生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば

文字の大きさ
643 / 722

第643話 九条の恩返し

しおりを挟む
「で?」

「で? ……ってなんだよ……」

 エルザから向けられる意味深な視線。言いたいことはわかるのだが、期待されても困る。

「オーガたちに手を貸せって言うなら、お断りだ。俺はオーガたちの侵略行為を許しただけで、助けるとは言っていない。どうしてもと言うなら、お前の方で手伝ってやればいいだろ?」

 オーガたちの境遇には同情はするし、ギルドに不信感もある。だが、オーガたちと交流がある訳でも、ギルドが俺に対し強硬な姿勢を取っている訳でもない。
 オーガたちを助けるという事は、ギルドと争う事と同義。今の俺は、エクアレイス王国の栄誉騎士。コット村の領主だ。
 反社会的勢力に属しているならまだしも、立場上無理な相談である。

「ワシ等は当然、助力する。じゃが、ギルド相手となると一筋縄ではいかんのぉ……」

 そりゃそうだろう。ギルド……というより、それに雇われた冒険者たちとの正面切ってのガチンコ勝負。
 ネクロガルドの戦力を侮っている訳ではないが、オーガの集団を殲滅するだけの戦力を相手にするのが、どれだけ大変か……。
 問題はそれだけではない。下手をすれば、オーガに味方する人間がいる……という事実が周知され、芋づる式にネクロガルドの存在が明らかになる可能性すらある。
 それだけのリスクを背負いながらも手を貸すというのだから、どれだけオーガに入れ込んでいるのか……。

「俺が動く理由がないだろう? 人助けにメリットを求めちゃいないが、デメリットがデカすぎる」

 人助け……とは言ったが、オーガは魔物だ。魔物を助けるという行為が、人間社会で認められるわけがない。
 まぁ、魔獣や魔族、ゴブリンと暮らしている時点で、ズレていることは重々承知の上ではあるが、正義はギルドにあるということ。
 俺に出来る事と言ったら、影ながら無事を祈ってやることくらいだ。

「ゴブリンと同じようなもんじゃろ。魔王などと呼ばれておるクセに、肝っ玉が小さいのぉ」

「うるせーな。ただ保護するのとは訳が違う。そもそも、お前に頼まれる義理はない」

「そうか? もふアニ建国の為、サザンゲイアに口利きしてやったじゃろ? その恩を今返す……という選択肢もあると思うが?」

「ぐっ……」

 恩着せがましいにもほどがある……と、言いたいところではあるが、事実ではあるので強くは言い返せないのが正直なところ。

「ほら、あれだ。お前はやる気かもしれんが、オルガナは人間なんかに助けてほしくないだろ?」

 それに、ハッとしたオルガナは、思い出したかのように勢いよく頭を下げた。

「助けてもらえるなら誰だって構わない! 我々を……いや、我々はどうでもいい。アミーだけでも……頼むッ!」

 人間なんぞとバカにしていたクセに、今更になって手のひらをコロコロと返すんじゃない……と、言いたいところではあるが、アミーだけ……という妥協点の提示は評価できる。
 自分達はどうなってもいいという覚悟は、どうやら嘘ではないようだ。

「九条……。ワシからも頼む……」

 そう言って、深々と頭を下げたのはフードル。
 オルガナの話を聞いた時点で、そうなるかもなぁとは、薄々感じていた。
 ベリトは因果応報とも言えるが、子供のアミーに罪はない。
 仮にギルドがアミーの身柄を確保したとしても、内部に魔族の……それも子供に対する知識がなければ、封印どころか永眠は必至。
 今のギルドに、アミーが自立するまでの魔力を用意できるとは思えない。

「おにーちゃん……」

 言葉にせずとも伝わる思い、とでも言おうか……。ミアの瞳が小さな湖のように揺れ動く。
 言いたいことがあるけれど、言葉にはできない。けれど、黙っているにはあまりに切実な視線だ……。

「はぁ……、わかったよ。助けてやればいいんだろ……」

 大きな溜息と共に、肩を落とす。
 フードルに加え、ミアにまでお願いされては仕方ない。根負けである。

「エルザ、今まで色々と便宜を図ってもらったが、今回の件ですべてチャラだ。いいな?」

「よかろう。恩に着るぞ、九条……」

 引き笑いで怪しい笑みを浮かべ、己の本心を表に出そうとしないエルザが、深々と頭を下げた。
 それが余りにも予想外過ぎて、暫く呆然としてしまう。

「やり方は、任せよう。人材、経費、隠れ家、必要な物はなんでも用意する」

「あ、あぁ……」

 その真剣な眼差しに嘘はないのだろうが、今までの弱々しいババァの演技は何処へ行ったのかと思うほどに、急にやる気を出し過ぎだ。

「そんなに指輪が欲しいのか?」

「当然……と、言いたいところじゃが、そっちはついでじゃ」

 まるでオーガを助ける方が主眼だとでも言いたげだが、カガリからの反応はない。
 本当に、読めない婆さんである……。

「それで、オルガナ。アミーの封印は、どれくらい持ちそうなんだ?」

 そこが、ひとまずのタイムリミットになるだろう。
 パッと思いつくだけで、アミー救出作戦として考えられる手段は幾つかあるが、それも残り時間次第。

「具体的にはわからないが、恐らくはあと1月ほど……。ダンジョンハートに小さな亀裂が見つかったのが3か月ほど前。それが少しずつ数を増やし、我々が旅立つ前には全体の3分の一程度まで広がっていた」

 修繕の魔具とやらも、完璧な物ではないのだろう。
 壊れた物を元の形には戻せるが、それを維持しておくのには魔力が必要なのだ。それが尽きればダンジョンハートは瓦解、封印も解けてしまう……。

「急ぐに越したことはないか……」

 アミーの延命を最優先に考えるなら、方法は2つ。
 1つは封印を維持し続けること。そして、もう1つは……。

「アストラ……だっけか? フードルの魔力を、アミーに譲渡することって出来る?」

「もちろんじゃ。この角に触れさせるだけで良いからな」

 ならば、やることは1つ。封印は諦め、アミーを連れ出してしまった方が手っ取り早く、確実だ。
 オーガたちの住むダンジョンに、フードルを転移させれば済む話。場所の特定は、108番に聞けばおおよその見当はつくだろう。
 これで、ギルドには俺の仕業だとバレずに、エルザの恩を帳消しに出来るのだから、なんとも楽な仕事である。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

処理中です...