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第110話 疑心暗鬼
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「話が早くて助かるよ、九条君」
ノルディックはそのままロバートに何かを指示すると、ロバートは机の上に置いてあったA4サイズほどの木箱の中から紙の束を取り出し、机に広げた。
「これは、ノルディック様の指示で取り置きしておいた依頼で御座います」
「この中から好きな依頼を選んでくれ。もちろんワシもその中から選ぶ」
適当な数枚を無作為に手に取り見比べる。
王都のギルドで受ける依頼だ。その周辺での依頼だと思っていたが、かなり遠くの街や村、それに知らない地名のものまで混ざっている。……いや、混ざっているどころか、大半がそうだ。
恐らくそこで手が付けられなかった厄介事が、依頼として王都に回って来ているのだろう。
『北東に位置するノーザンマウンテンにて発見されたダンジョンの調査』
『東の砦、バルク平原より先、ミスト領での遺跡調査』
『中立都市ベルモントより南西、金の鬣の出現地点とされるダンジョンの調査。(討伐難易度A以上の魔物が確認されれば即帰還。討伐は別依頼予定)』
『港町ハーヴェストから出航予定の商船レイドック号の護衛(往復路、約30日拘束)』
『アンカース領ノーピークスより南にある謎の砦に徘徊するアンデッドの討伐』などなど……。
テーブルに置かれている依頼書のどれもが遠いか、もしくは拘束期間の長いものばかりで、その全てがゴールド以上でないと受注不可能なもの。
コット村以外のギルドで仕事を請け負ったことのない俺にとっては、面倒だと思うような依頼ばかりである。
確かに1回の報酬が金貨50~100枚前後と割はいいが、王都のギルドではこれが当たり前なのかと思うと、コット村をホームに設定しておいて良かったと胸を撫で下ろした。
その全てに目を通した結果、この中では『アンカース領内の謎の砦のアンデッド退治』が1番楽そうではある。
場所は知っている。恐らくネストがブラバ卿に囚われていた所だろう。
そこでは多くの血が流れた。その影響で悪いものが棲み付いたか、発生したと考えるのが妥当。……まぁ、やったのは俺だが……。
そして相手はアンデッド。まるで俺の為に用意されたようなお誂え向きな依頼。移動を考えなければ、ものの数分でカタがつきそうだ。
「ワシはこれにしよう」
悩む俺を前にノルディックが1枚の依頼書を拾い上げ、ザッと目を通すと、それをミアへと差し出した。
「今回だけは担当だからね。どうだい?」
その依頼書はミスト領での遺跡調査のもの。
「わかりました。大丈夫です」
となると、俺はその依頼から出来るだけ近い場所での活動を強いられるという事だ。
俺にはミアと離れられないという制限がある。具体的な距離は不明だが、経験上コット村から俺所有のダンジョンのあたりまでなら大丈夫なはず。
その範囲内で受けることの出来る依頼は――。
応接室の上座に位置するロバートの後ろの壁には、丁度よく世界地図が飾られていた。
それと地名を照らし合わせながら、慎重に依頼書を選び、手に取っていく。
「俺はこれにする」
選んだのは『ノーザンマウンテンのダンジョン調査依頼』。距離的に選択肢はこれ以外にはない。
それをノルディックに見せると、難しい顔で眉をひそめる。
「ちょ……ちょっと待ってくれ。君は死霊術の適性を持っているんだろう?」
「はい。それが何か?」
「なら、こっちのアンデッド処理の方が得意分野なのではないか? なんでこれにしないんだ? 報酬だってこっちの方が多い」
「確かにそうなんですが……。この中から好きな物を選んでいいんですよね?」
「……ま……まあ、そうだが……」
提示された選択肢から選んだのに苦言を呈して来るとは思わず、首を傾げる。その表情は、納得していないとでも言いたげだ。
確かに適性を鑑みれば、それを受けるのが楽ではあるのだが、他人に言われるほど呆けてはいない。
見落としを心配してくれたのだろうか? それとも依頼の期限が近いとか、何か別の理由か?
何にせよ、俺にはこれ以外の選択肢はないのだ。
お互いの仕事が決まると、ノルディックはその場で立ち上がりそれをロバートへと手渡す。
「よ……よし。では支部長、コレで頼む。出発は10日後だ」
「10日後!?」
余りの準備期間の長さに、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「ああ、ワシは準備に時間をかける性質でな。どんな簡単な依頼であれ本気を出すということだ」
言いたいことは理解出来る。仕事に一生懸命なのはいいことだ。だが、10日は長すぎやしないだろうか?
とは言え、俺からしたら相手は長年冒険者をしている先輩だ。これが普通のことだと言われたらそれまで。それに口を出すことは憚られた。
ロバートは何事もなくそれを受け取ると、それぞれに依頼受注の印を押す。
「承りました。それでは10日後。出発の日に1階の窓口までお越しくださいませ」
テーブルに広げられた他の依頼書をそそくさと片づけると、皆に頭を下げロバートは部屋を後にする。
「ではワシも失礼するよ……。おっとそうだ。どこに泊っているのかだけ教えてくれ。ある程度の準備ができ次第、作戦会議を始める。その時には君の担当も同席してもらうことになるからね」
泊まっている宿屋の場所と名前を教えると、ノルディック達も去り、ひとまずの話し合いは終わりを迎えた。
宿屋に帰ると、大きなベッドに横たわる。
「あー。疲れた……」
精神的にだ。ノルディックは紳士だった。流石プラチナプレートの先輩といったところか。
物腰は柔らかく、先輩風を吹かせることもない。建設的な話し合いが出来たと言っていいだろう。
「ミア。本当に大丈夫か? 無理しなくてもいいんだぞ? リリー王女には悪いが、俺が派閥を変えれば済む話なんだ」
「ううん。大丈夫。私はリリー王女の方がいいもん」
ミアの意見には大いに賛同する。第2王女か第4王女か、好きな方を選べと言われたら間違いなく第4王女を選ぶに決まっている。第2王女の元で働くなんてまっぴらごめんだ。
職業選択の自由――と言いたいところだが、恐らく絶対王政だろうこの世界では、それが無理なのは承知している。
プラチナプレートの俺はまだマシな方だ。王族や貴族とは違うが、それなりに認められ一目置かれる存在。ある程度の権威はある。
それにしても10日も暇が出来てしまった。
ならば1度コット村に帰ろうかとも考えたが、また来るのも面倒だ。
ロバートはコット村のギルドに連絡を入れてくれると言っていたし、ちょっとしたリフレッシュ休暇だと思ってのんびりさせてもらおう。
ミアだって、たまには長期の休みがあってもいいじゃないか。
「ミア。暇も出来たことだし、何処か行きたい所はあるか?」
「おにーちゃんと一緒ならどこでもいい!」
嬉しいことを言ってくれる。曇りなき笑顔を向けるミアの頭をわしゃわしゃと豪快に撫でる。ミアは少し迷惑そうにしながらも、その頬は緩みっぱなしだった。
ミアと離れることなど考えられるわけがない。
初めて会った時からまだ1年と経っていない。だが、俺がこの世界に来て1番長い時を一緒に過ごして来たのだ。共に笑い、時には泣き、嬉しい事も辛いことも共有してきた。
その天真爛漫で無邪気な笑顔にどれだけ救われたことか……。ミアはもう俺の生活の一部なのだ。
俺とミアの仲を裂こうとするならば、何人たりとも許しはしない。それがたとえ神であろうともだ。
いざとなれば、国王への直訴も辞さないとは考えていた。
金の鬣討伐のミアへの褒美。俺と一緒にいられなくなるようなら自分に言えと、そう言っていた。
それが嘘だとは思わないが、本気なのかもわからない。
相手は国王だ。それに直訴しても、その原因を作り出しているのは自分の娘である第2王女。どちらの味方に付くのか見当もつかない。
仮に第2王女の意見が通ってしまえば、それは誰にも覆せない王命である。状況は余計に悪化するだろう。
故にそれは最終手段だ。第2王女の派閥に入ってもなお、ミアを引き離そうとした場合に限る。
「カガリはノルディックのこと、どう思う?」
カガリは相手の真意を読み取る術に長けている。心を読むとまではいかないが、嘘か真かを見極めることが出来るのだ。
「とても読み辛い相手ですが、恐らく嘘はついていない様に思います。担当の変更については良く思っていない。しかし、主が依頼を決めた時の動揺は激しいものでした」
「ふむ……」
ノルディックの予想が外れたからか、それとも何か別の理由か……。
話し合いが上手くいったとは言え、相手は第2王女の派閥に属する者。用心するに越したことはないだろう。
そんなことを考えていると、部屋の扉が叩かれた。
「失礼します、九条様。面会を求めている方がいらっしゃっておりますが、いかがいたしましょう?」
扉越しに聞こえる声は宿の者だろう。もうノルディックの使いの者が来たのかと身構えるも、そうではなかった。
「どなたです?」
「はい。バイスと言えばお分かりになると仰っていますが……」
バイスか……。耳の早いことだ……。まあ、断る理由はない。
宿の者に招き入れるよう伝え、暫くすると近づいて来るガシャガシャとうるさい金属音。音が止み扉が勢いよく開かれると、そこに立っていたのは勿論バイスである。
「おっす九条、元気か!」
「バイスさんほどではないですけどね」
片手を上げて快活に挨拶するバイスに、少々の皮肉を込めて呆れたように言い放つ。
「お久しぶりです。バイスさん」
「ミアちゃんも久しぶりだな。元気そうで――いや、そうでもないか?」
さすがと言うべきか、良い観察眼だ。今抱えている問題を考えれば当然だろう。
バイスはミアの顔色を窺いながらも、部屋の片隅にある椅子に腰かける。
「今回の来訪と何か関係があるのか?」
「実は……」
俺は、今回の件の一部始終をバイスへと話した。
ノルディックはそのままロバートに何かを指示すると、ロバートは机の上に置いてあったA4サイズほどの木箱の中から紙の束を取り出し、机に広げた。
「これは、ノルディック様の指示で取り置きしておいた依頼で御座います」
「この中から好きな依頼を選んでくれ。もちろんワシもその中から選ぶ」
適当な数枚を無作為に手に取り見比べる。
王都のギルドで受ける依頼だ。その周辺での依頼だと思っていたが、かなり遠くの街や村、それに知らない地名のものまで混ざっている。……いや、混ざっているどころか、大半がそうだ。
恐らくそこで手が付けられなかった厄介事が、依頼として王都に回って来ているのだろう。
『北東に位置するノーザンマウンテンにて発見されたダンジョンの調査』
『東の砦、バルク平原より先、ミスト領での遺跡調査』
『中立都市ベルモントより南西、金の鬣の出現地点とされるダンジョンの調査。(討伐難易度A以上の魔物が確認されれば即帰還。討伐は別依頼予定)』
『港町ハーヴェストから出航予定の商船レイドック号の護衛(往復路、約30日拘束)』
『アンカース領ノーピークスより南にある謎の砦に徘徊するアンデッドの討伐』などなど……。
テーブルに置かれている依頼書のどれもが遠いか、もしくは拘束期間の長いものばかりで、その全てがゴールド以上でないと受注不可能なもの。
コット村以外のギルドで仕事を請け負ったことのない俺にとっては、面倒だと思うような依頼ばかりである。
確かに1回の報酬が金貨50~100枚前後と割はいいが、王都のギルドではこれが当たり前なのかと思うと、コット村をホームに設定しておいて良かったと胸を撫で下ろした。
その全てに目を通した結果、この中では『アンカース領内の謎の砦のアンデッド退治』が1番楽そうではある。
場所は知っている。恐らくネストがブラバ卿に囚われていた所だろう。
そこでは多くの血が流れた。その影響で悪いものが棲み付いたか、発生したと考えるのが妥当。……まぁ、やったのは俺だが……。
そして相手はアンデッド。まるで俺の為に用意されたようなお誂え向きな依頼。移動を考えなければ、ものの数分でカタがつきそうだ。
「ワシはこれにしよう」
悩む俺を前にノルディックが1枚の依頼書を拾い上げ、ザッと目を通すと、それをミアへと差し出した。
「今回だけは担当だからね。どうだい?」
その依頼書はミスト領での遺跡調査のもの。
「わかりました。大丈夫です」
となると、俺はその依頼から出来るだけ近い場所での活動を強いられるという事だ。
俺にはミアと離れられないという制限がある。具体的な距離は不明だが、経験上コット村から俺所有のダンジョンのあたりまでなら大丈夫なはず。
その範囲内で受けることの出来る依頼は――。
応接室の上座に位置するロバートの後ろの壁には、丁度よく世界地図が飾られていた。
それと地名を照らし合わせながら、慎重に依頼書を選び、手に取っていく。
「俺はこれにする」
選んだのは『ノーザンマウンテンのダンジョン調査依頼』。距離的に選択肢はこれ以外にはない。
それをノルディックに見せると、難しい顔で眉をひそめる。
「ちょ……ちょっと待ってくれ。君は死霊術の適性を持っているんだろう?」
「はい。それが何か?」
「なら、こっちのアンデッド処理の方が得意分野なのではないか? なんでこれにしないんだ? 報酬だってこっちの方が多い」
「確かにそうなんですが……。この中から好きな物を選んでいいんですよね?」
「……ま……まあ、そうだが……」
提示された選択肢から選んだのに苦言を呈して来るとは思わず、首を傾げる。その表情は、納得していないとでも言いたげだ。
確かに適性を鑑みれば、それを受けるのが楽ではあるのだが、他人に言われるほど呆けてはいない。
見落としを心配してくれたのだろうか? それとも依頼の期限が近いとか、何か別の理由か?
何にせよ、俺にはこれ以外の選択肢はないのだ。
お互いの仕事が決まると、ノルディックはその場で立ち上がりそれをロバートへと手渡す。
「よ……よし。では支部長、コレで頼む。出発は10日後だ」
「10日後!?」
余りの準備期間の長さに、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「ああ、ワシは準備に時間をかける性質でな。どんな簡単な依頼であれ本気を出すということだ」
言いたいことは理解出来る。仕事に一生懸命なのはいいことだ。だが、10日は長すぎやしないだろうか?
とは言え、俺からしたら相手は長年冒険者をしている先輩だ。これが普通のことだと言われたらそれまで。それに口を出すことは憚られた。
ロバートは何事もなくそれを受け取ると、それぞれに依頼受注の印を押す。
「承りました。それでは10日後。出発の日に1階の窓口までお越しくださいませ」
テーブルに広げられた他の依頼書をそそくさと片づけると、皆に頭を下げロバートは部屋を後にする。
「ではワシも失礼するよ……。おっとそうだ。どこに泊っているのかだけ教えてくれ。ある程度の準備ができ次第、作戦会議を始める。その時には君の担当も同席してもらうことになるからね」
泊まっている宿屋の場所と名前を教えると、ノルディック達も去り、ひとまずの話し合いは終わりを迎えた。
宿屋に帰ると、大きなベッドに横たわる。
「あー。疲れた……」
精神的にだ。ノルディックは紳士だった。流石プラチナプレートの先輩といったところか。
物腰は柔らかく、先輩風を吹かせることもない。建設的な話し合いが出来たと言っていいだろう。
「ミア。本当に大丈夫か? 無理しなくてもいいんだぞ? リリー王女には悪いが、俺が派閥を変えれば済む話なんだ」
「ううん。大丈夫。私はリリー王女の方がいいもん」
ミアの意見には大いに賛同する。第2王女か第4王女か、好きな方を選べと言われたら間違いなく第4王女を選ぶに決まっている。第2王女の元で働くなんてまっぴらごめんだ。
職業選択の自由――と言いたいところだが、恐らく絶対王政だろうこの世界では、それが無理なのは承知している。
プラチナプレートの俺はまだマシな方だ。王族や貴族とは違うが、それなりに認められ一目置かれる存在。ある程度の権威はある。
それにしても10日も暇が出来てしまった。
ならば1度コット村に帰ろうかとも考えたが、また来るのも面倒だ。
ロバートはコット村のギルドに連絡を入れてくれると言っていたし、ちょっとしたリフレッシュ休暇だと思ってのんびりさせてもらおう。
ミアだって、たまには長期の休みがあってもいいじゃないか。
「ミア。暇も出来たことだし、何処か行きたい所はあるか?」
「おにーちゃんと一緒ならどこでもいい!」
嬉しいことを言ってくれる。曇りなき笑顔を向けるミアの頭をわしゃわしゃと豪快に撫でる。ミアは少し迷惑そうにしながらも、その頬は緩みっぱなしだった。
ミアと離れることなど考えられるわけがない。
初めて会った時からまだ1年と経っていない。だが、俺がこの世界に来て1番長い時を一緒に過ごして来たのだ。共に笑い、時には泣き、嬉しい事も辛いことも共有してきた。
その天真爛漫で無邪気な笑顔にどれだけ救われたことか……。ミアはもう俺の生活の一部なのだ。
俺とミアの仲を裂こうとするならば、何人たりとも許しはしない。それがたとえ神であろうともだ。
いざとなれば、国王への直訴も辞さないとは考えていた。
金の鬣討伐のミアへの褒美。俺と一緒にいられなくなるようなら自分に言えと、そう言っていた。
それが嘘だとは思わないが、本気なのかもわからない。
相手は国王だ。それに直訴しても、その原因を作り出しているのは自分の娘である第2王女。どちらの味方に付くのか見当もつかない。
仮に第2王女の意見が通ってしまえば、それは誰にも覆せない王命である。状況は余計に悪化するだろう。
故にそれは最終手段だ。第2王女の派閥に入ってもなお、ミアを引き離そうとした場合に限る。
「カガリはノルディックのこと、どう思う?」
カガリは相手の真意を読み取る術に長けている。心を読むとまではいかないが、嘘か真かを見極めることが出来るのだ。
「とても読み辛い相手ですが、恐らく嘘はついていない様に思います。担当の変更については良く思っていない。しかし、主が依頼を決めた時の動揺は激しいものでした」
「ふむ……」
ノルディックの予想が外れたからか、それとも何か別の理由か……。
話し合いが上手くいったとは言え、相手は第2王女の派閥に属する者。用心するに越したことはないだろう。
そんなことを考えていると、部屋の扉が叩かれた。
「失礼します、九条様。面会を求めている方がいらっしゃっておりますが、いかがいたしましょう?」
扉越しに聞こえる声は宿の者だろう。もうノルディックの使いの者が来たのかと身構えるも、そうではなかった。
「どなたです?」
「はい。バイスと言えばお分かりになると仰っていますが……」
バイスか……。耳の早いことだ……。まあ、断る理由はない。
宿の者に招き入れるよう伝え、暫くすると近づいて来るガシャガシャとうるさい金属音。音が止み扉が勢いよく開かれると、そこに立っていたのは勿論バイスである。
「おっす九条、元気か!」
「バイスさんほどではないですけどね」
片手を上げて快活に挨拶するバイスに、少々の皮肉を込めて呆れたように言い放つ。
「お久しぶりです。バイスさん」
「ミアちゃんも久しぶりだな。元気そうで――いや、そうでもないか?」
さすがと言うべきか、良い観察眼だ。今抱えている問題を考えれば当然だろう。
バイスはミアの顔色を窺いながらも、部屋の片隅にある椅子に腰かける。
「今回の来訪と何か関係があるのか?」
「実は……」
俺は、今回の件の一部始終をバイスへと話した。
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著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
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