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第584話 呼び出しのワケ
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一瞬ではあったが、気の抜けたような顔を晒したレイヴンは、ハッとして気を引き締める。
「時に九条殿。女王陛下の宣言が偽りではないのなら、何故それを公表しなかったのだ……。私がコット村へと赴いた時に知り得ていれば……」
「今のような状況には、なっていなかったと?」
無言で僅かに頷くレイヴンに、俺は溜息を返す。
残念ながら、俺にはそうは思えない。
仮に当時の俺が、アドウェール殺害の犯人を知っていたとして、それを言ったところで信用されただろうか?
確かにレイヴン公の求めていた答えではあるだろう。しかし、死霊術の本質は知らず、更には俺の実力に対しても半信半疑。
結局は王都に呼び出され、降霊の実演――という流れになっていたはず……。
「魔王などと呼ばれている所為か、何か勘違いをされていらっしゃるのかもしれませんが、俺は万能ではありません。アドウェール様の死因が判明したのは、王都でのこと。実は王宮の地下牢に、親切な情報通の友人がいるんですよ。勿論、既に亡くなっていますが……」
「では、何故処刑前に公表しなかったのだ……。少なくとも中止には……」
「愚問ですね。あの場に、罪人の言う事を信じる者がいたとでも?」
100歩譲って居たとしても、エドワードくらいなものだろう。どれだけ抗議したところで、アルバートに押し切られるのが関の山。
処刑を免れる為の戯言だと、相手にすらされないのは明らかだ。
仮にそれが受け入れられたとしても、真実を知る俺をアルバートが生かしておくとは思えないし、そもそも禁呪使用の件が有耶無耶になるわけではない。
「レイヴン公は、わかっていらっしゃいますよね? どうして、今こんな事態になっているのかを……。それは、俺の所為ですか? 俺がアルバートを許せば、この騒動が収まるとお思いで?」
「……陛下には何度も具申した。何故約束を反故にし、ミアに手を出したのかと。謝罪を促し、被害を最小限に止めるようにと……。最悪、私が頭を下げることも視野に入れた……」
痛いところを突かれたと言わんばかりに顔を歪め、力なく項垂れるレイヴン。
人の考え方を変えさせるのは、難しい。それが部下であるならまだしも、相手は国王。その心労は、相当なものだろう。
「だが、それも無意味なのだと悟った。九条殿が許そうとも、陛下の暴走は止まらない。それが今日、確信に変わった……。禁呪だなんだと言っておきながら、結局は自分の罪が明るみになるのを恐れているのだ……」
万策尽きたとでも言わんばかりに、レイヴンは盛大な溜息をついた。
しかし、そこまで理解していながら、何故俺を呼んだのか……。
「答えが出ているのなら、説明は不要かと存じますが?」
「ああ、その件に関してはな……」
含みのある言い方に、僅かな不信感はあるものの、レイヴンは落ち着きを取り戻したかのように話を続ける。
「先に非礼を詫びておこう。失礼ながら、九条殿のことは調べさせてもらった」
「……別に構いませんが……」
面と向かってそう言われて、いい気分にはならないが、当然と言えば当然のこと。
逆に、何も知らず相手にしようとする方がどうかしている。
初心者冒険者だって、自分の戦う魔物の生態は把握している。情報は、勝敗は元より生死を左右する重要な因子だ。
「公にはされていないが、第2王女であるグリンダ様が何者かに殺害された。2体のリビングアーマーが王宮内に潜んでいたのだが……。九条殿の手の者で間違いはないか?」
その質問には即答せず、リリーからの反応を待つ。
「大丈夫です九条。正直に答えてあげてください。ここでの事は、決して口外しないと誓いを立てられましたから」
それをリリーが信じたのは、カガリに反応が見られなかったからだろう。
「……ええ、そうです。全てはリリー様を救う為。謝罪等は一切考えていません」
「いや、謝罪を求めるつもりはない。当然、責任追及もしないつもりだ。報復は当然の権利。九条殿が1枚上手だった――それだけのこと……。しかし……そうかそうか……」
何故か不敵な笑みを浮かべるレイヴン。
それを隠そうとする気はなさそうで、むしろ少し嬉しそうにも見える。
「過去、王都にアンデッドの大軍が押し寄せ、アンカース家に魔法書を返還するという出来事があったのだが……覚えているだろうか? それにも九条殿が関わっていると見ているのだが、間違いはないか?」
それを今、問い質されていると言う状況に驚いてはいるが、禁呪を行使していると知られた時点でそこへと辿り着く者が現れるだろう事は予想できた。
最早、隠す必要もない。
「随分と前ですが……。確かに、一芝居打たせていただきました」
「ならば最後に1つ、頼みがあるのだが……」
「……頼み……ですか?」
そう言ってレイヴンがテーブルの上へと置いたのは、20センチ四方の桐製だろう箱だ。
俺は、それに酷似している物に見覚えがあった。そこに何が入っているのかを安易に想像出来たのだ。
キツく結ばれた紐を解き、両手で上蓋を開けるレイヴン。
丁寧な動作で中身をそっと取り出すと、目の前に置かれたのは何者かの頭蓋である。
ようやく、レイヴン公が俺を呼び出した真の意図を理解した。
要は、考察の検証だ。悪く言うなら、俺の実力を測る為のテスト……といったところだろう。
バルザックの魔法書をネストに返還した時、俺はペライスをよみがえらせて見せた。
同様に、前国王であるアドウェールをよみがえらせることが可能なら、今からでも遅くはない。アルバートを確実に追い詰める事が出来るのでは――と、考えたのだろう。
降霊なんて、目じゃないほどの信憑性。何せ亡くなった本人が証言するのだ。
試される……というのはあまりいい気分ではないが、ここはレイヴンの頼みを聞いてやっても損はなさそうだ。
「レイヴン公も、墓荒らしが趣味だったとは……。俺達、気が合いそうですね」
「九条殿、茶化さないでくれ……。これは……」
「でも、どうせ荒らすなら王墓の方が良かったのでは? 何故アドウェール様ではなく、奥様を連れてこられたのです?」
「――ッ!?」
驚愕とも言えるレイヴンの表情は、ある意味予想通りだった。
レイヴン公が事情を語り出す前に先手を打った。その方が実力を測りやすいだろう。
頭蓋から身元を割り出すことなど、造作もない。
既に俺には見えていたのだ。レイヴン公に寄り添う1人の女性の魂が……。
「時に九条殿。女王陛下の宣言が偽りではないのなら、何故それを公表しなかったのだ……。私がコット村へと赴いた時に知り得ていれば……」
「今のような状況には、なっていなかったと?」
無言で僅かに頷くレイヴンに、俺は溜息を返す。
残念ながら、俺にはそうは思えない。
仮に当時の俺が、アドウェール殺害の犯人を知っていたとして、それを言ったところで信用されただろうか?
確かにレイヴン公の求めていた答えではあるだろう。しかし、死霊術の本質は知らず、更には俺の実力に対しても半信半疑。
結局は王都に呼び出され、降霊の実演――という流れになっていたはず……。
「魔王などと呼ばれている所為か、何か勘違いをされていらっしゃるのかもしれませんが、俺は万能ではありません。アドウェール様の死因が判明したのは、王都でのこと。実は王宮の地下牢に、親切な情報通の友人がいるんですよ。勿論、既に亡くなっていますが……」
「では、何故処刑前に公表しなかったのだ……。少なくとも中止には……」
「愚問ですね。あの場に、罪人の言う事を信じる者がいたとでも?」
100歩譲って居たとしても、エドワードくらいなものだろう。どれだけ抗議したところで、アルバートに押し切られるのが関の山。
処刑を免れる為の戯言だと、相手にすらされないのは明らかだ。
仮にそれが受け入れられたとしても、真実を知る俺をアルバートが生かしておくとは思えないし、そもそも禁呪使用の件が有耶無耶になるわけではない。
「レイヴン公は、わかっていらっしゃいますよね? どうして、今こんな事態になっているのかを……。それは、俺の所為ですか? 俺がアルバートを許せば、この騒動が収まるとお思いで?」
「……陛下には何度も具申した。何故約束を反故にし、ミアに手を出したのかと。謝罪を促し、被害を最小限に止めるようにと……。最悪、私が頭を下げることも視野に入れた……」
痛いところを突かれたと言わんばかりに顔を歪め、力なく項垂れるレイヴン。
人の考え方を変えさせるのは、難しい。それが部下であるならまだしも、相手は国王。その心労は、相当なものだろう。
「だが、それも無意味なのだと悟った。九条殿が許そうとも、陛下の暴走は止まらない。それが今日、確信に変わった……。禁呪だなんだと言っておきながら、結局は自分の罪が明るみになるのを恐れているのだ……」
万策尽きたとでも言わんばかりに、レイヴンは盛大な溜息をついた。
しかし、そこまで理解していながら、何故俺を呼んだのか……。
「答えが出ているのなら、説明は不要かと存じますが?」
「ああ、その件に関してはな……」
含みのある言い方に、僅かな不信感はあるものの、レイヴンは落ち着きを取り戻したかのように話を続ける。
「先に非礼を詫びておこう。失礼ながら、九条殿のことは調べさせてもらった」
「……別に構いませんが……」
面と向かってそう言われて、いい気分にはならないが、当然と言えば当然のこと。
逆に、何も知らず相手にしようとする方がどうかしている。
初心者冒険者だって、自分の戦う魔物の生態は把握している。情報は、勝敗は元より生死を左右する重要な因子だ。
「公にはされていないが、第2王女であるグリンダ様が何者かに殺害された。2体のリビングアーマーが王宮内に潜んでいたのだが……。九条殿の手の者で間違いはないか?」
その質問には即答せず、リリーからの反応を待つ。
「大丈夫です九条。正直に答えてあげてください。ここでの事は、決して口外しないと誓いを立てられましたから」
それをリリーが信じたのは、カガリに反応が見られなかったからだろう。
「……ええ、そうです。全てはリリー様を救う為。謝罪等は一切考えていません」
「いや、謝罪を求めるつもりはない。当然、責任追及もしないつもりだ。報復は当然の権利。九条殿が1枚上手だった――それだけのこと……。しかし……そうかそうか……」
何故か不敵な笑みを浮かべるレイヴン。
それを隠そうとする気はなさそうで、むしろ少し嬉しそうにも見える。
「過去、王都にアンデッドの大軍が押し寄せ、アンカース家に魔法書を返還するという出来事があったのだが……覚えているだろうか? それにも九条殿が関わっていると見ているのだが、間違いはないか?」
それを今、問い質されていると言う状況に驚いてはいるが、禁呪を行使していると知られた時点でそこへと辿り着く者が現れるだろう事は予想できた。
最早、隠す必要もない。
「随分と前ですが……。確かに、一芝居打たせていただきました」
「ならば最後に1つ、頼みがあるのだが……」
「……頼み……ですか?」
そう言ってレイヴンがテーブルの上へと置いたのは、20センチ四方の桐製だろう箱だ。
俺は、それに酷似している物に見覚えがあった。そこに何が入っているのかを安易に想像出来たのだ。
キツく結ばれた紐を解き、両手で上蓋を開けるレイヴン。
丁寧な動作で中身をそっと取り出すと、目の前に置かれたのは何者かの頭蓋である。
ようやく、レイヴン公が俺を呼び出した真の意図を理解した。
要は、考察の検証だ。悪く言うなら、俺の実力を測る為のテスト……といったところだろう。
バルザックの魔法書をネストに返還した時、俺はペライスをよみがえらせて見せた。
同様に、前国王であるアドウェールをよみがえらせることが可能なら、今からでも遅くはない。アルバートを確実に追い詰める事が出来るのでは――と、考えたのだろう。
降霊なんて、目じゃないほどの信憑性。何せ亡くなった本人が証言するのだ。
試される……というのはあまりいい気分ではないが、ここはレイヴンの頼みを聞いてやっても損はなさそうだ。
「レイヴン公も、墓荒らしが趣味だったとは……。俺達、気が合いそうですね」
「九条殿、茶化さないでくれ……。これは……」
「でも、どうせ荒らすなら王墓の方が良かったのでは? 何故アドウェール様ではなく、奥様を連れてこられたのです?」
「――ッ!?」
驚愕とも言えるレイヴンの表情は、ある意味予想通りだった。
レイヴン公が事情を語り出す前に先手を打った。その方が実力を測りやすいだろう。
頭蓋から身元を割り出すことなど、造作もない。
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