが」

「あっ……すいません。ウチではアイアンプレートはお取り扱いしてなくて……」

「ああ、そうでしたね。それはミアから聞きました。最大何匹ほど登録できますか?」

「えっ? ……どうでしょう……制限はないと思いますけど……。何匹か同時に登録されるんですか?」

「80匹ほどなんですが」

「は……80!?」

 目を丸くするソフィア。獣使いビーストテイマーの従魔登録は多くても5匹前後。それも個別にだ。同時に登録することは滅多にない。
 それを80匹同時に申請したいと言うのであれば、驚いて当然である。

「やはり、多すぎますか?」

「いえ、多いというか同時に80匹登録したという前例がないので……。プレートの在庫が足りるかどうか……」

「すいません。まだ決定ではないんですけど、もしそうなった場合、在庫の確認とかって可能ですか?」

「大丈夫ですよ。本部に問い合わせれば、各支部の在庫状況がわかるはずです」

「じゃぁ、その時はお願いします」

 ソフィアに頭を下げると、そのままギルドの長椅子に座り、カガリが帰ってくるのをジッと待った。
 カガリはダンジョンへ行ったのだ。皆の許可を得る為に。
 登録出来れば冒険者や狩人から狙われることはなくなるだろう。だが、それは同時に俺に管理されるということ。
 もちろん形式上だ。ウルフ達の自由を束縛するつもりはないが、それを受け入れるか決めるのは本人達次第。

 それからカガリを待ち続け、帰ってきたのは1時間後のことだった。

「どうだ?」

「全員が希望しました。是非そのようにとのことです」

「ありがとうカガリ」

 カガリを最大限褒め称える意味を込めて撫でてやると、ソフィアに在庫確認を頼む。
 正確な数がわからなかったので、取り敢えず100枚の確保をお願いした。
 ソフィアが胸のプレートに触れると、通信術で本部との交信を始める。

「コット村支部長ソフィアです。アイアンプレートの在庫確認をお願いしたいのですが……。はい……100枚の在庫を抱えているコット村から1番近い支部……。……あはは、そう思いますよね。でも本気なんです。……いえ、からかってません。プラチナの九条からの要望なので……。はい……。はい、そうですか。わかりました。ありがとうございます……」

 ソフィアの手がプレートから離れると、プレートの輝きも消えた。

「えーっとですね。流石に100枚は本部にしかないそうなので、直接スタッグに行って貰うことになりますが大丈夫でしょうか?」

「ありがとうございます。問題ありません。……あ、ついでに馬車の確保をお願いしてもいいですか? 冒険者護衛パックなし幌付き……4台で。ミアも同行させます」

「承りました。……それより九条さん、ミア知りません? もう休憩は終わってるはずなんですけど、戻ってなくて」

「あっ……。み……見つけたら戻るように言っておきます」

「お願いしますね?」

 舞い上がってしまい、ミアを部屋に忘れていたのを思い出す。
 とはいえ、後は獣達を連れてスタッグギルドで登録してやれば、すべて解決。
 キャラバンを追い払うことばかり考えていて、守るという発想が抜け落ちていた。
 それを気付かせてくれたミアには、感謝せねばなるまい。

(そうだ。まだ飯を食べていなかったはず。ギルドの仕事が終わったらちょっと奮発して豪華な食事でも一緒に食べよう)

 そんなことを考えながらカガリと共に部屋へ戻ると、ミアは未だベッドの上で突っ立っていた。
 その表情はどこか幸せそうにも見えたのである。


 2日後。ソフィアに頼んでおいた4台の馬車が村へと到着した。
 それぞれの御者を食堂へと招き入れ、食事をしながら労い、打ち合わせを始める。
 もちろん食事は俺の奢りだ。本来であればここまで御者をもてなすことはない。
 では、何故そうしたのかと言うと、口止め料である。
 今回乗せる積荷は獣達。普通は絶対にあり得ない数だ。
 獣使いビーストテイマーが従魔を乗せるといっても数匹程度だが、今回は合計で80匹以上にもなる団体。
 本来それを運ぶのであれば檻に入れなければならないのだが、カネとプラチナプレートの力で黙らせようという訳である。
 御者の機嫌を取っておくという意味でも必要な出費なのだ。

 食事が終わると出発の準備。最後尾の馬車にギルドで借りた小さな荷車を連結する。
 そこには3日分の食料と、野営用のテント等を積んだ。
 それを物珍しそうに見ている村人達。4台もの馬車が村に来たというだけで野次馬が集まってくるほどの田舎である。

「今日は何かのイベントか?」

 馬車を囲む村人達をソフィアと俺で下がらせる。

「すいませーん。もうちょっと下がってくださーい」

「おにーちゃーん!」

 俺を呼ぶ声に振り返ると、そこには獣の長蛇の列。
 前もって森で待機させていた獣達を、ミアがカガリと共に連れてきたのだ。
 それを見てジリジリと後退る村人達。
 そりゃそうだろう。カガリとほぼ同じ大きさの魔獣が3匹。しかもその内の2匹はウルフ族。
 人間から見れば敵である。
 馬車を引く馬達が暴れないのは、前もって懐柔しておいたからだ。
 正直説得には時間がかかると思っていたのだが、案外あっさりと許可が出た。
 と言うのも、スタッグの馬達の間では俺は有名人らしい。
 その噂を広めたのが、グラハムとアルフレッドが乗っていた2頭の馬。エミーナとルシーダだ。
 袖振り合うも他生の縁とは良く言ったものだと、笑みがこぼれた。
 ミアが交通誘導員よろしく、馬車に獣達を詰めていく。それはまるで熟練の羊飼いのよう。
 それを感心したように見つめる村人達の恐怖心は、今や好奇心の方が勝っていた。
 正直、馬車の数が足りるか心配ではあったがギリギリだった。
 馬車の中はモフモフ天国で、この上に寝転べば極上のモフモフが全身で味わえるに違いない。
 ちょっと窮屈そうではあるが、我慢してもらうしかない。身体を動かしたくなったら馬車と並走でもすればいいだろう。
 もちろん、他の人には見られないよう注意を払う必要はあるが……。

「じゃぁ、行ってきます」

「お気をつけて、九条さん」

「九条、今度こそ土産を忘れるな! 酒だ! 酒がいい!」

 門番の仕事を放り出し、見送りに来てくれたカイル。
 前回も同じような事を言っていた気がしてならない。今回は買って来てやろう。……覚えていたら……。

「よし、出発だ!」

 俺が声を上げると、馬車は勝手に動き出す。
 手綱を握る御者は、何もしていない。だからこそ困惑していた。
 動物達と話せる俺にとって御者は正直必要ないのだが、馬車を借りるとセットでついて来てしまうのだ。
 こればっかりは仕方がない。

「いってきまーす」

 カガリに揺られながらも大きく手を振るミア。
 村人達に見送られつつ、一行は王都スタッグへと旅立った。


 ガラガラと音を立てて街道を走る馬車の一団。
 俺はポケットの中のプラチナプレートを取り出すと、幌の取っ掛かり部分にそれをぶら下げた。

「ちょっと狭いか?」

「いや、大丈夫だ。問題ないぞ」

 そこには3匹の魔獣の族長。
 カガリはミアを乗せ並走しているが、ここに入るとなるとかなり窮屈になる。
 最悪、俺が御者の隣に座ればいい。

「九条殿、何か話があるのだろう? 私の所へ来い」

 呼んだのは白狐。指定されたそこは、どう考えても狭すぎる。

「いや、無理だろ?」

「違う違う。私に寄りかかってもよいという事だ」

 なるほど。背中を預けてもいいから、ついでに撫でろと言いたいのだろう。

「じゃぁ、お言葉に甘えさせてもらおう」

 横になっていた白狐の腹に背を預けると、白狐はモフモフの尻尾を俺に巻き付ける。
 その代償に、両手は白狐を撫でるだけの作業を延々としなければならないのだが、それを補って有り余るほど気持ちが良かった。

「あったけぇ」

 左手は尻尾を、右手は白狐の首筋を撫でつつ、極上の毛皮を堪能する。

「で? 九条殿、話と言うのは?」

「ああ。従魔登録のことなんだが、お前達は本当にいいのか?」

「構わぬ。むしろ願ったり叶ったりだ」

「そうだな。人に襲われることなく自由に生きられるのだろう?」

「そうだ。従魔登録をしても、俺はお前達を縛りはしない。守ってもらいたいのはただ1つ。人に危害を加えないことだけだ」

「約束しよう。だが我等の命が脅かされる状況なら反撃に出ても構わんのだろ?」

「無論だ。そんな状況なら例え人だろうと容赦はしなくていい。自分の命を優先させてくれ」

「しかし九条殿。何故そのようなことを聞く? こちらにはほぼメリットしかない話だぞ?」

「前に言ってただろ? ウルフ族は誇り高い種族なのだと。それが形式上の事とはいえ、俺の管理下に置かれるんだ。そう考えると断られる可能性もあるんじゃないかと思ってな」

 ワダツミとコクセイはお互い顔を合わせると、俺に向かって頭を下げた。

「九条殿がそこまで考えてくれていたとは感謝の極み。しかし、種の存続が危ぶまれるなら誇りは二の次だ」

 コクセイもそれに続く。

「その通りだ。誇りを最優先に考えているなら俺達は逃げることはしないだろう。そうなれば、今頃俺達は金の鬣きんのたてがみにやられている」

「そうか、それならいいんだ。それだけが心配だったからな」

「……おにーちゃん。お話終わった?」

 馬車の後方の幌を捲り顔を出したミアは、カガリから降りると馬車へと移る。

「ああ、今終わった」

「じゃぁ、ウルフさん紹介して?」

「おっと、そうだった。左の蒼いのがワダツミだ。ミアも会った事あるだろ?」

 ワダツミをジッと見つめるミアであったが、首を捻り唸るだけ。

「うーん……ないと思うけど……」

 村に攻めて来た盗賊達を退治した時は、ワダツミはこれほど大きくはなかった。
 族長に選ばれたことによって魔獣へと至ったのだろう。片耳の傷がなければ、俺でも判別は出来ない。

「盗賊達と一緒にいたウルフ達の族長だよ」

「あっ、そっかぁ。よろしくね! ワダツミ!」

 ミアはワダツミの前足を持ち上げ上下に振る。
 豪快な握手にワダツミはどうしていいかわからず、成すがままといった状態だ。

「こっちはコクセイだ。ベルモントの遥か西から来たようだが、今は一時的にこちらに身を寄せている」

「よろしくね! コクセイ!」

 ワダツミと同じく前足の片方を上下に振り、ミアは満足そうに笑みを浮かべる。

「この子はミアだ。俺のギルド担当でもあり同居者でもある。仲良くしてやってくれ」

 魔獣を見ても恐れない人間を見たのは初めてだとでも言いたげに、目を丸くするワダツミとコクセイ。
 2匹の魔獣は遠慮なく接してくるミアに困惑している様子。
 普段からカガリで慣れているミアである。それくらい気にしないのだろう。
 ミアから見れば、それは新しいモフモフが2匹も増えた程度にしか感じていないのだ。
 目をキラキラと輝かせるミアは、遠慮なしに2匹の間へダイブした。

 暫くワダツミとコクセイの尻尾で遊んでいたミア。……いや、遊ばれていたという方が正しいのだが、連続でモフモフしすぎた疲れからか、2匹の間に挟まりスヤスヤと寝息を立てていた。
 そんなミアを見ていると、俺も段々と眠くなってきてしまう。白狐の温かさに負け、ウトウトと船を漕いでいると、魔獣達が何かに反応を示し進行方向へと顔を向けた。

「九条殿。こちらに敵意を向ける者達がおるようだ」

 白狐の一言で飛び起き、御者の隣へと移動する。
 それはまだ見えないが、感覚の鋭い魔獣達が反応を示したのだ。それを疑うわけがない。
 御者は急に出て来た九条に驚きはしたものの、異常は見られなかったのでそのまま馬車を走らせた。

 暫く走っていると見えてきたのは1台の馬車。その周りにはこちらに向かって弓を構えている十数名の冒険者の姿。
 それは道幅いっぱいに広がり、誰も通さないといった雰囲気。少しずつ近づくその一団の中に知った顔があった。
 その先頭に立っている人物は、シルバープレート冒険者のタイラー。
 そして馬車の御者台に座っているのは、紛れもないモーガンその人である。
 アットホームとは名ばかりのキャラバンが、俺達の行く手を阻んでいたのだ。
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