生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば

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第653話 策は巡れど確信なし

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 動かなくなったアリスという名のゴーレムを、デスナイトが担ぎ上げると、ガストンはシャーリーに連行されるよう魔導船へと戻っていった。

「流石に、二度寝は無理だな……」

 ポリポリと頭を掻きながらも、溜息をつく。仕方がないので、予定していた準備を進め、早めに就寝する方針に切り替えよう。
 まずは、政務の委任。……などと言うと堅苦しく聞こえるが、ただ出かけるから後の事はよろしく――という挨拶回りだ。
 ぶっちゃけると、バルザックとロバートだけで村は回るはずなので、上辺だけの引き継ぎである。

 そしてもう1つは、同行者の選定。
 俺とミア、そしてカガリは絶対だ。サザンゲイアに行くのだから、エルザか最悪その代理となる者にもいてほしい。
 後は、アミーを救出するのに必要な人材……。それも作戦次第だが、正直言って雲行きは怪しい。

 そんなわけで、まずはエルザを連れ、ダンジョンの執務室へと向かう。

「そうだ。シルビアの様子はどうだ?」

「幻聴の方は、特になにも聞いておらんな。修行の方は、九条の言いつけを守り頑張っておるようじゃぞ? 今日もコクセイと一緒に滝行中じゃないかの」

 俺がいない間は、サボってるんじゃないかとも思ったが、意外と頑張っているらしい。
 ペライスの為なら……という若干不純な動機で、さらには根性というより執念にも近い強い意志から生まれる忍耐力は、正直言って舌を巻く。
 修行のおかげで、シルビアの幻聴がなくなったのであれば、心の弱さが招いた病だったのかもしれない。
 ひとまずは、現状維持でよさそうだ。

「死霊術の適性は?」

「残念ながら、予兆はないのぉ」

 冒険者ギルド御用達の魔道具適性鑑定水晶は、コット村からギルドが引き上げると同時に回収されてしまったが、それと同等の性能を持つ魔道具はエルザが所持しているらしい。
 まぁ、ギルドの内部にまで諜報員を送り込めるくらいだ。1個くらいパクってもバレへんやろ? と言われても、ネクロガルドならあり得る……で、済んでしまう所が、俺も充分毒されているなぁと感じる今日この頃だ。

「そうじゃ。適性で思い出したが、ロバートの娘にも適性診断をしてやったんじゃ」

「はぁ? クリスは冒険者にでもなるつもりなのか?」

「渋々……という感じじゃったが、詳しくは知らんな。ただ、見てやってくれと言われたから見てやったに過ぎぬ」

「結果は?」

「錬金術だけ。ギルドの評価基準で言えば、ギリギリブロンズといったところか……」

「へぇ……」

 クリスの将来に幅が出来たと考えれば、そう悪い結果でもないのではないだろうか?
 10代後半という年齢を鑑みれば、そろそろ社会に出てもいい頃……。いや、この世界では少々遅いくらいか……。
 村にも求人はあるだろうし、王都での生活が望みであれば、これを機に独り立ちを考えるのも悪くない。
 まぁ、それを決めるのは本人なので、俺から言える事はないのだが……。

 執務室には、バルザックとロバートだけではなく、オーガのオルガナにフードルまでもが一堂に会した。
 作戦会議も出来るので一石二鳥ではあるのだが、難航は目に見えている為、空気は重い。

「――という訳で、暫く村を任せる。何かあれば、108番に報告してくれ」

「それは構わんが、実際どうするつもりだ? ゴリ押しした方が手っ取り早いだろ?」

「そりゃ、そうなんだが……」

 バルザックの言う事はもっともだ。全軍をもって出撃すれば、急ごしらえのキャラバンなど取るに足らない存在なのだが、それは当然難しい。
 現状、ギルドと敵対しているわけではないのだが、最悪そうなる可能性も考慮はしている。
 しかし、それは俺の個人的見解。エクアレイス王国という組織に属しているのだから、そう簡単な話じゃない。
 俺の存在が明るみに出れば、当然その負担はリリーに掛かる。できれば、それは避けたいところ。

「転移は無理。コット村の関係者は顔が割れていて、強力なアンデッドを使えば九条が安易に連想できる。かといって、大勢の冒険者相手に立ち回れるほどの実力者を、短時間で味方に引き入れることなどできないだろう? それで、どうやってアミーを救い出すつもりだ?」

 口に出されると、余計にその難しさを痛感させられる。だからこそ、今まで悩んできたのだが……。

「ワシに良い考えがあるぞ。しかも、一瞬で終わる画期的な方法じゃ」

 エルザは、そう言いながらもニヤリと微笑み、俺に怪しげな視線を向ける。

「目撃者がいなければ、バレる事もなかろ?」

「……却下だ」

 絶対碌でもないことだろうと身構えてはいたのだが、やっぱりそうだった。
 確かにエルザの言う通りではあるのだが、皆殺しはやり過ぎ。冒険者は、オーガの討伐に狩り出されただけであり、なんの罪もない。
 勘違いしないでほしいのは、あくまで目的はアミーの救出であり、オーガはそのついでであるということだ。
 仮にオーガたちが冒険者に勝てたとしても、第2陣が送られてくるだけ。それは、ギルドがアミーを奪取できるまで執拗に繰り返されるだろう。

「ここは妥協して、アンデッドを使うしかないか……」

「お主の存在を悟らせない――という前提を覆すと?」

「いや、要はアンデッドが俺の手の者でないという証拠があればいいんだ」

「どうやって、その証明をする?」

「アンデッドと冒険者がやり合っている時、俺が別の場所にいたというアリバイ……不在証明が出来ればいい」

 従魔達の為、過去に作成した俺そっくりの人形。その名も、九条君人形の出番である。
 そこに魂をぶち込み、俺を演じてもらう。その間に、アンデッドを呼び出して冒険者を叩きのめし、アミー救出をする。

「本当に、それでいけると思うか? その手は既に使っておるじゃろ?」

 九条君人形は、俺の処刑で一度公にしている。問題は、その原理をギルドが理解しているかどうか……。
 恐らくギルドは、ネクロガルドほど死霊術に詳しくない。処刑された俺が、その場でよみがえったのだと考えていればいいのだが、斬首された俺が偽物。本体が別にいたと解釈されていた場合、九条君人形でのアリバイは、役に立たない。
 更に言うなら、九条君人形を維持しておける時間には限りがあり、その間に全てを終わらせる必要がある。
 アリバイ作りの為に、ある程度目立つ行動も必要。かといって、サザンゲイアの国王ザルマンへの謁見に、偽物を送り込むのは失礼だ。
 万が一バレるようなことがあれば、俺の立場も危うくなる。

「正直、完璧とは言えないが、無策ではないだけマシだろ? それともエルザ、お前が冒険者としてギルドに登録してキャラバンに紛れるか?」

 コット村に住んでいるエルザではあるが、表向きは魔法書店の店主。
 ネクロガルドの最高顧問だと知っているのは、ごく一部。表向き、俺との関係は希薄なはずだ。

「お前が始めた物語だろ? オーガたちを助けたいなら、自らが先頭に立ったって罰は当たらないんじゃないか?」

「……いや、それは……」

 立場上、目立ちたくはないだろう事は理解しているが、確信を突かれたと言わんばかりに、エルザは言葉を詰まらせる。
 どうせ、軽くあしらわれるだろうと思っての発言だったが、意外や意外。まさかこのタイミングでエルザ相手に優越感を覚えるとは夢にも思わなかった。

「冗談だよ……。ひとまず今日は、解散にしよう。あまり陛下を待たせるのも悪いしな」

 別に待ち合わせをしている訳ではないが、起きているのに顔も見せずダンジョンでコソコソしていたら、俺に不信感を覚えるかもしれない。
 敵を騙すには、まず味方から……。何も知らせないというのも心苦しくはあるのだが、これも配慮という事で許していただこう。
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